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まって
[アズマに向けて言葉を投げる。今はそれだけ。
ぎゅっと握り締めたバトンは、少し重いが 丁 度 い い 。]
かのうせんぱい
おしえてくれないの?
[にこっと笑う。
後ろの手に力がこもる。]
何ができるかじゃなくて、やらなきゃ、なんだよ……。
俺は…………死なせたから。
[コトネを]
それに……護れなかったから。
[ケンのことも]
だから……もう、これ以上はっ!
[無くしたくないんだ、と。
それは、小さな小さな呟きで。
ゆらり。
呼応するように、ゆらめく風]
[桜の大樹の下、小さな人影。
それは、夕方に見たばかりの。
聞いてみるのだと、言っていた]
―――マイマイ?
[変わらず、呼ぶのはあだ名で。
けれど、その声は、かたい。]
[声をかけられ、驚いて。
アズマを見ていた目を、彼に向ける。]
ショウせんぱい
どうしたんですか?
[手の力は一瞬にして抜ける。
それは何の違和感も感じさせないほどに。]
[後を追おうとして、逡巡…フユが「憑魔」の名を問い返さなかったことで、彼女自身がそれなのではないかという疑いは、確信に変わっていた。今、無手で後を追って、対抗し得るのか…?]
…………
[ちゃり、と預かっていた弓道場の鍵がポケットで鳴った]
詮も無し…か。
[鍵を握り締め、弓道場に近い出口へと走る。……間に合うかどうかは、判らなかった]
[ヒサタカの制止の声を無視し、2階へ
ガラス片を手にしたフユと再び相対する]
…………まだ、理由を聞いてませんから
[それは、事此処に至って尚、どこか信じたいという気持ちがあって漏れた言葉か]
……、ゴメン。
[僅かに荒ぐ声に、近付いていた歩みを止める。
小さく、溜息を零して。]
各務が何したか俺はしんねーけど。
そこまで言うなら止めないし、止める権利もないし。
…気持ちも、ちょっとぐらいなら判るから。
[ぽつりと、呟くように言葉を紡いで。
と、マイコから掛けられる声に、上半身を反転させて
視線を相手へと向ける。]
……教えるって、
[何を、と言葉を紡ごうとして。
横から相手に掛けられる声に、僅か意識をそちらへと]
どうって、…そっちこそ。
[緩やかに歩みを向けながら、問い返す。
その声も表情も、マイコと違ってぎこちない。
彼女の見ていた方に眼差しを向けると、後輩の姿。
同じ視界の端で、遅れて溶け込む緋色の海が目に入る。
ゆっくりと、瞬いた。]
さっきの
[再びショウから視線を離し、アズマを見て]
何やったのか、教えてくれないんですか?
わからないじゃなくて。
あんなの、おかしいじゃないですか。
[一階で対峙していたときと同じ程度の距離を保ったまま]
ふ。
[小さく嘲笑。]
その様子だと”憑魔”については聞いたんでしょう?
願いが在った。
それがすべて。
[ショウの様子はいつもと違う。
首を傾げた]
私は、ちょっと桜にききにきてたんです。
さっき言ったとおりですけど。
まぁ、教えてくれなかったんですけど
[それからアズマを見て]
何かわかんないですけど。
かのうせんぱいが、何か、やったんです。
教えてくれないんですよ、ひどいですよね
…俺だって、おかしいと思ってるよ。
──何でこんな事出来るんだって、今でも考えてる。
[再び向けられる視線に。
校舎へと向けていた身体を、相手へとゆっくりと向き直す]
……、先輩の身体を、『還した』。
俺が知ってるのは、それだけ。
…で、それを知って───タチモリは、どうするよ。
[自嘲にも似た、小さな笑みを口許に]
おれは人を喰うためにこいつの願いを利用するだけさ。
[首を傾けた。
片目だけはしっかりとウミを捉えたままだったが、もう片方の目は少し遅れてウミの肩の上あたり、ズレた位置を向いた。]
こいつの願いは都合が良かった。
……おっと、お前にとっては”こっち”の方が良いかな
……私の願いは、憑魔にとって都合が良かった。
ただそれだけ。
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