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無駄にしたら、きっと、マテウスさんが怖いと思います。
[皿は一つ犠牲になったものの、緊張は少し解れた。
怯むエーリッヒを見て、口元に笑みが象られるくらいには。
逃げ出す……もとい、掃除道具を取りに行くエーリッヒと、広間へ戻るナターリエを交互に見送る。彼女の言葉には、はい、と答えを返して]
うそ。
大丈夫になんて見えない。
[途切れ途切れの声。
反駁するも、余計な体力を使わせるよりはと考えたか]
分かりました。
誰にも伝えません。
だから、きちんと休んで下さい。
必要なら、食事も運びますし。
[いっそ、有無を言わせぬ態度]
[戻る前に、大きな欠片くらいはと拾おうとして、指先に痛みが走る。
案の定、切ったらしい。
滲んだ赤が、白を染めた]
…あーあ。早速。
[嘆息。
間もなく戻ってくる気配がして、立ち上がった]
[ゼルギウスの言葉に同意するように]
もっぱら同じような意見だな。
それに突然人狼という化け物がこの中にいますとかぴんとこないのが一番の理由だ。
親しいやつや、前から知ってるやつはもちろんのこと、
エーファは確かに不思議な感じがするし現場にいたとか気になる点もおおいが、熱に倒れる女の子の…化け物ね…、
ベアトリーチェも同じく化け物ですとかみえねぇし。
アーベル……
[その名を呟いて人物像と印象を思い出しながら]
化け物ねぇ……。
[肩をすくめて]
やっぱ、ぴんとこないな。
人の皮をかぶったとか比喩でいうがなぁ…。
覚悟か…、
[じっとゼルギウスを見返して]
俺は生きるために人の命を糧にしてきたんだぜ?
[その言葉が意味すること、
それが必要ならば殺すこともまたいとわないこと]
もっとも、ゲルダや親しい人たちが相手ならば…、
[考え込むようにしてから顔をしかめて]
実際になってみないとわからないな。
思うところは同じか。
[信じたくないと言うマテウスに小さく笑みが零れた]
人狼が居ると言う証拠がない限りは、俺は信じるつもりは無いけどね。
あの事件だって、どこに野生の獣じゃないって証拠がある?
降り積もった雪に獣とは違う足跡でもあった、ってなら少しは信じられそうではあるけど。
そんな話も聞かないからね。
[憂いを帯びるマテウスとは対照的に、ゼルギウスはいつもの様子で肩を竦める]
[厨房から戻って来たナターリエに気付くと、「お帰り」と声をかけて]
そっちで何か大きな落としたけど大丈夫だった?
[ゼルギウスに応えて程なくして配膳された食事に表情を崩してぐてぇっと机につっぷして]
おにいちゃんもう、おなかぺこぺこでうごけない。
たべさせてなたりーちゃん。
[冗談めかすようにそういってナタリーのほうをじーっと見た]
本当に、大したもんじゃ、ない……ただの……。
[言いかけた言葉は、とっさに飲み込んで]
……持病みたいな、もんだ。
[取ってつけたように、言い換えた]
……すまない。
とはいえ、すぐに、落ち着くから、大丈夫だ。
あと、食事くらいは、ちゃんと食べに行く。
別に、身体がどうこう、という訳でもない、から。
[有無を言わせぬ態度に、一つ息を吐く。
とはいえ、反論する余力もないのは事実で。
持病という表現と、最後の部分の矛盾には気づかぬまま、早口にこう言い募った]
[途中、階段の前で向かわなかった部屋の方を見る。
不協和音は厨房の奥にいて届かなかった。だから少し足を止めただけですぐに戻っていったのだ]
取ってきたよ、って、こら。
手切ったのか?
