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[紅い海を見ながら、そっとその場にしゃがむ。
自分が人間だったという声も聞こえていたが、
そっと海に沈む彼女に目を伏せた。
それだけ。
それから、カミーラの様子を見て、声を聞いて。]
……おばあさんとカミーラさん。二人が言うことが本当ならば、シャーロットさんは人狼だった。
二人が嘘をついているのなら、人間だった。
そういうことでしょうね。
ミッキー、おまえは確かに人間さ。
あんたが守りたかったのは、シャーロットと、やっぱりネリーだったのかい。
そうか、イストーの子も本当に、狼を見分ける耳を授かってたのか。
ただその力が強すぎたのか、それとも狼たちが、あまりに身近な者だったからか。
なんとも奇遇なお話だったねえ……
[戻ってくるリックとローズマリーを見て、ほう、とため息をついた。
安堵している自分が、たまらなく嫌だった]
中に入っちゃだめだ。
[二人に言うけれど、声は力ない]
……昨日と同じなら、大丈夫でしょうけど。
[感情を抑える。微笑が浮かぶ。
ただ、濃茶の瞳が、よりいっそう、暗くなる。]
サーカスに戻りますね。
[軽く、頭を下げた。
恐らく、明日の分も、デボラは書き記しておくだろう。
本当に見分ける力があるのだとしても、嘘をついているのだとしても。
戻ってきた二人と、入れ違いになるように外へ。
自警団の人に襲撃されたと伝え、*集会所を出た*]
ミッキー、あ、ありがと・・・。
デボラさん、ミッキーが確かに人間ってどういうこと?
ミッキーは狼の正体を知って協力するものだと?
[毛布のふくらみをじっと見つめたまま。。。顔をあげようとしない]
[カミーラの声を聞きとがめる。たどたどしいが、英語だ]
狼…?
シャーロットを、あんたは人狼だと。そう言うんだな?
[心のどこかで、やはり、と思っていた]
[目の前でユージーンがイザベラに毛布を掛けるのが目に入る。デボラの流れる様な諭す様な語り部独特の声と、ハーヴェイの(ミッキーが人間だと告げた)やはりキャロルには表情が乏しいと思える淡々とした声が、耳を流れて行く。]
…………。
[毛布を掛けられたイザベラに近付いて、無言で傍にしゃがみ込んだ。]
ネリーは、嘘をついていなかった……。
[シャーロットがいなくなって判明した事実。安堵の心持は確かなものであったが、それでも手放しでは喜べなかった]
ネリー……。風邪、ひくなよ。
[ネリーに昨日借りたコートを手渡すと、無言のまま*個室へ戻っていった*]
…
イザベラさん。
[少しだけ毛布を捲り、目が開いたままなのを認めると瞼を閉じてやり、毛布の裾で顔の血を拭うと、また毛布を元通りにした。]
[低く呟いた]
もしデボラを信じるなら、あと一人の人狼はネリー。
もしミッキーを信じるなら、人狼とその仲間はデボラとカミーラと、もう一人…。
[オレは、護らなくては。
クラークの分まで。ローズマリーとリックを。
でも、二人は本当に人間なのか…?]
[ぼんやりと頭を上げると、中空をじっと見ている。
視線が、キャロルの前を通り、ミッキー…セシリアと通り過ぎ、そして海の方角へ。]
[イザベラの亡骸に近づく資格が、自分にはないと思った。
襲われたのがリックでなくて、ローズマリーでなくて良かったと一瞬でも考えた。
自分は、ひどい人間だ]
…優しいな…
[ユージーンとキャロルを見て、羨むように呟いた]
ミッキー。こんな話を知っているかい。
むかしむかし、神様のお遣いが国中の勇者を集めて、一人を天の使者として召抱えると告げた。
われもわれもと、みなが声高く名乗りを上げたさ。
集められたのは世のため人のため、立派な行いをした人たちばかり。
雄雄しき戦士、高潔な騎士、心深き賢者……
けれど最後に選ばれたのは、誰より非力で臆病者の少年だった。
英雄たちを羨ましげに眺めるばかりの、小さな小さな少年が。
その子がその場に招かれたのは、ほんとにちっぽけな理由だったのに。
ただ一度、友だちの危機を見捨てられずに、自分が悪者になって小さな嘘をついた。それだけ。
でもね、所詮は神さまから見れば、一人ひとりの人間の強いの弱いのなんて、大した違いじゃなかった。
誰より非力で誰より弱虫だからこそ、小さな勇気を振り絞ることは難しい。
その大きさを、神さまのお遣いは評価したんだ。
……むかしむかしのお話さ。
[先刻のデボラの言葉。
ざらざらした辞書の表紙。]
…先生が生徒を守る様な人だったから?
それとも、カミーラと言葉を交そうとしていたから…。
わかんないわ。
カミーラさんと話をしようとしたから…ですか?
[それもしっくり来ないように感じたけれど。
カミーラの呟きが聞こえてくる。]
笑っていた?
[死を悲しむ人々の中に入れずにいる。居たたまれない]
…また、上の部屋使わせてもらう。
用があったら呼んでくれ。
[逃げるように二階へあがる。
窓から見える嘆き島を見つめて低く呟いた]
キリエ エレイソン(神よ哀れみたまえ)…
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