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[机の上に広げたままになっているスケッチブック。
其処に描かれていたのは集められた者の中で
一番幼い者の姿だが、其れを誰かに見せる心算はない。
眠る前に描いた絵を蒼い双眸が暫く映していたが
小さく息を吐き出して、身支度を整えに奥へ向かう]
き、気を付、ツケ、てて、
[ライヒアルトが背を向けるのに、言葉をかけて。
エーリッヒが差し出してくれた布を受け取り、
ふる、と頭を横に振った]
ち、ち違ウの。
ま、ま呪(まじな)イ…
あ、ノ。
え、エーリッヒ…
か、髪をい一本、く、くクレな、い?
[辿々しい言葉は、昨日よりもひどく聞き取り辛い]
―玉泉へと続く道―
あああ集めなきゃあの人……
集めなきゃ あの人の
こんなに散らかして ああ… あああ……
[集めれば死体が蘇るはずもなし。
ただ集めなければと狂ったように、腕を内臓を地に膝ついたまま掻き集めて血みどろの山が出来上がる。
ライヒアルトがやって来たのはそんな頃だろう。]
─ →玉泉への道 ─
ああ、わかった。
……大丈夫だよ、多分。
[後で詳しく、というエーリッヒの言葉>>104には、頷いて。
ゲルダから、案ずる言葉>>106が届いたなら、僅かに苦笑した。
それから、俄かにざわめき増した空気の中を、再び泉へ続く道へと進む]
……なあ。俺ら、これからどうなる?
[横を進む副長へ向けて短く問う。
答えはすぐには返らず、ただ、後で知らせる、との言葉だけが寄越された]
(……あんまり、いい状況じゃない、な、これ)
[そんな予感を抱えながら道を行けば。
先に後にしてきた、あかの染める場にたどり着く。
──状況の凄惨さに、同行してきた団員たちがざわめいた]
[こくり。
頷いて、布を開いてみせる。
ロミの描かれた糸の中、前髪あたりに他の糸と違う色を
指さして、首を傾けて長身を見上げた]
…こ、こう、や、やって、つ、使うノ。
こ、こレで、わ、分かルのは、
か、彼女は、の、呪わレテな、無い、てコト
[固い声は、それでも安堵の色も滲ませる]
だ、だだか、ら
か、彼女、ガ 、え、選ばレタり、しテモ、
ぜ、絶対、こ、殺さナイ、で。
そうす、スルな、ナラ、わ、私を先二殺しテモ、いい。
[続けた言葉は、詰所に残る自衛団員へと向けて。
だが、彼らにそんな事を了承することがあるわけ無く。
否定の言葉に、無表情の口元を横に引き絞った]
―宿屋―
[翌朝。
僕が泊まっていた部屋から食堂へ降りたのは、村に悲鳴が響き渡ってから暫く後の事でした]
……女将さん、さっきの、聞いた?
[料理の支度をしていた女将さんに尋ねます。
彼女も気にはしていたみたいですが、何があったのかまでは未だ分からないようでした]
……。僕、ちょっと、見てくるね。
[ひとまず朝ご飯を頂いてから、僕は宿屋の外へと飛び出しました]
─ →玉泉への道 ─
……。えっと。
[勢い良く飛び出したはいいものの、少し行ったところで僕の足は止まりました。
部屋の中で聞いた悲鳴の発生源が分からないからです。
何か手掛かりがないかと辺りを見渡して、遠くの方に目立つ一団>>110を見つけました]
……あれって、確か……ライヒさん、だよね。
[一団を率いるのは団長さんでなく、何故か細工師の彼でした。
少しだけ迷った後で、後を追いかけてみることにしました]
─ 玉泉への道 ─
[人の声や足音が、耳を通って流れて行くも、ただただ座ったままでいて。
ようやく顔を上げたのは、団員か誰かに名を呼ばれたか肩を叩かれるかしてからだった。]
……ぁぁ……。
[何処か呆けたように、ライヒアルトと副団長を見上げて。
また視線は夫だった物へと戻っていった。]
[エーリッヒの言葉に、ゆっくりと頷く。
隻暗緑と、髪に隠れた右目の位置を、両目で真っ直ぐ見て。]
…し、証明、す、する手は、な、無イケど
ひ、ヒトリ、ずつ、み、見ティく、術、
も、持っテ、 る
[ゆっくり告げて、差し出す手は千切られた髪を強請る]
ヒトリ、ずつ、だ、かラ、
…つ、次に、誰見えルか、ま、迷け、とど…
[必要なものは髪一本。
自衛団員はベアトリーチェの話しを聞いた者なのか、
そんなタイミング良く何人も現れるものかと
胡散臭いものを見る目でゲルダを見ていた]
─ 玉泉への道 ─
[後ろを着いて来る気配>>115には、どうやら誰も気づかぬようで。
もし気づいていたら、押し止めようとしたのだろうけれど、それは叶わぬまま]
……えっ、と。
[どう声を掛けようか、逡巡していたら副長がヨハナの肩に手を触れ、名を呼んだ。
こちらを見上げた後、亡骸へと視線を向ける様子>>116に、眉を寄せて]
ヨハナさん。
……ここにいると、身体、冷えるから。
もどろ?
