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[少し楽しげに見える笑みに、こちらも自然と笑顔になって]
そうですか。
それじゃ上手くいくときになってきたんですね。
[だからエーリッヒ様は焦ることないんです、と、うんうんと頷く。]
うん。夕飯、途中だし。
女将さん通すと断られるだろうから。
[女将には規定の取り分を出せば、個人的に客を取るのは構わないだろうと思い。
ユリアンが眉を潜める様子には気づいたが、何度か瞬きを繰り返すだけだった。
そこには透明なものはもう浮かんではいなかったが。むしろ、自分がどういった顔を見せていたのかにも気づいてはいない様子ではある。]
さて、それならいいんだけど。
[メモをし終えた手帳をポケットに戻しつつ、肩を竦め]
落ち着くならここから続けるし、落ち着かないなら、散歩でもして、違うイメージを集めるさ。
[頷くユーディットに苦笑めいた面持ちでこう返す。
その散歩の最中に入り込み、そのまま行方不明間際となるのもまた、*お約束なのだが*]
[ハインリヒの砕けたような笑みに瞬き、その一瞬後でふわりと微笑んだ。
自分にとってハインリヒは良い客だったので、彼への印象はよい。
寝物語に聞かせてくれる、村の外の話などはとても好きだった。
流石に小さく呟く声は聞こえなかったが、小さく会釈をかえして食事の続きを始めた。]
[マイペースな食事はいつのまにか終わりを見せる]
さて、その薬を仕上げてしまいませんと。
ごちそうさまでした。
[その場に居た者達には会釈を送りながら立ち上がる]
ん……。
それじゃあ、ちょっと行って来る。
[元に戻るイレーネの表情に、内心安堵の色が広がる。
食べ終えた食器を宿屋の女将に返し、冷めかかっている晩飯を持つと、宿屋の扉を潜った。
向かう先はもちろん、技師の待つ工房]
10人目、小説家 ブリジット がやってきました。
[夜空の下、人通りの少ない村を歩く一人の女がいた。女は小脇に、筆入れやノートや紙の束を重ね、紐で十字に縛った物を抱え、どことなくゆらゆらとした足取りで歩いていて]
……。
[やがて辿り着いたのは、宿屋と酒場を兼ねる一軒の店の前]
[いつもより戻る速度が早かったのは、イレーネを待たせていると言う心境からか。
辿り着いた工房の扉を開くと、未だ作業をしている技師の下へ]
……晩飯、買ってきた。
ここ置いとくよ。
[食事に使うテーブルの上に晩飯を置く。
技師が作業を続けながら「遅かったな」と声をかけてきた]
…向こうで飯食った。
ちょっと出かけてくる。
[端的に言葉を返し、再び工房を出る。
出かけてくるという言葉に、技師の溜息が聞こえたが、そんなことは知ったことではない。
来た道を戻り、宿屋へと歩く。
その動きはやはりいつもよりきびきびとしたものだったか]
[暫らく惚けた顔でイレーネの方を眺めていたが、立ち去るオフリートに気付きジョッキを掲げる]
おー、先生さん。明日よろしく頼むぜ。
おつかれさんだ。
[届けられた鶏肉のサンドを口に頬張り、掲げたジョッキをそのまま口に運んでビールで流し込んだ]
どちらにしても、きっと良いものができますよ。
[微笑む。]
でも、ちゃんと食事はとってくださいね。
あと睡眠と、休憩も忘れちゃダメです。
何かあってからじゃ遅いんですから。
[ぴしっと言い渡して、丁度食事を終える。]
ご馳走様でした。
[手を合わせて挨拶をし、最後にコップ一杯の水をこくこくと飲み干す。]
……はぁ、美味しいです。ありがとうございました。
[女将に改めて礼を言う。]
[丁度、立ち上がったオトフリートの姿が目に入り]
あ、おやすみなさい、先生。
……エーリッヒ様、私たちもそろそろ……。
[促しながら席を立ちかける。]
はい、ではまた明日。
[ハインリヒやユーディットに軽く手を上げて酒場を後にする。
