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[ナターリエの言葉にマテウスが頷き、二人が先に行くのが視界を掠める]
っと……自分から行くって言ってて、待たせてどうすんだ、俺。
[やべやべ、と独りごち]
……ザフィーアは、感覚が鋭いから。
多少はフォローできるだろ。
俺は、大丈夫。
……マテウスさん一緒で、無茶なんかできねぇよ……痛かったし。
[冗談めかした口調で言って。
見えない傷、との言葉には、微かに苦笑した]
そうですか。
あ、お湯。
鍋はかけてあるから、必要なら使って。
[顔を顰めながらの言葉に、これ以上尋ねてはいけないかなと思い。
薬を用意するというブリジットに声をかけた]
……。
[それから室内を改めて見回して。
エーリッヒに視線が向いたところで暫し停止]
お婆は僕と違って、視えるからねえ……。
[リューディアの疑問を含んだ声に、返す答えは小さい。
もっとも、あれはあれで、不便があるようだけれど]
……リューもいけずだ。
[二人を見比べて、肩をすくめた]
ああ。
あれ、そうだったんだ?
[アーベルの台詞に、殴られた痕が誰によるものか、思い当たる。
……それは痛そうだ。頭突きとどっちが痛いだろう]
それなら、大丈夫かな。
まあ、ありがと。
正直言って、この中で嬢ちゃんが一番働いてると思うがね、俺は。
[出来る事が少ないと言うブリジットに、半ば呆れたように男は言った]
料理も美味かったしな。ゆうべのカレーとかよ。
[けれど、それ以上休めとは言わずに、ただ昨日のカレー騒動を思い出したように、にやりと笑った]
いいえ、気にしないで下さい。
無事で、よかった。
[全く無事ではないが、それでも。][死んでしまった人達よりはずっといいと思いながら。]
[咽たノーラの背を少しさすって落ち着かせて。]
[ミハエルが頷いたのを見て、もう一度台所へと向かう。]
ん、頼むぜ。
[リディににこりと笑いつつ、こちらは、避けられないならぽふり、と頭を撫でて。
呼ばれたカラスは少女の側へと]
んじゃ……行って来る、から。
[小さく呟くように言って、外へ。
先へ行った二人の後を追って行く。
その背に向けて、ばさりと羽ばたく、カラス。
もし、その脚の飾りをよくよく見たならば。
銀の上に煌めいていた藍玉に、小さなヒビがある事に*気がつく事ができるやも*]
[一通り白状し終えて、アーベルを見送ったところで、(ついでに頭突きのことを思い出したせいで)忘れていた後頭部の痛みが蘇る。
最近、痛い思いばかりしている気がした]
あー……っと、冷やしてくる。
[頭を押さえながら、キッチンへと足を向けた]
ああ、そういや、晩飯。
[カレーの話をしたことで思い出したらしく、男は顎の無精髭をさすった]
たまには俺も貢献してみっかね。
[呟くと台所へと向かう]
あ、うん。ありがとう。少し貰うね。
[イレーネに小さく笑み礼を言って。][台所にあった鍋に火をかけ、少しだけお湯にして、当帰を入れ煮立たせる。]
[出来た上水をカップに入れて、ミハエルへと熱いから気をつけてと注意しながら渡し。]
[少女に見張り役が務まるかは甚だ謎だが、そこはアーベルの片割れが何とかしてくれるかも知れない。情けない話ではあるが。]
人工的な・・・・って、じゃあ夜はダメなんじゃないか。
・・・・・視える?
[言葉が不可解に思えて、首を傾げた。]
ベルにぃだって、なんでもわかるわけじゃないでしょうに。
[続く言葉は素っ気無い。]
ふん…。
[壊れそうになる意識に。][頑なな蒼い風に飽きたのか。]
[銀色の声はその声量を戻し。]
だがいずれ、選択の時はくる。
その時貴様等が何を選び取るのか…。
楽しみにしているぞ。
抗い続けるという、貴様の末路を。
[言って銀の意識はするりと消えた。]
…エーリ、さん?
[小さく呼びかけてみる]
あの人と一緒に居た…
…ううん、何でもない、です。
[何かを思い出そうとしながら呟いて。
だがすぐに首を小さく横に振ると、ごめんなさいと言った]
[ブリジットから当帰を受け取ると、しばし表面を見つめた後、一気に煽った。
途端、喉の奥から込み上げてくる苦味に、顔が渋く歪んだ。
それでも暖かな薬は痛みを和らげ、疲れすぎていた体中に心地良い睡眠を約束できる疲労感を称え始めた]
すいません。
薬を飲んで落ち着いた所為か、本当に少し寝ます。コップ、お願いしてもいいですか?
