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[白銀鎧は、ゆっくりと剣を抜き放つと、それを大上段から一気に降りぬく。
対象から10メートル離れていたが、それでもその斬撃は、床を削りながら男の下まで迫る]
……。
[チッ!という音と共に、煙草の先端が切られたが、男は横っ飛びにそれを避けて、部屋の中へと入り込む]
『逃がすと思う?』
[素早くそれを追う白銀鎧───]
『っ!?』
[───だが、一歩部屋の中に入った瞬間そこには床が無く、勢いよく下の階に転落した]
……。
[男は、ワイヤーガンを用いて、部屋の天井へと張り付きながら、その様子を見守っている]
[階下に落ちた白銀鎧は、すぐに頭上から小型銃を乱射してくる攻撃に戸惑ったようにしていたが、すぐに気を取り直すと、剣を構えながら頭上を向き]
『くっそ!
こんなもんで、僕を倒せると思ったのかい!?』
……別に。
[言いながら、空になった小型の銃を手放すと、片手のままで器用に煙草に火をつけた]
『キーッ!!
余裕面しやがって!!
もう逃げるところは無いぞ!そのまま、なます斬りにしてやる!
……ゲホンゲホン!』
[銃の乱射により舞い上がった「埃」が白銀鎧の器官に入り、むせあがった]
『───!』
[そして、そこでようやく、先程の小型銃の乱射の意味を知った]
『てめ───!』
……エンド。
[男が吸っていた煙草を階下に手放すと───部屋の中に舞っていた「火薬」に引火して、部屋の中で大爆発した。
爆風の影響や、熱波などが天井に張り付いている男にも影響してきたが、中心部に比べればたいしたことは無い。
ビル全体が崩れだしたりすることも、ましてや、天井が崩れたりすることも無いように全て計算しての方法だ]
……。
[男は改めて、次の煙草に火をつけて、爆発の影響が収まるまで、その様子を見守っていたが、やがて、それが収まるとワイヤーガンを手放して、階下へと降り立った]
……。
[瓦礫の山が出来上がり、いまだに熱波が部屋の中に充満していたが、行動できないほどではない。
ゆっくりと辺りを見渡し、これほどの攻撃を受けても傷一つついていない白銀鎧を見つけると、短剣を投擲]
……。
[その体に当たっても、ピクリともしないのを確認してから、男は白銀鎧へと近づき、持っているソウルカード『チャリオット』を入手した]
……タフな奴だ。
[最後に呟くのは、白銀鎧がいまだに生存していることへの感嘆の声。実際のところ、爆発でのダメージというよりも、むしろ爆発の衝撃による気絶による勝利と言っていいだろう]
……。
[ゆっくりと大きく煙を吐き出しながら、男がその部屋を*後にした*]
─森─
[楽しめそうな獲物を探し、木々の枝を飛ぶ。どの場所に居ても極彩色の男の姿は良く目立つ。それ故か、その後ろから追いかけるようにして地面を駆けて行く気配が一つあった]
デートんお誘いかのぅ。
[ちら、と少しだけ視線を向けると、追いかけて来ているのは女性。ふざけてそんなことを言いつつ、探す前に見つかったようだし、と動き回れそうな場所を探し誘導して行く。森の中の少しばかり開けた場所で、男は枝の上でその足を止めた]
ワシん何ぞ用かいのぅ?
[姿を見せずに声をかける。相手の女性は見失ってしまった男を探し視線を巡らせながらその声に応じた]
『ここに居て用と言ったら一つしか無いでしょう?
