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[掠れ声で呟いて、続いた言葉に何度も首を振った]
食べない。ナータは食べない。
たべたくなんか、ない。
[それ以上は言わせまいと、押し倒すように覆い被さって。
手は出せない。大切すぎて。鼓動の上に顔を押し当てて抑えきれない涙でそこを濡らした]
─広間─
んー……。
[>>90 赤を吸ったタオルを布袋に詰めながら、オレは曖昧に返事をする。
血の匂いで少し意識が揺れていたのと、やっぱり触れさせたくないしと言う思いが出てたんだけど。
ゲルダの言葉が止まった後に頭に触れる感覚を覚えて、オレは下を向けていた顔を少し上げた]
…なに?
[少しきょと、となっていたかもしれない。
何で急に撫でられたんだろ?]
寝る、って。
[リエルの意味ありげな言い方は、本人が想像した通りのものをこちらにも連想させて。コエはコエで詰まった]
違う違う。そんなんじゃない。
第一、ナータはシスターなんだぞ。
[修道女は時に神の花嫁と呼ばれることもある。
顔を合わせて無くても、どんな表情が浮かんでいそうか。
容易に想像がついて焦りまくった]
いや、俺もまた、渇いてきそうだから。
少しだけ分けてもらえたら嬉しいし。
[とか言っている間に。
それこそ笑ってなんかいられない事態になってしまって。
視界までは繋がっていないことを後で感謝することになるだろうか。三人で話をしていた時の拒絶とはこれまた少し違う沈黙が流れる]
[浴室の方へ向かうにせよ、先に着替えてくるにせよ]
[広間を出る直前に、ゲルダのいるほうに歩み寄る]
[エルゼとの会話が切れるのを、少し待ってから]
……ごめん、なさい、
せっかく、もらったのに、食べられなくて。
[冷めてしまったスープを示して、申し訳なさそうな表情をした]
あとで、片付けます。
……えっと、それと……
エーリッヒさんの、部屋って、どこだったか、分かります、か?
[疑問を一つ]
[彼女からか他の誰かからか、答えを得ることができたなら]
[今日は白猫とそこで寝るつもりだと、フォルカーには告げた**]
―広間―
[手伝いの言葉は重ねない。
ただ、不思議そうな様子に、瞬いて]
……仲がよかっただろう。
[ほんの少し言いよどんだ後に、そう言った。
心配しているとかは、口には出さなかったけれど]
― 広間 ―
そだけどさ、やっぱ心配はするヨ?
[見つめられて改めて言われれば、うーんと頭の後ろを掻いた。]
まぁそれはこの間、再認識した所だけど。
[女の子と言われれば、先日のあれそれをかっつり思い出したが、感想は多分ヴィリーと近い。
でも全部見えてなかったのはいいツボ押さえてたよね、とか余計な事もついでに胸中で思ったが顔に出ることはなかった。
立場や、付き合いの長さが、体に染みたようにそうさせる。
前に体質だと言った事は、あながち嘘ではなかった。
そのおかげで、より人間味のある自分でいられるのだが。]
[それから、エーファの言葉に、ゆるく瞬く。
随分と印象が変わったと思う。フォルカーへと視線を向ける。
この状況が起きた中で、スープという、現実的な話。
だけれど、――それはある種、似たような血かと、どこかしらで納得はした]
良いよ。
明日とか、また別の時に、違うのを食べなね。
体力が持たないから。
……エーリッヒの部屋は。
[もちろんわかるわけもなく、視線を室内に迷わせた]
いやだってさ、男と女で一晩を、つったらさ。
ま、下世話だったか。
[揶揄いでしかなかったから、直ぐに話題は打ち切って。
続いた言葉に、オレは「そか」と短く返した]
んじゃあ、後で回りが寝静まってから行くとするか。
……どうかしたか?
