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研究員 ハインリヒ に 8人が投票した。
盲目 ベアトリーチェ に 1人が投票した。
写眞家 アーベル に 1人が投票した。
研究員 ハインリヒ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、清掃員 ゲルダ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、植物学者 ライヒアルト、令嬢 ブリジット、シスター ナターリエ、盲目 ベアトリーチェ、写眞家 アーベル、消防士 ダーヴィッド、政治家 ヘルムート、星詠み ノーラ の 8 名。
[白い花びらは舞う
舞う――盲目の少女を守るために 花は咲く]
アルドルフ――!!
[咳。 それは 誰の 名]
[花は、指は ハインリヒの、頚を 掠め]
[白い花びら闇がわずか途切れ、ベアトリーチェの首輪に掛かったハインリヒの腕がはっきりと見えた。
咄嗟に、まさに引き千切られんとしている少女の首輪を、あるべき場所に押し戻す。ハインリヒの腕ごと押さえ込むようにして。]
[血の紅がついた花びら。手を離すとそれは床に落ちて他の花に混ざった。
ハインリヒのバンドを引きちぎるブリジットを虚ろな目で見て俯いた。]
優しい人だったのに、どうして。
[肩を貸してくれたお礼を言ってない事を思い出す。
後悔は増えて行く。]
[白い花びら散る、その光景を、
ただ、僕は 見ていた。]
[ハインリヒがベアトリーチェを、
そのハインリヒをブリジットが、ヘルムートが…]
[そして、その背後で、ゲルダが…―――…に]
[を、ただ見てた]
ツ、ヴァイ……さ、ん!
[白い花が断ち切る。ただ、切れた音が耳に残った。
誰かの手が、自分の首元でバンドを引き戻す。
――切れた音、それは]
ゲホ、っ……!
[数回咳き込んで、手を伸ばす。触れた先に、冷たい石の感触]
……い、や。
[もう一度、触れる。掴む。動かない、腕]
[いばらの 花は 落ちる ふりつもる
白に覆われた視界は晴れるだろう。
花びらは
少女の金色に
黒い髪に
赤に
白い石に
かれ に ――抱きついたままの
亜麻色の髪に。]
[真白の舞は眩くもあり。
刹那、視界は強く霞む。
数度の瞬き。
焦点はまた、容易く合う事を拒んで]
……一体。
なんで。
こんな。
[ようやく、開けた視界。
状況をとらえたなら、口をつくのはこんな呟き]
[強く握り掴んだハインリヒの腕がみるみる石化していく。
硬化に合わせて、ハインリヒの腕が僅かに上に持ち上がる。ベアトリーチェのバンドが浮くのが見えた。
咄嗟に鞘のままのサーベルを掴み。
ベアトリーチェの上で、ハインリヒだった石像の手首を、砕く。
指のかたちを首輪の所に残したまま、飛び散る石片。
白いしろい花の闇が途切れ、視界が晴れるのはそれからどれくらい経過してからだろう。]
[喉が苦しくて瞳を細めて、その間に]
ッぐ、……ブリ…
[白い花が少女を護り、気高き星は――首輪を断ち切って]
―― …ぁ、…
[白い花が舞い落ちる。
落ちる。
石に抱きついたままの
亜麻色の上にも
降り積もる。
誰かの心に呼応しているかのように深々と。]
[静まっていく、舞。
はらり、降り積もる、白。
聞こえた言葉>>11。
振り返った]
……きれい、だが。
物悲しい、な。
[小さく呟いて。
先に白を染めた紅の痕が見えたなら。
それへ向けて、つ、と手を伸ばす]
[死んだものは返らない。充分に、知っていた。それでも、縋った]
生きて、ほしかった、のに。
[絞められていた喉の痛みも今は感じられず、あるのは後悔と、喪失感。
咳をする声はもう届かない]
ご、めん、なさい。
[何度謝っても、足りない。何度謝れば、彼は頭を撫でてくれるだろう。違う。もう、遅い。
同じ、石になったのだから]
[こんな状況の時に、ライヒアルト以外が自分を見ているなんて考えもしない。
