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[リディの言葉にカチンと来たのか、幾分冷たい声で]
……腕ならともかく。頭切り落として生きてる生物が居たら見てみたいもんだ
目的は、機鋼竜のもとに力を持ったまま送ること。殺すことじゃないんだよ
そこんとこ、お分かり?
[違和感の元。
それは、比較的近い所に感じられた。
つい先ほどまで、いつもと変わらぬ軽口めいた言葉を交わしていた火炎の若竜の周囲、で]
……!? この、力……。
「……ダメ!」
[時空竜と従魔の声が、重なり。
振り返った先、目に入ったのは──火炎の若竜の、数字の羅列への変化。
そして……霧散]
若竜……ダーヴィッド!
[叫びつつ、伸ばした手を掠めたのは、消え行く粒子。
急速に弱まる、火の気配]
……なんで。
[掠れた呟きに重なるように、遠く、深くから響く、音。
それは、軋むよな、機械音にも聞こえるか]
「…………ダメって。言ったのに」
[ぽつり。従魔が小さな呟きをもらしたのは、他者の耳へと届いたか]
< 猫はぽかぽかしていましたけど、あらあら、さすが動物かしら?
ちりちり、毛先がしたような気がしました。 >
?
< ちょっと不安に思ったのですけれど。
なにがなんだか、わからなくて、でもやっぱり黒猫のそばがぽかぽか、ひだまりみたいで気持ちよくって、それを見てはいませんでした。うっとりと、目を閉じていたんです。
火の竜のからだが、よくわからない数字になっていったのも。
それが、さっと、消えてしまったのも。
猫は、見ていなかったのです。
――ただ、オトフリートの声に、そちらを見たとき。
そのときには、すべてが終わっていたんでした。
ちょっと、こわいなって思った人は、でも、そう思ってごめんなさい、って思ったひとは、どこにもいませんでした。 >
―果樹園―
[私は差し出された手に捕まり、緩やかに立ち上がる。
密やかに尻尾を出して払えば、服に付いた土も落ちようか]
……私は…そなたが力の恵みを…無為とは思いませぬ。
そこな双葉を見れば、気が和らぎまする故に…。
私も…何時しか何れお役に立つ時が…来るやもしれませぬの…。
[消えそうな声で呟き、幾度か瞬いて潤む視界を散らす。
未だ足取りは鈍りがちではあれど、促されれば大人しく付いてゆく]
[綺麗な歌声の余韻を。
その波動をかき消すように響いた音]
エルザさんは違うのに!
そんな気配なにもなかったじゃない!!
なんで連れてっちゃうの?
無差別ってどうしてっ!?
[微かに聞こえた声のようなものに向かって叫ぶ。
それは無駄であるだろうとは思っても]
…大丈夫、そんなに焦りなさんな。
世界ってのは、意外と何とかなるように出来てる。
[ナタリェの手をとったのはわずかに翠樹の気配が潜んだ手。
幾種類にも幾重にも腕に連なる輪はさらさらと澄んだ音を立てただろう。
ちょうど、ナタリェが立ち上がるのと、闇の竜の気配が消えたのは、同じような頃合で。
わずかに、表情が凍ったようにも見えたかもしれない。
葡萄酒色の瞳はわずかにうつむき、翳り]
…何が、どうなってんだ。
[かすかに呟いて顔を上げる。いつもどおり]
[目の前で、膝をついた青年。そこに意識が向かう前に、時空竜の声が届く]
ダーヴ殿?
[闇の中飛び交う雷光が、一瞬、屋敷の真上に集まって…霧散]
[かくりとバランスを崩すアーベルに気づくと]
ちょ、危なっ。
[そう言って、咄嗟に倒れるアーベルの懐に身を潜らせて支える。
しかし、咄嗟のことでこちらの体勢も崩れており]
ふぎゅっ。
[こっちもこけて、下敷き。]
[マテウスの方へと振り向き]
火の気配が唐突に消えたものですから。
広間を見直してみましたけど、やっぱりいませんね。
これも機鋼竜のしわざ・・・・?
――炎竜?
[部屋の中から、オトフリートの声が聞えて。
少し驚いていると同時に、強い炎の「声」が消えて、きょとんと瞬く。
まるで、そこから突然居なくなったみたいに。前にも、似たような――]
[呆然としていた従魔が、服の裾を引くのに、我に返り。
その傍らに膝を突き、ぽむぽむ、と背を叩きつつ支えてやる]
……機鋼竜……か。
[ぽつり。零れた言葉は、やや唐突だろうか]
……こんなところまで、再現してみせるこたねえだろう……くそったれ!
[低く、らしからぬ悪態が、その唇から漏れたのを聞いたものはあったかどうか]
―屋敷二階・個室―
[階下からの喧噪と、ややあって悲鳴。
それがブリジットのものだと気付くまでに少し時間が掛かった]
……。
[窓の外を雷光が掠めて行ったようだった。
欠伸をして、目を擦る]
[ユーディットの言葉、マテウスの問い。それを聞いて彼女に視線を向け。途端に聞こえたのはオトフリートと幼き従魔の声の重なり。異変を感じ視線を向けると、見えたのは数字の羅列の最後の一欠けが消える様。そこに居たのは大食らいの赤髪の青年ではなかったか]
んな…。
何が、起きた?
[彼の青年の姿は既にそこには無い。地の底から響く何かの音。それは声か機械音か。従魔の呟きは風がしっかりと傍へと運び]
…原因、もしかして分かってんのか?
< ねえ、ところで。
何なのかしら。
あのこえは。ううん、声じゃないのかもしれません。
白の猫は、黒の猫を見ました。不安そうな、なきごえでした。
――ねえ、なんなんでしょう。
ひびいているんです、地下から。なにか、音が。
猫の耳は、しゅんと、たれました。とても怖く、かんじられたのです。 >
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