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―東殿・回廊エントランス―
リーチェ!それに、ナギさん!良かった、無事で――
[そこまで呟いたところで、流水と翠樹の影が――それだけではない。
様々な影という影が、揺らいで見えた]
これは……剣の影響……!?
それとも、ノーラが……!
ノーラ……?
[当然、影を使役するのは、彼の竜でしな成し得ない訳ではあるが、それでも、ここまでの力を使用するべき場面とは一体?]
……再会の喜びや、情報交換とかは後回しにしたほうが良さそうねぃ。
ノーラが影を使役しようとするならば、この先にノーラの姿があるのは明白。
その場所に行くのが先決ぽいですわぁ。
[言いつつも、影が向かう先へと走り出す]
ブリジット。
そこの仔のフォローは任せるわよ。私はあまり面識もないですしねぃ。
――…!
[自らの影が奪われし行く先――強大な影が視界へと入る。
其の姿か力にか幼子は小さく息を呑んだ。
無理も無かろう、その姿は私ですら圧倒される。]
…っ ノーラ、
[水竜殿や、氷竜殿から掛けられた声にすら幼子は気付かぬ様子で
新緑の足跡を残し、其の足は竜の姿がある中庭へと向かい始める。]
[半分見失いながらも、なんとか他の影が向かう先も計算に入れつつ、走り続け―――辿り着いた場所は、影と精神のいる中庭。
そこでナターリエは、巨大な影の竜と化しているノーラを見つけた]
影と、精神が、対立している……?
っと。精神がいるなら考えてる暇ない、か!
[すぐさま視線が通らない物影に隠れて、自身は水鏡を移して、その鏡が映し出す映像で、中庭の様子を眺め始めた]
―中庭―
[影が集まり、黒にも深紫にも見える巨大な竜へと変わる。
それは【影竜王】の姿]
――『神斬剣』をどうぞ、【影竜王】よ。
[黒の腕輪を奉げ持つように青年は微笑む。
影輝の力と精神の力、二つが混じり合い、腕輪は剣の姿へ]
『真・聖魔剣』と成し、『律』をお断ち下さい。
[もう一つ必要なのは【皇竜王】と『聖魔剣』
ギュンターと竜都を引き換えに、エルザを、もしくは野心持つ天聖の竜を見つければいいと――…]
―東殿・回廊エントランス―
ええ、分かったわ。
[水竜へとこくり頷いて]
……っ、リーチェ!
下手に見つかったら大変だから……っ、待って!
[幼子を追うように、中庭へと掛けていく――]
[やってきた竜達の気配に青年は振り返る事なく、気配を生む]
邪魔はさせません。
[青年から生まれた混沌の気配に誘われるように、混沌の欠片が中庭に集い出す。まるで影が集まった時の再現のように]
―西殿・回廊食堂前―
寂しい、か。
おいさんにもその気持ちはすっげー、よく分かるなぁ。
[よしよしと、ティルの頭を撫でる。口調は軽いが、別にからかっているわけではない。
いつの間にか、床からは倒れ座り込む格好になっていた。]
…叶える為に必至になって、その後の事なんざ、見えてない奴が多いんだろうな。
[それは今のアーベル叱り、オティーリエ叱り。
そして己の片翼叱り。]
< 捧げられる剣。
竜は螢火を宿した眸で青年を見下ろす。
首を擡げる動きにつれて、影が揺らぐ。容は定まり切っていない。
逞しい腕の一本が伸ばされ、鋭い爪先が剣へと近付き――
触れた瞬間、白と黒の二色が弾ける。
反発。
揺らぐ天秤は、大きく傾いている >
…っ、ノーラ。
[駆け出した先の中庭へ幼子は戸惑いも無く足を踏み入れる。
水竜殿が身を隠している理由など、仔には些細な事である様であった。
ざわりと、仔の足跡を新緑が繁る。
尤も――その根元に足元に、影は、無い。]
……っ、
[庭の中程まで来した頃か。
見覚えのある欠片に囲まれ、幼子は漸く足を止めた。
触れてはならぬと記憶している。――しかし自らに様が在るは、この先。]
……っ、ノーラ!
[声を上げる。影竜殿が、気付いてはくれぬかと。]
[精神の言葉で、周りに混沌のカケラが集まってきたのを感じる]
切り札の……切り時かしらねぃ。
[静かにそう言って―――ゴポリ―――と、ナターリエが口から『混沌のカケラ』を吐き出した。
それは、混沌に属した属性無き、『虚無のカケラ』
だが、長き間にわたってナターリエの中にしまいこまれたそれは、流水の属性を僅かながらも有した。言わば、流水と虚無のコラボレーションである]
『力ある剣』……奪ってきなさい。
[混沌のカケラ如きが、『力ある剣』を手に取ることが出来るはずは無い。
だが、一瞬だけでも弾き飛ばすことが出来るのならば、それだけで充分。それに、他の混沌のカケラに混ざってしまえば、見分けることは難しいはずだ。
混沌と流水のカケラが、ナターリエの命令通りに、『力ある剣』へと飛び掛る―――]
[反発は剣を奉げる、否、現在の所有者である青年の手に衝撃を与える。だが眉を少し寄せただけで、奉げる姿を解きはしない。
危険の警告である痛みを切り離し、『願い』を叶える為に]
――…どうか、『律』を――…
[精神の力を剣に侵食させ、反発を抑えようと試みながら願う]
[そして、我が身は混沌のカケラの中を無理に進み出て、自らの目で中庭の前景が見える位置へと移動。
その代償は、混沌のカケラによる一斉の攻撃。傷は浅くない]
さて、結果は何なりや―――?
[ナターリエに、次の手は残されてはいない]
< 幼児の呼ぶ名。
青年の称す位。
螢火の双眸が移ろい、影の一旦が零れ落ちた。
微かに、【影竜王】を象ったものが、崩れる >
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