貴方のカード、もらい受けに来たわ』
[不敵な笑みを浮かべた女性は、手にした銃で枝の上目掛け手当たり次第に発砲する。場所が特定出来ないことに少しずつ苛立ちを覚えて来たらしい。その射撃を避けるように、男は枝の上から降りて来た。その肩に小猿の姿は無い]
それもそうじゃな。
美人さんがデートに誘いに来たんか思うたが、当てが外れたわい。
……おんや。
[からりとした笑いを漏らした後、何かに気付き男はマジマジと女性を見つめた]
おーおー、なんぞ見たことある思うたら。
一昨年辺りん『遊戯』ば参加したにーちゃんの妹か。
形見ん銃ば愛用しとるようじゃな。
『なっ……。
どうしてそれをっ…!』
[女性に動揺が走る。その様子を楽しげに見やっていた男だが、隙は見逃さず即座に女性へと肉薄した]
[嗤う気配を含めながら女性の耳元で囁き、その腹部にボディーブローを一発叩き込む。囁きに更なる動揺を誘われた女性はその一撃を諸に食らい、後ろへと吹っ飛んだ]
『がっ……は……。
そ、んな……はずは、ない…!
これを届けてくれたのは、お前では無かった!』
じゃけぇ、こげな顔じゃったろう?
ほんで、おまはんばにーちゃんはこげな顔じゃったか。
[不意に顔を覆っていた仮面を取る。そこに現れたのは女性にとって見覚えのある顔。驚きに声を無くしている女性を後目に男は再び仮面を顔に合わせ、言葉と共にまた取り外す。次いで現れたのは、女性が良く知る肉親の顔だった]
『!?
貴様……一体……!』
サービスはここまでじゃあ。
ワシんこと教える気ぃはさらさらなかとよ。
『遊戯』ば関係者とだけ言うておこか。
『……くそぉ!!』
[頭に血が昇ったのか、立ち上がった女性は男に対し牽制の銃撃を二発。男が避けるのを見越し、腰に据えてあったエストックを抜き、避ける軌道上目掛け突きを繰り出した。仮面を直しながら避けていた男の腹部をエストックが襲う]
『取った!!』
[確信染みた声で女性が叫ぶ。手応えもあり、エストックは確かに男の腹部を貫いていた]
[しかし]
ざーんねんじゃのぅ、ワシゃこっちじゃて。
『!?』
[男の声は背後から。そして女性の首元には男の得物──刃を併せ持つトンファーが当てられていた。エストックが男の腹部を貫いているにも関わらずに]
そっちは偽もんじゃあ。
証拠に、血ぃ流れとりゃせんじゃろ。
『馬鹿、な。
いつの間に、入れ替わった…!』
さぁいしょっからじゃて。
尤も、そっちんもワシに間違いはありゃせんけどの。
ほんじゃ、チェックメイトじゃて。
[嗤う気配を乗せ、男は女性の首へとあてていた刃を離しながら、逆の手の刃でその背中を一刀の下に切り捨てた。悲鳴を上げなかったのは女性の念持からか。くぐもった声を漏らしながら女性の身体は地面へと倒れ行く。偽の男を貫いていたエストックが抜け、それは闇色の塊となり。女性同様に地面へと落ちた]
ま、死にやせんけぇ。
治るまで大人しゅうしとくんじゃな。
[意識を失おうとしている女性へそう声をかけ。与えた傷を気にすることなく女性を仰向けにする。どこからともなく現れた小猿が女性の懐を探り、所持していたカードを見つけ男の肩へと登った]
おぅ、見つけおうたか。
……女教皇のぅ。
ま、ええか。
[カードを見てびみょーと思ったらしい。それでも獲得したことには変わりないため、男はそれを懐へと直す]
さぁて、こん後ぁどぎゃんしたろうかねぇ。
[楽しげな雰囲気で、小猿を肩に乗せた男は森の奥へと入って*行った*]
─湖・水上─
……Sturm,Anfang!
[湖上に響く、凛とした声。
銀の蔦が同じ色の輪に転じ、細い手に確りと握られる]
ってーいうかね!
アンタ、しつっこいんだよ、オバサン!
はっきり言って、いー加減、ウザイ!
[鋭い刃を水平に突きつけつつ、飴色が睨むのは水面に首を突き出す魚竜型のクリーチャー──ではなく、その背の上に悠然と立つ、真紅のドレスの女]
「嫌われたものねえ、『新種』のお嬢さん?
