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[猫の後をついていけば、それは自分の向かいの部屋。
扉を開ければ、ぐっちゃぐちゃの部屋の中にまたため息が零れ、どうにか無事らしい寝台の上に少女を降ろして]
…治るまで、出歩き禁止。
[静かに一言呟いて、そのまま部屋を出て行く]
[ユリアンが少女を運び込んだのは、
ぶりじっとが教えてくれた部屋。
少女は自分の部屋の寝台に降ろされるが……]
…………!
出来ないよ!そんなこと!
[告げられた言葉に咄嗟に叫ぶ。]
それが君の基か。
[力バランスの制御、磁場の展開。
同時に行うにはそこまで引き上げるしかなく]
思いは――力に。
[制御を助ける仮面の下から、僅かに激情が瞳を走る]
互いに、望むものの為――!
[距離を詰める。相手の構える糸刃を睨みながら。
周囲へと磁場を僅かに広げてそのまま飛び込んでゆく。
左腕の刃が青白い光を帯びる]
――……………、
[語る言葉が無くなり、音が一時、止まった。]
それなら、あなたは、わたしにとっての火だよ。
<降り止む雪。
晴れゆく雲の切れ間より、
煌めく月が現れる>[否、変わらず其処に在った]
[何処かゆっくりとした足取りは、廃墟の上へと出て。
――随分と、月が近く感じるのは気のせいか。
鈍色の眼下を、悠然と見下ろした。
ふと、離れた位置。
電子の摩擦が発する光を捉えて、僅かに翠を細める。
廃墟の隙間を吹き上げる風が、
月灯りを受けて、僅か光る金を煽るように揺れて]
却下。
[言葉は一言、扉が閉まるのと同時に。
それから向かいの部屋へと納まれば、寝台に体投げ出して。
猫がおなかすいたとか、暇だとかでお越しには何度か来たのだけれど、それすら気づかぬようにぐっすりと]
−そして時刻、現在−
[その言葉に、そろりと翼は彼女から離れた]
私は、貴女を溶かしてしまう?
でも、私も貴女も同じ生き物なのに。
[見えるようになった月光を受けて白い翼は鈍く煌く。
熱を集める事を止めたそれは、外気と同調するように冷たく。
否、それすらもまやかしに従って自らの力でそうしている
だけなのかもしれないけれど]
溶けて水になってみたら、どうかな。
雪は溶けて水になり、他の雪を溶かす。
そうして雪解け水は川になる。
川の中は、寂しくないし温かい、よ。
……理屈は、いらねぇ……。
俺は、俺の思うまま、願うまま……。
[飛び込むティルを、真っ向から見据えつつ、糸に、強く念を込める]
……ただ、進むだけだ!
……Schneiden Sie es, und werden Sie die scharfe Klinge!
[一際鋭い、声。
刃と化し、舞いて切り裂け、と。
気迫のこもった声が、糸へと念を送り]
Offnung!
[全身がザワリと逆立つように電撃を生み出す。
磁場そのものが音を立てて電子を舞わせる。
襲い掛かる糸すらも焼き尽くそうというかのように]
それは、変わらぬ!
わ……わからず屋!
[ユリアンが聞けば、それはそっちだと言いそうな。
そんな言葉を叫ぶ。]
[叫ぶ声に呼応して、球体の内3つが
「チュンッ!」と音をたて、扉に光線。
……ズタズタになる扉。
少女は苛立ちまぎれに、両足の包帯を解こうとし……
出来なくて、寝台の上で小さく丸まる。
同じじゃ、ないよ。
[ゆるりと、首を振った。]
なったことにないものになるのは、こわい。
わたしは、臆病だから。
かえりたいの。
[じゃらりと再び、音色がつくられる。
揺らめく色は、]
――火産霊(ホムスビ)。
[赤。]
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