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人狼は二人。
まだ…よそ者以外にも村にいる。
[腰布に斧を差して大男はのそりと動きます。]
……その前に、何か食わないとな。
いざという時に動けない。
[木こりが何を思ったかは木こり以外には分かりません。
ぼそり呟く抑揚が乏しいのも、いつものことです。]
……アルベリヒにでもチーズ分けてもらえばいいさ。
[踏み出した足は、村外れの小さな牧場へと向かいます。]
[めぇめぇ、めぇめぇ、遠く羊が鳴いています。
牧草の空に浮かぶもこもこの雲は、朝焼け色に見えました。
パジャマ姿の少女が駆けてきます。
その手に持つランタンは不思議な色に揺れています。]
アナ、どうした。
何があった。
[木こりの問いと少女の訴え、どちらが先だったでしょう。
いえ、どちらが先でもいいのです。
アナの言う話をドミニクは黙って聞きました。
ぐっと偏屈な口が歪みます。]
アルベリヒが………、やられたのか。
[人狼か、それとも人間の仕業か。
確かめようと毛皮を染めた羊たちの方へ踏み出します。
それから、背を向けた形になったアナに言うのです。]
もう一人。旅人さんならオイラがやった。
頭落とせば、人に化ける狼も生き帰りゃしねえだろ。
[表情は見えなくても、渋い声が物語っていました。**]
旅人さん。
ルイさん?
〔手に提げたランタンの灯と、おおきなドミニクの背中。その間で行ったり来たりを繰り返すのは、アナの視線。〕
でも、木こりさん。
あのひとは、人間よ。
きれいな色を、しているもの。
そう思うでしょう、フリー?
〔めぇ。
アナを追ってきたんだろう、ちいさな羊が一匹、いつの間にかそばまでやってきてた。〕
木こりさん。
ルイさんのからだ、どこですか?
〔答えがあってもなくっても、双子の一匹をおともにしたアナは、ふわりとパジャマの裾を翻して、道の先、村のほうへと行ってしまう。
てんてんと、残るひづめの跡はあかい。
パンよりよほど、目印になりそうだ。**〕
[アナが心配で牧場に向かったゼルマは、ドロテアと行き会いました。ルイさんを見ていない? と尋ねようとして同じ問いをドロテアから返され何かを悟るのでした。]
いいえ、夕べから御戻りではないのよ。それで、探しているの。
[ゼルマはドロテア様子が違うことと、籠の花が黒いことに気づきました。]
あら、その花の色?
[ドロテアは気にしないで下さい、とだけ答えるばかりでした。]
……この、花の、事は。
……理由を、確かめたら、お話しますわ。
[花の事を気にするゼルマに、小さな声で言いました。
蛍が嘘をつかないのは知っていますけど。
いえ、知っているから。
皆を気遣うゼルマには、言い難かったのです。]
それでは、わたくし、参りますね。
[だから、それ以上は言わずに丁寧なお辞儀を一つして、歩き出しました。]
――翌朝・宿のロビー――
[次の日、おじいさんはちょっぴり寝過してしまったようでした。
隣に寝ていたはずのゼルマの姿はもうありません。
代わりに書置きと、朝食の良い香りが残されていたのでした。
それは少なくとも、狼にさらわれたのではないという意味でしょう]
おお、牧師どのの所に行ったのか。
ふむ、ゼルマばあさんもこの事件について、何か思う所があったのかのう。
[そうすると、おじいさんも、のんびりしている訳にはいかないような気がしてきたのでした。
並んだ朝ごはんには手をつけないまま、宿の外へと歩き出します]
−−牧場近く−−
[アナの無事を確かめようと牧場に向かったゼルマはアナに行きあいました。]
ああ、無事だったのね。アルベリヒは一緒じゃないの?
[アナの話はゼルマには分かりにくいながらも、ルイがもうこの世にはいないことはどうにか理解できたのでした]
そう。ドミニクが、ルイさんを。ではアルベリヒは誰が?
[思わずアナに尋ねましたが、子羊がぴったりつき従っていますし、ヴァイスにもおかしな様子は見られません。]
アナ、気をつけてね。私の宿にはベリエスが居たから、なるべくなら教会か宿に行きなさい。私はドミニクと話してみるわ。
[まだ近くに居るかもしれないとゼルマはドミニクを探しに行きました。**]
……理由を確かめたら、もう、お話しする所ではないかも知れませんけれど。
[歩きながら、小さく呟きます。]
でも、ルイさんはどこに……。
ゼルマ様のご様子だと、急に発った、というわけではないようですし……。
[そうなると、考えられる事は限られてしまいます。
寒気がしたような気がして、ふる、と身を震わせました。]
……ううん。
アルベリヒさんにお話ししても、困らせてしまいそう。
わたくしの事から、お伝えしないといけないし。
……やっぱり、直接……お話にいくしかないのかしら。
[呟いて、籠を抱きしめます。
籠の底には、白い布に包まれた何かがひっそりと横たわっていました。]
[別段行く宛てもなかった牧師は
やがて村の広場に到着すると、腰かけます]
こんにちは。
こんにちは。
[声をかけてくる信徒や村人に挨拶を返しながら、
牧師は行き交う人をぼんやりと眺めて*いました*]
ルイは……昨日は結局戻って来なかったんじゃのう。
……何事もなければ良いのじゃが。
[こういう時、余所者が真っ先に疑われることを、おじいさんは知っていました。
村に良くないことが起こるのは、外から来たもののせい。
誰かが早まったことをしなかったか、おじいさんは気がかりです]
[と、その時、おじいさんはどこかへ急ぐドロテアの姿を見付けました。
籠を抱き締めるその姿は、どこかそわそわしているようにも見えました]
おうい、どうしたね。
[おじいさんはドロテアに話し掛けます。けれど無理に引き止めるつもりはないようです]
[呼びかける声に、はっとしてそちらを振り返ります。]
……あ。
御隠居様。
[籠を抱きしめたまま、ぺこり、とお辞儀をしました。]
無事だったようで何よりじゃ。
[まずはそんな言葉を、ドロテアにかけるのです]
おや、珍しい花を持っておるのう。
ホラントの所へでも行くのかのう?
[黒い花を見たおじいさん。目をぱちくりとさせました]
[無事で何より、という言葉に、ほんの少し表情が和らぎました。]
……そう、ですわね。滅多に咲かない花ですわ。
ホラントさんの所ではありませんけれど……もしかしたら、行く事になるかも知れません。
[次の問いかけには、少しだけ曖昧にこう答えます。]
そうかそうか、気を付けてのう。
……ところで、ルイどのは見なかったかのう?
[それはドロテアにとっては二度目の質問になるでしょうか。返ってくるのは同じ答えかもしれません]
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