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[本人はやっぱり自覚がないので、そのあたりは流そう]
[そしてなんだか目を細くする彼に、ふと、思いついてピースサインを作ってみた]
[距離は引いてある]
どういう意味ですか、本当に。
子供はね、やせ我慢はしないものですよ?
ユリアン君、見せてごらんなさい?
それとも、そうですねぇ…
ブリジット君に、苦すぎる薬をもらってきましょうか?
[立ち上がり険しい表情のエーリッヒ。
同じように険しい表情で扉の前に立つハインリヒ]
あ、あの…一体何が…?
何かあったのですか?
[胸元のロザリオを握り締める]
[胸騒ぎ]
[そんな言葉では片付かない不安が募って]
ん、んーんーんー…
[人と話す時は口に咥えているものを放し、
口の中のものを呑みこんでからにしましょう。]
…あぁ、いや……なんか嫌な予感がな。
取り越し苦労ならそれに越したことは無いけど。
[窓の外の月はいやに大きく見えて、胸騒ぎと不安を煽る。]
さっき帰ってきたときも、見張り居なかったし…
様子、見てきたほうが良いんかね?
[防寒着に袖を通そうとして、名残惜しそうにカレーをちらり。]
[獣の遠吠えのような声と、誰かの駆け出す背中。
集会所に戻れと告げられて、広間と彼らとに視線を迷わせ]
さすが紳士ね、カッコイー!
[口笛を吹いてちゃかすと、傭兵のあとを追いかける。
どんどんと引き離されても、おいかけるだけだ]
ばか!
一対一じゃ、どんなに強くっても、勝てないのよ!!
待ちなさい!
……くっ!
[立ち止まっているヒマはなかった。
それでは、自分も危険だからと。
走って狼がまけるかどうか、という意識はなかった。
とにかく、走らなければ、と。
……叫び声、咆哮、様々なモノが交差する中を。
とにかく、滅茶苦茶に。
ただ、真っ直ぐ集会場には走れない、とそんな意識だけは抱えつつ]
[目的地は遠吠えが聞こえた方角。
同じことを思ったのは他にもいたらしい。夜の雪を駆けて行く背中を追うようにして追うと
異変はすぐに感じ取れる。己にとっては馴染み深い
血の臭いと嫌な気配。自然と五感が鋭さを帯びて、すっと懐にあるコインを軽く握って]
拘留だけじゃお気に召さないか…ってことか
[己にとっては先を予告するコインの、死神の面に向けて呟き、駆ける]
…え。
何か、声が…?
[静寂が戻ったことによって、微かに届いた遠吠え。
その響きは古い記憶を刺激する]
銀の満月。
狼の遠吠え。
……父様?
[最後は囁くように呟いて。
向かう先に居たはずの人物の姿も意識から外れて。
その扉に手を掛けようとした]
[扉の前に寄りかかるようにして佇んだまま、僅かに笑みを浮かべる]
今は外に出ない方がいいと思うぜ。なんとなく、そんな気がするんだ。
探偵の勘ってやつだな。
予感、ですか?
それは、過去の研究から得た物でもあるのですか?
[様子を、と言うエーリッヒに不安は感じたけれど]
そう…ですね。
どこか、何かおかしい感じはします……。
[手を挙げるのが見えた。
別段、不自然な仕草とも思わなかったから、追求はせずに]
もうすぐ19ですよ。
[続いた言葉には肩を竦める]
だから、手当てはして貰ったんですし、平気ですって。
……なんで、腕の怪我で薬を飲まないといけないんですか。
[付き合っていたら、本当に風邪を引きそうだ。
それに、どこか、嫌な感じがした。彼に対してか、他のものかは、わからない。
くるりと向きを変えて、扉に手をかける]
[みんなが唖然としている。
自分もその一人だった。しかし、ハインリヒが止めているにも関わらず、消えかけていた不安が鎌首を擡げ、それにあわせるように外へと続く扉にふらふらと近づいていき――。
ドアノブに手をかけた]
[伸ばした手は、大きな手に止められた]
…兄様?
だって、父様だけがここにいない。
探しに行かないと…!
[過去の再現。
本当はあの時出ようとしたのは姉だったけれど]
[どこどう走ったのかとか、その間に何があったとか。
覚えていられる明確な意識はどこにもなかった。
ただ、夢中になって、走って、駆けて。
息が切れて、立ち止まって。
目の前にあるモノが一瞬何だかわからなくて]
……あれ?
[ぽかん、と。
本当に惚けた声が、零れ落ちた]
で、でも。
[ハインリヒに遮られ。]
外、誰かいるかも…。
[彼の笑みにも、不安は拭い去れない。]
[だがすぐ隣に居たイレーネの様子が、ハインリヒすらすり抜け外へと出ようとする彼女が、どこか、様子がおかしい気がして。][外へ出ようとする意識は一旦、薄れる。]
ちょっと待ちなさいって…!
ああもう、まったくユリアン君は意地っ張りですね。
[あわてて後を追う]
[奇跡的に何も落とさなかった]
[…それは本当に奇跡なのか]
こら、ユリアン君
[と、廊下に出るとさすがに他の騒ぎもわかる]
[しかし今はどちらが重要か]
…アーベル君や、リディ君に言いつけますよ?
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