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─二階・自室─
[深い眠りから覚めたのは唐突。
光映さぬ瞳が開き、天井を見つめた]
……ローザ、あかい、はす。
これいじょう、ダメ。
……め、いたい……。
[両手で目元を抑えるように覆う。
声と動きに気付いたロートスが心配げにしながら、くるる、と鳴いた]
…ローテュ。
だいじょ、ぶ。
……ユーラ、は?
[気配がロートスのものしか無いことに不思議に思い、ユリアンの名を紡いだ。
ロートスにここに居るように告げ、どこかに行ったことを聞き。
「そ、っか」と短く言葉を紡いだ]
……やること、やらなきゃ。
[呟き、上半身を起こしたところで部屋をノックする音が聞こえる。
返事をすると、扉の開く音に続き聞こえるダーヴィッドの声。
状態を案ずる言葉に大丈夫と頷きを返すと、続けてローザのことを告げられた]
………。
[何も言わず、眉根を寄せる。
その姿は何かに耐えるように見えたかも知れない。
実際、先程から継続する眼の痛みに耐えていた。
カルメンがやるべきことを理解した今、今までその成果を挙げられて居ないことに対する戒めが纏めてその身に降りかかっていたのだ。
それ以降カルメンは何も言わず。
視えたのか、などと聞かれたなら、隠すことなく頷くことだろう]
―回想―
ああ。殺される気はなかったからな
[と、外へやってきたハインリヒに答えつつ気絶させることもできたのだろうか。などと今思ったところで仕方ないこと
ただ布を洗い。そして己の身を清めることに時間を潰し、そして時間がたった後。広間を一瞥した後。二階へと行き]
そういえば…ローザはどしたんだ?
[広間にいなかったような。気になることをいっていたような。気になると、ローザの部屋の前にいけば、気配はありながらも、そっとあけてみれば、疲れて寝ていたようで
また明日にでも…と、自室へと戻った]
[ダーヴィッドが立ち去った後、カルメンはベッドから降りる]
ローテュ、オカリナ、と、ほし、どこ、あるか、わかる?
[訊ねるとサイドテーブルから星の細工を拾い上げ、ロートスはカルメンに渡してくれる。
オカリナはここには無いらしく、手にすることは出来なかった]
そ、っか…。
した、いかなきゃ。
ローテュ、くる?
[一緒に来るかロートスに訊ね、来ると言うのなら肩へと乗せる。
多少重くとも、移動する分には問題はないだろう。
カルメンは星の細工を握りしめると、壁伝いに部屋を出た]
─倉庫─
[逃げるように駆け込んだ倉庫は、どこかがらん、として見えた。
相次いで布が持ち出されたためか、棚の一角はがらん、として]
……そんだけ。
人が、死んでんだ。
[呟きが重い。
圧し掛かるような頭痛もまた重く、深く息を吐いた]
[共に来るかと問われた鸚鵡。
こきゅり、と軽く首を傾げ]
「いっしょ、いくー」
[あんまり悩んだ様子もなく、あっさり同意した]
[足音でうっすらと…そしてノックの音で完全に目が覚める]
…どうぞ
[懐に短刀が入っていることを確認して声をかければダーヴィッドが子連れではいってきて]
隠し子か?
[とりあえずお決まりな気もする挨拶をした
その後部屋を訪れた要件を告げられて言葉をしばし失い]
……わかった……ちょっといってくる
[その言葉にダーヴィッドは一緒についてきたか。先に出て行ったかは知らないが、軽く立ち上がり軽く体を解すように動かし身支度と荷袋を背負って、てから、慌てることもなく歩きだした]
―ローザの部屋―
……ぁあ…
[本当に…倒れている
血の匂いが先駆けとしてどのような光景に鳴っているか教えてくれていたのに、光景を見てようやく把握したように呟いて]
…ばかたれが…一緒に楽団にいくんじゃなかったのか?
