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―工房『Horai』/客室―
[見回した客人たちは、それぞれどのような表情をしていたか。
ミハエルの子どもらしからぬ、不安より面倒という表情に、
ゼルギウスは少し紅を見開いたかもしれず。]
あ、傘じゃなくて、レインコートもあっ……―――
いっちゃった。ライ君が嵐みたいだね。
[怪我人もだけど、雷見て泣く子も気になったんだろうなぁ。
などと、先程の会話を思い出し、小さく呟く。
その呟きが、まるで妻の不安を煽ったかのように、
イレーネは仕事をしてくると謂う。
おそらくは、妻は不安などがあると仕事に打ち込むタイプ
ということは言動から識れること。]
うぅ。気になるけど、仕事の邪魔をするのは……――
[客人を……と言葉を貰ったこともあり、
妻を心配しブツブツと呟きを漏らすも、
忠犬のように律儀に命を護り、客人をもてなすことはやめず]
ん。佳かったら空き部屋2つあるし、
今晩はそこで休んでいったらどうかなぁ?
[夜も遅くなったなら、1つそんな提案を2人に向けた。
2人が承諾してくれたなら、2人をそれぞれ部屋に案内するだろう。
もし、万が一、ライヒアルトのように2人が帰ると言い出したなら、
流石に女子どもを1人で帰すようなことはゼルギウスも出来ず、
*送迎を申し出るかもしれない*]
―修道院―
[浴室に向かえば湯からはマリーゴールドの淡い香り。
指示通りである事にゆると目を細め青年は湯を浴びる。
冷えた身体に湯の温かさとハーブの香りがじわりと染み渡る]
未だ雨は止まねぇか。
仕方ねぇな。
[換気の為の窓越しに聞こえる雨音に耳を傾けながら
青年はそんな事を独り言ちる]
折角あったまったのにまた濡れるのも……
んー…、む。
取りあえず休んでから考えるか。
[雨が止むまでもう暫く間があるだろう。
青年は湯浴みを終えると自室へ戻り
雨が止むのを待つことにした**]
―工房『Horai』―
そう思ってくださっているのなら、嬉しいわ。
[とは女も村の住人だというライヒアルトに。
人差し指を立てる仕種に頷くが早いか、ゼルギウスには聞こえていたようで、その応えにまた笑いが洩れた。
その間も響く雷鳴や稲光に調子を崩すようなことはなく、紅茶をのんびりと啜っていた、が]
……今のは?
[今までとは種の違う、振動を伴うような音には流石に手も止まり、窓の外を伺った。
この場所から原因が見える筈もなかったが]
何処か崩れたのかしら。
いやぁね。
[それでも推測はできて、困り顔で片頬に手を当てる]
お帰りになるの?
ええ、わたしはそのつもりだけど、あなたこそ危険では……
[そんな中帰るというライヒアルトを、言葉で引き止めることは叶わず。
半ば立ち上がりかけた体勢で、そのまま見送る形となった]
ええ、大丈夫。
危ないと思ったらすぐ逃げるわ。無理はしないから。
[人の数が少なければ、とは思うものの、
産まれてもいない子の事を思えば憚られる。
気遣われる柔らかな同胞の声には、獣の喉がうると小さく鳴った。
夫の役目といわれれば、
その少し後の夫の声に、獣になっても変わらぬ、瑠璃色の目を細める。
人間が出来る精一杯は、狼のそれには及ばない事が多いのに
それでもなおと、告げる夫が愛しかった。]
ありがとう、ヴァイス。心配しないで。
……うん、やっぱりヴァイスって名前、似合ってるよ。
[そう微笑みながら、彼も望んだ名を呼び笑み告げた。]
ええ、どうぞお気遣いなく。
[工房へ向かうイレーネはそう言って見送る。
すぐには止む気配のない風雨吹き荒れる外を、もう一度見遣る。
それからテーブルの上に目を戻して、空になったカップを一所に集める]
