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ではあなたが、見分けられる者だと──
いや、死なないと分からないのであれば、死者を見分ける者という訳ですか。
[まだ納得はしていない顔だが、疑念の幾らかは解けたようだ。]
虚しい、かな。
アーヴの時には、そんなに感じなかったのにね。
[酷い話かな、と笑うに似た息を吐いた。
表情は変わらぬ侭に]
……オレ、部屋に戻るよ。
熱くて、寒い感じがするしさ。
[口許から外していた手で、左腕を押さえながら言う]
そう上手くいけばいいがな。
[何処となく心此処にあらずといった感触に、引っかかるものを感じつつも、取り敢えず目の前の瑣事を片付ける事を優先する。]
…虚しい。
[ぽつりと繰り返しました。]
そうですか。
…お大事に。
[少しだけ眉を寄せます。
その手の行く先に、ちらと眼をやりました。]
[血だらけの場に必要以上いるつもりはなく、死者を見分ける者を騙ると言うクインジーの声を耳にしたのを最後に勝手に離れた。男がそうする理由も庇われる女がそれにどう返すのかも興味はない。用心を崩さず場内を一周見回った後、また部屋に戻り夜明けを待った]
…ぉっと、転寝していたか。冷えるな。
[明け方の光を見てから少し眠っていたらしく、迎え酒を幾らかやってから部屋を出る。自然向かうのは夜見たの凶行現場]
そう言えば、番人殿は確かにその様に仰っておりましたね。
[見分けるものと護り手の存在を、言われて思い出す]
申し訳ございません。
少しだけ埋葬の前に、お時間を頂いても宜しいでしょうか。
[緑の少女の顔に付いたあかを指先の白の布で拭う]
うん、虚しい。
仕方ないって、わかっていても。
[緩く首を傾げる。
腕に手をやったのは、無意識の事]
裸足で歩いていたのが、効いたかもね。
[冗談めかしたような一言を置いて、来た道を戻る]
[部屋に入るも、扉は閉めぬ侭。
忘れているというより、閉めるを厭う態だった。
寝台に座り込み、傍らに放っていたスケッチブックを広げる。
その途中、左手の動きが止まった]
……、
[目を落としていたのは数瞬の間。
視線を転じて、窓辺に身を寄せる。
硝子越しに外の景色を見れば、幾つかの人の影。
その中心には、物言わぬ少女が在るのだろうと思われた。
そして――花の作る路の先には、また一つの命が、喪われている]
確かに。これは刃物ですね。
聞き及んでいる、番人の死にざまとは
どうやら違うようです。
[メモ帳を開いて、ネリーのそれをみた雑感を書き込む。
簡単な絵も、その横に添えているようだ。]
さて。重要な情報も出てきましたね。
[クインジーの名前の横に記す。]
[埋葬前に、緋の花群に置かれた少女の遺骸を検分する。]
[恐ろしいほど鮮やかな切り口]
[その傷をもたらした得物も、遣い手も尋常のものではありえず]
これ、剣かなにかの傷ですか。
よろしかったら凶器を見せて下さい。
[隻眼の男を見上げる視線は険しい。]
[階段を上りきる前にラッセルは離れて行き、残ったのは杖持つ少女一人の様子に遠慮なく近づいていく]
よお、無事に夜を明かせたようだな。
出歩く勇気を持つ方が死に近いとは皮肉なもんだ。
[床の黒ずみを示唆して鼻を鳴らす]
[一度首を振りました。
冗談めかした言葉を投げて、遠ざかる赤色。]
いけませんよ。
こんな時ですから、体調を崩していては。
[そう、こんな時ですから。
二度目の呟きは、音にはなりませんでした。]
[近付く茶色。
青年のほうでないことは、声を聞く前に分かりました。]
…ええ。
[短く息を零します。
それから、]
水場は、どちらか分かりますか?
[先に変わらないとは言われましたが、それでも尋ねました。]
ああ。
あの髭面の男は要注意人物だ。
人狼について相当量の知識を持っていて、それを周りにも隠しているような感じがある。
……どうにも癇に障る。
[苛立ちを込めて吐き捨てる。]
[キャロルが座る]
[イザベラがメモを取る]
[ナサニエルの言葉に、軽く右腕へと視線を滑らせた]
自分の身は、自分で守る
少なくともお前がどちら側かわからないのに、見せるような事はしない
凶器はいつも身につけている
それ以上に何か必要か?
まぁ、仕込みの剣だと言っておこう
水場?
あ゛ー、死者は掃除できねえな。
こっちだ、来い。
[目の不自由な相手に言葉で説明するのは面倒と手を伸ばす。怪我のことを知らないから力の加減もなくその手を掴もうとした]
[何かがメモ帳に記されていくのは、横目に見るのみ]
凶器。
先程言っていた刃物があるのでしたら、出すついでにこの結び目も切っていただけるとありがたいのですけれど。
[黒ずんだあかに染まった指先の布]
[じくりと、その下の指が疼いている]
……さっきは「必要なら見せる」と言ってたのに。
[立ち上がり、シャベルを取る。]
まあいいです。
ともかくあなたが終焉の使者でないなら、味方になるんでしょう。
でも、疑われてバッサリやられる危険性もある訳ですから、ある意味では凄く性質が悪い。
しかも、あなたが嘘を言ってる可能性も、私はまだ捨ててないですから。
[返事する間もなく、不意に手を引かれました。]
…、
[右手の指先、巻いた布の奥がちくりと痛みます。
元々小さな傷ですし、赤が滲むことはありませんが、少しだけ眉を寄せました。]
そういうものを切るのには向かないぞ
結び目か
中に切るものがあるんじゃないか?
[キャロルにそう答える]
[それからナサニエルの言葉を聞いて、肩をすくめた]
見せようかとも思っていたんだがな
そこまで命を粗末にするのも――服を粗末にするのもな
[口元を緩めた]
安心しろ
お前が違うと、生きている者を見分けられるのが言ったなら、己はお前を殺さない
もし反対なら――
言わなくてもわかっているだろうな
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