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─自宅・自室─
[イレーネの作品を机の上に置くと、父上に対し報告の手紙を書く。
村と村の外を繋ぐ唯一の道が利用出来なくなってしまった事。
その復旧作業の助力を請う旨。
復旧が終わったら運び屋を一人向かわせて欲しい事。
それらを書き終わると筒状にして、小さな筒へと入れた]
ロジフ、鳩の用意は出来たか。
……よし、では頼んだぞ。
[鳩の足に筒を取りつけて、窓から空に向かって放つ。
羽ばたきに合わせて落として行った羽根を残し、鳩は空へと消えて行った]
どのくらいで復旧出来るものだろうな。
出来るだけ早く通じれば良いのだが。
[誰に言うでもなく呟いて。
執事を通常業務へと戻らせる。
ミハエルは持って来たイレーネの作品を壊さず運べるよう、丁寧に包み始めた]
んー……取りあえず、様子見てくっか。
さがさにゃならんヤツもいるし。
[は、と一つ息を吐き、村の出入り口の方へと視線を向け、それから]
……ん? なんよ?
[何やら、物言いたげな視線をこちらへと向ける団員に気づいてきょと、と瞬いた]
……え?
宿、集会に使いたいけど大丈夫かって?
あー……そーゆー事は、ベッティに聞いてくんない?
俺は、臨時従業員だから。
[軽い口調で言うと、団員はそうか、と言って中へと入ってゆく。
その背を見送ると、空を見上げて]
……あんまり、長居したくはねぇんだけど、な。
[小さく呟いて、村の入り口へと足を向けた**]
[そんな自分に、また蒼鷹は気遣うように擦り寄ってくれただろうか。
その仕草に緩く微笑めば、大丈夫だよ、と応え。]
とにかく、この雨が弱くならない内は外に出られないし。
早く止んでくれると良いね。
君の飼い主さんも心配してるだろうし。
[そう言って蒼鷹の頭をなでると、こきゅ?と首を傾げられるか。
その仕草にまた笑顔を見せ、そのまま嵐が過ぎるまで蒼鷹と共に居た。]
─翌朝・洗濯小屋─
[残していた洗濯物を畳み終えてもまだ空は荒れていて。
嵐が過ぎたのはもう空が白み始めた頃、結局一睡もしないまま朝を迎えることとなった。]
…朝になっちゃったなぁ…まぁ、しょうがないか。
君も一晩付き合ってくれてありがとね。さ、お帰…あ、待って。
[本当は眠くもあるし精神的にも肉体的にも疲れているのだが、かといって仕事を休むわけにもいかず。
小屋の外に出ると大きく伸びをしてから蒼鷹を見、いつものように送り出そうとして引き止めた。]
ごめん、もうちょっと付き合ってくれないかな?
君のご主人様にお礼のお手紙を届けて欲しいんだけど、ちょっと買ってこないといけないものがあるから。
[天涯孤独の身の上で村の外と交流が無い自分には便箋など無用だったので買っておらず。
幼馴染の顔を見て安心したいという気持ちもあり、買いに行こうかと思ったのだ。
それを聞いた蒼鷹は何を思ったか、空になっている洗濯籠の中に自分から入ってこちらを見上げた。
その様子はまるで運んでいけと言わんばかりなので、きょとんとした後、首を傾げて問いかけた。]
えっと…連れてけってこと、かな?
[そう聞くと、返事のように一声が返ってきて。
本当にこっちの言っていることが解ってるみたいだ、と思わず笑ってしまった。]
ふふ、君は本当に…変わってる子だね。
うん良いよ。
君は私の友達だし、ゲルダやベッティにも紹介したいから。
…君の飼い主さんが解れば挨拶しに行くんだけどなぁ。
君の飼い主さん、ミハエル君だったりする?