[問いはコエが途切れたのを受けての事。
如何に囁き合えるとは言え、相手の置かれている状況なんて気付けるはずもなかったから、オレには訊ねることしか出来ない]
―二階/自室―
[子供達に触れられてもあたたかで嬉しくなるだけだが
今、おとうとに触れさせた場所は早鐘を打つよう。
ずっと教会で過ごしてきたからこの感情の意味を女は知らない]
知ったのは今朝――…
うん、……知っていたけど誰にも言えなかった。
言いたくなかったから……おにいさまにも伝えてない。
[ライヒアルトにこくと頷き素直にそれを打ち明ける。
横へと振られる首とその言葉に困ったような表情]
でも、たべないと苦しいって伝承にあったわ。
ラーイがくるしいのはイヤだから……。
[根本的な解決にならないことを女は知っていて
それでも自らを捧げることを選ぶのは彼が何より大事だったから]
─広間─
───……っ。
[返って来た言葉>>96に、オレは眉尻を下げて噤んだ口を歪めた]
……そりゃ、仲悪いわけじゃ、なかったよ。
[上げた顔はまた床を見詰める。
仲悪くは無かったけどさ。
…でも、オレ少し疑ったりもしちまったから。
だから、ゲルダに返した言葉は少し歯切れが悪かった]
…エーリッヒの部屋?
それだったら、左側の、奥から三つ目の部屋だよ。
[エーファ>>95がゲルダ>>99に訊ねる言葉を受けて、代わりにオレが答えた。
さっきクレメンスに教えて貰ったからな、これは間違ってない]
[心配はするというアーベルに、でもと言いかけたものの続いた言葉にまぁ、と瞬きして少し赤くなった。]
もう。アーベルったら。
そういう意味じゃないのに。
…アーベル?
[そう言って見上げた後、大丈夫だと言った自分に向けられたのは笑顔、ではあったのだけれど。
こういう顔をする時は必ず何か驚かされてきたから、恐る恐る彼を見つめて名を呼んだ。]
[不意に景色が変わる。
菫の眸に映るのは未だ見慣れぬ天井の色。
顔を埋めるライヒアルトの黒髪に手を伸ばし優しく抱く。
濡れる感触が伝わり彼が泣いているのだと知れた。
ずっと泣くのを我慢している風だった少年の姿が浮かぶ]
我慢しなくていいよ。
[私が居なくなったら彼は泣くのだろうか。
彼を慰める誰かは居てくれるのだろうか。
これから先のことを思えば切なくてスンと小さく鼻が鳴る]
[アーベルから解ったと言われれば杞憂だったかと安堵しかけた矢先、身体に浮遊感を感じて。
自分が抱き上げられていると気付くと顔は耳まで赤くなった。]
あ、あ、あ、アーベル…!?
ま、まって、わ、私あるけるから…!
[子供ではないのに抱き上げられれば恥ずかしくて降ろしてと頼んでも結局聞き入れてもらえず。
そのまま二階まで連れていってもらうことになった。]
―二階・ナターリエの部屋―
ナータも知らなかったんだ。
[クレムにも伝えてないと言われ、深緑から透明な筋が流れてゆく。
熱い想いは溢れるけれど。村の教会からずっと離れずに育った男もまた、感情を正しく理解しきれているか怪しかった]
今は苦しくない。
……たべて、しまったから。
[主語は抜いても伝わるだろう。
友人の祖父の血肉を糧としたのは、この男だ]
だから食べない。
このあたたかさを、俺から、奪わないで。
[ナータを組み伏せたまま。優しく撫でられながら。
彼女が眠ってしまうまで。
彼はその言葉を翻そうとしなかった。自分にも言い聞かせるように]
[途切れた追求をわざわざ蒸し返すことはなく。
けれど短くない沈黙の後に伝わるのは、啜り泣くような気配と、血肉に酔っている時とも異なる、幼げだが同時に艶めいたコエ]
うん。それで頼むよ。
そっちに行く時は、落ち着いておくようにするから……。
[合間に混じる熱い吐息を押し殺す気配は相手に何を思わせるか]
― 二階・ブリジットの部屋 ―
[苦もなく主を抱いてかかえ、無論降ろしての要求は聞く気が無い。]
ほら暴れたら危ないから大人しくしててネ。
ほーら、高い高いー。
[そんな事を言いながら、階段のところでふわっと持ち上げてみたりする。
何か言われても笑んだまま、寄り道はする事無くブリジットの部屋まで行くとベットの上へと降ろした。]
到着っと。
辛いんだったら横になるんだヨ?