水場を少しお借りするわね。
お世話になりっぱなしも悪いから。
[ゼルギウスに言って、それらと共に台所に向かう。
軽い引き止め程度ならやんわりと断って、食器を洗い、乾かしておく心算]
―崩れた崖付近―
わぁ……。
[血を流し絶命しかけているそれは、
甘い匂いに満ちたとても魅力的なご馳走で。
うっとりとした声を漏らすと、獣は顔を旅人のそれに近づけた。]
貴方は私とヴァイスの子の一部になるの……
何も怖がる事はないわ。痛いのも、すぐに終わるから。
[獣の声は、只の人には届かない。
おそらく傍らで低く唸っているだけにしか聞こえないだろう。
現れた灰銀の獣に、殆ど見知らぬ旅人の閉じられかけた目はやや開いた。
途切れ気味の息に恐怖の色が混ざるのを見て取れれば、
悲鳴を上げられないよう、容赦なく前足で喉を押さえつけ、
赤い大きな口をあけ、その胸元めがけて
―――――牙を立てた。]
[その後で空き部屋の話をされたなら]
ごめんなさいね、長居するつもりはなかったのだけど……
よかったら、お借りするわ。
[申し訳なさそうな表情と共に、世話になる旨を*告げた*]
[跳ねる体をもう片方の足で押さえつけるだけで足りたのは、
リヒトが負わせた傷のせいだろう。
それでも時折喉から零れるくぐもった悲鳴を
誰かに聞きとがめられないようにしながらも、
時間が経つのも忘れ、食事に夢中になっていた感は否めない。]
ああ……美味しい……。
[久しぶりの人の肉だった。
固い守りの奥にある赤い甘い果実を、遠慮なく食いちぎり、
喉の奥に流し込むと、うっとりと目を細めた。
それからその周辺も、遠慮なく喰らいはじめ―――
だから人が近づいてくる気配に、気づくのは一歩遅れてしまった。]
!
――――……
[慌てて喰いかけの身体をそのままに、
一度道の更に奥へと身を隠せば、近づく気配は複数感じられた。
戻ればおそらく姿を見咎められるだろう。
仕方なく、少し離れた場所から暫く様子を伺い人が去るのを待ったが、
ざわつく気配に、おそらくソレが見つけられただろう事を知ると、
すぐさまその場から静かに離れて、物陰の闇の中へと一度*姿を晦ました。*]
頼りにしてるさ。
[白に投げる聲に響きの差はない。
人である彼の心の内までは知らぬが
純血の獣である青年は彼を厭うてはいなかった。
同胞の伴侶であり自分達の聲を聞く者。
彼の聲からヴァイスルヴの名が特別である事は知れたから
否、それが分かるからこそ伴侶以外には呼ばせたくないだろうと
勝手にそう思い呼ばずにいるだけ]
――……。
[糧を前に漏らされた同胞の聲。
うっとりとした音色に思わず目を細める。
リヒトの眼に同胞の食事光景は映らないが
彼女の狩りの腕は確かだと記憶していたから
さして心配もせず雨が止むのを待っていた**]
―宿屋―
大丈夫大丈夫。
[去り際心配するアーベルの言葉にはひらひらと手を振り、
ゆったりと何かを考えるような様子は気にはなっていたが、必要以上の言葉をかけないようにしておいた。
調理場にてスープを温める手が一度止まり]
今のは結構しゃれにならない音だったな……
[アーベルの心配が現実になったかもしれないなと思いながら]
最悪、親父の帰りも遅くなりそうだな。
[それでもどこか、少しばかりそれが本当ならばと、嬉しさを感じるのは不謹慎だなと、心の中で自分を*諌めたりしていた*]
夜半まで続いた嵐は朝方になってようやく去り
現場に向かった自衛団はそれを発見した
人目のつきにくい場所に放置された
心臓周辺をごっそりと食い破られた遺体を
昨夜の話が怖気と共に浸透してゆく
団長が名前を挙げたのは12人
宿屋であれば集まれよう
雨上がりの村の中
硬い顔つきの団員達は呼び出しに向かった
―昨夜・詰所―
