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―客室―
[着替えを手に取り、体を拭き、さらしを巻きなおそうとして――手を止めた。
少し考え、ブラジャーを手に取る。
慣れないそれをつけるのは少し苦労した。]
[それだけで、体形は元の通り、女のもので。]
側近殿を探します。
[そっと囁くように呟き、部屋の鍵を閉めると、窓を開けた。]
[やって来たナターリエに、やほー、と言いつつ手を振って。
コロッケかじり続行しつつ、周囲の話を聞く。
口を挟まないのは、自身の知識と情報の不足もあるが、なにより。
ずっと感じている奇妙なざわめきと、それがもたらす嫌な予感に*意識が奪われていたから*]
―広間―
えぇ。
…たぶらかされそうな幼子なら、保護者のついてる樹姫よりは、陽光様の末弟の方が心配かと。
[気を取り直して、触媒の香煙草を手に取る。]
供もいないようだし、大丈夫かなぁ…
ダーヴィッドが誰かを調べる?
[ 鸚鵡返しに、疑問の意を持って繰り返す。
しかしザムエルより齎された問いに、開いた掌が口元を滑り頬に添えられた。影は肯定の頷きを返すと、言葉を捜しつつ、ゆっくりと口を開く。]
それを口にしても良いか、は別の話だがのぅ。
干渉者の影響を受けし者が、居らんとも限らんのじゃろう?
……狙われている、か。
可能性としては、有り得るじゃろうな。
直接、竜王の力を狙うというよりも理解は出来る。
―東殿・広間―
[またどこか心ここにあらずという顔をしていたが]
っ!
[唐突に小さな息を漏らした。
目を瞬き、大きく深呼吸をする]
…は、はい。
出来るだけ多くのお話を聞ければと。
[入ってきたナターリエに頷く。
どこか挙動不審なのは、見てはいけなかったかもしれないものを見てしまったからだろう]
―― 西殿・結界前 ――
おっと…
[幼子の手が機械竜の羽根に伸ばされるのを見て、仮染めにも羽ばたく金属のそれが小さな手を傷つけぬようにと、手袋を嵌めた左手を伸ばす、ふわと柔らかい天青石の光が機械竜を包み、その羽ばたきを止めた竜はおとなしく翠樹の仔の目前の空中に静止した]
―東殿・外→裏口―
[決して誰ともぶつからぬように、外を経由し、中へと入る。
どこにいるのか、広間のほうではない。]
[一応男より女の姿の方がわかりにくいかなとか、そんなことを考えて、そっとあたりを伺った。]
[居る場所の目星をつけて、そっと足を運ぶ]
――側近殿。
[見つけたのは、やはり広間から大分離れた場所だった。]
―西殿・結界前―
[扉から離れ、向かうは始めに向かいかけた結界のある場所。
予想通りというか、結界に齧りつくかのような氷竜と―他にも数名、竜が居た。
片手をひらと上げながら。]
よぅ、進展はどんな感じだ?
[そう尋ねるも、曇った変わらぬ結界を見れば、あまり成果が無い事は分かるわけだが。]
側近殿にお伺いしたいことがあって参りました。
[言葉遣いで気付いたか。
ギュンターは彼女のたわいも無い問いをいくつかすらすらと答えた。]
では、剣をお持ちですか?
[この質問までは。]
[結界を探っていた理由は様々な手出しにより綻びが生じていないかの確認であり、ギュンターが持っていようといまいと一時身柄を拘束する必要があると考えての様子見。ゆえに氷破竜へ告げたように結界を解く手伝いは出来ない]
……わかった。気をつけて。
[やはり行く様子のオティーリエに心の声を返す]
[今一度仔の頭を撫でる手に、親を思い出したか。一寸幼竜の表情に影が過ぎる。
…約束の通り、我慢すると決めたか口に出しこそはしなかったが。
向き直る氷竜と心竜の間に交わされる言の葉の、幼子には何と難儀な事か。
聞えた所で恐らく、その意味は欠片と判らぬに違いない。]
「いえ、エーリッヒ殿。私めにはお構いせずとも――
名の一つ、記憶の端に留めて頂ければ幸いです故。」
[頭を下げる機竜には、ゆるりと身をくねらせる。
此方が敬いこそすれ、下げられる身などある筈も無い。]
[まさかというような顔をするギュンター。
誰かを呼ばれる前にと、床を蹴り、先とは逆の立場、床に押し倒す。]
[喉を手で強く押さえて、問いかける。]
答えて下さい。
[その答えは手に入らない。]
―西殿・結界前―
[慌てて逸らされる瞳に、どこか困ったような、どこか寂しそうな――
そんな笑みを、浮かべただろうか。気を取り直し、微かに首を振るって]
そう、ありがとう。難儀な結界ねえ、本当に。
[ぽつり呟いた後、気まずそうに俯くアーベルの姿を見て。
今度はどこか優しい笑みを浮かべ、昔よくやったように、頭を撫でた]
ふふ。気にしちゃ駄目よ?
