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タオルはないが、ハンカチならあるぜ。
[ナターリエの声に、服の内側から出してきたのは、ハンカチサイズの白い布。
でるわでるわ。どんだけ隠しもっていたのかという量が落とされた。
だが、サイズ的にあまり意味が無いような気がしなくもなく。]
[事件の起こった現場に居ない青年には状況はわからず、だがなんとなく察した]
……無理なら、私が行くから。
[何をとは告げずに、ただ慰めるように月闇の竜に心を寄せた。直接の手助けはできないから]
―― 西殿・結界前 ――
俺はエーリッヒ。機鋼竜だよ。はじめまして、ベアトリーチェ。
[にこにこにこ。可愛いなあと表情が語ってます。それからブリジットに向けた顔は真顔に戻って]
へいちゃらとか言う方に限って無茶とか無理とか、平気でするんですから。
[なんだかしみじみ、実感がこもっているのは、青年の経歴を考えると少々奇妙かもしれない]
ユルは…お助けしたがってますけど、もちろん。でも無理しないのが一番ですよ。
[ブリジットの前で空中に停止して羽ばたいた機械竜が、同意するように黄色く瞳を明滅させた]
…、あ。
[新たに増えた人の影に、幼子が小さく声を上げる。
精神の竜であったか――紹介に預かったことは記憶に新しい。
声を上げたという事は、幼竜にも見覚えがあったという事だろう。
…尤も、仔の記憶の中に対する竜の名が刻まれているかは怪しいが。
確かあの場にて、陽光の仔竜とささやかな争いをしていたと記憶している。]
うむうむ、回れ右じゃ。
[こちらへと戻ってくるティルに頷いて。
未だ硬直しているらしいエルザを見ると、そちらへと向かい、広間方向へと背中を押していくことになろうか]
そう、おなまえ。
[言葉を反芻する翠樹の仔に、懐かしさを覚えた。
アウロラの世話役としてだけでなく、他の仔竜を育てた事もあったが。
仔竜と触れ合うこと自体久々で、どうにも穏やかな気持ちになる]
そうだね。閉じ込めちゃったいじわるな人、見つければ出れるね、きっと。
他の竜さんたちも、たくさんがんばってるみたいだから。
もうちょっと、待ってよね。
[穏やかな笑みを向けたところで、小さな瞳がまっすぐと見据えてきて]
さびしく……かあ。
ふふふ。アウロラの方が、さびしがってるかもしれないわねえ。
[何とはなしに、ぽつりと言葉を零した。ほんの少しだけ、困った笑みで]
え、あ、はい。
[狼狽えているのが丸分かりの声で、ザムエルに答える。
ダーヴィッドに押されるまま、その場を離れながら]
失礼を致しました。
オトフリート様と…ナターリエ、様。
[流水の竜の名前が出るのが遅れたのは、直接の会話がまだ無かったためか。それが余計になるとは思わず、平坦な声で二人へと謝罪を残した]
[タオルを渡されることこそ無かったが、ハンカチサイズの布をもらうと適当に吹き、更に色々と隠すものが寄せられ、とりあえず、それを着込んだ。
そして、ノーラの声が聞こえれば]
ほ、ほほほ。
さすがに、このようなおおっぴらな場面ではあまりいたしませんわよ?
[フォローになってるんだか、なってないんだか。
とりあえずは、そう宣言して立ち上がった]
……お手を取ろうかしらぁ?
[そして、振り返り、オトフリートへと手を伸ばしてみた]
はーい。
[場の音声実況があるんで、色々と微妙な訳だが、このままでは動きようもないし、と判断して、ザムエルに素直に頷いた]
んと、とりあえず、広間に行けばいいん?