…って、聞いても仕方ないか。
[どの道今日はベッティのところにシーツを取りに行くつもりでもあったから、台車に乗せて引いていけば良いかと考え了承の意を示し。
籠をそっと抱きかかえるとそのまま台車に乗せ、蒼鷹の頭を撫でた。
この辺では珍しい鳥ではあるが、湖畔には別荘も何軒かあるのでその中の誰かに飼われているのだろうと思っていたので知っている名を試しに聞いてみたが返事はあったかどうか。
どちらにしても苦笑して、まだ朝早くではあるがまずは雑貨屋へと*向かった。*]
[人に見つかった遺体は、すぐさま自衛団の手の内に入ることになるか。
失敗したと、内心で焦りを呼びながら、とはいえどうする事も出来ず。
最悪の事態――自らに気づかれないよう、影を駆け家へ戻るので精一杯だった。]
ごめんなさい、リヒト、ヴァイス
失敗した……
[無事に家の裏口へとたどり着けば、
申し訳なさそうに謝罪を乗せて、我らの世界で囁いた。
家へと入る前に人の姿へと転じれば、
口元は、道中落ちることの無かった赤が、こびり付いていた。]
― 雑貨屋/翌朝 ―
[嵐は随分と長い間村に留まっていたらしく、翌朝その爪痕を残すに十分なほど家周りは滅茶苦茶で。花壇の花や植物さえも、シートで覆うだけでは持たなかった様子。]
あーあ…… また是は、手間が掛かってしまうね
折角綺麗に咲いていたのに
[花を喪うのは二度目のこと。家前を眺めながら散った草花を拾い集めては処分しつつ言の葉は紡がれた。結局あの日の晩は店から動けず帰ることも出来なく、祖母共々小さな部屋で寝泊まりする事となる。店を揺らす音が余りにも大きい所為か、陳列棚が崩れていないか、割れ物を退避させないと等、娘は一晩中気を張る羽目になっていた。]
おばあちゃん、外は御覧の有り様だけど、中のものは大丈夫
―――…また、雨は降るかもしれないけどね
[苦い笑いを浮かべ、あまり好くは無い空を見詰めた。娘は植木鉢が割れない様に幾つか店の中に退避させ、是以上の被害は出さぬように注意を払う。]
ン――――是で、好し
[眠たげに腕で眸を擦り、ふわ、と小さく欠伸を一つ。
後で少し休もうかと想いながら娘は続く欠伸を噛み殺した。]
それにしても、昨日のあの大きな音は何だったのだろう…
何も無ければ好かったけれど…
[祖母と不思議そうに話ながら質素ながら朝食の支度を済ませる。
食事をしながらああでもないこうでもないとしていれば、]
僕が聞いてきてあげるよ、おばあちゃん
何かあったのなら自衛団長さんに聞けば済む話だし
本当に何かあったのなら、もう話は村中に広まっている筈だもの
[其れほど大きな村では無い。噂話等、直ぐに広まる訳で]
―宿屋・昨夜―
[アーベルにスープを持っていってから、
程なくして酔いつぶれた人の介抱や部屋の手当てをアーベルに手伝ってもらいながら、
落ち着いた頃になると]
ありがとな、アーベル。
ゆっくり休んでくれ、おやすみ。
[部屋へと戻ったアーベルを見送り、自分はまだ少し起きて朝に向けての準備などをしてから寝た]
―宿屋・翌朝―
[いくらも寝ないうちに、窓から差し込む朝日に目を覚まし]
んっ…、嵐も去ったか。
[軽く伸びをしてから、起き出したのは皆よりも早い頃、
昨日の酒を残した様子もなく昨夜に用意しといた朝食、しょうがベースのスープに火を通した。
起きだした人たちに出していきながら、出かける様子のアーベルに]
でかけるのか?足元気をつけてな。
[止めるようなことはせず、昨日の酔いを残した人たちの相手をしたり、
帰る人の見送りなどをしているとアーベルが出て少しして自衛団員が中へと入ってきた]
―宿屋・翌朝―
[自衛団員から村の入り口の橋のことをまず知らされ、何人かまだ宿に残ってる人たちの中に、
やっぱりか、昨日の音すごかったしな、などと言い合ったりしていた]
そんで、それだけ知らせにきたんじゃないんだろ?
[それからアーベルに話されたのと同じようなことを言われ]
別にかまわないけど、嵐の影響そんなひどいのか……?
