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[昨晩食事を済ませ、祭り開催で賑わう村を自宅に戻れば
短い睡眠で、周辺の掃除に駆り出された青年。]
[数人で組んで通りや、村の入り口辺りのゴミを払う。]
[…………その異変が起きたのは、
何人かで村の入り口を掃除している時だった。]
[同じように掃除に駆り出された青年の一人が、
村の入り口まで来ると、しきりに歩きづらそうにするのだ。]
[他の青年が「おいおい、それは今度は何の"妖精がいる"アピールだ?」と
笑う中も、その青年は歩きづらそうに村の入り口を掃除する。
勿論青年アーベルも「…手の込んだPRだ」と苦笑し
その青年の動きを事実だと思うことはなかった。]
[何故か村の外に行こうとしない…行けない自分。]
[青年は掃除をしつつも、自身におきたその異変に首を傾げつつ
周りの人をなんとか誤魔化しながら、村の入り口の掃除を終えた時には、
掃除をしただけとは思えない疲労が体内に*蓄積されていた……*]
…ねむ。
[思わずなまあくび。
昨夜は酒場で青年団の先輩達に捕まり、この時間まで付き合わされた訳で。]
…病み上がりなんだからもっと気ぃ使ってくれても…。
[夜明け後の清掃タイムをだらだら手伝って、*自宅へ戻るのでした*]
[――まだ月の姿が薄く残る、夜と朝の間の刻。
裏路地を、ぱたたたっと翔る小さな影。
やがて、影は音もなく高い天窓から別荘に入り込んで、彼女に与えられた部屋へと姿を消して。
『ぽふり』
人の姿に変じるのとベットに沈むのと、どちらが早かったろうか。]
[――昨夜、舞いの儀式を終えた後。
花冠を祭壇に飾り、羽の付いた衣装から大き目の侍女服へと戻っても、彼女の意識は見事なまでに……ふわふわと浮き上がっていた。
にこにこと笑みを浮かべていた…らしい事は覚えているが、どんな受け答えをしたかは記憶に怪しい。
主親子と共に別荘へと戻っても、とても眠れはしなくて。
元の姿に戻って、天窓からそっと抜け出たのは、夜もかなり更けた時刻だった。]
─工房・自室─
[てちてち、と相棒に頬を叩かれ目を覚ます。何となく気だるいのは、昨夜酒場で騒いだからか]
んー……。
[唸るような声を上げつつ、目を覚ます。
ぼんやり見上げる天井には、光のアート]
ひかり……はね……。
[一瞬で変わって行くその形を見ながら、ぼんやりと呟いて]
……出店の準備、しねーと。
[それから、ゆっくりと起き上がって、こんな呟きをもらす。
作っておいた煌めく細工たちを、大切に抱え上げ、それからふと、作業台の上の紫水晶を見やり]
……はあ。
[嘆息。それでも、通りに出て自分の出店の準備を始める時には、*多分、きっと、いつも通り*]
[祭りの余韻か、まだ人影が残る表通りを避けて。
裏路地を辿り、昼間見つけた『Fairy's fire』と看板を下げた店へと、するり、潜り込む。
微かな青い光を放つ、馬のランプにぺこりと御辞儀して。
ランプ達の眠りを妨げないように…静かに埃を払い、床に散る小さなガラスの屑を掃く。
微かな青い光の中、小さな影が躍るように揺れる。
最後に、もう一度ぺこりと御辞儀して。
小さな訪問者は、するりと部屋から去っていった。]
[――そして今は、浅い眠りの中。
焦げ茶色の瞳を瞼の下に隠し、幸せそうに微笑んで。
天窓が僅かに開いている事にも、*気付かぬままに。*]
[昨晩。舞いの儀式が終わった後、機嫌のよさそうな母と、何処となく様子のおかしいユーディット共に、別荘に戻って。
ベッドに横になり目を閉じてからも、あの幻想的な光景は、彼の瞼の裏に焼きついていた。案外と直ぐに眠りに落ちたようにも、長い間、物思いに耽っていたようにも思えて、何時寝たのか覚えていなくて。
目が覚めた時にも、自分が夢の中にいるのか、現実にいるのか――
よく解らない、妙な気分だった]
[それでも顔を洗い身支度を整えれば、大分すっきりとして。
食事を済ませ、散歩をしたいと言い出した母と共に、柔らかな陽のひかりの満ちる道を、ゆっくりと歩く。
鳥の囀り。人の話し声。雪を踏む音。
この村では、時間が、遅く、静かに流れるように感じられる。
祭りは数日に掛けて続くらしく、彼が此処から解放される事は未だ無い。少しずつ慣れてきた所為か、他の要因か。来た時程に、早く帰りたいと思う事は無くなっていたが]
[途中、母の足が、急に止まる。
宙に視線を巡らせ、何事かを考え込む様子で]
母上?