良い。放っておけ。
[一時的に詰所に保護した男>>89の叫びには頭痛を堪える仕草。
疑っている一人ではあったが、突然の話に困惑している団員達の目の前でいきなり殺すわけにもいかない]
ワシも審問の場を離れて久しい。
かといって知らされたものを放置するわけにもいかんのじゃ。
[表立って働くのではなく様子を見るのが役割だった。
けれど動くとなれば自分が先に立たなければいけない。
説明を続けていると轟音が響き足元が大きく揺れた]
「橋が!」
[確認するために飛び出した団員の叫び声に全員が動く。
崩れたのは村の入口。吊り橋も一緒に壊されてしまった]
―昨夜・詰所―
こちら側はまだ平気かと思っておったんだが。
村を回って巻き込まれた者がおらぬかを確認じゃ。
雨が上がったら現場を調べよう。
あの話は後で良い。
だが居場所は確認しておくようにの。
[そして翌朝。
眉間に皺を寄せながら呼び出しを命じることになった**]
─宿屋/昨夜─
[止まぬ雨に、雨宿りの人々の幾人かは帰宅を諦め、宿へと止泊まる。
その準備やら何やら、ついでに飲みすぎた酔っ払いの世話やらをしている内に時は過ぎ。
部屋に戻れたのは、夜半過ぎだった]
……あの音からして、かなりの規模で崩れてそう、だよな。
さてさて。
[口調だけは軽く呟きながら。
取り出し、投げ上げるのは瑠璃のダイス]
― 雑貨屋 ―
子供の、背伸び用アイテムの一つだね
勿論本当に大人久向けのチョコ風味煙草もあるのだよ
[>>98ユリアンに渡したのは果たしてどれか。娘は箱が青年の手の中に収まるのを見詰め、静かに笑うのみで。]
馬は行商に欠かせないものだしね
ユリアンと苦節を共にした相棒も同然みたいだし、
嵐が収まりそうなら一度様子を見に行くと好いよ
[等と話しながら本日二回目となるお茶を淹れてユリアンと祖母にティーカップを差し出す。飲み口はすっきりとしたもので香りと同じく暑い季節に丁度好いと娘は感じた。嵐の不安を掻き消すように優しく湯気を立てる茶に、ほと一息を付く。]
―――ン、また凄いのが来ているね
雨漏りしないと好いけど
[店はそこそこの歳を重ねていたから、長く使うに色々な弊害を伴う。この間直したばかりの雨樋が風に煽られていないか娘は心配する様子。]
―――ンン、子供じゃないよ…
[頭を撫ぜられ、娘はくちびるを尖らせる。嫌がりこそしなかったのは、案じる青年の物言いを想っての事で。何処かむず痒さを感じながら青年を上目遣いでじぃと見詰め。語尾が小声になるのも其のせい。]
…有難う、でも此処に閉じ込められっぱなしなのも厭だな
おばあちゃんも居るし…
[荷物については落ち着いたらで好いとだけ伝えて。もし彼が外へ行くのなら気をつけてと背中に声を掛けた*]
おやま。
今日の女神さんは、8がお好き?
[開いた手の中の出目を見て、小さく呟く。
ダイスはまた、ポケットに戻し、入れ代わりに出すのは煙草の小箱]
……朝になったら、様子見に行くか……。
キーファーも、探しにいかねぇとな。
─宿屋/翌朝─
[一服の後、いつ眠りに落ちたのかはわからぬまま。
柔らかな光と、微かに聞こえるざわめきに目を覚ました]
……ん……ああ。
雨、止んだか……。
[小さく呟いて起き出す。
宿の一階では、昨夜の雨宿り客が帰る準備をしている頃合か。
いずれにせよ、そちらの対応はベッティに任せて、自分は外へ。
まずは昨夜の音の事を確かめたかったのだが]
─宿屋前/翌朝─
……っと、あれ。自衛団の。
ああ、昨夜、家に帰らなかった連中の調査してんの。
何人かは泊まってるぜ、今、帰り支度してるところ。
[宿を出てすぐ、出くわしたのは自衛団員。
先に問われた事に答え、それから]
それより、昨夜すっげー音したけど……どっか崩れたのか?
