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ああ、こんなときだから…なんもなかった。なんてことは多分ねーだろうしな
[もう結果的に見ながらも立ってただけの人は無視して図書館のほうへ向かった。
現在図書館から出て行こうとしているなんて知らない]
[2人が図書館に向かう道を、司書を診療所に運ぶ一団が通り過ぎるかも知れない。
探されているとは知らず、聞いた方向へひた走る]
…く、
[時折つまづいたりしながら、歯を食いしばる。
己の体力のなさを呪いながら、それでも止まろうとはしなかった]
[図書館へ向かったところで、誰かを運んでいるのが見えて]
ん?今度は何…ってっ。オトフリート先生?
[運ぶ一団を押しのけて近くで見れば間違いなく。更にそれは最近よくみた症状であって]
まじかよ……ちっ!…でこれどこで?…図書館でミハエルが…か。
そんでミハエルは!?
[一団の一人に詰め寄って聞けば]
エルザ…?おいっ!?エルザがなんなんだよ!言え
[胸倉を掴んで揺すれば、歌っていた。とか。オトフリートと喋っていた。ミハエルが家の場所を聞いて向かった。と言われそれ以上は知らないらしく。一団の他のものに止められる。]
………いくぞ。ユリアン
[一団を見送る暇もなく低く呟く。
何があったかまでは詳しくは知らない…内心どこかで、知りたくないということなのかもしれないが]
エルザの家は知ってる。
[ついて来いというように*駆け出した*]
―綿毛畑―
[立ち入り禁止の紐を跨いで入り、ぺたり座り込んで鞄を開ける。
座り込めば、荒らされたとは言え、まだ大分綿毛の残る畑にに
頭のてっぺんまで、隠れてしまう。
中にモノが入っているのを見て安心すると、ふと、鞄の底に黒い石が連ねられたペンダントを見つける。]
……――
[無言で引き摺りだして、首にかけようとするが
やはり、首の後ろで留め具を着ける事が出来ず、
結局手の中に握りこんだ。]
…何時かしら。いつかしら。
ふふふ、ねぇ…――?
[きゅ、と握った手を鞄の上に置き
綿毛畑の中、小さく歌声が、響いた**]
[そうして図書館へと向かっていた途上。
こちらへと走ってくる一団に足を止める。
だがその一団に運ばれていたのは、探し人の片割れ。]
な!? ……どういうこと、だよ。
[理解が追いつかない。
オトフリートが犯人で、それをミハエルが? いや、ならここにミハエルがいない理由が。
いやむしろ前提が違う? オトフリートは犯人じゃない?
思考は混乱し、]
…………え? エル、ザ……が??
[だからこそ次の言葉でそれが完全にフリーズした。]
[ただただ、出てきた名に呆けていたが、アーベルから掛けられた言葉にハッと我に返り、]
あ、ああ。わかった。
[そう言ってアーベルに続いて駆け出す。
内心は、その結論が間違っていて欲しいと言う願望。
しかし、彼の中の理論の部分はその結論を肯定し、そして残酷にもそれこそが*真実なのであった*。]
[目的の家の前。
よろめき、扉にぶつかるようにして止まった]
…ッは、
[肩で息をしながら、強く扉を叩けど返事はない。
ここにはいないのか、そう思いながら手を掛けて]
開いて、る?
[すんなりと扉は開いた]
…え、と。
[踏み込むのを少し躊躇ってしまうのは、他人の家だから仕方のないこと。
けれど今はそう言っている場合でもなく。
首を振り]
エルザさん?
[呼び掛けながら、中へ踏み入った]
[やがて一通り見回った後で、中庭に通じる扉を見つけ]
…っ
これ、は。
[そこにあったのは、咲き乱れる桃色の花と。
己にとっては異質な存在の『絵』]
[どうして封じられたオトフリートが、彼女に絵筆を渡したのか。
そんな疑問はあったけれど。
同時に浮かぶのは、古くからの伝承]
「心の力を集めれば、空へ」…
[低く呟いて。
く、と下唇を噛み、踵を返す。
中庭の扉も玄関も開け放したまま、外へ走る。
思い当たる場所など、もう一つしかなかった**]
[少し、冷たいと感じる感触が髪を揺らす。
広げた両手、体重を感じる事の無いからだはゆっくりと、
下降する。
そうして地面へと近づいてから手で周りを優しく、
叩くように掻けば体は上へと向き、
頬に感じるのは、きっと、風。
青の中、蒼は溶ける事無く、ゆったりと。
とても自由に、浮き、沈む。]
[岩の隙間から太陽の光が、天使の梯子をかける。
畑の真ん中、柔らかい土に抱かれ白い綿毛の下、少女は眠る。
その手にはしっかりと、黒い石を連ねたペンダントを握り
だいじなものを入れた鞄を両の腕でしっかり抱えて
何時もと同じ、碧い夢を見て。]
[とても昔の、話し。
ママと一緒に良くキノコ畑へと行った。
パパと一緒に良くじゅんかいをしに町を歩いた。]
[その両親が、仕事中の事故で居なくなった。
周りの大人は、「2人はお空へ上っていったの」と、彼女に言った。]
[綿毛畑で、それを見つけたのはとても偶然。
白い白い綿毛の中
白い白い鳥の骸。
それを見つけた時、少女は、気づいた。
それを見つけた時、少女は、思いついた。
どちらが真実かは定かでは無いが、彼女は、言う。]
[中庭の、桃色の花。
沢山吸い込むと、くらりとするその花は
少女を気づかせず蝕んでいた。
少女は、わらう。
くすくすと、たのしげに。]
[地平は白く、揺れていた。
上を目指すように。
地面へと縫い付けるその茎を厭うように。
あの騒ぎで踏まれた無残なものも、あちこちにあった。
地の色と混ざった綿毛は、きっともう月を目指せはしない。
立ち入りを禁じる境を越えて、その間を進み。
白の中に溶け込む、蒼を見つけた]
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