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え? ……ああ、そうか。
リディアは越して来たばかりだから、詳しくないんだな。
[手をパンに夢中な見た目三歳児の首根っこへと移動させつつ、リディアの問いに、はたと気付いて、ひとり納得したように頷いた]
これは妖精の環って言って、一般には、妖精の宴の跡って言われてる。
小さな妖精たちが、輪になって踊ったんだってね。
今回は、それにしてはどうにもおかしいみたいだが。
あー……。
[止めに入ったヨハナの指摘に、惚けた声を上げる]
ですねぇ、確かに。
まだちゃんと確かめてはいないですけど、結界の構成式はかなり複雑みたいですし。
……かけた本人以外が解くには、相当大きな力が必要になる気がしますねぇ……。
[そちらの方面には、一応特化しているので、そのくらいは読める。らしい]
―― 森のどこかの木の上 ――
[いつの間にやら、人の環から外れて、なにやら弄り倒されている気配の妖精王のことも気にせずに、高い木の枝に座って足をぷらぷら]
ふんふんふん♪
そも、妖精の国は時の流れが違うと言うしなァ。
王の気が向いて戻ってくる頃にゃ、わたしゃもういないさね。
[ぶら下げられた妖精王とぶら下げてる青年を見て、困った溜息]
《……うるさいのがいるなぁ》
[意識は見習い職人の青年の許の、小妖精へ。
ことばが理解出来たとしたって、かれのぼやきは、彼女自身の声に掻き消されてしまうだろう]
[威厳の欠片もない妖精王の姿に、生まれて初めて守護妖精に同情の気持ちが沸く彼であった。
それは兎も角。
漸く止んだ黄色い声の元に目を向けると。
瓶詰妖精さんはじぃっと輪を見つめています]
お、おおー。
[まだピンと来ていないような声で首を傾げる。]
これに、この不審人物さんを放り込むと何かあるんですか?
あたしが踏んじゃった時は何もありませんでしたけど……環になって踊ってくれるとか?
……ふむ。
[色々な抗議の声はさっくりと無視するものの、婆の台詞には考え込む様子を見せ]
また、面倒臭いんだな。
それで、妖精王サマは、この事態に対してどうしてくれるわけ?
[やっぱりそっぽを向かれた。
ので、手を離した。
べちゃと地面に落ちる、妖精の国の王]
[思い留まったエーリッヒの様子に、ちょっとばかり安堵の息。
妖精の輪が普通で無いことがよく判らない婆にはリディが輪を踏んだ事に対する驚きは薄く、むしろ落とされた妖精王に驚きを取られて近くに寄った]
ありゃま、大丈夫かね?
しかしまァ、坊や村のもんの気持ちも判っておくれ。
守護妖精がいないだの結界だの…団長さんの行方不明だの、気も立つってもんさ。
それにさね、わざわざ妖精王が村までお出ましになったからには、期待もしたくなるってもんだ。どうにか機嫌を直してもらえんかねェ?
[背後のエーリッヒを振り向き首を傾げる。]
ええと。
あたしにはみんな何を言ってるのかよく分からないです。
[高くて良く聞き取れない妖精の言葉も、言語は分かるけれど、意味のよく取れない不審人物の言葉も。]
大丈夫かと聞かれれば、この通りお腹が減った以外は元気ですが。
[べちゃり、と落ちた妖精王の姿に、あららぁ、と声をあげ。
妖精の環を踏んだ、というリディをまじまじ、と見やる]
……触れても、何もない……と、いう事なのかしらぁ?
あ、ええと。
無闇やたらと触らない方が良いと思うのですよ。
気がつかない影響とかも、あるかも知れませんし。
[茸をつつくリディの様子に、ちょっとわたわたとして]
……でも、ほんとに何ともないのですかぁ?
[ないならないで、それに越した事はないのだけれど。
やっぱり、ちょっと気になるらしい]
……まあ。
わざわざ実験せずに済んだ、ってことになるかな。
本当に影響がないのかは、わからないが。
[お腹が減ったという少女に、残りのパンを、要る?と差し出した]
[そこはそれ、年の功というやつで妖精王をおだてて機嫌を取り、なんとかしてもらえないだろうかと水を向ける。
さんざん蹴られたり突付かれたりぶら下げられたりした後ではそれなりに効果はあったらしく、妖精王はふんぞり返って偉そうに口を開いた。周りに蜂蜜が残ってるのが、いまいち決まっていない]
……なァるほどねェ。
怪しそうなんを別の結界に放り込んでもらえるんじゃな。
で、その怪しそうなのはどこにいるのかさね?
[返事が無い。
なんだか無闇に整った妖精王の顔が引き攣ってる気がする]
帰りが遅くなって母さんに怒られた以外は何もありませんでした。
あとは……えーとえーと。
[リディに重ねて問われると頭を抱えて考え込む。
エーリッヒにパンを差し出されると顔を上げ、少しだけ困った顔で首を傾げた。
パンはしっかりと受け取る。]
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