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―宿屋:食堂―
[ロミがハンカチを抱きしめる様子に、その感謝の言葉>>59に
ゲルダの表情がやわりと、微かに緩む。
そっとゆっくりと動いた手が ロミの肩へと触れ、
小さく横へと流れたのは、そこに埃でも見着け落とした風。
なんとなく気恥ずかしい様子でノーラへと視線向けられぬまま
暫し 周りの言葉を何気なく聞きながら腹を満たしていると
ふと 視線は黒いローブへと留まる。
何となしに見て居れば 扉から入ってきてそちらへと歩み寄るのは
同じ集合住宅に住む青年の姿で。
彼の言葉に、周りの村人たちがざわめいた。
それへと向けるゲルダの視線はいつもと変わらず――
岩の隙間から落ちる雨の勢いは衰えず。
部屋は空いていますからという宿屋の女将の言葉に甘えて、
その夜は整えられたベッドで 眠る事にしたのだった*]
―朝:宿屋―
[何やら外が騒がしい。
宿屋のベッドで目覚めたのは、走る音と声のせい。
もぞりと起き出して身支度を整え、ブーツの紐を結ぶ。
足音無く、階段を下りて外へと出た]
……――――な 何…?
[みっちり詰まった土嚢を抱えて走る自警団の男達。
無表情に怪訝な色を仄めかせながら、彼らの脇をすり抜け
ゲルダは食堂で朝食を取ったのち、自宅へと向かった]
─ 昨夜/宿屋・食堂 ─
ん、まあ。
恩義には礼を持って、というのは、わかるけど。
[ミリィの心中>>93は知らず。
これ、恩義に当たるんだろうかとか、どこか惚けた事を考えながらも、包み>>99は受け取った]
後は、叶う限り迅速に、天気が回復するのを祈っとけ。
でないと、作業にかかれん。
[軽い口調で付け加え、窓の向こうを見る]
……とはいえ、今日は大分、荒れそうだが。
[聞こえてくる風と雨の音に眉が寄った]
[そんな、どこか渋い表情も、礼と共に包みを差し出されたなら掻き消えて。
こちらも居住まいを正し、ノーラ>>97の差し出す布包みを受け取った]
……叶う限り、迅速に。
[誓いの証であるのは、依頼を引き受ける時に聞いていたから、それだけを返して。
やって来たウェンデルと見慣れぬ黒尽くめとのやり取りには緩く首を傾ぐものの、特に突っ込みは入れず。
その後、宿から自宅へと戻る者たちには、気をつけろよ、と声を掛けたりしながら、自分は食事と部屋を用意してもらった]
─ 翌朝/広場 ─
……だいぶ、荒れたな。
[翌日、早朝。
朝一番に部屋を引き払い、自宅兼工房に戻るべく、宿を出た。
足元を流れる水、壁面に残る濁流の跡。
それらが、眠る前に響いていた風雨の唸りとあわせて昨夜の天気の猛威を知らしめる]
……親父がいたら、龍神の怒りだ……とか、言い出したんだろうな。
[翠を細め、懐かしむように呟いた後、自宅へ戻ろうとして。
ふと、村の出入り口の方が騒がしくなっているのに気づいた]
…………。
[見に行くべきかどうか、僅かな逡巡。
とはいえ、何となく、行く気にはなれなかった。
行くとしても、玉と珠、それから預かり物を自宅に置いてからがいい。
そんな気がしたから、一度、自宅兼工房へと、足を向けた。**]
― 食堂 ―
あー、えっと、光栄っす。
[会いに来たようなものだなんて、聞けば嬉しそうに頬が緩んだ。
同じ席につかせて貰い、黒いフードが隠さない口元を見る]
最近……っスか。
街を出てきて此方、何も変わらないんすよ。
ほら、娯楽も少ないんで。
翡翠しかないってか。
[そんな事を本気の調子で言う物だから、殴られたりしても文句は言えまい]
ギュンター?
[名前を聞いたと言われ、怪訝そうに視線を向けた]
案内は出来る……んすけど。
なんでまた?
