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―ゼルギウスの部屋―
[部屋にいた旅人は、こちらの問い掛けにも変わらず、幽鬼のような気配のままただ佇むだけだった。
その様子にイヴァンへと視線を向ければ、互いに訝しげな表情が浮かぶ。
旅人の思惑も何もつかめず、イヴァンが前に出て言葉を重ねる>>4のを見守り]
朱花が何であるか知っていたなら、不用意に口にする事が危険とも知っていたはず。
貴方は、こうなるとわかっていたんじゃないのか?
[その言葉に重ねるように問う。少しずつ苛立ちを募らせるイヴァンとは対照的な、冷静を装った口調で。
旅人の動きを注意深く伺って、イヴァンが一つの推測>>5を突きつけるのを聞く。
その途端、旅人の様子が一変する]
イヴァン、あまり追いつめたら……っ!?
[怯えた様子は一瞬、旅人が「違う」と声をあげイヴァンへと迫る>>6のに僅かに反応が遅れたのは、日ごろ身体を動かすのが苦手なせいで。
それでも、危険が迫るようであればと、上着の内側に潜ませたナイフを探ろうとして]
[その刹那、間に割って入る人影>>17に動きを止めた]
ユリアン!?
[その手元に鈍い銀色の輝き>>18を見たのも一瞬の事。
旅人にぶつかるように駆け寄る、旅人の動きが止まり表情が変わり
イヴァンを掴んでいた腕から力が抜けて>>32、崩れるように倒れこむのを、見た]
な…っ
[旅人の胸元に突き立てられたのは鋏。>>27
旅人がユリアンに向けて倒れこむのに、差し出す手は間に合わない。
そのまま床に座り込んでしまったユリアンにイヴァンが声をかける>>33
「聞こえない」と虚ろな瞳で呟く様子>>31は、酷く危うげで脆く見えた。
何か書くものをと求められたが、生憎持ち合わせがなく、首を振ってゆっくり声をかける様子を見守る]
ここから離れた方がいい…とにかく落ち着かせないと。
[かと言って専門家ではないからどうしていいかもわからなかったが]
[それまでの様子を見守っていたライヒアルトが、イヴァンの片腕から旅人を引き離す>>39のを見て、男もただ立っているだけでは駄目だと気を奮わせる]
イヴァン、ユリアンは任せる。
[そう言って、ライヒアルトが旅人を安置するのに>>46手を貸した。
「人狼だったのか?」と言う問い掛けに答えるものはおらず、男は黙って目を閉じた
僅かに動揺する、その様子を気付かれないように、と。*]
─ テラス ─
[テラスに出て辺りを見回すも、人の姿は無かった。
庭園の方も見て、誰も居ないならまた中に戻って階上を探しに行こうか。
そう思った所で日の光に照らされた氷の堤からの煌きが射し込み、眩しさに目を細めつつ足を止め]
……こんな時でも、変わらず綺麗に見えるものね。
[目に入る景色はいつもと変わらぬ冬のそれ。
毎年飽きること無く描き続けて、もう十何年も変わらずに描いてきたのにそれでもやはり、綺麗だと思う。
いつもと違うのは、絵を描こうという気持ちが起きないだけ。
こんな状況下でそんな気が起きる方が、どうかしているのかもしれないけれど]
─ 庭園 ─
[物思いに耽っている間に何があったのか。
わからないけれど、とりあえず中に戻るべきか、と。
そんな事を考えながら、歩き出し]
……あれ?
[目に入ったのは、テラスに出てきた姿。>>3
行くか戻るか、少し、悩んで]
……どーしたんですか、こんな所で。
[そちらに近づき、呼びかける。
自分の事を探していた、と聞けば蒼の瞳が瞬いた]
俺を?