[教会と口にしていたことも気になっていたが。昔の話もしたかったのに、結局どれもできずに。逝ったローザを目の前に呟く。
いや、クロエを殺した己とはもう喋れなかっただろうか。]
―広間―
[びくりとした]
…ゲルダさん。
[振り返ったロミルダは、やっぱり困ったような顔をしていた。
直接尋ねられなければ、結果を言うこともない。
ただその手に裏側まで真っ黒な鳥が握られているのは見えただろう]
[頭痛は途切れない。
『護るための力』を行使しきれぬ事と。
力ある事への反発がもたらす痛み]
……俺、どうすればいい?
[問いの答えはわかっている。
ただ、その選択を。
何者として選び取るかが、見えていない]
…………。
[幾度目か、唇を噛んだ後。
使えそうなものを、適当に引っつかんで、倉庫を出た]
─廊下─
[ついて来たロートスを肩に乗せ、壁伝いに廊下を歩く。
今までは気にならなかった、否、無意識に気にしようとしなかった鉄錆の匂いが鼻につく。
自然、それを厭うように眉根が寄った]
……だいじょ、ぶ。
[ロートスが心配げに鳴いたのに短く返し、階段の段差に座りながら階下へと降りた]
よかったな…俺みたいな変なやつの世話を焼かずにすんで
[でも彼女は楽団での生活を楽しんでいたのは知っている。]
よかったな…お前、疑いあって殺しあうなんて嫌だったろ
[しかし、それ以上に楽しいことも生きていればあっただろう]
よかったな…もう哀しむことも、苦しむこともないぞ
[でも、死んだ彼女にはもうそれはないのだな。とぽつりぽつりと呟きながら考える。
死出の世界は、肉体というしがらみから離れたものなのだろうか。もしそうなら自由な俺には似合いかもしれないがローザ…いや、逝ったやつらにとってはどうなのだろうかと。
ここにきてようやく考えもした]
[しばらく沈黙が降りて]
…探しに行くです。
[黒い鳥を握り締めたまま、ロミルダは立ち上がった。
何をともだれをとも言わず。
ゲルダが着いて来るのを嫌がりはしないが、何を言われても足を止めはしなかった]
―二階・自室―
[いつも通りに早く目覚めて(実際はさほど眠っていなかったのだけれど)
だけど、どこか重いままの頭を緩く振って]
[身支度を、と思った所にノックの音]
…ローザが?
そうか…他には報せたのか?
わかった。ありがとうな。
[知らせに来たダーヴィッドは伝えることを伝えるとすぐに立ち去った]
[倉庫を離れたものの、すぐに二階に行く気にはなれず。
ふと、思いついて足を向けたのは外、蓮のあった辺り]
っても、もう萎んでる……よ、な……って。
[足が止まる。
蒼が、見開かれた]
……なんで?
[掠れた呟き。
二日過ぎれば花を閉じ、種を抱えるために水中に没するはずの蓮の花。
それは、未だにそこにあった。
水面に映える色は、鮮やかな、鮮やかな──鮮やか過ぎる、真紅]
[部屋を出て、ローザの部屋に向かう。
中の様子を覗き、ローザの姿を確認する]
[肩の損傷はエーリッヒのときと同じような。
そして感じた、彼と同じ気配]
[くしゃりと髪をかき上げ、すぐに立ち去る]
……。
[そしてそのまま、階段を下りて広間へと]
―→一階・広間―
[しゃがみこみ、欠損が激しい肩の辺りの血を拭う]
…蒼な…
[餌といわれていた徴の微かな痕を見出す。次は私と口にしていた理由だろう
もしもあの時…と考えてやめた。意味がない。現実はここにある。]
[ふる、と首を横に振る。
流血を暗示するような、色彩。
ずっと身近にみていた花に、初めて、畏怖のようなものを感じた。
じり、と後ずさり、踵を返す。
やる事を思い出した──と、言わんばかりに。
布を運ぶつもりだった部屋へ、急いだ]
[広間を出て、階段のほうへ足を向ける]
ふぇ。
…ロートス、カルねぇ。
[見えたのは鮮やかな色の鸚鵡と、カルメン。
ロートスがユリアンと一緒でないのに首をかしげて]
…あ。
[その後ろから歩いて来るハインリヒを見つけて、ロミルダは足を止めた]
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