[ずっと気になっていた問いを投げかける。
団員は複雑な面持ちで頷き、崖崩れの状況を伝えてくれた]
うっわ、そこまでかよ……きっついな、それ。
[外との行き来が最も多い時期の分断。
それが何を意味するかは容易に悟れるから、表情は自然、険しくなる]
─昨夜・洗濯小屋─
[雷鳴は鳴り止まないがいつまでも耳を閉じているわけにも行かず。
雨風が中に吹き込む心配はなさそうということを確認してから日中に畳めなかった分の洗濯物を籠から出して畳み始めた。
無論蒼鷹には傍に寄り添ってもらったまま。
手は止めぬまま、恐怖心を抑える為に他愛の無い話を蒼鷹に向けてぽつぽつとした。]
でね、ゲルダもベッティも口調は男の子みたいなんだけど、二人ともすごく女の子らしくて可愛いんだよ。
あ…そういえば、さっき君にあげた燻製くれた小父さん。
ベッティのお父さんなんだけど、今日から外に出かけるって言ってたんだよ。
…大丈夫かな。大丈夫だよね…良く出かけてるし、旅慣れて…
きゃあああ!?
[そう心配そうに窓の外に視線を向けた刹那、地と空気を揺るわせる音と振動が響いて。
思わず目を閉じたが、ふと雷鳴の音との違和感を感じてそっと目を開け、思い至ったのは。]
どこか、崩れたのかな…誰も怪我とか、してないと良いけど…ギュン爺ちゃん、無理してないかな…。
[村人はこんな天気に好き好んで出るわけもないだろうが、自衛団はそうはいかないから、その長である老人を思い眉を下げた。]
─昨夜/工房『Horai』・客室─
[ライヒアルトの心遣いのお陰か、雷鳴は必要以上に気にすることなく過ごすことが出来た。
しかし響いた地崩れの音は揺れもあって気にするなと言う方が難しい。
そんな中でライヒアルトが帰ると言うのを聞き>>97、怪訝な表情を浮かべる]
自分が怪我をする可能性は考えないのか。
今度から物好きと呼ぶぞ。
[ミハエル自身は嵐が収まるまで動くつもりは無く。
向けられた忠告に対し非難めいた口調で返す。
引き止める意味を込めていたが、伝わりにくかったかもしれない。
告げた言葉は効果を生まず、ライヒアルトは風雨の中を駆け出して行ってしまった]
─翌朝/工房『Horai』─
[部屋を借りて休み、一夜明け。
早朝に起き出し帰り支度をする。
ゼルギウスかイレーネが既に起きていたなら再度の礼を言い、未だ起きていなかった場合は丁寧な字で礼と戻る旨を書いた書き置きを残し、工房を出た。
その手にイレーネの作品をしっかりと持って]
─ →自宅─
[水気を含んだ地面を歩き、自宅である湖畔の別荘へと急ぐ。
自宅へと着く直前、自分を呼ぶ声を聞いた]
ロジフ。
ああ、この通り何事も無い。
心配をかけたな。
[声の主である執事がミハエルの姿を見て安堵の息を漏らした。
心配で主の姿を探し回っていたようだ]
昨夜のどこかが崩れる音は聞いたか?
……そうか、村の入り口の。
よし、伝達用の鳩を用意しろ。
父上に報告する。
[そう執事に指示を出し、自宅へと入ると真っ直ぐ自室へと向かった]
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