[こてり、と首を傾ぐ仕種は歳よりもやや幼げなもの。
洗濯の事>>2:131を問われるなら、ああ、と惚けた声を上げ]
必要なものは、好きに使っちゃってください。
一々聞かなくてもいいです。
……じっちゃんは、いつも、そうやって、ました、から。
[何気ない風を装って言おうと思ったけれど。
思いの外、声は掠れていた。
あー、だめじゃんこれ、なんてちょっと思って、くるり、背を向ける]
……あの。
[そのまま、少し黙り込んでいたものの。
間をあけて、小さく息を吐いた]
…………かたき討ちとかって。
馬鹿、みたい、だと思います?
[唐突な呟きは、どう響いたか。
背を向けているから、表情まではわからない]
…………ま、肝心な仇、見つけられてないし。
これから、見つけられるかもわかんないけど、でも。
[ぎゅ、と。
黒猫を抱える腕に、力が籠もる]
……そーゆー馬鹿になるのも、いいかなぁ、って。
なんか、思うんですよね。
こんな事、考えてる時点て馬鹿なのかも知んないけど。
大して丈夫でもないのに、何言ってんのってゆーか。
[あはは、と笑う声はどこか乾いて。
それからまた、急に黙り込む]
……ごめんなさい。
今の、忘れていーです。
ちょっと、吐き出したかっただけだから。
[空白を経て零れ落ちた声は、平坦なもの。
それへの返事は聞く事もなく、その場からだっと駆けだして。
勝手口から厨房へと全力で駆けこんだ。*]
─ テラス ─
………あ。
[ふるる、と頭を振って浮かんだ思いを散らしたところで、>>51聞こえた声に顔を向ければこちらに歩み寄ってくる姿が見えて。
自分も彼の方へと近付いていきながら、どうしたのかと問う声にあぁ、と返し]
…エーファのこと、探していたの。
服を何着も借りてるから、お洗濯させてもらえないか聞こうと思って。
[そう言うと、>>52好きに使っていいという返事が返ったものの。
その声は常よりも掠れ、痛みを抱えていることを見せぬように向けられた背に、目を伏せた]
─ 厨房 ─
……て、あれ?
[駆け込んだ先にいた老犬の姿。
二、三度瞬いてから、先ほどのやり取りを思い出す]
そか、ご飯食べてたのか。
[口にして、それから腕の中の黒猫に視線を落とす]
……そーいや、お前、食べてないんだよな。
ちょっと、作るから待ってろ。
[食べていないのは自分もなのだが、そこは見事に棚に上がっていた。
食欲はないし、食べたいとも思えない。
薬師として、それが問題なのは認識しているけれど、感情が追い付かない。
だから今は、と動く事を優先して、一次、黒猫を下に下ろした。*]
─ テラス ─
…エーファ。
[黙り込む少年に、何を言うべきか。
何を言えるだろう、そう思いながら名を呼んで。
沈黙の後、>>53少年が呟いた、吐き出した思いに見開いた瞳は、ほんの少しだけ、歪み]
…私は。
馬鹿だとは、思わないわ。
[少年が聞いているかどうかは分からない、けれど。
女の偽らざる想いを、声に乗せる]
…その想いは、貴方が、小父様のこと──…
おじいさまのこと、本当に大切だった証拠、でしょう。
だから。
馬鹿みたいなんて、思ったりしないわ。
[少年の笑う声は、どこか遠くにあるようで。
女が重ねる言葉が、彼に届いているかもわからないけれど]
それが、貴方の選んだ答えなら。
誰も、馬鹿だなんて、言わないと思う。
[女自身抱いている思いを少年へと伝えたけれど。
駆け出してテラスから離れていった彼の耳に、どれだけ届けられただろう。
残された女は一人、暫しの間この場所から動くことなく立ち尽した*]
[>>*7オトフリートについて気になることを伝えると、長い沈黙が返ってきた。
>>*8何を考えているのかと訝し気な聲に、彼にも推測は出来ないかと思い、眉を下げ]
…何を考えているのかは、私も分からない。
