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うん、そしてこうやって……。
[薄紅と少年を交互に見。]
なんとなく、ね。
長いこと、かぁ……。
だから、なのかな?
変化自体は、悪いことじゃないんだけどね。
変化しなければ、澱んでゆくのみで。
ただ、急激な変化は……激流となって、弱いモノを呑み込んでしまうから。
そうならなければいいんだけど……。
ーKirschbaum・店内ー
[ハインリヒに向かって首を振る]
いいえ、脅してなどおりませんよ。
主の御心に誓って、心から心配しているだけです。
[真顔]
[ベアトリーチェは気付くはずもないが、彼女は気付いている。
この地に多様な属性の者が集っている事を。
それが、予感を覚えさせたのだから。
目の前にあるのは、流水の精霊と、翠樹の魔族だろう。
それに、あの猫は通常の生物ではなく、彼の使い魔であることも。
本来は彼女が彼を監視するつもりであるのに、実際には、自由に動けない彼女を監視しているのは彼の方なのだろう。いいや、彼女だけではないに相違ない]
コーヒー?
[彼女はまだそれを飲んだことが無かった。
とりあえず危険な飲み物らしいと認識することにした]
それなら良かった。
気をつけないと危険がいっぱいね。
[にっこりと微笑み返す。
それから桜の樹を見上げてその幹に手を触れた]
本当に綺麗。綺麗で優しい。
[桜の樹はここの空気と同じように安定した気を放っていて。
若干疲れていた彼女にも気持ちが良かった]
[挨拶を終えて、再び落ちてゆく桜の花びらを追っていると、木の根もとに居る黒猫と眼が合いました。その姿は今にも闇に溶け込んでしまいそうで、ベアトリーチェの金いろの髪とはまるで対照的です。]
[ぺこりと頭を下げた金色の天の人の子に、苗床は微笑む。]
桜、好き?
[それから水の精の言の葉に、頷いて]
こうやって。ただただ、すごしていられれば。
話をしながら、すごしていられればいいね。
この桜が僕を好いてくれているのなら、それだと思うよ。
ずっとずっと、綺麗に咲いていてくれるようにって、祈っていたんだ。
[そして変化に対しては、少し顔を曇らせて]
僕もきっと飲み込まれてしまうよ。……ううん、違うか。僕は飲み込まれるのではないね。
僕はたとえ。仮令、変化が必要だとしても……それがおきては欲しくないんだ。
今のままに変わらず。そうでなければ……
[ふと口をつぐみ、それから子どものように、子どもらしく笑う。]
桜が見れなくなってしまいたくないしね。
[雷撃の力を持つ人間と話しながら、その手を胸のロザリオに添える。聖別され、毎日のミサで天聖の力を帯びた銀の奥に、沈む様に埋められた水晶の珠。最初は透明だったその石は、今は虹のように…いや虹以上に多彩な輝きを見せている。無論誰の目にもその輝きは写りはしないのだが]
[春の陽気に誘われたように、店内の隅のソファーで、うつらうつらとうたた寝したまま…この時間。ぬいぐるみのような物を抱いたままの寝顔は、普段よりずっと幼く見えたかもしれない。]
……まあ、体質に合わない、なんていうのは、珍しいんだと思われますが。
[微笑みに、返すのは苦笑]
……この場所は、とてもいい均衡がとれていますからね。
全てが、自然な在り方を保てている。
[その理由が何かは言うまでもなく、それ故に寛げるのは、否定すべくもないのだが]
笑うなよ、神父サマ。
こっちは真剣なんだ。
[ようやく、解けている部分を全部食べきった。
口の周りをペーパーナフキンで拭き取る。]
……なあ、神父サマ。
最近、冒険者やら旅人やらの入りが多過ぎると思わねえか?
[先程までとは違い、真剣な表情で。]
桜だけではないよ。
ベアトリーチェは、世界が好きだよ。
だって、ベアトリーチェは、この世界にあるのだから。
[眼は猫に向けたままですが、ベアトリーチェはそう答えます。なんでもないことのように、当たり前のことのように、答えます。]
変わるのも、変わらないのも、ベアトリーチェにはよくわからない。
でも、ベアトリーチェは、ベアトリーチェの思うままにしようと思うよ。
[それから、二人の会話を聞きながら、独り言のように云うのでした。]
――だって、ベアトリーチェは、この世界に生きているのだから。
ーKirschbaum・店内ー
[ハインリヒの真剣な声に、胸のロザリオに触れていた手を降ろして向き直る]
そう、随分と色々な方が、町にやって来ていますね。
噂によると、皆さん「鍵の書」と呼ばれるものをお探しだそうですが。
何れはするという事でしょうに。
[溜息混じりの声を紡ぐ。
ベアトリーチェの思うがままにさせたいから、彼女は自由に動けない。
少女はそれを知らないし、知らせるつもりもない。
今、こうして少女を生かしているのは、彼女の我儘なのだから]
―Kirschbaum・店内―
[ハインリヒとクレメンスのやりとりを見ながらくすくす笑う]
それでもオジサマは甘いもの食べるから、
これは年期の入った甘党だね。
そういや僕も最近旅人や冒険者の人が多いなと思ってたよ。特にここ1ヶ月は桜の季節じゃないのに。
まあ、客が増えると言うことは儲かるからめでたいことなんだけど。
[...は笑いながらコーヒーをつぐ]
[聖なる人の子の言の葉に、目をそちらにむけると
苗床は黒猫を目にして、苦笑する。]
君は、この世界がすきなんだね。
僕も、すきだよ。
[左の手で、そっと、ネックレスの小瓶に触れる]
とても好きだから、ずっと変わらずにいてほしいと思うんだ。
ああ、知ってる。
俺も朝頃叩き起こされてよ。
「『鍵の書』探しを手伝ってくれ」と抜かしやがった。
……で、俺は事務所を閉めてこっちに逃げ込んだってわけよ。
あんな胡散臭い連中の依頼を受けるくらいなら、猫探しやってた方がマシだっての。
[ぶつぶつ。]
珍しいの?
[苦笑が返されればきょとんとして。
中に戻ったらチャレンジしてみようとこっそり誓った]
そう、だからここにいるとホッとする。
外は変化が楽しいけれど、全部見てると疲れるから。
[本当はもっと街を見て色々と知りたいのだが。
もてあまし気味になってしまっているのが悔しかった]
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