[そう、と呼びかける。
副長は団員たちの動揺わ鎮めつつ、亡骸を収容するようにと指示を出していた]
―回想―
…そうですか。
[爆発物は使っていない>>37、と聞けば、安堵の笑みを浮かべ。
銀貨も、対価として受け取って。]
あぁ、はい、分かりました。
[踏み台、と言われて、ある所から持ってきて。
ベアトリーチェの容姿などは、そういう人もいるよね、で済ませていた。]
―玉泉へと続く道―
[大人の男性たちの集団に僕の足で追いつけるとは思えませんでしたが、その心配は要りませんでした。
それから少しして、玉泉に向かう途中の道で、彼らは足を止めていたからです。
上がるざわめきや引きつった声からも、その先に何かがあるのは明白でした。多分、悪い意味でだということも]
……。
[唾を飲み込んで、僕はそっと彼らの後ろから近寄ります。
誰かに気づかれたかも知れませんが、その時には僕はもう、その先のものを見てしまっていました]
……。 ……、え。
[まず初めに見えたのは、蹲る団長の奥さんの姿>>116でした。
昨日は優しく笑いかけてくれた彼女が、今日は何だか違う人の様に見えました。
まるで何かを失ったかのように呆然としているから――それだけではありません。
多分そう見えたのは、彼女と地面を染める、不自然な色の所為もあったのでしょう]
……、ッけほ、……ん。
[遅れて感じた強い異臭に噎せ返って、視界が少しぼやけます。
それでも僕はその先にあるものに目を凝らして――程なくその正体を知りました]
……。
[悲鳴はあげません――いいえ、飲み込みました。
その場にへたり込んでしまわないように、足に力を入れました。
震えを抑え込むために、両腕で自分の身体を抱きしめます]
……、……ぅ。
[それでも見開いた目から溢れる涙と、小さな嗚咽だけは、止めることができませんでした。
悲しかったからか、怖かったからか、それは僕自身にもわかりません]
― 昨夜 ―
そう、かしら。
[二人からやりすぎではないと言われて身体の力を抜き、毛並みを撫でられると気持ち良さそうに尻尾を外へと揺らした]
でも、心臓は血の源でもあるから。
[初めてには一番良いものを。それは人間の思考だろうか。
そこに拘っていたようだが、笑いながら辞退されると爪で傷を広げてカルメンが味わうのを待った]
美味しかった?
[血を舐め取ったカルメンに軽くすり寄ってから、鼻先を傷の中に突き込む。心臓だけを食らって顔を離すと、仕事を済ませたウェンもやってきた]
もっと?
[再び傷に顔を近づけ、残っていた内臓を千切っては外に捨てる動作を繰り返した]
―回想―
ん?
あぁ、はいどうぞ?
[あまり人に偏見を持たない方の青年は、
ゲルダの行動>>52に一度だけ首を傾げたものの。
部屋の鍵を渡して見送った。]
ご飯は楽しみにしといて。
俺も、頑張るからさ。
[ひら、と部屋へ向かうライヒ>>71に手を振った。
戦う料理人として村を出て行った父。
それでいいのか、と常々思うが、いないものはしょうがないと割り切るしかない。]
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