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忘れたい、何か。
[小さく呟き、左の腕を押さえる。
刹那、浮かんだ翳りを振り払うよに、蒼氷はしばし閉じられる]
『番人』には、これ以上は何も期待できそうにないだろ。
言うだけは言った、って感じだしな。
[開かれた蒼氷は、常磐へと向いて。
それから、窓の向こうの月へと向かう]
……少し外、歩くか。
[零れたのは、小さな呟き]
それは結構なことです。
少なくとも、仮定の域を出る推察をするには、
未だ必要とする情報が足りないのですよね。
[シャーロットの言葉を受けて、諦めたようにメモを閉じる。]
貴方。見たところ、優秀そうな印象を受けます。
そのような優秀な遺伝子が、血液という形で
外部に流れるのは大変勿体のないことです。
飲み干して、貴方に肖りたいものです。
その方が、有益な気がしないでもありません。
[にこりとハーヴェイに。]
どうも安定しない……
だいぶ、思い出せてはいるのだが。
[記憶の上書きに伴う負担に、脳髄が悲鳴を上げているのだろうか。]
夜は冷えますから。
[呟く言の葉は、何処までが真実か]
[熱は与えるのみ。奪う事は無い]
さあ。
作為など、何一つございませんが。
[碧眼を伏せ、身体を離す]
――では。
[かけられた息をかわす様]
[女は、歩みを始める]
[それは外へ向かう*方角へ*]
……大きなお世話。
[クインジーに返すのは、吐き捨てるよな一言。
彼が扉の方へと向かったが為か。
外へ出るために、そちらへ向かう、という選択肢は選び難く、しばしその場で逡巡する]
そりゃどうも……と、言う所かね、ここは。
もっとも、そう言われてはいそうですか、ではどうぞ、と分けられるもんでもないが。
[イザベラに対しては軽く、肩を竦めて見せた]
そう言うことよ。
現状はあまりにも漠然とし過ぎてる。
[メモを閉じるイザベラに肯定の言葉を返し。人が散開するような様相に、使用されたティーセットを片付け始めた]
私は少し休んでこようかしら。
考え過ぎて疲れちゃったわ。
ああ、残ってるクッキー、食べたい人が食べてしまって良いから。
紅茶も残ってるけど、冷めてると思うから飲みたいなら淹れ直してね。
[ポットとクッキーの皿の横に未使用のティーセットを並べ、使用済みのティーセットをトレイに乗せて立ち上がった]
[ともあれ、ここにいても何が変わる訳でもない、という思いはあり。
逡巡の後、手をかけたのは、窓]
……ああ、悪いが、中から閉めといてくれ。
[広間にいる者たちにこう、声をかけ。
返事を聞くより早く開け放つと、窓枠を身軽に乗り越え、月の照らす世界へと*飛び出した*]
忘れたい、何か。
[落ちた視線は布に包まれた足に向く。
踝の痕は翠からも隠されている]
足掻いて、抗って。
そうすれば違う終わりを迎えられるでしょうか。
[口元だけで笑う男に投げた言葉は、確認の響きを帯びて]
その通りのようです。
私も少し…。
[立ち上がり、一瞬の停滞を挟んで椅子の傍を離れる]
死に急いでいる心算はありませんよ。
自分の限界は知っています……その筈です。
ああ、すみません。
意地を張っているのではないですよ。
目眩さえ治まれば……多分。
それに幾分かましになってきました。
[少しまだ疲れの残る顔に刷毛で刷いたような脆い笑みを浮かべた。]
あ。
[窓から抜け出してゆく青年は止めるまもなく。
残された声に何となく従い、開け放たれた窓に近寄り閉じた]
…失礼します。
[それから広間に残っている人々へ礼をして。
ゆっくりと扉から*出て行った*]
[部屋を出てゆく面々を見送り、軽く会釈をする。
それからゆっくりと大きな息を吐き、]
[どさり、とソファに倒れ込むように深く身を委ねた。]
ふーん、作為ねえ…。
[かわされた白い面で長い睫毛が伏せられ、離れていく姿を見送る。与えられた熱が消えて行く]
あーあ、行っちまった。
素直に乗りゃ美味しい思いが出来たかねえ?
惜しいことしたかも知れねえが…今はお前が一番さ。
[抱えた酒瓶の一本を持ち直し、音高く口付ける]
あ、ちょっと。
[窓から出て行くハーヴェイに声をかけるも、既にその身は外へと躍り出て]
…一階だから良いものを。
二階とかだったらどうするつもりだったのかしら。
[一度トレイを置いて窓を閉めるかとも思ったが、それはネリーがしてくれたようなのでそのままその様子を眺め。広間を出て行くクインジーとネリーを見送る]
ナサニエルも、眩暈が治まらないようならそこで休んでおくのよ。
また途中で倒れたりされてもかなわないわ。
[ソファーに身を委ねる様子を見やってから、「それじゃ」と告げて自分も広間を辞した]
女の尻追っかけるのも悪くねえが、一晩の宿の為に貸しでも作っとくか。
[外への扉を一瞥し、重いブーツを前に動かす。途中見かけたクインジーに内心の冷や汗を隠し、シャーロットとすれ違いに広間へ戻る]
ほらよ、気付け持ってきてやったぞ。
[ソファーに沈む青年に場違いに緊迫感のない声を投げ、無遠慮に踏み込んで面々を見回す。ぼさぼさの髪と同色の髭面が呆れを示した]
…おいおい、何そろって湿気た面してんだ。
この世の終わりでも来たわけじゃあるめえしなあ?
[物憂げに、仰のいていた顔を髭面の男に向ける。
瞳は暗い青に沈み、視線に力は無く、]
[掲げられた酒壜にだけ、口の端を僅か持ち上げた。*]
[キッチンへ向かおうと廊下を歩くと、反対側からナサニエルを運んできたもう一人の男性が歩いてくる。あ、と声を出しかけたが、それは漂ってくる特有の匂いにより飲み込まれた。暗がりの中、眉根に皺が寄っていたのは果たして相手には見て取れただろうか]
……お酒くさーい!
どれだけ飲んだらああなるって言うのよ。
[その言葉を発したのは、もちろん相手の姿が見えなくなってから。ナサニエルの恩人と言う認識から一転、酒臭い男として認識された]
[その後はキッチンへと向かいティーセットを片付けて。全て終わると階段を上り空いている部屋を見つけて中へと入った。疲れのみならず、話を聞いての緊張もあったのだろう。それが解けると共に睡魔に襲われ、ベッドへと横になると直ぐに意識は*闇の中へ*]
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