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心次第か。
確かに、その通り。
何方に向いているかは知らぬけれど。
[紫黒は同じように二つの色へと向けられて]
はてなさてな、
濃色の童はわからぬけれども、
臙脂の童は小ねえさまがどうだとか。
なにゆえ、鈴の音に応えたのだろうかね。
おらは違うんよ
[川のせせらぎ]
[笑い声]
ふうれんにいさま……
お歌、うたってけん?
[それを止めたくてか]
[それともただ聞きたくてか]
[口にして]
……違うの?
[それは、童には意外にも思えてか。
笑いは静まり、不思議そな言葉が転げ出る]
唄?
……よいよ。
[続く音彩の言葉に、ゆる、とまばたいて。
こくり、頷き、てん、と一度鞠をつく]
ひいや ふうや
みいや ようや
いつやの むさし
ななやの やくし
ここのや とおや
[響く唄。
鞠をつく、音。
霞揺らめかす風は運ぶか、幼き声を]
[なにゆえ、との言葉には、けらりと笑い]
さてさて、神隠しに遭うて帰らぬは、現と縁の薄い子でしょうかねえ?
いや、子供だけとは限らぬやも。
[悪戯めいて、女を見やる]
[雅詠の前をまっすぐに抜けていく。
襖をぱたんぱたんと開けてゆけばそれはそのまま反対側の縁側へと続く。
そこまですれば満足だったのか、月の明り煌々と落ちる板間の上で空を見揺れば白く細い手が太刀の柄へとすべり、そして──すらりと抜く。
ひと ふた み よ 。
音律はなく、かといって歌も無く。
ただそれは緩やかに太刀が月の下の空気を切り取っていたから舞とわかるようなものだろう]
違うん
じゃって……おらは、
[しかし、続きは口にのぼらず]
[てーん]
[つく鞠の音に、やさしいこえ]
……みいや ようや
[小さくちいさく、口が動いて]
……ふうれんにいさまの、お声、好きじゃぁ
[途切れた言葉は届くや否や。
紅緋はひょう、と空へ舞った華の紋を追う。
伸ばした手は、それを確りとかき抱き]
舞弥のにいさまの他に言われたのは、初めてだ。
[くすくすと、楽しげに。
ごく何気なく、誰かの名を紡いで]
はてなさてな、
縁が薄いのかも知れぬし、
未練がないかも知れぬね。
[三日月の如くに眼を細めてくすくすと]
けれども、それが好く思い出せぬというから困りもの。
[終わった歌に、今度はようやっと、その姿を見ようか]
[鞠はしっかり腕にある]
にいさま?
ふうれんにいさまも、にいさまがおられたの?
[小さく首を傾げて]
[その姿を見上げ]
本当に、困っておいでなのですかねえ?
[零れる声に、肩を竦めて、しかし咎めるふうもなく]
さて、そろそろ夕餉を頂きに戻るとしますか。
あやめ嬢はどうします?
[問いかけて、軽く首を傾げる]
[投げられた問いに、ゆる、と首を傾げ。
何か、想うように紅緋を伏せる]
……うん。
舞弥のにいさま。
風漣を、お守りしてくれ……た。
[意識の霞、その淵に。
ゆらり揺らめくは面影か。
露草色の髪の、若人の姿が揺らめいて、消えて]
やさしい、にいさまね。
[どこか、思うような小兄の邪魔をせぬようにか]
[声は小さく]
ふうれんにいさまの、にいさま。
まいやにいさま、いうんね。
[にこと、笑って]
[と、視線を送られるのに気付けば]
……あやめねえさま?
なんじゃ?
[首をかしげて]
[小さな声に、うん、と頷く]
そう、舞弥のにいさま。
[名を口にする時、紅緋の瞳はどこか嬉しげか。
それは、思い出せた事への喜びか、それとも]
……あやめのねえさま?
[それから、音彩の言葉にその視線を追い。
こちらを見やる姿に、ひとつ、まばたく]
[なんともなしに黙りこくってどれほどの時が過ぎたか―
揺藍が立ち上がるのを見て、夕餉に向かうのかと腰を上げかけ―襖を開けながら通り過ぎる姿に再び腰を下ろす。
やがて始まりし剣舞にはただ*息を呑むばかり*]
良いにいさま、なんじゃねぇ?
ふうれんにいさま、嬉しそうじゃけ
[ちらと向けていたあやめねえさまのところには、大兄の姿]
からすにいさまも。
おかえりになるんかのぅ?
お守りしてくれたから。
舞弥のにいさまだけは。
[にこり、と笑いつの言葉、それには如何ほどの意があるや。
紅緋の笑みからは、計り知れぬか]
烏のにいさま。
にいさまも、遊んでらした?
[近づいてきた烏の言葉に、ゆる、と首を傾げ]
ゆうげ。
お食事、おらも食べたか!
[にこっと笑って、立ち上がる]
からすにいさまも、お遊びじゃったん?
[それから、同じ言葉を問うた小兄を見て]
おらも、ふうれんにいさま、お守りするけ。
[にこと、笑って]
みんな、いっしょにごはんじゃの?
ほぅら、坊やたち。
烏がなくから戻ろうか。
そうそ、皆で一緒に夕餉の時間さね。
[くるくるり、かざぐるまを回しつつ*わらう*]
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