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……大半がガラクタか。
興味ねぇな。
[呟いたのは露天商が己に声をかけた直後]
[むしろ最後っ側の言葉に被っていたかも知れない]
[どこかで、と言われ露天商に隻眸を向け]
さぁて、俺も色んなところ出歩いてるからな。
流れの露天商なら別の街で見かけたことはあるかもしれん。
[紫煙交じりに言葉を向ける]
[友人が己に気付くと手巻きタバコを右手で摘み、大きく紫煙を吐いてから]
特には。
チンピラ共じゃ話にならん。
[その言葉から何をしてきたかは想像に難くないだろう]
お前こそ何してんだよ。
んな露店なんざ覗き込んで。
[真っ黒な顔の少女は、隻眼の男を珍しそうに、見上げる。
くい、と鼻を親指で擦って首を傾け]
あんま見ねぇ顔だなぁ?
でもコイツラと知り合い?あんた、誰?
俺はカヤだ。
[自分より背の高い男の顔を覗きこみ、
白い歯を見せてニカッと*笑った*]
[新たな客の発した最初の言葉が耳に届くと、むっとして口を尖らせ、慌てて営業スマイル]
じゃあ、どこかの街で見かけたのかもしれないね。
……おや、修道士さんのお知り合いですか。
えっと、今の交換レートだと。いちまい、にまい、さんまい……
[修道士の前で、用意した釣りを一枚一枚積み上げていく]
商談の最中か。
俺が行くと邪魔になるかな。
[広場に入れば連れは客と話しているようだ]
[少し離れた場所で様子をうかがってみる]
おいおい。
品物全部買うつもりか、彼は?
[金貨が見えて目を瞬いた]
[流石に心配になってきて露店の方へと歩きだす]
あン?
[声をかけられ見上げて来る子供に気付く]
[今まで視界に入らなかったのはその身長さ故だろうか]
[友人に、何だこいつ?と指差して訊ねつつ]
俺はこいつのダチでヴィリーってんだ。
そっちの露天商はどっかで見かけたかな、程度。
[友人と露天商のことは親指で示しつつ、名乗られたために一応名乗った]
その様子だと、またやらかしたのかい。
程々にしといてくれよ。
[仕方ないといった風に肩を竦め、友人を仰ぎ見た]
そこのきかん坊を追い掛けてみたら、良い品を見つけたのさ。
[手は隣の煤けた姿を示し、次いで壺を示すように動く。
先のガラクタという言葉は聞き流したのか、当人は満足気だった]
手を出してきたのは向こうだぜ?
正当防衛だよ。
[窘めるような友人の言葉もどこ吹く風]
[己を正当化して反省する気配は見せない]
きかん坊ね。
……これが、良い品?
[示された壺に隻眸を細めた]
[疑わしげな口調と視線]
ああ、元孤児院の子だよ。
今は自警団長のとこにいる。
[説明を求められ、無難な返答。
当事者から何らかのリアクションが向けられたとしても、涼しい顔で流しただろう。
銀貨が積み上げられる横で、よもや別のところで心配されているとは思わない]
[修道士のやらかしたという言葉を聞けば、胡散臭げにヴィリーと名乗った見やる。心の中で危険人物に認定した]
良い品ってのは、わかる人にはわかるんです。
ヴィリーさんも、良い物に触れてもっと目を養うといいですよ。
[にこにことスマイルを浮かべたまま、銀貨を積み上げる]
孤児院…ああ、お前んところのか。
[煤だらけの子に関して説明されると、納得の意を示して]
[露天商には疑わしげな表情をしたまま]
生憎と色んなところを巡ってるお陰で眼は肥えててな。
ちなみにこれはいつ頃の作だ?
[親指で壺を示し、営業スマイルのまま銀貨を積み上げている露天商に訊ねかける]
度が過ぎれば過剰防衛になるよ。
[友人への指摘はやはり微妙にズレていた。
壺に疑わしげな目が向いたことに、小さく首を傾げる。
しかし横からの少女の声に頷いて見せる辺り、騙されている可能性とかは頭にないらしい]
ああ、持ち合わせの問題か。
[用意されている釣りはどう見てもありえない額だが]
[買い手が満足そうなので苦笑しながら近づいた]
良い品かどうかは買い手によっても変わるもの。
ですが、ベッティ。
[隻眼の人物には柔らかな声をかけ]
[ただいま、といいながら共に旅する少女を見る]
イキシアは俺にとっても拠点。
そのことは忘れずに?
……えっ。
[ヴィリーの言葉に、笑顔が一瞬引きつった]
さ、三千年以上前の物ですよ。ここよりずーっと東の地方で出土した逸品です。この底の方にある文様に特徴があってですね
……っと、師匠!おかえりなさい!