[同じく押し出されたエルザと並ぶ形になった所で、ようやくピアが頭の上に移動した]
…水、というか…お水……ってのもちょっと違うや…。
[ともかく、棲むところが違う生き物だということだけはよーく理解したようだ。]
[ようやく立ち上がってくれたときには、もうなんだか、ツッコミ疲れがおきていて。
一応着込んだナターリエが、手を差し出してくるのを見た。]
……いえ。
大丈夫ですから。
[また倒れこむことにはなりたくないし、立ち上がれないわけもない。
むしろ濡れていて、服が気持ち悪かった。]
[手を無視して、床に手を着いて立ち上がる。]
ほいよ。
とりあえずモノは渡しておいたし、ナタもすぐ離れるだろうよ。
ちうか。
悪いな色々手遅れだ。
[ほぼタイムラグ無しで背後に感じた気配を押し留めることは無理だった。
どちらが行くかに関しては、自分が行けない以上口を挟まない。]
[ 事故。一目見た現状と、周囲に滴り落ちる水。その言い様はまた、別の誤解を招きそうとも思うが、当の竜はそれどころではないのだろう。
ノーラは頷きを返したものの、如何解釈されたかは定かではない。
流水竜の否定も、酷く曖昧なものであった故に。]
そうですね。
離れてくれましたし…
[何か色々なくした気がする。と、少し考えた。]
ともあれ、ありがとうございます…。
―西殿・結界前―
本当にしみじみ言うのね、もう。
[口元に手を当てながら、困ったようにエーリッヒへと呟く。
どうやら図星だったらしく、赤い手のひらは見えないようにしている。
ちかちかと瞳を黄色く明滅させたユルの頭をそっと撫でやり、]
大丈夫。無理はしません。約束、約束。ね?
[ぽんぽん、とユルの頭を軽く叩いて、エーリッヒに微笑んだ]
[色々てんぱってたせいで上着をかけることはなかったのだが。
白いシャツは水を吸っているし、下のさらしが見えてしまうだろう。
その点だけは、自分がてんぱっていたのが良かったと思ったのだった。]
[エルザから聞こえる言葉には]
あぁ……えーと。
一応、事故ですわよぅ?
[至極真っ当な答えを返した。
オトフリートが自力で立ち上がるのは、なんとなく予想はしてたので、何事も無かったかのように手を引っ込め]
―――そう言えば。
何の御用だったのかしらぁ?
[と、今更過ぎることを聞いてみた]
―西殿/結界前―
えぇ、お邪魔します。
[前後してしまった挨拶を氷破竜に返し、渡された手帳に記された術式をレンズ越しの紺碧が流れるように追っていく。
確実に全て目を通した後、ブリジットに手帳を返し考え込むように目を伏せた]
ありがとうございました。
……随分と複雑な事になっていますね。
[深く静かな息を吐き、そうして仔竜らを心配させぬよう口元に笑みを戻す]
[まぁ男(のフリをしている)のなら別に
と、こういうときだけ都合のいい事を思い口にしかけたが。
ナタは両性両刀だったと。
意味が無いので言うのは止めた。]
エーリッヒ。…きこう?
[ぱちりと幼子の眼が瞬き、真直ぐに相手を見やる。
幼仔とは云え、知識上では父王から聞かされた事ではある。聞覚えはあるだろう。
絶える事無い笑みが不思議か、傾いだ首は更に深くなる。]
はじめまし て。
…エーリッヒはなにか、たのしいこと、あった?
[氷竜殿の前で明滅する黄の光に、驚愕にか小さく肩が上がる。
しかしその表情は、恐れでは無く見慣れぬ不可思議に対するものと言えた。]
やれやれ、何をしておるやら。
[ぽつりと呟いた。誰がどうなっていたかはエルザが名を挙げたために理解出来て。その呟きの対象はもちろん己が懇意にしている者へと向けたもの。尤もそれは心配の念が含まれたものであったが]
うむ、広間であそこの騒ぎが終わるのを待つとしよう。
図書館で得た情報についても耳に入れておいた方が良いじゃろうしの。
尤も儂の推測が大半じゃが。
[ティルに頷きながらそう言葉を返し。ややあって広間へ辿り着くことだろう]
……
[このとき、ナターリエに対して何を思ったかは、オトの心の中だけに秘めておこう。]
食事をどうするか聞こうと思ったんですよ。
中に居たのはあなただけのようでしたから。
水音がきこえていたので……。
[広間に辿り着けば、ぽふ、とソファーの一つに沈んだ。
視覚情報は色々な意味で刺激すぎたらしい]
…ダーヴィッド様に様子をお聞きして。
ああ、ノーラ様にもお伺いしないと。
彼の剣は確か。
[思考が言葉になっている。
そちら側の思考だけだったのはきっと誰にとっても幸い]
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