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―二階・ナターリエの部屋―
[微かな笑みにつられるように、僅か唇を緩ませる。
最初はこんな風に並んでくる少女が嫌で。物理的に振り払ってはクレムに鉄拳込みでも怒られたりして。辛抱強く繰り返されるうちに、いつのまにか。何よりも居心地のよい場所になっていた]
なに?
[間近で深緑と菫が交差する。
彼女が既に真実を知っていることを彼は知らない]
俺も、ナータが大好きだよ。
同じでありたいと思っていた。
[だからそれは、人か人狼かの話ではなく、神に仕える者として。
けれど既に、過去形となってしまっているのだった]
[小さな小さな声で、呟いていた]
[近くにいても辛うじて聞き取れるか分からない程度の音量]
[周囲の音にまぎれてしまうかもしれない]
あのひとは、どっち、だったのかな。
[白猫への問い]
[聞いているのかいないのか、猫は哀しげに鳴くのみで]
ごめんね、わからない、や。
人間、だったら、……まもって、あげたら、よかった、ね。
[何かが抜け落ちた様な無表情で]
[赤く固まりかけた猫の毛を、撫で続けていた]
─ →広間─
[階段を下りる直前で一度足を止めて、オレは一つ深呼吸する。
階下の空気が重いように感じるのは、気のせいじゃないよな、多分。
さっきは驚き過ぎて気にしなかったけど、濃い鉄錆の匂いがして少しくらくらする。
ふるりと首を横に振ると、もう一度深呼吸してからオレは階下に降りた]
[降りた時にはゼルギウスとヴィリーのやり取りは終わっていたかな。
床の掃除を始めていたゼルギウスを手伝おうとオレは傍に寄る。
その途中で一回広間を見回し、ゲルダの姿を探した。
…ブリジットの傍か。
……アーベルも居るな。
アイツに良い印象は無い。
人狼かそうでないとか抜きにして、警戒する相手だった。
だけど意識を向けたのは少しだけ、今はゼルギウスの掃除を手伝うことにする]
一旦溜まりを吸い取って……そこから水拭きかな?
[血の掃除ってあんました事ねぇから分かんねぇ。
ゼルギウスなら仕事上、少しは知ってるかな?
アーベルに先に風呂に入るよう言われてた>>68から、そうするならオレが今やっとくと引き受けて。
そうじゃないなら一緒に掃除を続けた。
まぁどっちに転ぼうがオレは最終的に掃除用具を引き受けてゼルギウスが浴室へと向かうのを見送ることになる]
―広間―
ああ、いや。良いよ。
僕も、…話させてもらって助かったから。
[アーベルの言葉に笑って、それから震えているという言葉に少しきょとんとして。
手に持ったストールを見ると、困ったように笑った]
そうだね、
ありがとう。
[そっとブリジットの手から離して、首にストールを巻きつける。
先ほどと同じように、そっと前をピンで留めて]
エルには言わないでおいてね。疑うとかじゃなくて、言うと面倒そうだろう?
[気付いたのだろう、と予想して。アーベルには少し笑いかけた。
それから、視線を感じてそちらを見ればエルザの姿があった。ただ、そちらに近づくことはせずに]
ブリジットは大丈夫かな、アーベルにまかせれば。
― 外/井戸端 ―
[昨日までは、建物のすぐ側を見張っていた自衛団員の姿は無く、耳を澄ましても波の音しか聞こえない]
着替えもしねえとなあ…
[ぼやきながら、冷たい井戸水で手を洗う男の身体にはしかし、返り血もほとんどついてはいない。ナイフを拭った袖口と、直接エーリッヒを刺した手が赤く染まっているだけだ]
[ゲルダから礼を言われると、小さく頭を振った。
自分にはこんなことくらいしか出来ないのが申し訳なくて。
ゼルが掃除をしようとするなら手伝おうかと思ったが、今の自分は迷惑になるかもとも思いどうしようか思案するようにアーベルを見た。
彼がゲルダにストールを巻くよう勧めたのを聞くと、邪魔にならないようにそっと手を離して彼女に弱く微笑んだ。]
[エーファの呟きは近くにいた自分には断片的に聞こえて、猫に何かを尋ねるような言葉、
それから人間とか守ってとかそんな言葉が聞こえたような気がする]
エーファ…
[その様子と、胸の中で何かがあいてしまいそうな感覚が生まれて。
目の前のものを失わないように、そのまま腕を伸ばして抱きしめようと。
そのままエーファがこちらに反応を示すまでは一緒にいて、着替えに二階に上がるよう提案することになるだろうか**]
―二階/自室―
[おとうとの優しい笑みが女は好きだった。
義兄と同様に悲しませたくない相手で
失いたくないと思っているぬくもり。
彼の眸に映りこむ自分の表情が何処か縋るようにも見えた]
……うん、嬉しい。
同じなら良かったのにね。
[過去形の言葉に微かな翳りが過る]
ラーイが何より大事で大好きだから……
私をあなたにあげる。
[儚い笑みを浮かべ彼の手へと自分の手を伸ばした]
過去に『場』に居たことがあるなら、衝動の事を知っててもおかしくは無い。
その知識からそう思ってやった可能性は十分にあるさ。
[吐息の混じるコエに少し淡々と返して。
それから少しにんまりと笑う気配を載せる]
あーあ…間近で匂い嗅いじまったから腹減って来たわー。
リート、お前まだナターリエのところか?