ゼルに頼んで薬つけてもらってくるといい。
[視線が行きやすい白に滲む紅にはすぐ気付き]
自分でやったことは自分で片付けるから。
おーい、ゼル!傷薬出してやって。
[ウェンデルの背中を押しながら、広間へと声を投げた。
原因が自分だという思いもあったらしく、少し強めに]
[机にはつっぷしたままで]
まぁ、なんだ。
逆にいえば獣がやったにしかれ、人の偽装にしかれ、
それを示す証拠もないってのもあるのかもな。
なにかはっきりすることがあればいいのかもしれないが。
[声の調子を落として]
それがろくでもないことを伴ってとかじゃなければな…。
お伽噺の人狼とするなら。
普段は人と変わらぬ身、けれどその身は人と狼の中間の姿を取ることが出来るとされる。
見た目に寄らず、ってのがあるから自衛団の連中も外見関係なく集めたんだろう。
ピンと来ないってのには同意だ。
化けてるのを見破れるほど鋭くは無いしね、俺は。
[覚悟についての返答を聞くと]
[最初は真面目な顔をしていたが、直ぐに苦笑に似た笑みを浮かべる]
…そうだな、お前は傭兵だった。
聞くだけ無駄だったよ。
親しい人でも容赦なくって出来るなら…それもどうかと思うしね。
[やはりぐってりしたまま]
俺可愛い女の子が化け物になるなんてやだぜ。
どうせならほら、ナタリーみたいな美人が夜は…とかな。
[冗談めかしてけらけらと笑う姿はおじさんとか言われてもしかたのない話の内容と姿だったりとか]
ろくでも無いことを伴っての、ねぇ…。
あー、止め止め。
そう言う風に考えるとそっちにしか働かなくなる。
プラス思考で行こうぜ。
[暗くなりそうになる雰囲気を払拭させるように声を明るいものへと変え]
[話題の転換を図ろうとする]
[そんな折にエーリッヒの声が広間に響き]
[そちらへと意識を向けた]
傷薬って何やったんだよ。
おかえりなさ……、いえ、
大したことありませんから大丈夫で、
ああぁ。
[止める前に叫ばれた。さっきの今ともあれば気は重く]
いや、大丈夫です!
[言うなり、身を翻して厨房から廊下へ逃亡]
―広間―
[戻った頃には二人の会話が丁度一区切りついていたようで。会話の内容は耳には入らなかった。
ゼルギウスには小さく、頷いて。]
ああ、大したことじゃない。
エーリッヒが皿を割っただけだ。
怪我はないと思う。
[ウェンデルが怪我をしたのは見れていなかったので、そう答えたが。自分の手に痛みのない浅い切り傷が残っていた事にも、気づいていなかった。
そのまま、マテウスと、エーリッヒの分の食事を盆からテーブルに移していたが。]
子供じゃないんだから、自力で、食えっ。
[びし、と手の平をマテウスの額に当て、ぐいと上に弾いた。
その際、指に残っていた血がマテウスの額に移り、ようやく指を怪我した事に気づいたり。]
[席から立ち上がってソファーに向かおうとして]
マテウス、エロ親父の発想だよそれ。
[マテウスの言葉を聞いてしっかり突っ込んだ]
[じい、と翠玉の眼差しが、ライヒアルトを見つめる。
髪を梳こうとするように右手をライヒアルトの頭へ伸ばし]
…早く痛いものが消えますように。
[乏しい表情のまま呟く]
持病と突発の病気なら…持病の方が、今は対処しやすそうですけど。
誰にも教えない、わけですし。
[暗黙に矛盾を知らせるも、抑揚の欠けた口調は感情を読み取らせにくい]
イヴァンも、薬師様も具合は良くなかったようだし。
ウェンデルも怪我と言っていたし。
[つきかけた溜息を、飲み込んで、頭を振る]
それもそうだな。
[ゼルギウスに同意するように]
皆暗くなりそうならうちらが明るくいってみんな元気づけてやるとかな。
[先ほどのウェンデルの様子などが脳裏によぎり]
皆というか一部はとくにぴりぴりした雰囲気感じるしな。
[と厨房のほうからかかる声にナターリエの方に視線むけて]
厨房は戦場とはたまに比喩されるがひと悶着やったのか?
…ああ、”また”なんね。
[エーリッヒ=物を壊す、と言う認識は根付いている模様]
[ナターリエの返答に小さな苦笑を漏らして]
[ソファー横に置いた薬箱を拾い上げた]
んじゃ怪我したのって……。
あ? ウェン君?