[不思議そうに見上げて問えば、彼女は何でも無いと言うように、同い年の子に比べ、些か低い彼の頭をそっと撫ぜ、花笑みを浮かべたが、其処にほんの僅か、困惑の色が見えたのは、彼の気の所為だったろうか。
彼はもうそんな歳ではないのだからと言いつつも、それを拒否する事もなく。
母が再び歩みを進めるのに合わせ、母子は昼下がりの散歩を*楽しむのだった*]
元より此処を出るつもりもなかったが…
『そりゃそうよね、此処に何の為に来たんだか』
言ってくれるなよリネット。
丁度祭りの期間というなら楽しみたいじゃないか。
[人影の無い馬屋で息を吐く。
眼前の馬も呆れたように小さく鳴いた]
『本当に我儘なんだから、貴方は』
…だから言ってくれるなよ。
『仕方ないわね。結界の綻びがないか調べてきてあげる』
[言うなり馬は長い黒髪と同色のドレスを纏う浅黒い肌の女性に姿を変えた。その場には動かない馬の幻影を作り出して]
[人影の無い馬屋の中。
動く気配を見せない愛馬の姿を見遣り息を吐く]
…どうしたものかな…
[ぼやいたところで聞いてくれるのは他の馬たちだけで。
もう一度、深く息を吐いた]
仕方が無いな、嘆いていたって状況は変わらん。
[踵を返せば宿の前の大通りに出る。
そういえば、イレーナとユリアンも出店しているのだろうか。
思い当たれば近場を歩く人に声をかけ*道をお伺い*]
――Midnight with the stars and you
Midnight at a rendezvous――
[人の良い老夫婦の営む小さな農場]
[長い髪を後ろで纏め、袖を捲り、くすんだ色のエプロンをつけて]
――Your arms held a message tender
Saying I surrender all my love to you――
[小さな声で歌を紡ぎながら、慣れた手つきで袋の中身を容器に移し替える。さらさらと音をたてて流れるのは、小さな穀物の粒の様だった]
よ…っと。
[重みのあるそれを持ち上げ、慎重に運ぶ]
[今日は祭りで忙しい農場主に代わり、家を空ける間の動物の世話を頼まれていた]
[不用心な気もしなくはないが、それだけ信頼されていると思えば悪い気はしない。何より生活費の為でもある]
[容器をあけると、鶏たちが我先にと群がり餌を突つく。これが終われば仕事も一段落、といったところだった]
[暫く眺めた後、外に出る。農場は殆どが雪や水溜まりで覆われていて、長靴越しでも地面の冷たさが伝わる様だった]
[祭りで賑わう大通りとは違って、此処には何時もの静けさがある。その横に伸びる道を真っ直ぐに行けば、村の入口が見える筈]
[と]
…――ッ
[くらり]
[一瞬視界が霞む]
[まるでそれ以上其方のほうを見ることを拒む様な]
[如何してそんな事を思ったのかは分からないけれど]
[再び顔を上げた時には、視界は正常を取り戻していた]
…
[きっと疲れているのだろう。今日は働き詰めだし――何より昨日は祭りの始まりの日だった]
少し、休みましょうか…
[台所を借りて、お茶でも淹れて]
[考えながら、家の中へと*入って*]
[子供は、目を覚ました。
明け方、太陽、上る頃。
すてきな舞姫は窓から眺めた。
綺麗だったから嬉しかった。
ううん、それよりもっと嬉しいことを
子供は思う。綻ぶ。]
お祭りは楽しい。
楽しいは幸せ。
あまいものも、嬉しいことも、いっぱい。
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