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[それは、此処から逃げ出してしまいたいと、思ったからかもしれない。
ただ。それを口にすることはせず。
頭を下げて、*テントの方に歩いていった*]
―台所―
[恐らく病院服のままであろうカミーラの身成を世話しながら、聞こえてきた(恐らくキャロルの)声に、少し大声で訊ねる]
そう、ねえ、話。
何て言ってました?確か…デボラさんがシャーロットを
―台所から―
[それから、聞こえた男の声に]
…だって、デボラさんが何かないかと聞いたんですもの。
そう…アーヴァインさんは、ただの人間でしたよ…今まで観たことある人と何の変わりも無い、ただのちょっと気味が悪いだけの幽霊。死んですぐの人の幽霊なんて見るの、初めて。
もっとも、人狼がやったんでしょう?お互いが殺し合うとは…思えないけど。
[時々衣擦れ]
[振り向いて、声をかけた]
ハーヴェイ!
…帰るのなら、気をつけて。そのへんの自警団員を護衛に連れて行けよ。女に間違われて酔っ払いに絡まれるかもしれないからな。
[努めて軽い口調で言おうとする]
そうか、坊やは行ったかい。
最初から、覚悟を決めていたんだね。立派な最期だったよ、昔々のあの人とおんなじに……。
[アーヴァインに小さく黙祷すると、部屋の中へと向き直る。
生きている者たちのほうが先決だ。シャーロットを抱いたキャロルに声をかける]
……貸しな。そっと、そっちの横椅子へ横たえて。
フン。人狼だって、人から生まれた者に変わりはないさ。苦しみかたも人と同じなら、手当ての仕方も同じだよ。
せめて魂を送るその時までは、人として扱ってやらなきゃ。
[ネリーの言葉に腕の中の少女の伏せられた睫毛に視線を落とす。]
…ええ。
停電の前に、彼女に狼が憑いたと。
あの太ったお坊ちゃんは──違うと。
[慌てて戻って来たギルバートに、]
人狼は一夜につき一人しか襲えないって本当?
なら、シャーロットはこの部屋じゃなく、二階に寝かせても構わないの…かしら。
あたし、さっきの出来事と目の前のシャーロットに告げられた事と、上手く結びつかなくて。
[褐色の…この辺では見かけない色の肌。
包帯の巻かれたその身体に、ネリーの手によって服が着せられていく。
痩せ細っては居ないが引き締まった小柄な肢体。
胸の部分が多少余る。]
ギルバートさん、私は霊を見る事は出来ません。
…ネリーさん以外の全員に尋ねてみてはどうでしょう?
[メモを貼って聞いてみてもいいと思います。と、彼はつけくわえた。]
私は、ネリーさんが本当の事を言っていると思っていますけれど。
―台所―
痛く…ありませんか?
[適度に筋肉を身に着けた、引き締まった体に触れるとき、巻かれた包帯とその下の傷に何度か気を奪われる。
気になっていたのは寧ろその傷の由来の方で]
一体どうされたんですか…。
[答えが得られるとは思わないが、小さく訊ねてみる。
下着の上にブラウンのワンピースと、それから少し使い古したサンダルを足へ履かせながら。
彼女の肌の色には似合わないと思った]
アーヴァインさんは、覚悟を決めているようには見えませんでした。
[彼が覚えているのは、何事かのデボラとの口論で頭に血が上ったアーヴァインに頬を殴られた事や、銃を突きつけられた事。──ギルバートも、BARで一緒に食べた時に銃を突きつけられたと聞いたと思い出した。]
[シャーロットの顔色を確かめながら、誰にともなく話を続ける。
どうやらユージーンへの返答のようだが、ただデボラ自信の中で堂々巡りしているようでもある]
そう、どうしてこんなことになったのか。
狼の魂は確かに鎮めたはずだった。人々も救われるはずだった。
なのに、狼たちは鎮めたのに、人々の魂のほうが呪われちまった。
むかしむかし……あの時、婆たちが正しく祭りを終わらせなかったからだろうか。
なあ、墓守の息子よ。
魔物……狼が生まれるのは、人の世の摂理とは別の力によるものだ。
だがな、鬼は人が産むものなのさ。
むかしむかしのお話のように、怨みを後には残すなよ。嘆きの島を泣かせるな。
[シャーロットが殺した]
[シャーロットがアーヴァインを殺した]
[シャーロットがアーヴァインを殺した]
[笑いながらシャーロットが殺した]
[ユージーンを見て、静かにうなずく]
確かにそうするべきだろうな…
[苦笑して]
疑い深い奴だと思っているんだろう。
オレだって信じられるなら信じたいよ。彼女以外に霊を見ることが出来る誰かなんて、現れないでいてくれたら、と。
ただ、オレはみんなに尋ねて、答えを聞いてみたい。それまではネリーのことが分からない。
…悪いなネリー。
[シャーロットが人狼だ]
[デボラは本当の事を言っている]
[ミッキーは何と言った?]
[”シャーロットは狼じゃない”と言わなかったか?]
[薄く目を開けるが、その目にはネリーは映っていないようで。
うわごとのように唇からこぼれる微かな声は、他のものが理解できる言葉ではないようだった。]
キャロル、だったか?
そのシャーロットって子の素性は分からないが、やわらかいベッドで寝かせてやるのがいいと思うよ。
二階に運ぶなら、その子は男のオレが担ぐぜ?
[自分に警戒を向けるキャロルへ苦笑いを向けて]
……うむ。
婆の見たところでも、傷や病の気はないな。
あんた、診たての心得がおありかい。ならば婆の出る幕でもない。
静かなところへ連れて行って、寝かしておいてやっとくれ。
そう…。
陽気なフリをしているのに、本当は疑い深いんですね。…でも霊が見える人が居るって信じて、馬鹿だとか、変だとか、気味が悪いとか、そうやって言わないんですね。
[ギルバートの声に応えてカミーラを、肩で支えて台所へあった椅子へ座らせる。
彼女の髪を少し直しながら]
…デボラさんはカミーラさんの言葉が分かるんでしたっけ。ねえ、あなたは人狼に襲われたの?それとも、人狼なの。それともその傷はただの怪我なの…?
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