封印結界のことなんだから、おばあさんにお任せなさいな。
[そんな言葉を掛けたところで、生命竜の言葉が聞こえてきただろうか]
[広間の出来事が気にならないわけではないが、最悪それらを知ることは後からでも出来る。
それよりは、まだ探っていない物を調べる必要があった。
西の結界その前にいた者ら。
これで全員ではまだないが。これだけ調べ上げれば、だいぶ探知は進むだろうか。
見逃しが、無いとは言い切れないが。
向こうで出会ったアーベルには、表で変わらぬ態度を取る。]
……「揺らすもの」
……「力ある剣」
なるほどねぃ。
目的は、それですか。
[それは、先程考えていた答えの一つに当てはまるものだった]
……一つ質問よろしいかしらぁ?
私は、いまいちよく分からないのですけれども、その「力ある剣」とやらは、そんなに巨大な力を持っているのかしらぁ?
もっと、具体的には、それでどこまでのことが出来るようになるのかしらねぃ?
…まぁ、無茶せんように。
[オティーリエの決意には、軽く返した。
フラストレーションが溜まったのかね、とは状況が状況だけに口にはしない。が。]
[ダーヴィッドが触媒を手に取る様子に少し視線を走らせつつ]
詳細を教えて欲しいとは言わぬ。
じゃが予測として、注意すべきではあるのでは、と言うことじゃな。
本当にその剣を「揺らすもの」が狙って居るというのであれば、大方の場所は検討がついて居るじゃろう。
かように強大な力を持つ物が保管出来る場所と言えば、限られておる。
[それが何を意味するかは伝わることだろうか]
あくまで推測の域に過ぎんが……注意するに越したことはないじゃろうからのぅ。
―西殿・結界前―
[命竜へと、手をひらり振ろうと開いたところで――閉じたまま、手を上げた。
奇妙なポーズになりながら、直ぐに手を下げる]
いらっしゃい、クレメンス。
まあ……こちらは、見たままって感じかしらね。
解析は進んでるけれど、肝心の糸口まで今一歩。まだ、結構時間がかかりそう。
[ほぅと薄く息を零すも、まだまだ頑張る気は満々の様子で]
そちらは何か進展、あったかしら?
[長時間いると、誰かに見られるかもしれない。そう考えて、力を行使しようとした瞬間、]
――っ、
[ギュンターの手が、力を込めて肩を押す。
飛ばされ、壁に背を打つ。
幸運は、近くに窓や危ないものなどなかったことだろうか。音は小さくくぐもった。]
[咳き込む様子。
彼女もまた、打ち付けたばかりの痛みを持って。]
答えないのなら、
封印のうちで、探ります。
[幾つかの言葉と共に、発動されたその力――]
焔が?
誰かを?
調べるぅ?
[その言葉には思いっきり嫌悪感をあらわにした]
……破壊を象徴する焔にそんな繊細なことが出来るのかしらねぃ。
まかり間違って、「あ。壊しちゃったー」とか言い出すんじゃないのかしらぁ?
剣…
それは絶つものにして、刃にあらず。
その力に、断てぬものなし。
[聞こえた言葉に応じて呟く。]
人間の伝承では、そのように。
異世界の魔王すら一刀両断だとか言われていたなぁ。
、わ。
[天青の光が機械竜を包むのを見やり、小さく仔が声を上げる。
幼子には全てが珍しき事の所為か――伸ばす手は一度躊躇われ
しかし一寸後には興味が勝ったか、その羽に指先が触れる。
傍らで見る己ですら、お眼に掛かる機会はそう無い。
仔には尚更興味深いに相違なかった。]
……?
…こんにちは?
[静止した竜に、仔は問いながら柔く首を傾ぐ。
羽に触れた小さな手は、拙いながらも次はその頭を撫ぜる様に。]
―西殿/結界前―
[反射的に視線を逸らすのは見る事により忌避されるのを防ぐ為か、見てしまう事への罪悪感か、もはや青年にもわからない。長年の習い性というのが一番近いのだろう。
氷破竜の寂しげな心の動きは感じたが、何も言わず大人しく撫でられるに任せた。
新たにやって来た生命竜の問いには短く首を横に振って答える]
……いえ。そちらは?
[そうして逆に生命竜に問いかけた]
そうであろうとの推測、ですね。
[左腿の辺りを軽く摩りながらナターリエの言葉に頷いた]
数多の世界で唯一、神の力にすら干渉し、退ける事も適う剣。
その力は強すぎるがゆえ、常には二振りと為され存在する。
稀なるもの以外制御適わず、具現化することは滅多にない。
…合っているでしょうか。
[最後に尋ねた先は、ノーラ]
[その場から、ギュンターの姿が消えた。
力を行使するのは初めてで、荒い息を吐く。]
[そして急いで、その場を離れた。
ここで起きたことの、己の痕跡は残さない。]
[再び外に出て、窓に向かい、中に入る。
そのままベッドに倒れこんだ。]
――送りました。
[声を投げた。
己が負った傷のことは口にせず、決してもっているか聞けなかったことを囁いた。]
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