[そう翠色の目を見て、さながら兄のようにいい含めた。]
─広間─
わっ。
[さっきより強く撫でられて>>106、思わず声を出した]
……我慢、してるわけ、じゃ。
[ないよ、って言葉までは何故か出て来なかった。
でもどうしてだか涙も出て来ないんだ。
自分で自分が良く解らない。
だから、それ以上返答する代わりに、きゅっと口をきつく結んで。
オレは水で濡らしたタオルでごしごしと床を拭き始めた。
少しずつ、赤が削ぎ落されていく]
[…やっぱヤってんじゃねぇのこいつら。
伝わる気配に想像するのはやっぱりそっち方面で。
ちょっとだけ、呆れの色が載ったかもしれない]
んじゃそうすっか。
落ち着いたら聲かけてくれ。
[それだけ言って、オレは一旦こっちから向こうを感知しないようにすることにした。
だって目の毒っつーか耳の毒っつーか。
下世話っしょ]
―二階/自室―
[ライヒアルトが苦しくないと言えば安堵する。
もう少しだけ一緒にいれるだろうか。
そんな考えが頭を過るが理由を考えれば良かったとも言えず]
……そう。
[胸元に触れる吐息がくすぐったくて微かに身動ぎながら
あやすように彼の髪を梳き撫でて]
さっきね、ラーイは名乗り出るのに反対してくれたでしょう。
本当はね、すごく嬉しかった。
[食べない、と。
奪わないで、と訴える彼の言葉を嬉しく思う。
頷いてしまいたくなるがその願いへの返しは曖昧なまま]
―広間―
[驚きの声>>109にもまったく動じることはなかった。
ただ、続く言葉。止まった言葉。
また、一度、頭をなでて。
床を拭いているのを見て、離す。消えてゆく色に、一度目を伏せてから]
……終わるまで、ここにいるよ。
[彼を見て、拒否は許さないような宣言。
ただ、それ以上の言葉は、動いている間、自分からはかけない]
終わったら、ちゃんとお湯を浴びてくること。
僕に手伝わせないなら、ゆっくりあったまってくること。そうじゃないと、寝てるところに忍び込んで、可愛いピンを留めてあげるからね。
[そんな条件は、ある程度綺麗になってから、普段の口調で言い切った**]
ラーイと一緒に居ると安心する。
ふたりだとあったかいね。
[ライヒアルトが自分と違う存在であろうとも怖いとは思わなかった。
少しだけ舌足らずでこどもの頃のような呟き。
打ち明けて心の重石が少し軽くなったせいか
彼の温度を感じているせいか徐々に瞼が重くなる]
――…だいすきよ、ラーイ。
[囁くような甘い音色を最後に女はまどろみの中におちてゆく**]
―広間→二階・個室―
ね、お願いだから、アーベルおろし…きゃあっ!?
[軽々と自分を抱え歩くアーベルに、それでも降ろしてとお願いしたものの。
逆にしがみつくことになってしまったりで、結局部屋の中まで連れて行ってもらってしまった。
ベッドの上に降ろしてもらうと、恥ずかしかったのを責めたい気持ちと申し訳ないという気持ちの入り混じった顔で彼を見上げ頷いた。]
ありがとう、アーベル。
ちゃんと休む、から。
でも、何も抱っこして運んでくれなくても……
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