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―遺跡―
異界門。開かれるのが摂理なのだろうか。
だが、開かれるのならば私如きが何を為そうとも開かれるのだろう。ならば―――
[仰いだ空には、落ちかかりそうな満月が掛かって居た]
……駄目だよ。
[否定の言葉は小さくも、しっかりとしたものでした。くるりと向きを変えると、ぱさりと翼を生やしたベアトリーチェは葉の間をぬって、そらへと飛び立ちます。]
あと、もう少しなのだから。
[失われた過去のねむる、遺跡を目指して。]
―北東の森―
[背の高い草ががさごそ動いて、...の姿が現れる]
おい、ティル。遅いぞ。
またなんかあったかと思ったじゃないか。
はやく、帰ろうぜ。
[直前まであったことなど微塵も気がつかず、
もう一度右手を伸ばした]
……うん。もうすぐ、なのだね。
[まさらな翼で飛び立つかの女を見送る。
その右の、残った瞳には、少し悲しみが映るだろうか。
しかし見るものはなく、月の光もそこに届かない]
止めて、やってほしかったな
[その言の葉は、精霊に向けて。]
……望みすぎは、身を滅ぼすのに。
[と、がさごそという音。風の音。
そちらを振り返った苗床には、今は微笑みが浮かぶ。
様子など感じさせぬような]
うん、何もないよ。
そうだね、早く帰ろう
[今度はその手を、左の、残った手で握って]
[アマンダは意識を澄ませ、氷の精霊の気配が感じ取る。
そちらへと足を向けた時、月の光に影が差し、羽ばたきが耳に届く]
……ベア…
[目を細め見上げ、佇む]
−北の遺跡−
[ふっと、円い眼は二人の精霊の姿を捉えたでしょうか。]
こんばんわ。
[挨拶をする声は、どこまでも穏やかなのでした。]
―北東部/森→中央部を通ってKirschbaumへと―
[町の様子はあまり変わらない。
それは普通の人では、意味がないからだろか。
この風の子も、
本当なら、そうであれたはずなのだろか。
少し考えながらも、
約束のために、Kirschbaumへの道をとる。]
[目を細めたまま、挨拶代わりに片手を上げる。穏やかな声]
…やあ、二人とも。ここだったのか。
[ミハエルの問いはアマンダも知りたかったこと。静かに見守る]
これは、門を開く鍵だと、聞いているよ。
[云いながら、小さな右手を、手首に巻かれた鎖の輪に延ばします。真珠は月の光を弾いて白くきらめいておりましたけれども、指が触れた瞬間にそれはかたちを変えてゆきます。腕輪から、一冊の書へと。]
『世界と世界の狭間にある、無限なる混沌の海』へと続く門であり、
『世界を生み出せし秩序の王』が去って行った門にして、
『世界を無へと還す混沌の王』が訪れるとされる門を。
[それはまだ天と魔の封印が施されたままでしたけれども、それには闇よりも黒い布が張られており、表紙には銀の糸で古い言葉がつづられていました。]
―Kirschbaum―
[...はいつものように店内に入り、
マスターに挨拶してふわもこに蹴られ]
さーて、どれを頼もうかな。
みんながいないうちに注文しちゃえ。
[うきうきメニューと睨めっこ。いつもと変わらない日常]
混沌を望むのか。
[辺りを包む闇は色を濃くして居たが、ベアトリーチェの手にある『鍵の書』の表はそれよりもなお黒く
月明かりを浴びた少女に暗闇を穿ったようにも見える。]
―Kirschbaum―
ごめんね、か……ハーヴェイ、ヴィオレット。
たくさん迷惑をかけた。
[それから、横たわる火の竜を見、
料理を嬉々として注文している風の子を見]
……僕は、また行こうかな。
もうすぐなんだって
[影の王にだけ届くように、小さな声で。]
……必要なだけだよ。
均衡を崩すことも、混沌を齎すことも。
[そう、教えられたのでした。]
新たな世界の創世のために。
[混沌を望んだのは彼女ではない、心の魔たる彼だ。
けれども結局は、彼女もまた、それを望んでいる。
――悠久を領域とする精霊であるにも関わらず]
[アマンダはその言葉を聞いて、哀しそうに笑う]
…ベアにとって、この世界は「いらない」んだね…
新しい世界(もの)を望む事は、今ある全て(もの)を捨てる事。
…そこまでして欲しいものは、なに?
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