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[後ろから覗き込む少女に、静かに、というジェスチャーをしつつ、そっと広間の中に入り。
ネリーと、見知らぬ男性の様子をそっと見守るように。
手当てはされているようだが、男性が相当な傷を負っているのは見て取れた]
[ドアを開け放ち、灯りをつける。
灯りを乱反射させて煌く、様々な形のはがね。]
…悪趣味な。
[柳眉をやや吊り上げて、ポツリと呟く。
装飾的な剣やマスケット銃に始まって、斧、矛、拷問具のようなものに至るまで。
大小さまざまなそれは、少なくとも誰かを傷つける用途の物にしか見えず。
義兄は何のためにこんなものを収集しているのだろう。]
[飲み終わったスピリタスの瓶とホットミルクを入れていたマグカップを片付けて帰る途中、コーネリアスが角の部屋に入るのを見た。]
……ふむ。
[こっそり後をつけ、その後ろから声をかける。]
コーネリアスさん、そんな所で何をなさっているんです?
[いつもの、にこやかな笑顔で問いかけた。]
[メイの後に続いて、そっと広間に滑り込んだ。
ヘンリエッタが想像していた通りの、高価そうな調度の並んだ室内に人影が見えた。
一目で使用人と判る装束の少女と、そのおくに横たわる……男性だろうか?
男性の呼吸が聞こえるくらいに、広間は静かだった。]
誰……?
[そういえば、先ほどの少年が、けが人がとか何か言っていたような気がする。
呼吸を聞く限り、今すぐ命に関わるようなものでは無さそうだが、けが人が出るような何があったのだろうか]
[途中、廊下の先を見やると、ふぃに何処かへと消える人影があった。
一瞬、幽霊かと身構えるも、その後ろに次いで消えていった牧師の姿に、幽霊ではなくコーネリアスさんだろうと気付いて安堵の息を吐く。]
…びっくりした。
あ、いけない、忘れてた。ちゃんと謝らないとなぁ…。
[でも今は、せっかくの温もりが冷めぬ内にと足を急がせて。]
[暫く耳をそばだてていたが、その後の彼に動きは見られない。小さく息をついて、少し離れる。
振り返ると、明るい蒼の髪の少年?と、少女が何時の間にかそこにいた。少女は昨日擦れ違った子とはまた違う。新たな来客だろうか]
…失礼。
気付きませんで。
[居住まいを正し。男性を起こさぬよう、小声で2人に詫びる]
誰……だろうね。
多分、知らない人だけど……。
[ヘンリエッタの呟きに、自分もぽつり、と呟くように]
旅人とか、そういう人が泊まる場所探して訪ねてくるのは珍しい事じゃないけど。
あんなに怪我してるって……。
[ふと過ぎる、不安。
祖母は無事だろうか、と。
元々他者と余り関わらない上に、足を痛めているのだから、何かあったら……と考えてしまい、ふと、表情が陰った]
[ネリーの声に我に返り、浮かんだ陰りはすぐに打ち消して]
ああ。
気にしないで、怪我人さんの方が大事だから。
……一体、何があったの?
[それから、男性の方をちらりと見やって、小声で問いかける]
[背後から声をかけられて、びくりと身を竦ませる。
ただその先を見てしまっただけなのに、なんだかとてもよくないことをしているような気がして。
強張った表情のまま、ゆっくりと振り向く。]
…牧師様、でしたか。
[笑おうとするも、表情はぎこちなく引きつっていたかもしれない。]
−廊下→広間−
[広間では、先程の少女とメイ、そしてネリーが小声でなにやら話している最中だった。
そう言えば、ネリーに聞けばよかったのだと今更ながらに気付く。]
……あの、よかったらどうぞ。
[出来るだけ静かにトレイをテーブルに置き、皆に勧める。
自分もその一つを取って椅子にちょこんと腰掛け、ゆっくりとその甘さを味わった。]
……ああ、それですか。
[部屋の中を一瞥もせずに一言。
『それ』がここにあるのはさも当然、という顔。]
すみませんね、脅かしてしまって。
びっくりしたでしょう?