伸びてくるライヒアルトの手。咄嗟に唇を舌で舐めるけど、また血は溢れる。]
平気、だから。
[あまり痛くは無かったから笑ってる つもりで言ったけど、笑えてはいなかった。]
[――どうして彼は石になってしまったの。
――どうして彼はベアトリーチェを
――どうして、]
[ブリジットが、どうして彼のベルトを――
ヘルムートはどうして彼の手を――
どうして、―――]
[―――ゲルダの姿が動いていないの。]
[上からあたたかい水の雫がぽたりと振って来た。
漸く、白い花を舞い散らせていた者の正体を知った。]
──ブリジット。
[それ以上は何も言わない。ベアトリーチェをそっと引き起こしながら、首元や髪に散った石片を取り除く。バンドが嵌ったままの少女の華奢な首の横、床に生々しい形をしたハインリヒの手首が落ちた。]
[――ふ、 っと
糸が切れたように
身体の力が抜ける。
花びらの上に崩れ落ちて
石と化したハインリヒの側
意識を喪った。
首輪の数値は――Lv3を*示している*]
……平気、じゃないだろ。
[呆れたような、声。
伸ばされた指は、滲む紅を拭う。
移る、いろ。
こぼれるのは、ため息]
……そこはさすがに、治療できんのだから。
まったく、何をしてるんだか……。
[呆れたように呟いて。
ノーラがゲルダを呼ぶ声を聞いたなら、先に緑髪の少女がいた方へと視線を*向ける*]
[おじさんだと言った。名前を教えてくれた。別の名前で呼びたかった。
カプセルを叩いていた。
手を引いてくれた。名前を呼んでくれた。
階段を上るのを、手伝ってくれた。
注射をしてくれたのも、彼だろう。
ジャケットは暖かかった。
全部を、克明に思い出せた。何気ない言葉一つまで。
首を絞める手は、温かかった――]
生きなくちゃ、駄目なの。ど、して。
唇のケガは治りやすいから。
[ばいきんが入って腫れてしまったりするけど。
ノーラがゲルダを呼ぶ声。ライヒアルトの視線を追い、見る。
堪らなくなってライヒアルトに抱きつく。]
あたしたち、無事に帰れるのかな。
[人前であるにも関わらず、少し*泣いた*]
[死んで欲しい人なんて誰一人居ない。
…生きて欲しかった。
彼女の為にも―― 生きて欲しかった。
それなのに]
残酷だわ。
こんな…事、――。
[全てのカプセルを確かめていた彼不意に思い出して涙が滲む。
視線はゲルダに再び向けられて、そう遠くないのなら
重みが僅かに増した足を引いて彼女に近づくだろう。]
[首から、石になった手が取り払われる。それすら惜しかった。
ブリジットの名を呼ぶ声が、耳に入った。
ヘルムートの手が、頭を撫でる]
……?
[ノーラの、ゲルダを呼ぶ声。耳に半分だけ、聞こえてきた。
見上げる。見えないけれど、上を向いて、ヘルムートがいるほうに顔を向ける。開いた翡翠から、零れ落ちる雫。
首を振って、又俯いた]
[そして引き千切られたバンドと石となったゲルダを見つけて
堪えていた涙が滲み零れ落ちていく。]
うそ、ゲルダ…
ゲルダ――どうし、て
[そ、と伸ばした手が触れるのは冷たい石の感触で]
―――ッ、…もう、これ以上
私は誰かの死を見たくないわ。
私達が生きる事を…
ピューリトゥーイが遮るのなら――
[ゲルダに何かあったのか、と思考の外側で思う。
涙はただ一筋だけ流れた。
泣いたら、認めてしまう気がして]
ツヴァイ、さん。もう、何も、聞こえないのね。言えないのね。忘れない。忘れないから。
ね。
ねぇ。
[座り込む。手に当たる石は彼だったもの。
ノーラの、ダーヴィッドを告発する声が、響いた]
●業務連絡●
イベントについてですが、無理に起こす必要はありませんが、ヘムヘムさんのリクエストにはお応えいたします。
【ヘリ内に小型端末を発見してください。そして、その中にゼルギウスファイルを発見しましょう。】
【そのことで、ヘリ内でもイベント発生可となります。】
以上みなさん、ご無理なさらず!頑張ってくださいね!