[焦るような声が聞こえて再び視線は厨房へと続く扉の方へ]
[そこにウェンデルの姿は無かったけれど]
だってモロに滲んできてるじゃないか。
って、おい!
[箒と塵取が手にあっては、掴んで引き止めるにも一拍必要で。その間に対象は廊下へと逃げていってしまった]
…そんなに嫌だったのか、傷薬。
別に沁みるのが嫌だって年齢でもあるまいし。
[微妙にずれたことを呟きつつ、原因となった自分の後始末を優先させた]
…大丈夫になるまで、傍にいます。
言いましたよね。
ライヒアルトさんが倒れると、きっとエーリッヒが悲しむから。
[だから放ってはおけないのだと]
大丈夫に見えたら、あたしは部屋に帰りますし。
[それまでは監視紛いをするつもり*らしい*]
あー、逃げられちゃいましたよ、と。
片付けるの手伝ってくれてたんですが。
[扉から顔を覗かせたゼルギウスに、苦笑い。
指で持つには細かな破片を掃き取る手つきは、恐る恐るに近い。これ以上誰かを怒らせてはいけないという思いの表れ]
そも、怪我か何かしてたのかな。
手にしてた包帯に血が滲んで見えたんだけど。
俺も年かねぇ…。
[ゼルギウスのつっこみに呟き]
痛っ…
[額の痛みとともに血の感触を額に受けて顔をしかめて、少し間をおいて上向き]
怪我してるぞナタリー。
[少し心配そうにそちらを見て立ち上がり指をとって怪我の具合をみて]
深い傷ではなさそうだが、
[厨房のほうを再度みながら]
皿でも割ったか?
ゼルギウス切り傷にきく薬ないか?
[厨房にいるであろうゼルギウスに声をかける]
明るくするために漫才でもするか?
[冗談染みた物言いでマテウスに笑いかける]
ピリピリさせてる筆頭は自衛団長だよな。
発端みたいなもんだし。
他も…人狼の話が出てから何だか様子がおかしいのも居る、か?
人狼の存在を信じてるなら無理もねーだろうけど。
[そうマテウスに返しつつ、意識は厨房の方へ]
デストロイヤーは健在か。
全く、小さな傷でも化膿するかも知れないから治療した方が良いってのに。
ああ、包帯はさっきちょっとね。
頼まれて巻いてやったんだ。
[ウェンデルが逃げたであろう廊下に視線を向けてから]
[エーリッヒの疑問に簡単に答える]
[震える手つきに大丈夫かなーと心配が浮かぶも、口には出して無かったり]
[エーリッヒのずれた感想は知らず、階段を昇り部屋まで逃げ込む。
扉を閉めると、へたり込んだ]
……はぁ。
駄目だな。迷って、ばかりじゃ。
[鮮烈な赤の零れる指先。
白を濡らす色。
*口に含み、別の痛みで紛らわすように、噛んだ*]
切り傷?
そっちも怪我人出たんかい。
[マテウスを振り返りながら薬箱の蓋を開けて]
[塗り薬の小瓶を取り出すと、マテウス目掛けて投げ上げた]
[小瓶は放物線を描いてマテウスの頭上へ]
それ塗って包帯巻いておくと良いよ。
ん?ウェンデルが怪我?
出た後で破片に触ったのかな。
[流石に知らないところだったので意外、といった風で。]
『まだ若い』とかいう台詞が出ないだけ、まだぎりぎり若者の部類でいいのかもな。
瀬戸際近いだろうが。
[真面目な顔でそう言いつつ。
手の事を指摘されると、ああと呟いた。]
浅いから気づかなかった。
血はしっかり出てるのにな。
悪い、少し血をつけた。
[人の事はあまり言えないなと、一人ごちながら。
マテウスの額につけてしまった地を手の甲でぐいと拭った。]
…その呼び方、やめてくれ。
別に好きで壊して回っているわけじゃ。
[ゼルギウスの声に肩を落とした。
それでもちゃんと意識していればできるものなのか、手つきは怪しくてもかなり綺麗に掃き上げられたりもして]
ああ、そうだよな。
後で見かけたら言ってやってくれ。
俺は…まあ原因だし、逆に怒ってまた逃げられそうで。
[簡単な説明には、そうか、と頷いた]
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