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例えば――― 一時的とは言え、海や、風などが荒れることを願っていた。
例えば―――竜王様の誰かに束縛されている者が、逃げようとしていた。
例えば―――他の干渉を受けないように追い込み、随行者を狙っていた。
例えば―――竜王様の動きが取れないうちに、なんらかの道具を奪おうとしていた。
いえ、疲れてはおりません。
ただ、私はまだ己の中に眠る知識を引き出すにも時間が掛かりますがゆえに。お話の最中にするようなことでは無かったのですが。
[顔を赤くしたまま目を伏せる]
確かに初めてのことではありますが。
私も天聖が属、律を担うものであればこそ、そう容易に揺らされは致しません。…そのために、養父に預けられ、我君よりの刻印を受けているのですから。
[それでもそう続けたときには、視線を上げて恩人の顔を確りと見ることが出来た]
ん、そっか、戻れるようにはなるんだ。
[エルザの言葉に、ほっとしたよに息を吐く]
こんな状況じゃ、ねーさん一人にしたくねぇからなぁ……。
オレがしっかり支えてやんねーと。
[呟くのは、ささやかな決意]
んー、結界の束縛で『自由』が奪われてるから、それもあるかもだけど。
それとはなんか……違う感じがするんだよね。
[ザムエルにはこくん、と頷いて、言葉に出来ない感覚を伝えようと試みる]
何もしらないのなら、わたしはわたしでした。
[それ以上、踏み込みはしない。
逆に、踏み込まれないようにと。
それだけを呟いて。]
[探っている様子が、伝わる。
声をかけることはなかった。]
色々、大変なんだなぁ。
[クレメンスの言葉に、妙にしみじみと返して]
だって、食べなきゃいざって時に動けねーし。
オレはまだまだ成長期だから、直接の熱量摂取は重要なんだよっ!
[袋いっぱいコロッケ買い込んで、きっぱり言い切った。
肩のピアは、やや、呆れ顔ではあったけど]
お、本当か?ならよかった。
許可が貰えれば、俺は一旦生命の海の様子見に帰るわ。
と、一応不在時の行き先確認をしとくぜ。
[エルザの言葉に浮かべた笑みは、軽薄なものではなく、安堵。
さり気無く取られた距離には気づいたが、特に気にならない。]
あぁ、そういえば…
確かに、君の刻印は特別製だったっけ。
[揚げたてコロッケの包みを手にして、エルザの言葉に頷く。]
それがきちんと働いてるなら、君は大丈夫か。
[ふむ…と暫く考えながら、宮殿へと足を向ける。]
[今、この中はたいして人がいるようではなかった。
台所を借りる旨を伝え、紅茶を入れる。
ふわりと香りが立ち上った。]
[ミルクを取り出し、注ぎ、蜂蜜を混ぜ。
作られたミルクティーは、自分の分だけだったけれど。]
―→広間―
……考えうる限りの可能性はこの程度かしらねぃ。
はてさて。
どれが当てはまるのやら。
[ざぷりと、頭の上まで湯水の中へと潜り込み、そして、顔を出す]
―――あー……。
でも、気持ち良すぎてどうでも良いような気がしてきますわぁ……。
[とろんとした目つきで、ナターリエが思う存分たゆたった]
影と、光。
かの地のようですね。
[ 呟きが零れる。
心竜の語る、ノーラの姿。
それは影輝が竜郷――螢火の丘の光景を思わす。
眼を閉じて目蓋の奥に浮かべるは懐かしきその地であろう。]
影として在り、影として潰えん事を。
[ 笑みを絶やさず、影たる者は答えた。
揺れしことも、真意ならぬことも、は明らかにも関わらず。]
……このような時に、私事を申して、すみません。
―西殿・結界周辺―
[既に薄曇に覆われてか、中を窺い知る事は適わぬ。
此処に来た時には、まさか無茶をしまいかと私の心中を脅かしもした
(万が一仔に大事が在ったと王の知る所になれば、私が只事では済まぬ)が、
その様な心配は杞憂に終わった。仔はただその封じられた境の周囲を幾度も辿るのみ。
肩から頭の上へと巻きついた勢のまま、幼子の辿る跡へと視線をやれば
