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[苦痛は時間を置くほどに増していく。脂汗が廃墟の床にぽたりぽたりと染みをを作り、終いには小さな水溜りではないかと思える程、溜まっていた]
ダメダ……。このままじゃ制御も、痛みも……。
[と、そこでふと思いついた。そうだ役立たずが居たじゃないか]
そうだ……。役立たずだったんだ……。最後くらい俺のために動いてもらっても、いいじゃね? ふ、フフフハハハハハハハ!
[すでに眼は血走っていた。焦点は合わず、ただ脳裏に唐突に浮かんだ考えがなんとも妙案にしか見えなかった。一頻り自分の考えに酔った後、久鷹はマリーのところへと、ふらつく足取りでビルを出た]
あー、泣くな泣くな。
[瞳に雫を溜める様子に慌ててぽむぽむと九尾の頭を撫でる]
とにかく、抑えなきゃならんのは確かだな。
このままじゃあいつ、暴走しかねない。
久鷹に憑いてる奴は、遠慮なく滅しても良いんだよな?
九尾は、人と、久鷹達と一緒に居たいんだろ。
[袂を分かったと言っても、向こうも九尾の一部。改めての確認を取る]
[語られる従弟の評価に、表情の威圧感は少し緩んだかも。
空気の体感温度も、平常に戻ったかもしれない。
ちなみに、当人がどう思っているかは謎です。
色々と、思う所はあるんでしょうが。
ともあれ、最後の一言には、麒麟、心底ほっとしたように一つ息をはいて、「ありがとう」、とぽつり、呟き。
それから、はっとしたように虚空を見上げ]
─寮・自室─
…………んう。
[苦しそうな呻き声を上げ、彼女はゆっくりと瞼を開く。
身体は言う事を聞かず、頭はガンガンと割れそうな程に痛む。
頭を押さえ、億劫に首を動かして周りを見渡すと、そこが自分とケイコの部屋であることに気づく。
そのルームメイトの気配は部屋にはないが、おそらく彼女が運んでくれたのだろう。
身体を起こそうにも、まだ起き上がるだけの気力も体力も戻っていない様子。
外はジーワジーワと蝉が喧しく鳴き続けている。
ジッとしているとどうしても思い出されるのは、邪悪な笑いを撒き散らすヒサタカの姿。]
…………ヒサタカ。どうして。
[つー。頭を押さえた手の隙間から一筋の水──涙が零れ落ちる。]
……んな、情緒のねぇ別れの挨拶はいらねーってぇの。
[情緒あったらいいんかい、というのは置いといて]
ったく……今日はほんと、ついてねぇなっ……!
[使い物にならない、という指摘は間違ってはおらず。
どうにか立ち上がるものの、『音』を紡ぐにも、痛みが集中を妨げた]
[滅する。と、言う言葉に、これまで生きてきて、襲ってきた人々の般若のような表情を思い出し、背筋が震えた。
だが、これまで九尾を助けてくれた人達は、皆優しい人々で……]
「う、うん……。よろしく、お願いします……」
[尤も、悪しき心を滅した後で、己がどうなるか予測がつかないが、それでも九尾は勢い良くお辞儀した]
残念ながら。
剥がす方法は不勉強にして知らないからな。
叩きのめすしかないっしょ。
[アズマの言葉には、緊張しつつも笑みで返す。
両手を軽く触れ合わせ、光と共に金の爪を喚び出した]
ご老公。今の一撃、効いてるよね。
ここは抑えとくから、準備整えてきて。
[何かを覚悟したような声でミツクニへと言った]
生憎、男相手にんなもん持ちたかないね。
[ その返答もまた、何処かずれていたろうが。
ミツクニの動きを認めるも、
障害にならぬと判断して、視線をケイコへと向けた ]
[僅かに九尾が口篭ったのに何かを感じ取ったか]
(そうか、滅して九尾に影響が出ないとは限らない、か…。
となると……)
[考え得る方法は、一つかもしれない。しかし今はそれを口に出すことは無く。これから相対するであろう相手をどうするかだけを考える]
よし、任された。
…それじゃ、九尾はマリーのところに居てくれ。
あの子も、ショック受けてるだろうから。
[行こう、と九尾に手を差し伸べて。再び家を出ると、一路学校の寮へと]
火剋金――だっけ?
どっちにしろ、手を出さない方がいいと思うけどね。
[ そう、一言付け加えて。
現れ出でる金の爪に呼応するように、
渦巻く風が彼の手元へと収束していく ]
そりゃ、わかりやすいやり方で。
まあ、お前をやりたい理由はそれなりにあるし。
よろしく頼もうか。
ダチを勘違いでやってくれた、とか、ね。
[ それは楽しみを一つ奪ってくれた、と読み替えた方が正しい ]
……おま、な……。
移動するのもきついってーのに、気楽、言うなっ……。
[啓子の言葉──その声に篭るものは察しつつも、最初に返すのは、この一言]
とはいえ……ここに火の俺がいると、不利、か。
[火剋金の理を紐解くまでもなく、それは明らか。
そこに場の影響が加わり、火乗金に至れば惨事は間違いなく]
……わかった……従姉殿、連れてくる都合もあるし……ここは任せる、白虎。
……は、言われるまでもねぇ……。
大体、俺が手ぇ出すまでも、ない、だろうからな……。
[付け加えられた言葉に、低く言い放ち。
傷の痛みを堪えつつ、意識を集中して、力を紡ぐ。
解放される、『音』。
その姿は、ふい、と空間から掻き消えて]
[至極あっさりと寮までは到達した。いつ襲われてもいいように、通り道に仕掛けを作り、牛歩で進んできたが、あまりに簡単で呆気にとらえれたくらいだ。
だが、悪知恵を働かせる余裕はあれど正常な思考は働かない。次第に迫る痛みに、焦る心を必死に抑え、己の複製を作り上げた]
さぁマリー、愛しい愛しい王子様が助けを求めてやってきたぞ……。
[複製は、オリジナルと同じく苦痛に苛まれた表情を浮かべながら、マリーの部屋前までいくと、ドアに爪を立てて引っかきながら室内に居るであろうマリーの名を呼んだ]
「マ、マリー……。開けてくれ……。俺、だ……。ぐ! あいつに騙し討ちされて、……血が……ぐぅぅぅ!」
あー。宝条先輩。
あれは本当にあそこまでやるつもり無かったんだケド。
まあ完全にこっちのミスだぁね。
[悪かったと思ってるよ、とは少し殊勝に。
だが構えを解く様子は見せずに]
こちらこそヨロシク?
今度もまた加減してる余裕は無さそうだし。
[スゥ、と気息を整える]
はい、任されました、と。
急いでくれると嬉しいな。
[ミツクニには軽く返しながら、間合いを計るようにアズマを見つめていた]
[普通云々、には、苦笑しながら「あの子も鳳凰ですから」と返し。
疑問の声には]
「無茶をしたようなので……見てきます」
[こう、短く返して、駆け出してゆく。
ここで懇願されても、果たしてどうなったかは、謎ですが]
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