[こちらの様子にただならないものを感じたのか宿にいた人たちがこっちに注目していて、
そっと声を潜めて自衛団員に聞けば、後で追って話すとだけ伝えられた]
まぁ、人が来てもいいように準備しておくな。
[これからの復旧かなにかで村会議をするのだろうと、それなら軽食でも作っておくかなと、
そのときはそう思っていた]
[同胞の謝罪が耳に届いた。
彼女にどのような事態なのかは聞かない]
否、……お前さんが無事なら良いさ。
捕まった訳じゃねぇンだろ?
[確かめるように紡ぐのは彼女の身の無事]
―翌朝・修道院―
[修道院の朝は早い。
青年が目を覚ましたのは早朝。
窓の外を見れば雨は止んでいた。
朝の祈りを済ませ朝食の準備をして
皆と共に神に感謝しながら食事を済ませた]
……私は外の様子を見てきます。
あなたは隣の様子を確かめて来て下さい。
[丁寧な言葉遣いをするのは相手が大分年上だから。
了承を得られれば青年は外へと向かった]
私は平気。姿は見られていないわ。
でもあのヒト、谷に落とせなかった。
[食事をした後は、谷に落として野の獣達へ後を任せるのが常だったので、
それが出来なかったという事を伝えれば、何があったかいくらかは知れるだろうか。
出る前に前に高揚していた心は、
期せずして工房に篭る前と同じように、沈んでいた。]
今日はお店、御願いね
仕入れとか買い付けは殆ど終わってるからさ
[しゅる、何時も髪を覆っていた麻布と白いエプロンを解く。
カウンター脇に置き、出かけ際祖母の方を向くと、]
僕に用事がある人には出かけてるって伝えておいて
じゃあ、お願いね
[ぱたぱたと娘は玄関を出ていくと
先ずは昨夜の大きな音を探るために外を飛び出した]
―修道院前―
[地面は昨夜の雨でぬかるんでいる。
吊り橋の方へと目を遣るのは其方に向かおうと思っていたから。
歩き出そうとしたその時、不意に声が掛かった]
――…嗚呼、自衛団の。
如何されました?
私は……、昨日言った件が気になったので
様子を見に行こうかと……
[そんな事を言えば吊り橋が壊れた事を知らされる]
吊り橋が……?
其処まで酷いものだったんですね。
いや、確かに凄い音がしたので心配でしたが……
それなら、復旧には時間が掛かりそうですね。
この時期に、か。困りましたね。
[柳眉を寄せて思案気な様子を見せた]
―昨夜・厩舎―
落ち着け。落ち着けって。
崖は崩れてたけど谷の方に落ちてってたから。
すぐにどうこうはないはずなんだ。
[低く嘶く相方の身体を撫でながら繰り返す。
現場には近づく前に自衛団員に阻止されてしまった。
宿に戻れと怒鳴られて、裏口から入ってタオルを借りた。
風呂は断り、まだ宴会の名残があった酒場でも足を止めず、着替えと毛布一枚掴んで厩舎にやってきたのだった]
大丈夫かなあ。
雑貨屋までちゃんと伝えてくれただろうか。
[不安の通りに忘れられてたと分かるのは翌朝の事。
結局ベッドの上でなく相棒の横で一晩を明かした]
―翌朝・宿屋厩舎―
あっふぁぁ。
雨止んだのか。おはよ、ナーセル。
[身体を揺すられて目を覚まし、腕を伸ばして大欠伸。
もう随分と明るい。ちょっと寝過ごしたようだ]
っくしゅ。
俺も何か食べてくるよ。
[彼の朝支度を終わらせてから、毛布を小脇に食堂へ]
見られてねぇなら問題ないさ。
自衛団が騒ぐかも知れねぇが……
[同胞の返事>>*41に安堵の息を吐きながら
さて、どうすべきか、と思考をめぐらす]
ま、何も知らねぇフリで通すしかねぇか。
[警戒が強くなるだろう事は予想出来たが
食事の邪魔をした者をこれから消しに行く訳にはいかず
慎重に様子を見るべきだという結論に達した]
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