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え……。
[ 聞こえた言葉に耳を疑う。
どうしてあの人が。
ということは、自分の存在もバレてしまったのだろうか。]
ケ…ケイジ様が……。
そう……ですか………。
[ 何か落ち着かない。
頭を強く叩かれたようだった。]
…ケイジ様が…堕天尸だったのでしょうか?
そんなこと、ないとは思いますが…。
[ 知らないフリをして、質問を重ねる。]
いや、いいよ。
もしかしなくても、アタシが脅かしちまったようだしね。
[ごめんねぇ、と笑いつつ、濡れた髪を撫でてやる。
服を運んできた相棒に、ありがとねぇ、と笑いかけ]
落ち着いたかい?
なら、ちゃんとこれ着て……。
にしても、水浴びには、ちょいと時期が早くないかい?
[冗談めかして、問う。
傷痕の事は気にはなったが、尋ねるのは気が引けた]
−上空−
[遥か高みからロザリンドのよく目立つ長い髪を捜す。
だがそれより早くましろと深紫の翼が目を惹いた。]
アヤメと…オーフェンか。
先に知らせた方がいいだろうな。
[昨夜アヤメに具合を問われ、初めて知った子供の名を呟く。
結界樹側にいる二人へと翼を引いて落ちる様に舞い降りた。]
ケイジ様が封じられましたか…。
弱りましたね…。
[ 疑いを退ける行動が仇となったか。]
……エリカ殿のことは捨て置いたほうが良さそうですね…。
さて…どう致しましょうか…。
[ 動けるぐらいにまでは回復している。
封じることができるかどうか、だが。]
[降りてくる、紫星の気配。
視線を向けたなら、目に入るのは紫紺]
旦那? どーしたんだい、血相変えて……。
[どこか只ならぬ様子に、微か、表情が険しさを帯びて]
あーあ。ロザリーちゃんみたいな美人さんに心配かけるなんて、ケイジも俺の事を言えない程度には馬鹿なんじゃないかなぁ。
[ロザリーの態度を履き違えてか、浮かべるのはただ微苦笑。
素知らぬ様子に肩を竦め、]
…ああ、うん。ケイジは違うよ。
ラスの事も、全部知っていて黙ってたりはしたけどね。
……うん、う、ううん?
気に、しないで……
[髪を撫でられると、気持ち良さそうに目を細め。同じように髪を撫でてくれた細目の青年のことをふと想う]
ラウル……ありがと、ね
[渡された服を受け取ると、アヤメの視線から胸を隠すようにして、まだ濡れた体にいそいそと服を着る]
……冷たくて、気持ちよかった、よ?
汚れ、あんまり取れてない、けど。
[わずかに伸びた腕を戻すように肩の方向へ押し上げ、激痛に片目を瞑り、顔を顰めた後]
……見た?
[上目遣い、小声で問う。上空からは、二つ目の紫の気配]
[深き緑の合間を縫うように、
ふわりふわりと、光は揺らめく。
“己と似通ったもの”を探して、人気のない場所を。
ひかりが男女を見つけたのが先だったか、
それとも逆だったか。
梢の近くで、ぴたりと止まり、淡い色の翼を羽ばたかせた]
…確かに。
カルロス殿にそう言われるのは御馬鹿さんかもしれませんね。
[ 調子を合わせて返事をする。
続いた言葉に絶句することになるのだけれど。]
カルロス殿……。
じゃあ、誰が…堕天尸なのかご存知なのですか…?
[ 誰にも話さないと言っていたのは嘘だったのだろうか。
少し、距離を置く。]
[感謝の言葉に、ラウルはくるる、と一鳴きして]
冷たくてって……そりゃそうだろうけど、油断してると、すぐに風邪引いちまうよ?
……後で、お湯使わせたげるから、家においで。
[少なくとも溺れやしないから、と笑い。
痛みに顔をしかめる様子に眉をひそめつつ]
まあ、ね。
んでも、言いたくないなら、ここで、無理には聞かないよ……そんなにのんびりも、できそうにないしね。
[問いに返す言葉は、こちらも小声]
―――ロザリンドが堕天尸だ!
[地に足が着くと同時に吐き捨てた。
アヤメの問いに睨む目を向け、頷く。]
……部屋に強い虚の気配があった。
あれはただの人が住める場所じゃない。
闇に覆われ消えたのも、恐らくは目を逸らす為…だろうな。
[低い声で唸る。噛み締めた奥歯が鈍い音を立てた。]
……はい?
[スティーヴから返る言葉。
思わず、呆けた声が出た]
あのお嬢様が……『堕天尸』?
[個人的な付き合いなどは、ない。否、関わりは避けていた。
傍目、恵まれた環境への妬み、今一つ『あわない』感覚など。
自分からは、避ける要素の方が大きかったから。
それ故、その名と『堕天尸』の存在は容易には結びつかず]
なんだってそんな……いや、ここで論じてても仕方ない、か。
[探さないと、と。呟く瞳には、凛とした決意]
[アヤメにほっとしたような表情を向け]
うん……わかった
[小さく微笑み、その後、口の中で小さくつぶやいた言葉は、届かない。視線を来訪者に向けると、衝撃的な言葉に]
え、ロザ……りん、さんが?
[続く言葉を聞き、耳を疑い、言葉を失った]
[怯えたようなロザリーに向けるのは、哀しさと憐れみを混ぜた眼差し、]
少なくとも、俺ではないから困ってるんだ。
――…、ロザリーちゃん、
[呼びかけは、淡い金の鳥を見つけ途切れた]
[オーフェンの挨拶の声に視線を向ける。
真剣な表情に、頷いて見せた。]
……お前もロザリンドが消えたのを見たな。
だが、あれはめくらましだったらしい。
………ロザリンドを確かめられるか?
[その力で確かめられるか問う。膝の黒には気付かないまま。]
……なんで……
そんなこと……信じない……
ううん……自分の目で、確かめる、から
[スティーヴの声に、深く頷く]
それで、おじさん、ロザりんさんは、どこにっ……!
[さくりと、草を踏む。
認めた姿は、求めていたもの。
二人の前へと歩み出る]
貴方は、何を望む?
いえ。
……何ゆえに、望む?
[挨拶もない唐突な問いかけは、
誰に向けたかすら定かではなく。
薄闇の中、仄かなひかりに横顔が照らされた]
[オーフェンから視線を外し、驚くアヤメへと投げる。
探すのが先との言葉に深く頷く。]
……ああ、お前もあの部屋を見れば判る。
エリカも結界樹にいるかどうか…判らないと言っていた。
[あの後、再び試みてくれただろうかと眉を寄せる。
だがそれよりも気が逸り、紫紺の翼が感情のまま揺れる。]
[ エリカの姿を認める。
問いの意図を見出すことができず、黙す。]
――――――…。
[ 顔は相手を見ようと傾く。
左手には微かに闇が差す。
最も、こちらも暗くて気付かれないだろうが。]
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