[テーブルに空になったコップを置き、後片付けを誰かにお願いすると、怪我をしたノーラを少し気にしながら、それでも最後まで様子を見たいと言う気持ちの表れか、彼女の近くの椅子に腰を下ろすと、結局着替えないまま*深い睡眠に落ちていった*]
なんでもない。
[背を向けたまま、ひらりと片手を挙げ、リューディアに答える]
わかんないくらいには動けてたんだから、
いいじゃないって話だってばさ。
[知られた以上、屁理屈に過ぎないのだけれど]
[キッチンに入ったところで、珍しい姿があるのを見た。
彼をよく知っているわけでもないから、そう思うのは失礼なのだろうが、厨房に立つ姿がイメージ出来なかったから]
あれ、ハインリヒさん?
いえ、私は…。
だって、あんなに、助けられなくて…それに、それに…
[ハインリヒにふるふる首を振り、否定しかけたら、カレーの事を言われ、少し赤くなって俯いた。]
今度から二種類作ります…。ご飯も普通のに。
[でもきっと、人参は固定で入れられるだろう。][嫌がらせ云々でなく、デフォルトだから。]
[台所は、薬の匂いと怪我人の出入りで、結構混雑していた。男はその合間を縫うようにして、野菜と肉を探し出す]
蕪に、じゃがいも、「人参」、タマネギ、「グリンピース」、に「セロリ」、マッシュルームと、鶏肉か、よし。
[人の好き嫌いなぞ、元より知った事ではないというか、そもそも知らない。ざくざくざくと野菜も肉も大きく切って、水を張った大鍋に放り込んだ]
えーと、香草…と、あったあった。おおちゃんと束にしてあるじゃねえの。
[最後に香草の束を入れ、時々灰汁取りをしながら煮込んで味を整えれば、夜までには大量の*『鶏肉のポトフ』が出来上がるだろう*]
[頭を撫でられて、眼は一瞬閉じられた。]
無茶しないでね。
[釘を刺すように、アーベルの背中に声を掛けた。
側に来た鳥を止まらせようと、腕を差し出しかける。
が、すぐに引っ込めて反対側の腕を差し出した。
左から、右に。]
・・・・て、ちょっと待ってよ。
[見張れ、と命じられた対象が動けば、当然ついて行こうとする。]
[あの時の少年を、そして一緒にいた人を思い出せば。
兄が死んだ時のことも、再び鮮明に思い出してしまうから。
死を望んで微笑んだ兄の姿も]
[見れば、何かを作っているようだった。
大鍋を覗き込むと、……心の中で十字を切った。
そして、辛くないものであることを祈る。
ついて来たリューディアには、見せないようにしながら]
ん?そだけど…
[呼ばれて答えるも、なんでもないとの言葉に首をひねる。
寝違えの方は気がついたら治ってたようです。]
…なんっつーか……なんだろなぁ。
[どっかに引っかかってはいるものの、つっかえたまま出てこないみたいで。]
[マテウスに案内されて付いたそこは、思っていた以上の惨状の跡を残して]
……あぁ、こんなに……
なんて、酷い……
[それだけしか言葉に出来ずに立ち尽くす]
[黙々と遺体を集めるマテウスと、やがて追いついてきたアーベルがそこに加わるのを見つめて]
彼らも、村の一員でありましょうに……。
[ただ、それを見守り、祈る。
どうか、彼らの行く先に光を、と]
[銀の消える気配。
緋色の意識に、はあ、と安堵するような気配が零れるか]
……バカでも、何でも。
嫌なんだ。
[わかってはいる。
自分の決意の滑稽さは。
人の血の、肉の味を知った今、戻れる術などありはしないと。
でも、それでも嫌だった。
流されるように、大事なモノを捨ててしまうのは。
……勿論、彼らから捨てられる可能性もあるけれど。
今の自分は、獣なのだから]
[選ぶ時が来た時、自分がどうするかなど、わからない、けれど。
今は、それは考えずに。
蒼の風は、意識を閉ざす。
そうする事で、しばしの間。
*矛盾の痛みから逃れるために*]
けほ・・・っ、ありがとう。
[背中をさすってくれたブリジットに微笑んでお礼を言う]
本当に、あなたも無理をしちゃだめよ。
[ブリジットがキッチンに向かうと、天を仰ぎ息を一つつく]
[やがてキッチンから戻ってきたミハエルが近くの椅子に腰掛けるのに優しい目を向け]
[彼が眠るのを確かめた後、自分も眠りへと*落ちていく*]
[続けられる作業の間、祈り続ける]
[彼らのために]
[そして、自分たちのために]
……主よ、どうか我らをお守り下さい。
[自分にできる事はそれだけだから]
[やがて立ち上る煙を見送って、鎮魂の歌を]
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