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あ、こんばんは
[両手にどうやってもとうか、四苦八苦していたら、
声をかけられて、子供はぺこり、頭を下げる。]
あ、一本どうぞです。
[おすそ分け決定は、やっぱり、大変だからだろうか。]
[食後の一時。
彼はソファに身を沈め、甘い花の香りがする紅茶を口にする。
身体の中から、ゆっくりと温まっていくような気がした。
フィリーネは大事をとって私室で休んでいるし、イザベラはそんな母の話し相手になっているから、其処にいるのは彼ひとりだった。
屋敷に居る時には誰かしら傍にいたから、それもまた、珍しい事]
[サイドテーブルにカップを置いて頬杖を突き、視線を移す。
カーテンを開いた窓の向こう、柔らかなひかりが注ぐ。
聞こえて来るのは、流れる水音と、微かな旋律]
[声をかけたら、苺チョコを渡されてしまった]
あ、ありがとう。でもいいの?
[こんなに沢山買ったのだから、よっぽど好物なのだろうと思ったので、少女は少し心配そうに問い返す]
[こくこくといっぱい、子供はうなずく。]
僕、みんなに上げようと思いました。
だからもらってください。
[でもなんとなく、
最初に苺チョコを食べた人が、
何かの被害にあいそうだと……
思ったり、思わなかったり。]
せめて、どっかに綻びか……でなきゃ、継ぎ目でもあればなあ……。
そこになんでもいいから質量ぶち込む事で、綻びにできるかもしれねーんだけど……。
『……フェーン、それって、かなり無茶な気ー』
いや、確かにそうだけどさ。
前にも一度、やった事なかったっけ?
あの時は……別に作ってあった、時空結界との接点を、強引に広げて、綻び作ったんだよなー。
んで、そこから飛び出して……。
んあ、そっか。それが五年前だっけ。
[すらすらとこんな言葉が出てくる辺り、過去の『逃亡劇』のハードさは伺えるような感もあるが。
にしても、無茶に変わりなし]
そう、それじゃ、遠慮なく頂くわね。ありがとう、ベアトリーチェ。
[少女はもう一度お礼を言って…危ない予感などには気付かずに…ふと思いついて、手にした籠を差し出す]
それじゃこれをお返しに。籠も使ってちょうだいね。
[一本渡された苺チョコの残りは、いかにも女の子の手には余って見える。マフィンが二つ入った小さな籠は、彼女の手にも重くはないだろうと思われた]
……いいんですか?
[驚いた顔で、ミリィに尋ねる。
子供は、それから、嬉しそうにした。
ぺこりと頭を下げた。]
ありがとうございます。
籠もありがとうございます。使います。
[頭を下げた表紙にティアラが落ちそうで、
慌ててもとの位置に頭を動かした子供だった。]
ま、この方法の問題は……。
『問題はー』
……確実に、周り巻き込むって、コトだよなぁ……。
『フェーン……』
なんだよ?
『……今更』
…………。
[沈黙、数分]
……俺のせいじゃねぇや……。
いや、俺のせいだけど。
[なんとも言えない心境に陥りつつ。
取りあえず、はあ、とため息をついた]
どういたしまして。うふふ、そんなに一人でマフィンを食べたら太ってしまうもの。遠慮しないで。
[ぺこりと頭を下げる女の子の仕草が可愛くて、少女の頬に優しい笑みが浮かぶ]
あら、ティアラがずれてしまいそうね?
[女の子の傍に近付いて、大きなポケットからヘアピンを幾つか取り出す]
これで止めておくといいわ。
[にっこり笑って、綺麗な金色の髪に手を伸ばす]
[平穏な時。これも悪くは無い……が、][溜息]
……退屈だ。
[呟くとほぼ同時のタイミングで、旋律が止む。
数秒して、洗い物のかちゃかちゃと言う音が大きくなった。
不思議に思いつ、空になったカップを手に厨房を覗く]
ユーディット?
[声をかけると、少女はやけに慌てた様子で、なんでしょうかと振り向くも]
[一度、瞬き]
……ここは、顔を洗う場所ではないと思うが。
[自分の頬を指差してみせ、泡がついている、と指摘して。飲み終えた白のカップを、台に置く。彼女の顔がやけに赤かったような気がするのは、彼の気の所為だろうか]
少し、出掛けて来る。君は、どうする?
[尋ねれば、少女はこくこくと頷いて。それを確認してから、厨房を後に]
[村から出れない。
そう"聴いて"。物は試しとやってきた村外れ]
せぇ……、のっ…!