[ノーラの叫びに、顔だけ動かしてダーヴィットを見る。彼は、どんな表情をしていたか。]
え。
[頭が麻痺していて理解するまでに時間がかかる。
また凍える下腹を右手で庇う。今度は下腹から来たようだ。顔色はよくはないだろう。
何故ダーヴィットがピューリトゥーイで、どうしてそれをノーラが知っているのか。浮かぶのは発見したメモ。]
ゼルギウスは、知っていたのかな。こんな騒ぎになる事を。
[怒りをその場の誰にもぶつけないように、ここにいないゼルギウスに向けた。]
[背伸びして抱きついたライヒアルトの耳元で囁く。]
違うと思ってる。でも、あなたがピューリトゥーイなら。あたし、一緒にここに残るから。
[彼だけに聞こえるように近づきすぎて、唇を染めた紅がその耳に移る。目を閉じたからそれには気づかなかった。
背伸びをやめ、ライヒアルトの腕から離れて庇うように*彼の前に立った*]
>>27>>28
[ノーラがこちらを振り返った。
そして、力強く、
僕の名を言って……
それを、ただ驚いた顔で受け止めた。]
…………。
[あれ]
…………ッ
[何か言おうと思った。
だけど、何も浮かばない。
でも、さっき思ってたことじゃないか。
そうだと知ったら、みんな僕を殺したいと思うだろう。
だから、別になんともない。
想定内だ。
だけど……]
…………。
[そして視線をノーラではなく、その背後にいるヘルムートに一度走らせたあと、床を見て俯くと、ゆっくりと振り返る……。]
[言ってどうなるというのだ。自問自答が頭の中で何度も繰り返される。何もせずに見てきた臆病者のくせに。
彼にも死んで欲しくなんて、――。]
…
[いたい。]
まち、なさ…い
[実験室へ向かおうとするなら後を追おうと、重い足を。]
[帰れるのかな、と言う言葉>>23。
それには何も返す事なく、ただ、支える腕に力を込め]
……ダーヴィッドが……ピューリトゥーイ……?
[響く、ノーラの声。
天鵞絨が険しさを帯びる。
彼女の力の事は知らねど、思い当たる節はあった]
……想定内、と。
考えるのが、妥当だろう。
[ゼルギウスへの疑問>>30に呟く。
観察しているのであろう、研究者]
……趣味の悪い、シミュレーションだ。
[吐き捨てるよに呟いた直後、耳元を掠めた熱と、言葉>>31。
天鵞絨が緩く、瞬く]
……その心配は、いらん。
[証立てる術はなくとも]
……俺は俺だから。
[それに、偽りはないから、小さな声で囁いて。
護るように立つ、その*隣へと*]
>>35
[ノーラの制止する声が聞こえた。
足を止めて、振り返る。]
……………ノーラ
蛇……
[落ちてきた一匹の蛇を指差す。]
―――― ッ …
[ぼたり、と落ちる蛇に足が止まる。]
い、や。
[もう蛇は、見たくない。
逃げたくてでも動けなくて、ダーヴィッドを困惑した顔で見た。]
>>39
[蛇を怖がる様子に笑って……]
早く克服しなくちゃ……
ベアトリーチェを護れないよ。
[そして、そのまま、実験室に入っていく…。]
――…、…!
[何が可笑しいのか解らなくて、それが悔しくて。
一度だけ振り返って少女を見る。
『どうして、大事な人ばかり、いなくなるのかな。』
また少女を悲しませてしまった、それが悔しくて。
涙目のまま腰にあった楯を手に取り
身を守るように蛇を見ないように翳す。]
……っ、…待ちなさい――!