とはいえ……我が財団の研究テーマを完成させるためには、複数の『新種』の遺伝子を受け継ぐサンプルが必要なのよ。
複数の『始祖』の直系にあたる貴女は、その条件に最適なのよねぇ……」
そんなの……ボクが、知るかっ!
[嫣然と笑う女に向けてきっぱりと言い放ち、背の翼を羽ばたかせる。
水面を滑るように翔けて距離を詰め、水面に突き出した魚竜の喉元を切り裂こうとするが、それよりも一瞬だけ早く、女が手にした鞭でぴし、と魚竜の首筋を叩いた。
それが何かの指示になったのか、魚竜はこちらの到達直前に水面下に潜めていた尾を強く振る]
……っとと!
[とっさの急上昇でその一撃は避けたものの、それによって距離が開いた。
更に、追い討ちを駆けるかのように噴き出される、水のブレスを飛び退く事で避け]
あー、も、面倒なんだよね、この『キメラ使い』!
[自らは戦わず、遺伝子操作によって作り出したクリーチャーを使役して戦う『キメラ使い』。
自分を追い回す研究施設の幹部でもある女は、あらゆる意味で『タイプ』ではないのだが]
……ここで捕まって、挙句、カードまで取られるのは、さすがに情けないからなぁ……。
[小さく呟き、距離を測る。
相手は、実質水棲クリーチャー。
何度となく倒している、『慣れた』相手だ。
ただ、問題なのは野生のクリーチャーではなく、人の指示で動いてくるところ]
ま、対処法はわかってんだし……やる事は、一つ。
[小さく呟き、右手の輪に念を凝らす]
……Sturm,Teilung.
[呟きに応じ、輪は、一回りほど小さな二つの輪へと転じる。
女は、有効距離から外れているためか他に理由があるのか、仕掛ける様子は見えない。
否、わかっているのだろう。
こちらが仕掛けるには、向こうのフィールドに飛び込まなくてはならない事が。
それ故の余裕は、口元の笑みからも読み取れる]
……ホント、気に入らないオバサンっ!
[吐き捨てるよに言いつつ、二つの輪を両手に一つずつ持つ。
飴色の瞳が、す、と細まり、翼が大気を打った。
魚竜へ向けて急降下し、そのまま斬りつける──と見せかけ、直前で失速。
自由落下で魚竜と、そして、女の視界から姿を消す]
「……どこへっ!?」
[野生のクリーチャーであったなら、反射的に気配を追う事もできたかも知れないが。
操者の指示に忠実にあれ、と作られた魚竜は、顎の下に潜り込む気配に対処しきれなかった]
……もらうよ!
[声と共に左手の輪を魚竜の喉元に突き刺し、後ろに向かって大きく飛んで距離を開ける。
女は痛みに暴れるクリーチャーを制御しようとして、こちらから意識を逸らした。
その隙を、雷光天使は的確に捉える。
クリーチャーが暴れて立てる波を避けるよに舞い上がり、残っていた輪を女へ向けて投げつけた]
「……っ! しまっ……」
[しまった、という言葉は途切れ、紅が舞う。
その動きを目で追いつつ、戻ってきた輪を受け止めて]
……これで、おしまいっ!
[再度の降下。
右手の輪が、魚竜の額に喰い込んだ。
絶叫とも取れる咆哮が響き、やがて、その身体が沈み始める]
「……ちっ!」
[舌打ちと共に、女は魚竜の背から飛び退き、岸へと降り立った。
しかし、先の傷が響いているのか、その動きは鈍い。
故に、捉えるのは容易かった]
……Sturm,Kombination!
