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―市街地北端・空家―
[エルザと別れて半刻ほど。
少女は適当な空家の居間に陣取ると、かばんの中から一番日持ちしない食糧を取り出した。
つまり、握り飯だ]
はー、全力で暴れたから腹減っただよ。
んじゃ、いっただっきまーす!
[緊張感の欠片もない声で言うが早いか、早速魚のフレークの混ぜ込まれた握り飯にかぶりつく。
一つ目を一息に食べ終え、二つ目の包み紙を開いた所で、何かを思い出したように端末を取り出した]
んーと、『遊戯』の敗北者は……
怪我の治療の後、『舞台』から下ろされる……?
んじゃあ、エルザさの怪我もきっともう治ってるだな!
[エルザの無事を確信した様子で笑顔になる。
そして、その続き――即ち、『舞台』から下ろされた者の行方については、結局考えないままであった]
─中央エリア・上空─
……おっと。
[周囲を見回していた『龍眼』が、きょとりと動く。
浮かぶのは、愉しげな笑み]
さて、んじゃ、いってみるとしますかねぇ……。
[ふ、と笑んだ後、漆黒の片翼が大気を打つ]
や、どーも。
……気は、向いていただけまして?
[紅雨のいるビル屋上へと飛来して。
向けたのは、冗談めかした口調の問いかけ]
─中央ビル一階・モニタールーム─
[一階に下りて真っ直ぐ向かうはモニタールーム。先の戦いの様子を見物するためだ。どちらが勝ち得たのかは既に知っている]
見かけに寄らず、と言うのは誰にでも当てはまる言葉ですわね、やはり。
[おそらくは、今回の参加者で一番侮られて見られるであろう少女が勝ち残った。外見だけでは計り知れないと言う証明になっている。該当する映像を検索し、携帯端末へと移すと部屋の外へ]
残りは8人……。
次は誰が落ちるのかしら。
[それを見物するためか、蹴落とすためか。ヒールとアンクレットの音は外へと向かって行った]
─北部・樹の上─
[負けたエルザが去り際にこちらを見たのにきょとりとすると、]
……あらあら、ばれていたかしら。じゃあ……
[そう呟くと、よっと枝の上に立つと]
もう一人にまでばれる前にお暇しましょ♪
[枝を蹴って、その場をあとにした。]
―中央エリア・ビル屋上―
ご機嫌よぅ、鴉はん。
[飛来する鴉。
傘を閉じて振り返ると、袖に散る小花が揺れる]
せやねぇ。
まだ、て言うたらどないします。
[言葉と共に悪戯めいた表情。
身体を傾ければ、四方に張り巡らされた金網が背に当たる]
勿論、冗談ですけど――ねぇ。
―中央エリア・ビル屋上―
[悪戯めいた表情と共に返される言葉。
こてり、と首が傾いだ]
おやま。
それなら、それなりに口説くようかな……と、思ったけど。
[金網の軋む音。常磐緑がす、と細められる]
冗談なら、何より。
……レディを口説くのは、どっちかって言うと、苦手なんでねぇ。
[くすり、と笑いながら相対する位置へと降り立つ。
翼は、開いたまま。
右の手の上を、黒い煌めきが、滑る]
―中央エリア・ビル屋上―
あらあら。
それは惜しいことしましたわぁ。
[黒い煌めきを蒼は映し、傍らの虎に横目を向けて]
男前に口説かれんのも、悪うなかったやろし。
[再び前に向けた顔には笑み、口調は常と変わらず。
無防備に見える娘の横で、虎は姿勢を低くする]
―中央エリア・ビル屋上―
男前と言ってもらえるのは嬉しいけど。
ほんとに、苦手なんだよねぇ、口説くの。
[綴る言葉はどこまでも軽口めいて。
白虎の構える様子を伺いつつ、煌めきを乗せた右手をす、と横へ上げる]
……ま、機会があったら、挑戦させてもらうかも?
もっとも、その前に……。
[途切れる言葉。
右手を握り、手首をくるりと返すと、先には一本だった針は三本に増えていた]
……ここでやる事、やらんとならんけど、なっ!
[言葉と共に、右方向に伸ばされていた手が左へと切り返され、横に払うように右へと振られる。
その動きに合わせ、三本の針が紅雨へ向けて、飛んだ]
―市街地北端・空家―
[2個目の握り飯を食べ終えた所で水分補給し、3個目を手に取った。
思考を巡らすは、先程の戦いの事]
うーん、勝てたっちゃ勝てたけど……
同じ戦い方じゃ、まぐれ勝ちしか出来ねえわなあ……。
[モニタールームで見た『会場』の様子をあれこれ思い返しながら、己の陣に相応しい場所を考える]
次は、あっちか、こっちか……さて……。
[狭い『舞台』では考える必要もなかったこと。
思い悩みながらも、何処か心が弾んでわくわくするような気持ちがある。
十分に休息を取れたなら、それと決めた場所に歩き始めようと思った]
─中央部・廃墟─
[上機嫌で廃墟を歩く。その足が向かうのは、つい先ほど戦端が開かれた闘いの場。
昨日の『今』は期待外れに終わった組み合わせが、『今』行なわれている。]
ふんふんふふーん♪
─中央エリア・通路─
[携帯端末の映像を眺めながらの移動。『遊戯』に残っている者の手の内を垣間見れたのは、これで二人]
あの大槌も厄介ですけれど、土を繰る力も厄介ですわね。
力押しされると少々辛いかも知れませんわ…。
メインが飛び道具ですものねぇ、今回は。
[顔の横に落ちて来た髪を手で掻き上げる。動きに合わせてブレスレットがシャラリと鳴った。粗方観終えると携帯端末を仕舞う]
……もし戦うことになったらその時はその時ですわね。
あまり考えても仕方ありませんわ。
わたくしは勝つことが目的では無いのですもの。
[クスリと、口許の朱が弧を描く。一度周囲を見遣ると、喧騒を求めて彷徨い始めた]
―中央エリア・ビル屋上―
ほな、次に期待しますわ。
受けるかどうかは、これ次第ですけどなぁ。
[落ち着いた所作で和傘を開き、目の前に翳す。
くるりと回転する傘は盾となり、飛来する針を弾くか]
ほんなら、お手並み拝見と行きましょか。
[入れ違うように虎が跳躍し、鴉の真正面から飛び掛かった]
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