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[飛びかう話題は少女の理解の範囲をこえていて]
[そろそろ部屋に戻ろうかと思ったとき、目に飛び込んできたのはハインリヒの傷跡]
……!
[衝撃のあまり声も出ない]
[彼は、ハインリヒに向かって、むう、と膨れつらを見せる]
言いたいことは判るけど、あなたの傷を見たら生存率が上がるってわけでもないでしょ?
ぶっちゃけ、僕なんかいくら本気になっても、人狼どころか大抵の人間にだってあっさり殺されちゃうよ。
だから、無理に怖がらせないで!
ニンジン以外と戦うのは無理なんだからさ。
[とりあえず結論が支離滅裂なのは本人も多分自覚している]
では、失礼して。
[アーベルの隣のボトルからグラスに真紅の液体を注ぎ込み、灯りに透かしてみる。 その向こうにはハインリヒの姿が映っていた]
自覚があるにせよ、無いにせよ、……自分が直接関わっていない過去への清算に関わった報償がそれですか。 苦労なされたようですね。
[シャツの奥の創に目線を這わせ、液体を喉奥へと流し込む]
(知る資格有り……そう考えて良いか)
[ハインリヒの言葉に俯いて]
そう…そうよね…それが本当なら…
誰にも死んで欲しくないわ。ここに人たちは優しいもの。
[作り物の笑顔に慣れていた自分に本当の笑顔を思い出させてくれた人々]
[だけどその中に…と思いかけて心が沈んで]
……何だか疲れたわね。
そろそろ休まないと…
皆さん、お先に失礼しますね。
[その場にいる人々に頭を下げて、二階の与えられた部屋に*戻って行った*]
…………寝る、よ……お休み……
[周囲の言い合いを余所に、そう告げると、ゆったりとした足取りで階段を昇り、自分の使っている部屋へと]
あ、エルザもイレーネもおやすみー!
[ついさっきの剣幕はどこへやら、彼は眠りにつくという二人に、にこやかに手を振ってみせる]
[少女はなんとか自力で茫然自失状態から立ち直り、よいしょと椅子から立ち上がった]
寝る。……おやすみ。
[それだけを言うと、階段を上りはじめた。
機械犬もどたどたと少女の後を*ついていった*]
[部屋に入り][扉を閉め][中へと歩んで]
[窓の外から注ぐ細々とした月明り以外、何も頼るものはない]
[机にランプを乗せ、椅子を寄せて其処に座る]
[ホヤを外し、油を充分に染み込ませた芯に、擦ったマッチを近づけて火を灯す。隙間を埋め尽くすようにホヤを取り付けなおすと、ダイヤルを回して絞込み]
[手馴れた様子でそれらの作業を終え、頬杖を突く]
[ゆらめく焔]
[照らし出された室内。彼女の顔が、暗闇に浮かぶ]
[何をするでもなく、ただ、それをじっと*見詰めていた*]
ああ、お休み。
[退室する人々と軽く会釈を交わし、ゆっくりと目を瞑る。
瞼を通して、暖炉の火が揺らぐ様子が感じられ、その為か何故かしら妙に冷静になるのだった]
…足は洗ったんだがねぇ。
何の因果でまた…。
[老人の言葉に苦笑いを返そうとして僅かに眉を潜めた。]
…悪ぃ、年甲斐もなく雪んなかで無茶やったせいであちこち痛ぇんだわ。
ちと横になる…。
[ソファーの上で丸まった。]
[部屋を見回して]
[眸が照らし返した先はザムエルの姿]
[ザムエル商会自体を知る事もなければ、彼が持っている何か確信めいたものに基づく口調もよく把握も理解も出来ない]
[自分のすぐ近くにいるザムエルの姿を見つめる]
[人が減っていくと同時に、なんとなく彼の頭も冷めたようで、すうはあ、と深呼吸してから、ブリジットに視線を向ける]
死なないよ。死んじゃだめだ。
[静かに言って、階段の方へ歩いていく]
僕も寝るね。みんなおやすみ。
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