…嗚呼案の定、小さな足跡を残すように芝が一寸伸びては枯れゆく。
何周もしておるものだから、それが既には所彼処と残っていた。
幾度と無く云えど、幼子はだいじょうぶと一点張りで私の声を聞こうとせぬ――…何が大事無いのか私に今一度ご鞭撻願いたい。]
[暫し離れた場所へと人影が視界に入り、ゆるりと頭をもたぐ。
昨夜お見かけした姿なれば、あれは氷竜殿か――時折弾かれるような音が微かに混じる。場を解く探査中であるだろうと容易に知れた。
邪魔をするのは拙かろうと、この場を離れるよう仔竜に促すも
…仔は何に夢中なのか、私の声に気付く様子も無い。]
ご不便をお掛け致しまして。
各領域もこのままでは安定を失うばかりとなりましょうから、そちらの対策も必要となるでしょう。
ただその場合も不測の事態に備えるため、可能であれば竜都との連絡手段は確保していただけると有難く存じますが。
[堅苦しく話すものの、焔竜と二人、山盛りコロッケを買い求めたりしているのを見れば、どこか張り詰めたものも溶かされてゆく]
司りしものの妨害ではなく、それとはまた違ったもの、か。
[返されるティルの言葉にしばし考え込む。『ざわつくような気持ち悪さ』と表現されたそれを噛み砕くには未だ至らないか]
ううむ、結界から感じるのか、それとも別の場所から感じるのか。
結界から感じているとするならば、干渉せし力に反応しているのやも知れんのぅ。
[思い当たることを口に出しつつ。ややあってその足は竜皇殿へと辿り着くことだろうか]
─竜都・商店街→竜皇殿敷地内─
[また結界へと干渉を行い、その反応を手帳に記す。
何回か繰り返した後、思い切って両手で干渉し――
――ばちん、と弾かれる。
裂傷こそ負っていないものの、両の手の平は赤くなり、ひりひりしている事だろう]
姐さんいる限りは安定してんだけどな。
[ふと、自身の王と影竜王がくっつかないのは、この辺の問題もあるのかねとはちらり、ひとつ。
まぁ今はどうでもいいことだからポイなげ。]
うはははは。こーどーもー。
[ティルにワザと揶揄するように言いながら。]
俺には分からん感覚だぁな。
産まれてこの方、物食った事ねぇし。
[さらりと言いつつ、足は竜皇殿へと向けて歩きだす。]
揺らすもの。
結界。
[幾つか知ったことを、続けて口に出してゆく。
甘い、紅茶の香りが広間の端に流れる。]
何か、知っているのでしょうか。
[影の様子を思い出し、目を伏せた。]
……この式でも駄目ね。
[唸るように、口元に手を当てて。
ややあって、手帳に今の術式を書き込んで、薄く息を零した]
焦り過ぎやら、根詰め過ぎやら……と?
[集中力が途絶えたところで、漸く回りに気を回せるようになった様で。
少し離れたところに、小さな人影が見えたのに気付いた]
あの子は……翠樹の?
随行の仕事はまだ終わってねーし、連絡とか、そこんとこはだいじょーぶ。
[揚げたてのコロッケかじりつつ、エルザに軽く返し]
んー、風が落ち着いてないんだよなぁ。
もしかしたら、例の、干渉されたヤツ、とかに反応してんかもしれねぇけど……。
[ザムエルの言葉に返すのは、曖昧な予測]
有難う御座います。
そうしていただけると助かります。
[クレメンスに軽く頭を下げ]
幼き仔。確かにその可能性は…。
[以前の自分のことを考える。あれほど酷いことはそう無いと知ってはいても、一抹の不安が過ぎった]
そーなんだ。
ウチの兄貴とか、行方不明になってもいつもの事で流されるからなぁ……。
[それは気質を承知されているからです]
……るっせぇなあ……しっかたねぇだろ、そーゆーモンなんだからっ!
[揶揄の口調にはむくれて返し。
続いた言葉に、きょとん]
……ナニソレ?
んじゃ、どやって生きてんの?
[呟きはなく、そのまま台所に戻り、それを下げる。
俯いた口唇が幾つか音を作り出したけれど、それは洗う音に掻き消えた。]
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