[例え身体がどうなろうと構わない、せめて今、彼を追う力さえあえばいい。]
[ガクン、と実験室の前まで辿り着けば身体が傾いた。]
…っッ、…
[負担をかけてきた身体、足は見ないように。
おそらく、また土気色に足首が変色しているだろうとは感じつつも、ずるりと崩れ落ちるように実験室の中へ。]
ノーラ、無理をする……。
だけど、もう、僕のことは、構わなくていいんだよ。
[そして、さっき座っていた椅子に腰掛ける。]
[嘘?――嘘だ、と。同じ言葉が反芻される。]
…えぇ。
[蛇のせいか、彼へと抱く僅かな恐怖のせいか揺れる視界。
彼を見て瞳から零れた涙、地面に落ちる時には石になった。]
…信じたわ。
[信じて、招いた結果――。思い出し、両手を握りしめた。]
貴方は、…薬になんて
負けないと…――信じたわ。
―3F 石像傍―
[駆けていく、足音が遠ざかる
――誰かが、誰かを。
…
身体が重い。]
……― 、…
[うすく、眼を開く。
ぼんやりと虚ろな霞がかった常緑樹の眼が覗く。
Halsdorff・Heinrich
視界の中に映った、
――断ち切った、ハインリヒの首輪
ゆっくりと手を伸ばして、握り締めると
そのまま、胸に抱いた]
[ノーラがゲルダを呼ぶ声が聴こえる。俯いたベアトリーチェの肩に>>25手を添えてから、たち上がった。向こう側に居るゲルダは──石になって動かない。
頭からすっと血の気が引く感覚。視界が暗くなり、石化したゲルダと揺れるノーラノ長い黒髪だけがクローズアップされたように鮮明に見えた。]
[ノーラの声がフロア中に響く>>28。]
──ピューリトゥーイは、
ハインリヒじゃないのか。
ダーヴィッドが?
[大きく両眼を見開き、ノーラを見た。ノーラが占いのような力を持っているらしい事は知っていたが、投薬により能力が活性化していたとしても、占いなら読み間違いもあるのではと。
石になったゲルダと目が合う。彼女が、言っていた言葉が何故か鮮明に甦った。
「…気をつけなきゃ、いけないよ。>>5:92
意志の強い人、だったら…
影響されてても普段どおりに振舞ってるかもしれない。」
視線を感じて、ダーヴィッドを見詰めた。──目が合う。ダーヴィッドはノーラの告発を否定せずに実験室へ入って行く。]
[遠くで声がした。大切な、人の声。護ると言った人。糸が、揺らめく。
死んだ者は、返らない。戻ってこない。だから、彼も、戻ってこない]
ねえ。ツヴァイさんは、死にたかったの、かな。
[誰に問うわけでもなく呟いた]
[手を伸ばすと、石になった身体があった]
憶えてる、から。
忘れ、ないから。
私、まだ間に合うことを、するの。
[右手で杖を探す。転がったそれを拾い上げて、立ち上がった]
ノーラさん!
[声の去った先。始めていく場所だったけれど、彼女がどこにいるのかは、わかる]
[エーリッヒ。忘れる事が出来ない名。
彼を、殺した人が今、目の前に。
だけど]
…どうして、…
[口から出た言葉は、3度目となる同じ言葉。]
[ヘルムートの声が、聞こえた。うめくような、声]
ヘルムートさん?
[前方。もう扉があるのだろう、扉を開けたヘルムートの背に、ぶつかりかけて、留まった。
聞こえた、>>56ノーラの声]
………。
[彼女のどうして…は、答えられない問いだった、今までは。
だけど、今回は………。]
彼は永遠になるじゃないか
……綺麗なままで。
ダーヴィッド。
[実験室奥の解析マシンには、まだあの薬物の結晶多形、ペルセウスの星座が大写しになったままだった。ダーヴィッドは先刻腰掛けて居た椅子に座っている。
ヘルムートは、ダーヴィッドとノーラが居る実験室の入口を塞ぐようにして、立ち尽くした。]
[ダーヴィッドの声。綺麗なまま。その言葉の意味を理解して、誰のことを言っているのかと、思った。彼――]
ダーヴィッドさんが、エーリッヒさんを?
そ、んな。
[糸の先。ノーラの方へ手を伸ばした。触れたらその手を握って]
―――ふ、
ふざけ…ないでッ。
[綺麗?永遠?
