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ゲルダちゃんは知らないなぁ。
けどここに俺らが居て、さっき厨房にウェン君が行って。
厨房で何か叩くような音がしてたから、厨房に居るかも知れない。
俺の聞き違いかも知れないけど。
[聞く聞かないを別として]
[マテウスが気に掛ける人物の居るであろう場所を推測した]
!!
[マテウスの声。
目覚めてからはまだ見ていないゲルダの姿。
ゼルギウスの声。
厨房に向かったというウェンデル。
反射的に厨房へと走り出した]
[浮かべるのは、ほんの少し、苦みのある笑み]
ウェンデル。
…あのね。
薬箱、そこにあるから。
頬、痛み止め塗った方が良いよ。
今のあたしが貴方に触れるのは、…きっと嫌でしょう?
[こんな時でも、紡ぐ言葉は、常と同じ性質のもの]
ウェンデル、いたそうだもの。
そうか。
[ゼルギウスの返答に短く答えてから]
エーリッヒ、俺はゲルダのところいってくるっ!
ゼルギウス、馬鹿な気起こすんじゃないぞ?
[二人にそう告げて厨房へと向かった]
はーい。
[ひらりと右手を上げながらマテウスに返事をし]
[けれどその場に残るのが自分だけと知ると]
[ゆっくりと厨房へと足を向けた]
[言は、何処まで聞こえていただろう。
決意は、何処まで伝わっていただろう。
昨日までのウェンデルであれば、届いたかもしれない。
けれど。]
…まるで。
彼を殺せば終わるとでも、知っている口振りじゃないか。
[知っているのと、信じているのと。
その違いすら、今はわからず。]
………言われるまでも、ない!
[疑心と恐怖に突き動かされて。
踏み出した。
左手に握った十字架を。
その切っ先を、ゲルダの顔に向けて、振り下ろす]
[厨房に向かいながら]
エーリッヒ、あいつのことどう思う?
[問うのはゼルギウスのこと]
どう考えても普通じゃないよな…。
[質問の答えに返答が来る前に厨房へとつく]
ゲルダっ!いるかっ?
[マテウスの声にも足は止まらず、厨房へと駆け込んで]
やめろっ!!
[飛び込んだところに目に映る、振り上げられたウェンデルの手。
光る十字架。
掴み止めようと。
ゲルダをも突き飛ばすような勢いで、その切っ先に向けて何も握らぬ右手を伸ばした]
[目に映ったのはウェンデルがゲルダに今襲いかかろうとしてるように見えた姿]
ウェンデルっ!何してやがるんだっ!
[反射的に飛び出してウェンデルを突き飛ばした]
[ゆっくりとした足取りで辿り着いた先では]
[先程感じ取った混沌が形を成し始めていた]
[笑みを浮かべたまま厨房の出入口付近からその様子を眺める]
[至る事はなく。
あっけなく、その身体は突き飛ばされ、壁に激突する。
棚にまで衝撃は伝わり、用意されていた皿が大きく揺れた]
……っ、げほ………!
…うん。
[小さく小さく頷いて。
振り上げられる十字架の切っ先を見上げた]
…信じさせてあげられなくて、ごめんね。
[謝罪を口に、少しの避けるそぶりを。
間に合わない気がした――けれど、聞こえる二人分の声]
[突き飛ばしたウェンデルの方へ向きながら]
どういうことだ?
返答しだいでは……ただじゃおかないぞ…?
[怒気をはらんだ様子でウェンデルを睨む]
[少しだけ力が抜けて、床へとへたりこむ]
…エー、リッヒ。にいさ…、
[かたかたと指先が細かく震える。
握りしめ、縋るものを探すように指先が動いて。
掴んだのは、ナターリエの遺品とも言える聖銀と、同じ場所に入っていた折り畳みナイフ]
ごめんっ。大丈夫か?
[マテウスに突き飛ばされるウェンデル。
本来武器ではなかったそれは空を切った。
数歩の踏鞴を踏むと、ゲルダに向き直り手を差し伸べて。
それから庇うように立ち直す]
………。
[ウェンデルに向け直した翠色は僅かに曇る。
何も言わず、ただ困ったような、けれど譲ることはできないという光を宿して見つめている]
………花が、散った。
[呼気と共に、言葉を吐き出す]
人狼は、いる。
誰をも殺す。
…神は、我等を見放した。
何もかも、所詮、偶像に過ぎない、
[痛むのは傷だろうか。熱が沸き上がる]
なら、やられる前に、やるしかないじゃないか!
花が散った?
そんなことは関係ない、ゲルダを誰にも殺させはしない。
[ウェンデルに怒鳴って返す]
やるっていうなら…、
ウェンデル…お前を殺す。
[静かに告げる言葉は真意のこもった言葉]
何を、馬鹿なことを。
[ゲルダの問いかけにくつりと笑いを漏らす]
俺が人狼だとしたら、どうしてベアタを殺した?
婆ちゃんが言ってただろう。
「人狼は人狼を殺さない」と。
まだ、人を殺させるのか。
お前は証を持つ「人間」だろう。
[光を失った昏い瞳。
全ての拒絶に、声は届かないと気付きながらも]
それでも、それでも俺は。
俺も、ゲルダを殺させるわけにはいかないんだ。
[背後の声。微妙に位置をずらす。
ウェンデルにはマテウスが動ける。
怒鳴った声、今はまだ信じてもいいはずだ]
[エーリッヒの気遣う声に、小さく頷き。
ポケットから聖銀とナイフを取り出したその手で、差し出された手を取った]
来てくれて、ありがとう。
でも、覚悟を決められなかったあたしも悪いから。
[ふ、と息を吐いて立ち上がる]
ヨハナ様は、自分で探した証拠でなければ、とも言ってたから。
あたしには、その言葉は証拠にならない。
…っ、
[静かな宣言。
眼に色濃く宿る、怯え]
そんなことを言ったって、…じゃぁ、どうするんだ。
彼女が、人狼だったら。
殺さなきゃ、死ぬんだ……っ
[理屈ではない。
使命感とも異なる。
ただ、根深い、死への恐怖]
[じっとウェンデルを見据えながら]
ウェンデルは生きたいのか?
殺して、自分だけは生きたい、そう思うのか?
お前は人狼が殺したいのか?それともただ生きたいだけに誰をも殺すのか?
[告げる言葉は冷たくウェンデルに隙なく近づいていく]
ああ、こいつを殺せばすべて終わるのかもしれないな…。
要素となるのは俺とウェンデルだけだ。
[心の中のつぶやき]
ゲルダは殺させない、ほかの誰にも。
ゲルダだけは誰にもやらない…。
ああ、さっさと殺してしまうか…こいつを…。
[ぱちん。
折り畳みナイフの刃を出して、聖銀とともに構える]
…マテウス兄さん。
あたしを理由にしないで。
ウェンデルは、そうじゃないんだし。
[ナイフを手に向かうのは、真紅の瞳を持つその人]
…終わらせたいんです。
[握った聖銀に宿るような、強固な意思を翠玉が映す]
…そうか。
殺したければ殺せば良い。
だがそれで終わらなかったらお前はどうする?
聖痕を持つウェンデル。
イヴァンにより人と判じられたエーリッヒ。
お前以外で唯一、身の証明を持ち合わせていないマテウス。
お前は選べるのか?
[浮かべていた笑みは消えた]
[真面目な表情でゲルダに問いかける]
――…僕は、 死にたく、ない
[動けない。
視線から逃れるように、硬く目を瞑る。
痛みも熱もわからない。
生への執着。
生きて、どうしようというのか。
他者の事も後の事も、今のウェンデルの思考にはない]
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