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―自宅―
[目を閉じるエリカを見て、静かに立ち上がる]
話はしたいが、その様子では無理そうだな。
私は長老の所へ出掛ける。待つ気があれば待っていてくれ。
もちろん帰るのも自由だ。だが、無理はするな。
………もう少しで出るところだったがな。
[今日も元気そうな鳥の挨拶に頷き、アヤメを見下ろした。
送った礼を言われ、首を横に振る。]
………いや、俺は何もしてないさ。
いつもすまんな。
[食べ物とそれ以外の気遣いに短く礼を言う。
念押しには黙って頷き、重そうな鞄に手を伸ばした。]
……せっかくだ、茶でも飲んでいけ。
聞きたい事もあるしな。
大事な人?
そりゃ沢山いるよ。
俺にとって、と考えるならまず家族と、尊敬するスティーヴさんや、幼馴染のアヤメとジョエル。
他にも――沢山。
…でも本当は、人はみんな平等に大事なんじゃないかな。
[目を糸のように細めて笑った。]
…まぁ、実際はそうなんだろうな。
だが病の父親を抱えて身動きの取れない俺には、周りはみんな自由に見える。
だから…「虚」に捕まった、んだろうな。
くくく。
あぁ、気をつけて、な。
ん……、
迷惑をかけた、のだと思う。
……ごめんなさい。
[謝罪を紡ぐと同時に、
広げたままの翼が下がる]
長老――……
そうだ、結界樹に巫女が……
伝わって、いるのかな。
[眼を開き、顔を上げる。
昨晩、周囲の声はほとんど聞こえていなかったために、状況は把握仕切れていない]
………………わかった。
[それでも、男の言う事には、素直に頷いた]
おや、じゃあ危なく行き違うとこだったか。
いいのいいの、気にしない。
旦那には、チビの頃から世話になってるしねぇ。
[礼の言葉に笑いながら、鞄を下ろして手渡す]
……お茶?
ん……まあ、アタシも一仕事して喉渇いてるし……せっかくだから、相伴しようかね。
[茶の誘いには一瞬戸惑うものの。
聞きたい事、との言葉に、頷きながら軽く、返した]
[人好きのしそうな青年の顔を見ながら話を聞いている。スティーヴの名が出れば一瞬眉を顰め、最後の一言を聞くと]
みんな、平等に、大事……?
[目をぱちくりと瞬き、しばらく考えた後]
……よく、わからないや。
知ってるひとも、知らない人も、みんな、一緒……?
いや、半分は私のせいだ。気にするな。
結界樹に巫女が封じられた話は、昨晩長老がしたはずだが。
そういえば、君は少し様子がおかしかったな。昨夜から具合が悪かったのか?
うん、そう。難しいかな。
んー…たとえばさ、俺が知らない人でも、その人を知っている人にとってはきっと大事。
だから、価値…ってのは、基本的に一緒なんじゃないかな。
[考える様子には、更に目を細くして微笑む。]
まぁ、「巫女」さんだの「守護天将」だの力があるって人はそれだけで他の人よりも価値がある、ていう考えもあるけど。
基本は、そうなんじゃないかな。
[ 2人の所を離れて羽根を大きく動かす。]
――――――…。
[ 視界がブレる。
左目が痛くて掌で覆う。]
…おや、あれはケイジ様でしょうか?
[ その姿を確認するも声をかけることは憚られて。
首を傾けながら暫く見た後、また移動する。
羽根を休みようと降り立った先に赤髪の少年を見つけた。]
こんにちは、ネロ殿。
今日もお元気そうですね。
[ 彼の足元には散る花弁がある。]
そう、
知っているのなら、いい。
[もう一度 手に力を入れて、
寝台の上に、正面を向いて座り直す]
……少し、“繋ぐ”時間が長かっただけ、
と言っても、わかりづらいだろうから……
力を使い過ぎた……と言えば妥当なのかな。
後は、精神的な衝撃、と思う。
[花をいくつも散らして、動きを止める。
理由など忘れた]
あは、どこいこうかな〜
[また常のように。としたところで、降りたつ人影]
こんにちは〜ロザリー
今日も元気だよ〜。ネロは元気だからロザリーも元気だよね。
どしたの?
[変わらぬ陽気な笑みを刻み、ちらちらと翼のほうを見ている]
[ラスの言葉を噛み砕き、飲み込むまで数瞬の時を経る]
うん。みんな、誰かにとっては……大切なのかも、しれない、ね。
……巫女、みんなのこと……大切に、思ってる。
だから、みんなも巫女のこと、大切、なんだと……思う。
巫女……の価値とか、じゃなくて。
[結界樹に閉じ込められてるというクローディアのことを想い、目を伏せた]
たいした事はしてなかったがな。
[鞄を受け取り、中へ促す。
香草を煮出したものを水で割り、机に二つ置いた。
小皿に乾燥した果実を入れ、ラウル用に幾つかを小さく割って机に乗せる。
椅子に座ると茶を一口のみ、前置きなく口を開いた。]
……お前、どうして翼を出さない?
使わないままだと飛べなくなるぞ。
――それとも、
[鋭い目を眇めて、問う。]
出せない色に、染まって…しまったのか。
―自宅―
力を、使いすぎた?
[水桶を持ち上げようとしていた手を止めて、エリカの顔を凝視する]
君は、やはり、力を持っているのか?
[ 聞こえた声にトーンが落ちる。
掌で左目を覆いながら、声を返す。]
病ねぇ…。
成程、それで……。
私が自由に見えるんですね、貴方には。
[ 虚に捕まった理由はなんだったろうか。]
そちらもお気をつけて。
[ そう言って身体を降ろした。]
旦那くらいだったし、父上の事話してくれたのは。
[軽く言いつつ、促されるまま中へと入り。
椅子に座って、出された果実を嬉しげにつつくラウルを見やりつつ茶碗を手にする]
……出せない色彩……つまり、黒に、って事かい?
[投げられた問いに、表情はやや、険しさを帯びる]
……そういうんじゃないよ……それはない。
ただ……四翼であると知られるな、ってのは、父上の言いつけでね。
母上にも、最期にそう言われたから……。
普段から出さないとまずいのは、一応、わかってるんだけど、ねぇ。
[ 足元に下ろした視線を少年の顔へと合わせる。
それと同時に首を傾ける。]
はい、私も元気ですよ。
ネロ殿の姿が見えたから遊びに来ました。
[ そう言って笑いかける。]
ネロ殿はこんなところで何をされていたのですか?
[ 聞いて答えは返ってくるだろうか?
その視線が背中の羽根にちらちら移る様子も、
また自身には興味深く見える。]
…………最悪だ。
[繰り返し呟いた。
この際、昨夜の記憶の全てを消せるなら、消してしまいたいなどと思いつつ、感覚の失せている真白の指を逆の手で1本ずつ剥がしていく。
はさりと落ちたシャツを振り返りすらせずに、大股で部屋を出た。
――…翼を仕舞う事すら忘れて]
―――……、
貴方の言う、力、が何を意味するかは知らないけれど。
[まだ少し揺らぐ眼差しを返す]
ただ、私は……繋ぐことが出来るだけ。
それは、動物や植物、そして、精霊、妖精、幻獣……
私達と存在を異にするものと、会話をするのと、似ている。
……求める答えに、なる?
オーフェンは、巫女さんが大事なんだな。
[目を伏せるオーフェンを目を細めてみ、その頭を撫でようと手を伸ばしたが、その上でやはりその手を握り、自分の首の後ろへと戻す。]
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