[問いに答えが返らなかろうとも、ギュンターの所に案内はすると約束する。
笑顔に、なんでわざわざフードを被っているんだろうと疑問を覚えるのは常の事。
過去、問うこともあっただろうけれど、今は発する事はしない。
楽しい時間は早く過ぎ、宿を出る頃には雨音も激しくなっていた]
― 朝:自住居 ―
[そして朝、
――騒ぎなんて気付く訳もなく、ウェンデルは惰眠を貪っている。
今日は、書物は散らばっていない。
机に*重ねられている*]
―自宅―
[木で出来た工具箱のような大きな裁縫箱を開き、
ショルダーバックから指でつまんだ物を丁寧な仕草で
手前の抽斗を開いてそっと収める。
――それは、ひとつの、予感。
それから、閉じた裁縫箱の別の段を開くと
買い物に行きそびれていたことを思い出し、
少し考えて、行く支度をしていた、その時。
慌ただしい足音とノックの音が響いて、扉を振り返った*]
―回想―
深夜は無理だからな。
[さすがにそんな時間に来る事はないだろうが、念押しをかけつつも]
起きた時にでも戻せば良いだろ。
[悪びれなく告げて来た相手>>8に嘆息しながら答え。]
はいはい、期待しないで待ってるよ。
うん。今日は魚だよ。
[と、今日の日替わりを告げながら、一冊の本を手に取って。]
じゃ、この人狼の本貸して?
[内容は人狼の伝承が書かれたもので。
答えは是、と返ってきただろうか。]
[二人が食餌をとる間。
女は二人へと意識を傾けていた。
何時か彼らのように食餌を必要とする時が来るのだろうか。
何時か牙を得られる日が来るのだろうか。
組んだ手の、柔い爪を見詰め
二人と同じに成りきれぬ身に淋しさを覚える]
― 翌朝/自宅 ―
[降り止まぬ雨に根負けしたかのように机に伏して寝てしまっていた。
軽いノックの音に見ていた夢は解けてぼんやりとした眼を擦る。
呼ぶ声と二度目のノックが鼓膜に届き、女ははっとした]
……っ、エリィ?
起きてる、ちょっと待って。
[寝乱れてしまった髪を手櫛で梳いて軽く整えながら
出入り口へと向かう。
扉をゆっくりと開けて其処から顔を覗かせた]
あ、雨止んだのね。
[ふ、と見上げる仕草の後、エーリッヒの隻眼に眼差しを向ける。
細い顎を持ち上げて大きく仰ぐ形となっていた。
エリィと呼ぶのは幼い頃に彼をお姉さんなのだと思っていた名残]
―回想 宿屋(自宅)へ―
はいはい、特別にお前好みの味にしてやるよ。
[子供の様な言い分>>84に苦笑して。
家に着いてウェンデルの様子に首を傾げたものの。]
あいよ、席に着いとけよ。
できたら持ってくから。
[と、声をかけてから厨房へと入り。
その日は食事の用意などをして終わった。*]
―翌朝―
……ん。
[宿屋の目覚めは早い。
騒ぎにはただ眉を寄せて。
とりあえず、とばかりに普段と同じルーチンをこなしていた*]
[バスケットの上で警戒音を上げるリスに蒼が移ろう。
瞬きの後、リスの視線を追い見詰めるのはトンネルのある方]
――…、何かあったのかしら。
[不安げに下がる眦。
なれど空腹を訴える音が微かに漏れて白い顔に仄かな朱がのる。
つ、と上目に窺うはエーリッヒの隻眼。
聞こえたかどうか口で問うは墓穴と思うのか
蒼い双眸がその眼差しのみで其れを尋ねるようにある]
村の入り口、トンネルの方。
何だか、騒がしいわ。
ねぇ、食餌をしたのがバレたなんて事、ないわよ、ね…?
[これまでそんな事は無かったから杞憂だと思いながら
聲にしたのはリスの奏でた警戒音に不安が掻き立てられたから]
――血、飲んでみっか?
[夜半、高ぶりの落ち着く頃、カルメンへ問いを投げもした。
そして朝、彼女の声に緩く意識は覚醒を始める]
ん……?
騒がし……
石、入れて、沈め、た
[此方の声はゆったりとしている]
まさか、気付かれるとか
ねぇ、だろ。
ねみぃ…
[夜半のウェンデルからの問い掛けには]
――…いいの?
なら、今度、味見してみたい。
[素直に望みを口にする。
その聲は期待と不安の入り混じる些か不安定な音色だった]
石……?
沈めたなら、大丈夫?
けど、雨、激しかったから……
流された、なんて、ことは……
[行き交う自衛団の姿が見えて不安は募る。
常よりゆったりとした聲が眠さを訴えれば]
ウェン……?
起きてる?
[反応が薄くなれば呼びかける聲も頼りない囁きへと変わった]
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