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[給湯室の流し台に腰掛けて、ぼうっと宙を眺めている。]
……甘い。
[時々、水羊羹を口に運んだ。]
だが、まだ時じゃない。
[つう、と視線が動いて
サヤカの通っていった方を辿る。]
出られない……?
ますます現実味がない話だこと。
……ねぇ、いったい何がおきてるの?
あの桜や、あの女の子は一体何者なの?
そして……他に消えたのは誰?
[考えまいとしていた疑問が、つい言葉となりあふれ出ててしまった。]
佐久間先輩、こんばんは。
食堂に他の先輩達もいらっしゃいますよ。
[すれ違ったヨウスケには簡単な挨拶だけをしてその横を通り抜け、皐月の部屋へ。
目当ての物を見つければその中身を確認する。
消毒薬に絆創膏、風邪薬や鎮痛剤も入っているのを見て]
力、無駄にして欲しくないよね。
無駄にするくらいなら、くれればいいのに。
[クスリと笑うと、それを抱えて食堂へ戻る]
おーまーたーせっ、とー。
[ちょうどヒサタカが食堂に姿を現すのと同時、
調理室から大皿を運んで来て、テーブルに。]
ていうか、1人でやるの無理。
手伝え、お前らー。
(どうせ死ぬのなら、散々恐怖してから死ねば良い。
その方が美味いのだから。
あの小さい奴。
うまく動けば良いがな。)
[水羊羹が甘い。
そして、喚起される記憶の味もまた、甘い。
しかしその記憶は現実の味覚より尚甘美。]
(……まあ、おれの好みの話になるが
何にせよ
結局は願いを叶えることになるのだから。
おれは暫く静観だ。
どうせ、一人や二人殺せばすぐに自我も潰れて
消える。)
[マコトの言葉には軽く唸り声を上げ]
うー、わかった。つきましては何か食べやすいもの欲しいかも
[麦茶を入れてくれたサヤカには、まだこの人は温い思考に逃げてるのかという視線を向けるが]
…………ども
[軽く手を上げ、お礼の気持ちを示す]
[大皿を運んで来たショウを見ると、一瞬、目を瞬かせた]
………君が作ったのか?一ノ瀬先輩。
[相変わらずちぐはぐな口調と呼び方で問いかける]
…って、何かまた増えてるし。
ミズクラゲに、………天野か。
[声が鈍ったのは、
苦手としている相手だからと、
昨日の事を思い出したのと、両方。]
そーだけどー。
こー見えても調理部デスー。
[ふいっと視線を逸らすと、へたっているウミを見て]
………調子、悪そーだな。
欲しい物に手が届く。
美味しいものに。
司の力にも。
[微妙にずれ始めている思考。
それが相手の感情に釣られているとも知らず]
ちゃんとやるよ!
[上機嫌にそう答えて]
[入ってきたヒサタカにどうも、と礼をして。
サヤカの問いには、一つ、息を吐く]
何が起きている……ですか。
俺に言えるのは……日常が、崩壊したって事と……。
[そこで一度、言葉を切る。
続きを言うことには、微か、ためらいもあるか]
人、ならざるもの。
そんな存在が……ここにいる、って事……です。
[自分も含めて、とは。
さすがに声に出さなかったが、代わりに、ため息を一つついて]
……食べやすいもの、ね。
お粥でよければ、作るけど?
[唸るウミには、こんな問いを投げかけて]
………………………なるほど。
[ショウの返事に頷いて、そのまま近付いていく]
………何を手伝えばいい?
[ショウの目の前に立って尋ねた]
おまっ、近づくな!
[首痛いし。
とは言わなかった。プライドが許さずに。]
………取り皿と、箸!
[ハウス!とか犬に命令するような勢いで、炊事室を指さす。
怪我をした左手だったため、微かに痛んで、眉を顰めた。
調理場の入り口付近で待っていた仔犬が、
ショウの傍に歩いて来て、ヒサタカを見上げた。]
[給湯室の中にいる人影が誰か考える前に、その人が此方を見た。]
…フユさんか。
[疲れたようではあるものの、小さく笑みを浮かべた。一見、何時もとそう変わらないかも知れない。
その目を除いては。]
[ショウの言葉に手だけで応じると]
あーショウ先輩。どうも、夏風邪っぽいッス
[マコトの言葉に僅かに顔を上げてジッとマコトを見やっていたが、お粥を作ろうかという言葉には]
あー、お願いする。おいしいの作って
[ショウとヒサタカのやり取りには小さく笑って]
はい、一之瀬先輩。
ちゃんと手当てしておいた方がいいですよ。
[近くのテーブルで救急箱を開けて。
ウミの方へも顔を向け]
風邪薬もありましたから。
何か少し食べて、水月先輩もこれを飲んでおくといいと思います。
ん。
[水羊羹の、アルミ製のカップにスプーンが当たって
かちゃりと音を立てた。
フユはスプーンを一度口に運ぶくらいの間を取った。]
覚えたんだ。
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