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−隠し扉・階段−
[定期的にフラッシュをたいて]
[写真を撮る]
[一瞬の回りの把握のために───]
───リーチェ?
[下のほう]
[聞こえる声]
[耳のいい子だ]
[シャッターの音を拾ったのだろう]
大丈夫
[上から声を一つ落とす]
段差があるから───こっち来ちゃだめだよ。
[警告]
[上へ上へと声は上がっていく]
―三階への階段―
あっ。
[人一人分しか開いていなかった扉。
端に引っ掛かり、カーディガンが少し破けた。扉に切れ端が残る]
…お気に入りなのに。
[溜息をついて、階段を昇り始めた。
上がりきったところで、再び呼吸を整えて]
扉の無い部屋…?
[上がってすぐにあった部屋を覗き込み、瑠璃が見開かれる]
エーリッヒの父親も、厳しかった?
[親の圧力、その重さは「自分」を見失いそうになった。
「自分」という存在ではなく「優秀な星詠み」が彼らの目には映っていたのではないかと――。]
…私も、自信を失う事は多かったわ。
それでも…――自分を大切にしたかったの。
[上に行くなら付いて行くと言われれば]
助かるわ…。
[本当に。と心の中で呟く。]
[はじめて担任を任されたときの、失敗。
自分の言葉で傷つけてしまった子どもの話。
みるみるうちに成長した子どもの話。
頭の回転が早く、ひょうきんでいつも笑わせてくれたこの話。
散々てこずらせてくれた悪戯小僧の話]
[ゲルダの弟の、トビーの話もした]
…………でも。
あそこは貧しい人たちが多くて。
えーせ状態も悪かったですし、調子が悪くてっもすぐには医者にかかれませでしたから、あっというまにメドューサが広がって。
[そこから先は、しばらく口をつぐんだ。
目元が潤むから、手で顔を覆った]
今でも。わたしは、今でも、
自分がどーすれば良かったのか、分からないいでいます。
……うわぁ。
[ドンと置かれた山盛りホットケーキに思わずそんな声が漏れる。
だが、腹が減っているのも事実。]
……いただきます。
[手を合わせるとそう言い、手をつけ始める。
だが使うのは右手のみ。フォークで器用に切り分けていく。]
―6の部屋―
[アーベルがカメラを持って入ってきて、隠し通路に入っていく。]
アーベル?
[ベアトリーチェも気にしているようだ。]
………本当に、無謀な連中が多い。
[ふうっと息をついて立ち上がる。]
−3F・休憩室−
[無表情で演奏する男と流れるピアノの音が其処にあった。
その音は至って平凡で特に感動を呼ぶ音ではなかった]
まぁ、こんなもんですよね。
演奏する為ではなく調律の為に真似事で習っただけですし……。
[それでも演奏するのは嫌いではなかったようだ。
演奏は邪魔が入るまでしばらく続いた]
[階段を上り、二階へ。廊下を歩き、三階への扉へ。]
あれ、なにか引っかかってる。
[青い、毛糸。見覚えがあるような気がして、ライヒアルトとゲルダを振り返った。]
知的探究心───っていってくれ。
[静かな返答]
そっちも騒がしそうだし、独りで行くさ。
[ごゆっくり?]
[からかうように]
大丈夫、なの?
[灯りを持ってるのだろうか、と思いそれ以上は言わずに]
段差? ……階段があるのね。
[声は上へと離れていく]
あのね、蛇が出るかもしれないから、気をつけて。
ダーヴィッドさん、アーベルさんが……。
[アーベルへ声をかけると、ダーヴィッドも立ち上がったようだった]
……ん?
[ナターリエの声に、瞬き一つ。
示されたものは、覚えのある青色]
……まさかとは思うが。
先に、一人で行ったのか、イレーネ……?
[舌打ち一つ。あっちは、見ていた方が良かったか、と。
過ぎったのは後悔]
―― カルメンさん
[彼女の方へと向き直る。
彼女の目を探すように視線がゆっくり上下左右に動いた。
もし、視界の端にその二つの蒼がかすったなら。
そこでゆっくり焦点がそこに結ばれて。
そしてにっこり笑う]
ほんみょお、教えてくれてありがとございました。
あだ名っていっつわってるの、しんどかった でしょう?
[どうして名前を偽ってたのか。
想像はつけども、彼女が自分から言うまで詮索しない]
蛇がいたら、考えるよ。
[少女へと笑って届ける]
[思ったよりも階段は長い]
[本当に隠された通路]
[通るのも、結構大変だ]
[写真を撮る]
[フラッシュ]
[必要であれば、先を塞ぐ茨を絶つ]
[ぶちぶちと、植物の悲鳴が耳に届く]
全くせっかちだ。
[アーベルに向かって…でも、もう、聴いてはいないだろう。]
アーベルだけ一人行かせるわけにもいかないし、アーベルとリーチェ二人行かせるわけにもいかないなら、これしか方法がない。
手はとらせてもらうね。
[リーチェの手を取ると、もう片方には斧を持って、隠し扉の中に入る。]
僕の父は、成果重視の人だったな。
兄さんがね、優秀過ぎたから。
僕には、それが少し負担だった。
[兄は父似だった――そのアイスブルーの眸も。
自分は母似だった――父が見殺したといってもいい母と。
裡の想いとは裏腹に、柔らかな声音で、
ノーラの質問に答える。]
うん。大事にしたいね……。
[微笑んで。ふっと思い出したように彼女の耳元に唇を寄せる。
囁くのは――ダーヴィッドのカルテに書かれた追記のこと。
「ツヴァイさん、年齢のこと気にしすぎでしょ?」
パチリ――ウィンクをつけた。]
−3F・休憩室−
む、なんです!?
[演奏の最中に何か気配を感じたので思わず椅子から飛び上がるように立ち上がった]
こっちです!?
ってなんだ、驚かさないでくださいです。
[向かっていった先に壁と蛇の抜け殻があった。
刀を鞘に入れてままその抜け殻をつつくとあっさりと抜け殻は砕けて消えた]
うーん、危険でデンジャラスです。
この感じだと蛇は一杯な予感がするです。
[先ほど、一瞬だけ感じた気配を思い出す。
気配の主が何処かに隠れてないかと思い休憩室を隅々まで探し始めた]
行きましょう、ライヒ、ゲルダ。
[促して三階の階段を上がった。ピアノの音が聞こえて、やがて途切れた。]
―三階―
[上がってすぐ。そこからピアノの音が聞こえた気がして覗き込む。ユリアンとイレーネがいてほっとした。]
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