[大きく振りかぶって。―――ヒュ、と精一杯雪球を投げれば
それは容易く白い弧を描いて、森の中へと吸い込まれていった。
じ、と暫くその先を見遣って。そうしてふと思い出したように
キョロリと辺りを見回せば、当然の様に
周りには途中で途絶えた自分の足跡しかなく。腰へ手を当てて考え込む]
なんっかなぁ……。
どーも、気がはれねぇってか、何ていうか。
[宛もなくふらふらと通りを歩きつつ、またため息。
ガラじゃない、とは思えども。
解決できない事は重たく意識の一部を捕え、離そうとする様子もなかった]
う〜〜……。
[思わず上がる、唸るような声。それに、相棒が落ち着け、と言わんばかりにてちり、と頬を叩いた]
[――案の定、とも言うべきか。村から離れようとすればするほど
歩幅が縮んでいく…とでも言うのだろうか。
苦労して進んだかと思えば、気付けば自分の足跡を再び辿っている様な有様で。
…どれだけ足掻こうとも、村より外に出れそうにはなかった。]
["聴いた"言葉の通りなら。そう思ってひたすら投げ続けた雪球。
―――あの言葉が嘘なら、多分「グー」で一発という所なのだが。]
あー…本当だー…。
……39個も投げたのに、1個も戻ってこないなぁ…。
[…結構、試していたらしい。
嘆息を漏らせば、チラリと向ける視線は自分の胸元]
―――面白いことは好きだけど…、ねっ!
[よ、と片足を軸に半回転して。
くるりと踵を返せば、村へと道のりを辿る。]
[ミリィの手が頭に伸びる。
子供はきょとんとした顔で、それを受ける。]
ええと、あの、ありがとうです。
[慌てて、にこっと頬笑みを浮かべた。
それから子供は籠の中のマフィンを見る。]
ミリィさんが、作ったのですか?
[淡茶のオーバーコートを身に纏い、革の手袋に、革のブーツ。
侍女を伴い、扉を開ける。夜の風が、彼の頬を撫ぜた]
[外の空気は冷たく、吐く息は白かったけれども、相変わらず村は賑やかで、人の活気と色とりどりの光に包まれていて、寒いと感じる間も無さそうだった。
出掛けると言っても、特に宛てがある訳でもなく。満天の星の下、歩みを進める]
[ティアラをヘアピンで止めながら、少女は問いかけに、小さく肩を竦めた]
いいえ、屋台で買ったの。私がマフィンやケーキを作ると、なぜか、必ず爆発してしまうから、危なくて、他所のお家では作れないのよねえ。
[どうしてかしら?と、心底不思議そうに首を傾げた]
……そう言えば、そうだった…
[村の入り口で箒をもって、青年はうんざりする。]
[昨日は大判焼きの甘さにすっかり心を奪われていたが
青年は相変らず村の外から先にでることが出来なくて
そして、やっぱり考えても答えなんてでなくって。]
……まさか、本当に妖精の仕業だったりな…
[青年はそう呟きながら、はなからそのことを信じていない表情で]
[まだ、小さい頃の影響が残ってるのかな]
[そう思いながら朝の掃除を終りにし、
他の村の人々と一緒に村の中心へ戻っていった]
―早朝:村の入り口→村―
[小さな花は、ミリィの手の下で揺れている。
子供はじっとおとなしくしながら、話を聞く。
なんだかおかしな話を聞いた気がするが、
そういうこともあるんだなと、思っておいた。]
爆発してしまったら、怪我をしてしまいます……
怪我、しなかったですか?
[心配そうに尋ねるが、しかし、
台所の心配は、実感が無いのでできないようだ。]
はい、出来上がり。
[明るく言って、少女は、手触りのいい柔らかい金髪を撫でる。続く問いには、少し遠い目をして応じた]
そうねえ、怪我はしないけれど、オーブンが焦げ焦げになって、エプロンが生地でべたべたになっちゃうことが多いわ。おじいちゃんのところで挑戦した時は、おじいちゃんのヒゲが、ちょっと焦げてしまったし。
[怪我をしなかったのは、多分、ただの運だろう]
[何か、自分にとって不思議なことがあると
それは、きっと妖精のせいに違いない…と思っていた小さい頃。]
[むしろ、そう思い込みたかった小さい頃。]
[そんな、幼年期の自分を思い出し
青年は、小さく苦笑する。]
「おーい、アーベル!そっち準備終ったか?」
[考え事をしている時、
祭りを取りしきる実行委員の人に声をかけられ
青年は現実に引き戻される。]
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