[声と共に、輪を頭上に翳す。
声に応じるよに、先ほど魚竜の喉元に突き刺してきた輪が水中から飛来し、二つの輪は重なって一つの輪に戻った。
本来の大きさに戻ったスライサーを、女の背へとためらいなく投げつける。
再度、真紅が舞い──それで、勝負はついた]
……っとに、いきなりやーなのに会っちゃったなぁ。
他にも、気が滅入るのがいるってのに……。
[ぶつぶつと文句を言いつつ、倒れた女の横に降り立つ。
目当てのものは、すぐに見つかった]
……『エンプレス』、か。
ま、ある意味お似合いだったかも、ね。
[皮肉るような口調で言いつつ、それを胸ポケットに入れる]
……さあて、と。
まずは一勝、かぁ。
あー、なんか疲れた。どっかで一休みしよっと……。
[それから、は、と一つため息をついて。
ゆっくりと、*歩き出す*]
―廃墟中央部。一際高いビルの屋上―
ん〜。やってますね〜。やってますね〜。
[ビルの派手な爆音。森の方向から二つの力の衝突。
それを遠くから確認するように屋上に立ちながら、帽子から出したリンゴを齧る]
しかし…見渡せるわりにあまり把握は出来ませんね〜
[そりゃ当たり前である]
―廃墟・建物の屋上―
[噴き上げる炎が起こす風に青の髪が弄られる。
幾らその内に鎮火しようとも、炎という力は侮れない]
清めの炎、かな。
[崩れ落ちることはない。
半端に終わるソレは廃墟を悪戯に傷付けるだけで終わるのだろうけれど]
[不意に肘をついて体重を掛けていた屋上の手摺を持ち直す。
床を蹴れば細い鉄の上で倒立をするような体勢に]
[どうっ]
[今先程まで立っていた足元を炎が焦がす。
火災現場から飛んで来たものではない]
…久しぶりですね、こんなところで会うなんて。
[逆さまの朽葉色が瞬く。
炎を放った相手、銀色の髪を持つ男に]
『うん、僕も驚いたよ』
[男は柔らかく、先程の攻撃を放ったことすらも忘れたように笑んでいた]
『そうしてると「吊られた男」そのものだね。
君には似合わない気がしてたけど、そうでもなかったのかな』
はは、…俺もどうして選ばれたのかわからないんですけどね。
[手摺を弾くように跳び上がる。
空中で回転をこなし、再び手摺の上に正立で着地をして]
貴方も似合いませんよ、「皇帝」なんて。
どちらかと言えば「魔術師」じゃないですか?
ねえ、――「焔の支配者」?
[双方の口元に笑みが浮かぶ。
傍から見れば穏やかなソレなのだろうけれど]
[鏡像のようにそれぞれが片手を薙ぎ払う。
軌跡に残る複数の短剣と炎]
[ どぉ ん ]
[背中側の火災現場から響く爆発音。
戦闘開始を告げるのはソレで充分だった]
[放つタイミングは同時。
短剣は炎を切り裂き、炎は短剣を包み溶かした]
[同時に手摺を蹴って肉薄する。
眼前で見開かれる深い藍色に、にこやかな笑みを返して]
残念、checkだ。
[勢いを殺さずに身体ごと突っ込む]
[魔法を得手とする男は腕力の方はからっきしで、体当たりを耐えられる筈もなく無様に吹き飛ばされ床に転がり。
勢い良く振り下ろされた右足に胸部を押さえ込まれた]
「あの時」は遠くから撃って終わらせたから、知らなかった?
[鈍い音が足裏から響く。固い靴裏と肋骨とが擦れる音]
ま、とりあえず。
[握り締められていた男の拳。
開くと同時に強大な炎が膨れ上がるが]
[知っていたかのようにその掌の中央を短剣が貫く]
寝ていてくださいな。
[苦痛に歪む男の眼前に生まれる短剣。
重力以上の速度を持って落下し――]
[ごぃん]
[眉間に直撃した短剣の柄で男はあっさりと気絶した]
…ほんっと、体力ないなあ。
戦法にも変化がないってのもどうかと思うけど。
[男の胸元から足を下ろし、長いマントを引っ繰り返す。
幾つかのポケットの中からカードを引き抜いて]
それじゃ、貰っていきますよ。
[『エンペラー』のカードを手に、朽葉色は楽しげに*笑んだ*]
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