ええ、それが…
吊り橋の向こう側に倒れていらして。
[メイの言葉には困ったような顔で頬に手を当てながら、やはり小声で説明を始める。見ての通り酷い怪我で、見つけた時には意識を失っていたこと、泊まっている男性陣がここまで彼を運び、手当てをしたことなどを大まかに。
途中入ってきた少年に気付けば、小さく会釈をした]
ん……ありがとね、トビーくん。
[ホットミルクの甘い香りにふ、と表情が緩む]
そういや、朝ご飯食べてから、なんにも食べてないんだった……。
[失敗しっぱい、と呟きつつ。
温かな湯気の立つカップを手に取り、そっと口をつけ]
アーヴァインさんじゃないのね。
[メイの言葉に、少しだけほっとする。
使用人の少女とけが人の方へそっと近付いた。
毛布にくるまれて、体の方ははっきりとは見えなかったが近く迄くると間違いなく男であることが判る。
寄せられた眉と、切れた唇が痛々しかった。
彼はどうやってこの怪我を負ったのだろう?]
そっか……大変だったんだ。
[ネリーの説明に、小さく呟く。
それだけの騒ぎがあったのに全く気づかずにピアノを弾いていたのだから、ある意味凄まじいのだが、それには気づいた様子もなく]
……何が、あったんだろうね?
[誰に問うでなく、小さく疑問の声をもらす]
すみませんね。
担架に使う棒をそこで探していて、鍵をかけ忘れたんですよ。
いやあ、うっかりしてました。
[手には赤錆の浮いた鍵を持ち。微笑はいつものまま。]
[良い香りのするミルクを渡してくれたのが、先ほどの少年だと気づいてヘンリエッタは微笑んだ。]
さっきはありがとう。
[言って、手の中のマグカップに視線を落とした。]
……これも、ありがとう。
[冷えた体にミルクが滲みていくのがわかる。
思わずほう、と息を吐いた。]
ええ、そりゃそうですよ。
開け放しておいたら、怪我の元ですから。
[鍵を持った手をひらひらさせながら]
あ、そろそろそこを閉めたいのですけど。構いません?
[少年の運んできたホットミルクに視線を移す。客人の好意を無駄には出来ない。それに丁度疲れていたのもあって、礼を言って受け取った。甘い味がふわりと広がる。
メイの声には、やはり分からないと首を振る]
随分、怯えていらしたようですけれど…
[苦しげな声が脳裏に蘇る]
[手に取られていくカップに少し安堵しつつ、大人しく皆の話に耳を傾ける。怪我人がいる事に気付いて直に湯を沸かしにいった彼には知りえなかった事が、ネリーの話にはたくさん含まれていたから。]
……そっか…。
[村と館の途中で、こちらを向いて倒れていた、怪我人。
そのことが示す危惧――村で何かあったのでは、と心が騒ぐ。
けれど、夜の山道、ましてやどんな理由であんな酷い怪我を負ったのかもわからない人を見た直後では、村へとは帰れずに。
ただ、静かに、ミルクを甘さを味わって。]
[アーヴァインの好意に甘えて、再び客間へ。
靴を放り出し、ベッドに横たわれば甘く誘う夢魔の囁きに耳を傾けてしまう。]
[そして目覚めれば闇夜。すっかり日が暮れたことに気づき、少女は溜め息を吐く。]
――いい加減そろそろ起きなきゃ…。
[ベッド上、体を起し足の痛みに顔を歪めて。慣れた手つきで傷口を手当する。
再びくたびれた靴を履こうと、床に手を伸ばすと。気付く真新しい差し入れ。]
これ…アーヴァインさん…が?
[首を傾げながらも手に取り新しい履物に足を入れる。まるでサイズを測ったかのようにしっくりと来る履き心地に、少女は顔を綻ばせて]
お礼…言わなきゃ…
[音もなくベッドから降りると、羽根がひらりと舞い落ちるような足取りで、客室のドアを開け廊下へ]
客室→広間へ
[暫くまた、呆然とその物騒な室内を見ていたが、牧師の声に我に返る。]
…えぇ、そうですね。
このようなものが、簡単に手に触れられるところにあるのは良くないとおもいます。
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