もう少し遅ければ、一人の女性とも出会えただろうか]
[診療所は工房より大分手前、だが鉱山に近い場所にある。
ユリアンとすれ違ったなら再び会釈が交わされたか]
…朝一に届けた方がいいですかね。
[机の上に道具を揃えて呟く。
酒場で見せていた柔和な笑みは跡形も無く、双眸は冷たい翠の光を*宿していた*]
[宿屋へと戻る途中、オトフリートとすれ違うと会釈を交わし。
何を言うでもなくその場を後にする。
戻った宿屋の前。
誰かがその前に立っていたようだが、気にも留めずその横をすり抜け宿屋の中へと]
……戻った。
[食事を続けるイレーネの傍へと向かい、声をかけながらその隣へと座った]
[イレーネに声をかけようかとも思ったが上着の中の金の残量とオトフリートの言った「新しい薬」のことが頭をもたげ]
あー、ちくしょう。色々めんどくせー。
[ジョッキを片手にカウンターに突っ伏して]
金なあ。金さえあればな…。
[今日はもう少しだけ飲んで帰ろうと心に決めて、再びビールを注文した*]
[食事の手を止め、オトフリートにぺこりとお辞儀し見送って。
立ち去ろうとするユーディットらをぼんやりと見ながら、視線は入り口の方へ。
あんまりぼんやりしていたら、女将にコップを置かれた。
ああと、慌てた様子で視線を戻し水を飲み食事を続けると、ユリアンが帰ってきたので残ったパン一切れを口の中に放り込む。]
おかえりなさい。こっちも終わった、よ。
[若干けほりと咽せつつ、もう一度水を流し込んで一息。
女将にお礼を言って、席を立った]
[しばらく戸の前に棒立ちになっていたが、横を一人すり抜けていくのを確認すると、ぱちり、一たび瞬いた後]
……お邪魔しよう。――やあ諸君、今晩は。
盛り上がっているかい。いないかね。それもまた結構。
ブリジット=フリーゲがお邪魔するよ。
[閉じた戸をまた開いて中に入り、女性にしては低めだがよく通る声で、続けざまに挨拶らしき言葉を紡ぐ。それからカウンターへと歩み寄り、「フルーツを」と注文し]
…大丈夫か?
[咽る様子に訊ねかけて。
立ち上がるのを見ると共に席を立つ]
……じゃあ、行くか。
[イレーネの横に立つと、その腰に手を回し、移動を促す]
うん? 違和感、違和感。
何だね。何か妙な気がするが……
嗚呼、そうだ。私はフリーゲではない、フレーゲだよ。
誰だね、私の名前を間違えたのは?
[ぶつぶつと、どこか不満げに。女将が「自分で言ったんだろう」と口を挟めば]
おや、そうかい。
成る程違和感を覚えるわけだ。
どうにも最近記憶力が悪くていけない。
う、ん。大丈夫。
[こくこくと頷いて、店に残っていた人たちに小さく会釈した。
低く声高に話かけるブリジットには少し驚いたが、促されれば入れ違いに店を出る。]
[腰に手を回されると少しだけきょとんとしたが、丁寧に扱われているのだと朧気に解かり、やはりどことなく嬉しそうな様子で。
まだ灯りのついている娼館の裏口へと、二人で向かって*行った*]
[途中で(いつの間にか)出て行ったユリアンが帰ってきて、イレーネの腰に手を回す仕草を見て。
先ほどの複雑そうな顔の上に、更に複雑な表情が塗り重ねられる。
どちらかといえばそれは、希望、だとか、諦め、だとか、相反するようでいて同じ方向に向かう、そういったものの表情だった。]
[入れ違いになるようにして入ってきた女性には、こんばんは、と挨拶をする。
こちらに向けたのは、困ったような顔。
どう応対してよいのかわからない、という困惑。]
[けれど女将には食事の代金を払い終わっていたので、
幸いにして――と思って、自分でその感じ方はどうかとユーディットは反省した――彼女に深く接することもなく、二人は*酒場を後にした*]
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