何を言って―――
衝動的に手を上げて止められないのなら
そのままダーヴィッドの頬を掌で打っただろう。]
…ッ
[肩で息をして、少しだけ周囲が見え始める。
茨が蔓延る壁に白い花が咲いた。
手繰り寄せるように近づく糸。
ヘルムートの気配。]
ベアトリーチェ。
[背中に当たる小さな身体と声は、ベアトリーチェのもの。
ぶつかった少女を、後ろ手で庇うようにしながら、聴こえてくる室内の声に耳を傾ける。実験室にある茨に、ぽつり、白い花が咲いた事には当然気付かない。
──嗚呼。
ダーヴィッドは今、何を言っているんだ?]
[ノーラが頬を打ってきて、
それが、前、カルメンに引っ掻かれた傷に当たる…。
また少し、血がにじんだだろうか。]
………。
[ただ、目を伏せた。
何も云うことなんて、思いつかない。]
[ヘルムートに名を呼ばれて庇われるように当たる掌]
ノーラさん、駄目。落ち着いて。
[手が触れられないなら声をかけて。
オトフリートを殺したのが、ハインリヒだと知ったとき、憎悪はわいてこなかった。
エーリッヒが彼に殺されたことに、その理不尽さに、一瞬理解が出来なかった。けれど]
ダーヴィッドさん、それは、本当なの?
その、気持ちまで、ダーヴィッドさんの、ものなの?
[冷静に、問う声]
[腕を支えに緩慢な動作で身体を起こす。
もう動かない石の青年に
凭れかかるようにしながら
顔が髪に隠れて見えなくなるほどに俯いた。
手の中には、己が千切った首輪。
身体の、重さ。
覚えている。
これは――6の部屋で、
オトフリートが石と化した時と同じ。]
……アルドルフ……
[答えはない。
彼は時を止めてしまった。
止めたのは(殺したのは)]
>>65
[少女に問われて、考える。
だけど、自分がやったことが、自分の意志でなくてなんだろう?]
そうだ。
[肯定]
[僕の中にある僕に、何の疑問がある?]
[ヘルムートの脇をすり抜けて、ベアトリーチェの手が伸ばされる。彼に糸は見えない。だが、それがノーラに向けられていると言う事は理解出来た。
頬を張る音。
ノーラの表情は黒髪に隠れて見えない。
悪い脚で立ちながら肩で息をするノーラの背。愛情深い若い母親と娘の絆のように、ノーラが振り返らずとも、二人の手は繋がる。
核心を質問をするベアトリーチェに、心臓が跳ねた。]
危ない、ベアトリーチェ。
[目の見えない少女がハインリヒに首を絞められていたのは、こう言った行動をしたからではないかと思う。ダーヴィッドの答えを切望しながら、ノーラとベアトリーチェの更に前へ、カツンと靴音を響かせて滑り込んだ。]
[そう、これも想定内だ。]
[知っている。命の尊さは]
[だから]
[嘘はつけない]
[それも本当の感情なのだから。]
>>73
ノーラ
それは、理想だ。
[そして、ヘルムートを向き]
そうですよね。議員。
僕は貴方を支持します。
[犠牲を厭わないと、彼は言った。]
ダーヴィッド。
お前は愚か者だ──。
[頬にある女の爪痕が紅く染まり、血がにじんでいるだけで、ダーヴィッドの顔が何処か違って見える。]
だが、私はもっと愚かだ。
気付けなかった事で、
過ちを幾つも犯した。
[矛盾する二つの答えを返す、ダーヴィッドと目が合う。ダーヴィッドが衝動的にピューリトゥーイとして動くなら、すぐ後ろに庇った少女を扉の方へ突き飛ばそうと。]
そうだね。
[ベアトリーチェには頷いて…]
君のいうとおりだ。
[そして、ヘルムートの視線には、視線を返し……
数秒後に、目を伏せた。]
[言葉を重ねる事でダーヴィッドを刺激しないだろうか?
それでも、少女の言葉は止まらない。緊張感にジリジリと後ろに下がる。
──唐突に気付いた。]
生きている間は襲わせない
と言う事は、
もう一体のピューリトゥーイが分かるのか?
>>76
[身構えるような仕草をやめないヘルムートには、首を振って……]
もう僕は、動けないです。
だから、心配しなくていい。
>>79
[もう一人の……の問いには頷くけれと、口は開かない。]
それを初めからあきらめるのは、成長を止めるのと同じ。前に進まない。
それじゃ、何のために、生きてるのか、わからない。
エーリッヒさんは、私は、みんなは、あなたのために、生きてるのじゃないもの。
―3F ハインリヒの石像近く―
[不意に]
――ッ…!!!
