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…!
〔フランの声が聞こえた〕
〔彼女はパトラッシュ、と言った〕
〔その後に続く自警団員の声〕
…やべ!
逃げるぞ!
〔裏口の戸を開け、鉱山へと駆け出した〕
[呆れた顔のランディの背後で、フランの声と警笛。]
っがぁ、しつっけぇな!
[ち、と舌打ちして、ランディの開けた裏口の戸を駆け抜ける。ふと気付けば隣をランディが併走していて。
なんでこいつも逃げるんだ? と一瞬の疑問。]
いいから戻れよ、お前まで疑われるぞ!
[走りながら怒鳴る。]
[外へ飛び出し広場へ出ると、やはり自警団がうろついていて。それによりまだパトラッシュが捕まっていないと言うことを察知する。村中を探し回ろうと移動し始めた時に2・3人の自警団員がその前に立ち塞がった]
…何?
[きつめの視線で彼らを見上げる。男達はディーノを取り囲むようにして逃げ場を無くし訊ねてきた]
「お前昨日随分と庇ってたようだな。あの犬はどこだ?」
…知らないよ。
宿屋には戻って来てない。
知ってたとしても、教えない。
人狼でも何でもないパトラッシュを無駄死にさせるわけには行かない。
「貴様…!」
パトラッシュが何をした!?
事実かも分からないような情報で人狼だって決め付けて!
パトラッシュが誰かを襲うところでも見たって言うの!?
[広場で他に人が居ると言うのも気にせず声を荒げる。その剣幕に少しだけ気圧されたように男達は身体を仰け反らせ]
「し、しかし奴が人語を話すと言う情報も入ってる!
最初の情報を寄越した者とは別の者からの情報でな!」
[その言葉には瞳を大きく見開いた。誰が、どこで漏れたんだ? そう逡巡するのも束の間、出て来た言葉は]
…それが何だって言うんだ。
人狼は人に化けるんだ!
パトラッシュが人狼だって言うなら…それこそ人の姿で紛れ込んでるはずだ!
いつもいつもいつも!
他と少し違うところがあれば排除しようとして!
皆と違い力があるからって気味悪がられて!!
[悲痛な叫び。自分が過去に受けた傷。涙と共にそれは零れ出て。男達がうろたえ始めた時、どこかから笛の音が響いた]
「!! 合図だ! 見つかったぞ!!」
[急げ!と男達は走り出す。涙を拭うと同時にそれが見えて]
…パトラッシュ…!!
[走り去る男達を追いかけて駆け出した]
「確かに喋った!」
「追え!」
「ランディ、何やってる!」
え。
ランディ!?
待って!!
[慌てて自分も走り出す]
[何が起きているのか]
[考える暇も無い]
〔パトラッシュの怒鳴り声に怒鳴り声で返す〕
…何でついてきた、だと!
…そんなもの!
俺にもわからん!
だが、土地勘の無いお前が何処に逃げるつもりだ!
つべこべ言わねぇで、俺について来い!
〔と、進む先へと指をさす〕
〔それは、鉱山の作業小屋を指していた〕
馴染みの鉱夫がいるはずだ。
もしかすると、匿ってもらえるかもしれん!
〔それだけ言うと、走る事にだけ専念した〕
〔後ろを振り返る〕
〔たくさんの人間が後を追ってきているのが見えた〕
〔少し考えた後、パトラッシュにだけ聞こえるように小さく呟く〕
…村はずれの丘に行く手前に、登り坂がある。
その坂は、裏に回りこむと、小さな洞穴がある。
子供くらいの大きさの奴しか入れないし、蝙蝠が巣をつくっているんで、村人はあまり近寄らんはずだ。
そこに隠れて夜を待て。
俺は奴らを引き付けるから、後は何とかしろよな!
〔そう言うと、走るペースを落としていく〕
[わからん、と返されてぽかんとする。]
ったくどいつもこいつも……!
[しかし土地勘が無いと言われればそれはその通り。
口を挟むのは諦めて走ることにする。
作業小屋を指差されれば、ちょっと眉を上げたが。
続く言葉に耳を澄ませる。]
オーケイ、了解した。……幸運を祈る!
[ランディがスピードを落とすのと同時にこちらは速度を上げ、作業小屋の裏に一度回りこむ。
表からの視線が集まらぬ岩影を伝って、丘の方向へ。]
[男達を追いかけ辿り着いたのは村から外れた工房のような場所。そこにはまだ数人自警団員が残っていて、やってきた男達に「向こうだ!」と指示を出している]
「ランディの家に居やがった」
「鉱山の方へ行ったぞ!」
「ランディも一緒に逃げたって!?」
[男達の声が飛び交う。その言葉から状況を理解しようと頭を働かせる]
ここ…ランディの家なのか…。
パトラッシュがここに居て、ランディと一緒に逃げた…?
[何故ランディが? 彼はパトラッシュを匿ってくれていたのか?
疑問は残るが、今気になるのはパトラッシュの安否。逃げたと言われる鉱山の方向へと駆け出した]
は…ぁっ。
[自警団員の足についていくことは]
[もちろんできるわけもなく]
[大分遅れて追いついて]
「何考えてたんだ!」
[騒ぐ男達の後ろ]
[肩で息をしていた]
〔普段の運動不足が祟ってか、全身が心臓のように早鐘を打っていた。もうどんなに頑張っても、歩く速度くらいにしか走れそうに無かった…ように見えた〕
〔何人かの自警団員が追い越していく〕
〔武装していない自警団員が、やや乱暴に立たせてくる〕
〔それに対して、両腕を軽く上げて対峙する〕
…何、で、逃げ、たか…だと?
…知らん。
ただ、驚いたら…身体が勝手に、動いてただけだ。
自分の、家の…前で騒がれ…たら、誰だって驚いて、何するかわかったモンじゃ、ねぇだろ?
〔息も絶え絶えにそう言ってのける〕
さて、聞かせてもらいましょう。
貴方はどうするつもりなの。
あの犬は何処に行ったの?
[肩を上下させながら]
[耳を澄ます]
〔まぁ、こんな言い訳で騙されてくれるとは思えんしなぁ、とは思っていたが、案の定詰問は続き、続きは詰め所で、と連行される〕
〔抵抗しても仕方ないのでされるがままにしていると、向こうから近づいてくるフランとディーノの姿が見えた〕
…どうした?
何か用事でもあったのか?フラン。
ディーノも、こんなところまで珍しいな。どうした?
〔二人にはのんびりと声をかけたが、それは自警団員の勘に触ったらしく、荒々しく詰め所まで引きずられていった〕
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