クレメンスなら下に降りて来てたけど。
[リートの姿も見えなかったから、オレはそう聲を向けて。
誰か喰いに行かないか?と言いたい雰囲気は伝わったかもしれない]
―二階・ナターリエの部屋―
[占われなければいいと。知られたくないと。
そう思っていたのは深緑にも浮かんでしまっていただろうか]
ナータ…?
[思考としては考えたくないその可能性を排除して見ない振りで。
伸ばされた手を受け止めながら、不思議そうに名を呼び返す]
大丈夫。
さっき、お薬ものんだところだし。
[発作が起きていないかと案じるアーベルに、心配はいらないと微笑んだ。
彼から双子のこと、フォルカーは大丈夫だと聞くと、彼を見つめ。]
それでも。
あの子たちは…フォルカーちゃんは、女の子なのよ?
[つい先日と同じように、ただそう言った。
彼女が彼をどう想っているか、推測でしかないそれは言うつもりはないけれど、それでも気にかけてあげて欲しかった。
こんな時に、使用人の立場を守ってほしくはなくて。]
― 広間 ―
[アーベルの了承を受けて、口許が持ち上がった]
ありがとうね。
じゃあ、よろしく。
ブリジットも、あったかくして、ちゃんと休んでね。
[そっと、先まで重ねていた手を、彼女の頭に。
一度、なでて、離そうか。
それから、掃除を始めようとしているエルゼリートの方へと行った。
その頃にはゼルギウスは外していただろうか。どちらにせよ、近づくのに躊躇いはなく]
手伝うよ。
十分にありそうな可能性だったね。
[淡々とした聲にも同意して。
にんまりと笑う気配に応えたコエは少しばかり上の空]
うん。まだナータのところ。
クレム兄は帰ったけど、俺は今日はこのままでって。
ああ、待って。ナータが眠ったら行くから。
今度は俺が手伝わないとね。
[これまでも時々あったといえばあったような反応だけれども。
違う雰囲気はどこまでコエに出ていただろう。
獣の意識は今にも応えようとしていたのに、それもまた押さえ込んで]
─広間─
[掃除に集中してたのと、声が小さかったのもあってアーベルのエルザ呼び>>82は耳に入っていない。
それはアーベルに取って幸いだったかもしれないけど、聞こえたところで声を荒げる余裕は無かった気がする。
結構、血の匂いにも参っていた]
ん、あ。
いや、汚れるから離れとけ。
[ゲルダから手伝うと申し出があっても>>85、何となく血に触れさせるのは嫌だったから一旦は断りの言葉を紡ぐ。
それでも、と言われるならこちらが折れることになるけども]
今すぐは行かねぇから慌てなさんな、って。
ふーん、ナターリエと一緒に寝るのか。
へー。
[上の空な気配には気付いていたけども、話を聞いて聲に載るのは揶揄いを含んだもの。
何を想像したかはまぁ、俺も男だからな、うん]
うん、お楽しみになるんだったら俺一人で行くから良いぞ?
[顔を突き合わせていればきっと良い笑顔なのが見れたような聲だった]
[姉はどんな顔をしただろうか]
[不思議そうな表情のままで、抱き締める腕は受け入れる]
うん、……あ、でも、
先に、洗ってあげなきゃ。
[着替えの提案をされたなら、腕の中の猫に目を落とし]
水、嫌かな。
タオル濡らして、拭いてあげたほうが、いいかな。
[首をかしげながら、意見を求める]
[惨事の後だと言うのに、それが夢ではなかったという証拠を抱えているのに]
[怯えた様子は一切見せなかった]
―二階/自室―
[深緑の眸に宿る感情にへなりと眉尻を下げた
ライヒアルトの手を支えるように自らの胸元へと誘い]
ラーイの秘密を覗いてごめんね。
もっと早くに私の秘密を言っていれば良かったね。
[鼓動刻む音が彼にも伝わるだろうか]
ラーイにならたべられてもいいよ。
[義兄が居る時には言えなかった言葉。
何度紡ごうとしたかしれぬそれを紡ぎ変わらぬ笑みを向ける]
ねぇ、アーベル。
私、ほんとに大丈夫なのよ?
もう少し休めば、普通に歩けるわ。
[誰とは知らずとも夫となる人がとうの昔に決まっている自分は恋をしてはいけないと解っていたから。
だからこそ、自由に恋ができる彼らを妨げてはいけないと思い、アーベルをみた。
ゲルダの手が頭を撫でてくれるのを目を伏して受け入れて、離れる彼女に会釈をして。]
汚れるとかは、気にしなくても良いよ。
エルが一人で掃除するのも、大変だろうと思うから手伝ってあげようって言ってるんじゃないか。
[どう?と、いつもの調子でゆるく首を傾げる。
それから、少し言葉を止めた後に、そっと手を伸ばして、頭を撫でる。
手はいらない言うのなら、それ以上は言うつもりはないが、じっと、心配そうにエルゼリートを見た]
―二階・ナターリエの部屋―
[誘われた手を振り払うことが出来なくて。
当然のようにドギマギと、別の意味でも挙動不審になっていたが]
っっっ!!
[深緑を大きく見開いた。
暗色の虹彩の奥に、金の光がちらつく。
掌からはその下に命の果実があると知らせる波が伝わってくる]
そん、な。
話す前からずっと、知っていたの…!?
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