でも…私の事は誰にも殺させないって、言っていたの。
もしも私の事を知っている上でそう言っているんだとしたら…
[仮定に仮定を重ねるしか出来ない歯がゆさに、一度目を伏せた後]
……オトフリートに、聞いてみるべきかしら。
[敵かどうか、それだけでも確認したいと思い、コエに問うた*]
───……心臓飛び出るかと思った……
[無意識に止めていた息を緩やかに吐き出しながら、脱力するような声で呟いた。
このまま階下まで落ちて行ったりでもしたらユリアンも無事では済まない。
現状でもだいぶ危ない気もするが、最悪の事態は免れた、と思う]
しゃーねぇ、部屋に運ぶか。
[頭をぶつけたとなると揺さぶるのも拙い。
見たところ既に意識はないようだったため、ベッドに寝かせる方が良いと判断した。
流石に姫抱きするのは可哀想だったため俵担ぎにして階段を上り切り、ユリアンの部屋へと運び込む。
ベッドへ寝かせて上掛けをかけると、ユリアンの部屋を出た]
ビルケ連れてくるかー。
[こうなれば聞きたいことも次に目覚めた時にするしかない。
目覚めた時に愛犬が傍に居られるよう、厨房へとビルケを迎えに行くことに*]
[人狼か否か、答えは返らない。
祈りを捧げ立ち上がればオトフリートが目を閉じる>>49が見える。
彼もまた、旅人の為に祈るのだろう、と思う。]
彼が人狼で、
これで全て終わるならいいのに。
[そんな独り言を紡いで]
手を貸してくれてありがとう。
[安置するを手伝ってくれたオトフリートに礼を言い、
旅人の部屋を後にする。]
─ 厨房 ─
[黒猫の食べるものを用意しながら、意識が向かうのは先ほどのやり取り]
……あー……なんかもう、ほんと。
ばっかみて……。
[どうしても吐き出したくて、つい零してしまったけれど。
正直、どんな答えが欲しかったのかは、自分でもわからない。
祖父はかたき討ちなんて望んでいない──とか。
そういう言葉が欲しかったわけじゃない、とは思う。
それを言われてたら、あの場で噛みついていただろう、と。
それだけは、わかっていた]
……俺は……。
[父の時は、自然が相手で。
母の時は、病が相手で。
けれど、祖父が死んだのは人狼の牙によるもので。
今までと違って、やろうと思えば手が伸ばせる相手が『仇』だから。
だから、余計に悩んでしまう]
…………あー……もう。
どうせわかるんなら、もっとこう、まとめてわかれればいいのに。
[唐突に芽生えた力──亡き父が遺したそれの融通の利かなさに、つい、零れ落ちたのはこんな愚痴]
……いっそ。
子供が馬鹿いうなとか言ってくれりゃよかったのに。
[ぽつ、と呟く。
それが単なる八つ当たりなのはわかっている。
カルメンが真摯に答えてくれたのは、声音からも感じられたから。
こんな事、言うべきではないとわかっていても、それでも。
ぐるぐるとした感情は、つい、ひねた方へと向かってしまっていた。*]
─ →厨房 ─
[旅人の部屋にまだオトフリートとライヒアルトが居れば、ユリアンが頭をぶつけて倒れたことを伝えて、イヴァンは厨房へと向かった。
エーファはまだ厨房に居ただろうか。
居るなら旅人の部屋で起きた顛末を伝え、ユリアンのことも伝える]
ビルケ、ユリアンのところ行くぞ。
[おいで、と呼んでみるが、主ではないため首を傾げられるだけ。
主の待てがあるためか、忠犬はその場を動こうとはしなかった]
あー、もー。
行くってばよ。
[仕方無しにビルケに腕を伸ばして実力行使。
両腕で抱え上げて部屋まで運ぶことにした。
暴れないのは理解してるからなのか、単に暴れる力がないだけか。
どちらにせよ、ビルケは部屋まで大人しくしていてくれた]
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