あ、あははー。そうですね。何だか今日は気分がいいから、もう少しまけたくなってきちゃったなー、なんて。
[笑顔のまま、すすす、と金貨を一枚、指で修道士の方へ]
だが利益を考えつつ相応の値で売るのが商人ってもんだろう。
高額吹っかけて利益を出す奴は悪徳商人だ。
[急にかけられた柔らかい声にはまず反論を向ける]
[それから遅れて隻眸は声の主へと向き]
……アンタならそれが分かってると思ったが。
[見覚えのある顔にそう言葉が続いた]
[隻眸は引き攣った笑顔を見逃さない]
…ほぅ。
三千年以上のものにしては色が鮮やか過ぎるな。
塗料と言うものは種類によって度合いが違うが、少なからず劣化するもの。
それだけ古いものならもっとくすんだ色をしているはずだ。
それにこの文様、若干形が違うように見えるが?
[細められた鋭い隻眸は露天商を見つめる]
[前者の色合いはともかく、後者の文様に関しては事実かどうかは甚だ疑問だが]
[告げる様は自信に満ちたそれ]
[まだもう半分、とベッティには指で示しながら]
確かに。
商売で一番大切なのは信用ですよ。
…おや、誰かと思ったら。
[今気づいた、というようにヴィリーを見る]
ああ、こんにちは。
ってヴィル、知り合いなのか?
[露店商が師匠と呼ぶ彼と、友人に接点があるとは思わなかったよう。
開き直りには苦笑を零したのみで、それ以上何も言わず]
…あれ、いいのかい。
[周囲の話を聞いているのかいないのか。
少女の指先で返って来る金貨に瞬く]
知り合いってほどでも無い。
昔の取材対象だ。
[友人の問いには短く答え]
また会うことになるとはな。
それも事件でも何でも無く。
……いや、巻き込まれていないだけで事件は起きてるか。
[元取材対象に返しながらくつりと笑う]
俺の知らないところでまた事件に遭遇したりしてねぇだろうな?
……そこはほら、特殊な保護魔法でもかかってるんじゃないの?
鮮やかな色合いがいつまでも残りますようにってね。
[ヴィリーから形について問い詰められると、たじろぎながら]
そ、そうかしら……じゃあ、もう少し新しいものなのかも。
に、二千年前くらい?いや、千五百年くらい……かな。
[ハンスの指示にしぶしぶ頷くと]
ええ、いいんです。お祭り価格なんです。
[修道士に答えつつ、涙目でさらに銀貨を積み上げていく]
文様は間違いありませんよ。
ただ、まあ…ね。
[肩を竦めてみせる]
[それから若干小さな声になって]
見逃してやってくださいよ。
この街では初めて場を任せたから、気合が入りすぎたんでしょう。
本当に悪い品ではないんです。
[粗悪品を扱わせるようなことはしていないつもりだ]
[まあ三千年は幾らなんでも]
[普通なら買い手だって気づくだろうが]
こんにちは。
ええ、ちょっとしたご縁がありまして。
[ライヒアルトには笑顔で会釈した]
俺は別に常に事件と共にいるわけじゃありませんよ。
……疲れるな。
客相手じゃなくさせてもらうよ。
[くつりと笑う相手にため息を吐いた]
[本当は見た瞬間に顔を思い出したくらい何度も会っている]
[素の口調に戻って隻眼を見返し]
巻き込まれていないだけで起きているって?
ああ、もしかして例の噂のことか。
それを追いかけてこの街へ?
[保護魔法と聞けば、ふ、と鼻で笑って]
かかってるかどうかも分からず勧めていたわけか。
ああ、根本的なことを言わせてもらえば。
この絵付けの手法は三千年前にはまだ確立されていない。
残念だったな。
精々五百年から千年前だ。
[それはそれで悪くは無いものなのだが]
[露天商の師らしき元取材対象の指示もあってか代金は戻るようで]
[それを確認するとそれ以上のことは言わない]
文様のはハッタリさ。
もう少し勉強させた方が良いんじゃねぇの?
躾もプラスしてな。
[肩を竦める元取材対象にくつりと笑って見せた]
好きにしろ。
俺も客としているつもりじゃねぇ。
[素の口調になる行商人にそう返して]
[訊ね返されたことには手巻きタバコを口元に戻しながら軽く頷いた]
ああ、それだ。
正しくはそこの奴に呼び出されたんだが。
[指し示す親指の先は己が友人]
……ううー。
[ヴィリーの言葉に唇を噛んで唸る。悔しいが言い返せるだけの知識はなく、本当?と問うような視線を師匠に向ける]
ええー!ハッタリ!ハッタリって!
……酷い。ずるい。嘘吐き。悪党。人でなし。
[肩を落として呪詛の言葉を紡いでいたが、やがて興味は旧知らしき二人の会話へと移って行く]
……例の噂?
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