[花びらに覆われた地面に
振り上げた片手を思い切り叩きつけた。
痛くない。
痛くない。
痛くない。
―― こんなに いたいのに
石の欠片が刺さっても、
血が滲んで花びらに散っても
暫くは そのまま]
>>82
[少女の言葉に、ふと、考えをめぐらせる。
そして、自分は、わからなくなったのかもしれない。
それは、薬を投与されたからでも、メデューサにかかったからでもなくて、
もっとずうっと前に、
わからなくなった。]
…………。
[少女の言葉には何も返せなくて、ただ、黙っている。
聞いてないようにも感じたかもしれない。]
[生きるために前に進もうとしている星の煌きが眩しい。
少女と繋がる糸を、手を、少しだけ強く握り]
私は、ベアトリーチェを守るの。
彼の分も…生きて、…守り続けたいの。
[もう1人のピューリトゥーイ、まだ解らない。
けれど確実に存在する。
そうでなければ、ゲルダは石になっているはずがない。]
…
[動けないと言うダーヴィッドをヘルムート越しに見て]
危険…な、存在には変わりないわ。
とにかく
もう、僕は、何もしないし、
[むしろできない]
ヘリにも乗れない。
[そして、胸に手を当てて……]
少し、痛いから……。
[放っておいてほしい。
その言葉はでずに、ただ、やっぱり額に汗が浮かんで……]
[沈黙するダーヴィッドを見詰めて続けるヘルムートも言いようの無い虚無感に襲われる。見開いたままのサファイアブルーの瞳が揺らいだ。半数は女性が乗るヘリに、8人中ピューリトゥーイ2体は乗せて行けない。そして、ダーヴィッドも、その事を理解している。まだ世界を知らない子どもの言葉は真っすぐで、大人には残酷だ、と思う。]
ベアトリーチェ。
彼は、異常な薬物を投与されている、んだよ。
[首を横に振って、深い息を吐こうとする。ダーヴィッドの額に浮かぶ汗を見ると、無意識に手がのびた。指先で拭う水滴は、自らと同じ人間の体液の匂い──。]
……ノーラ、ベアトリーチェ。
出来るなら、私を此処に置いて。
ゼルギウスファイルをPCから探してくれないか。
こうしてる間にも石化病は進行して行く。
もし、ヘリがすぐ動くようなら、先に乗ってくれて良い。
──そして、ダーヴィッド。
私はおまえと二人で話がしたい。
>>85
[危険な存在…には苦笑い]
そう、だから、
殺せばいいよ、ノーラ
[思っていた結末、そうとわかれば、
みんなは僕を殺す。
間違っていない。]
―3F ハインリヒ石像付近―
[は、と乱れた息を吐く。
――痛くない。
うな垂れたまま、自分を抱くように腕を掴み
ハインリヒの石像に寄りかかる。
つめたい。
繋いだ手のぬくもりも
抱き締められた時のあたたかさも
其処には無かったけれど
うごけない。
からだの重さ。
裡のいたさ。
まだ、その場から――動けないでいる]
[誇り高き星、貴方は迷わないと言う言葉には、複雑な表情で口端を持ち上げた。]
ノーラ。
これを──ブリジットに見せて欲しい。
説明は、ライヒアルトがしてくれる。
[ポケットから解析したばかりの薬物のデータが入ったチップを出し、まだ残りの薬物が入った襟元のサファイアのタイピンをノーラに手渡した。]
そんなの、知ってる。
[薬を投与されている。だから、聞いた。本当に自分の言葉なのかと]
だから、聞いたの。だって、薬のせいなら、仕方ないって、まだ、思え、る。から。
失ったら、もう、元に戻らないの。
それを、ダーヴィッドさんも、知ってるはずだわ。
[戻らない、戻らない、戻らない。彼も、彼女も皆]
ダーヴィッドさんは、助かるつもりは、ないのね。
どうして? 何もないから? 私だって、なかった。けど、ノーラさんのために、みんなのために、生きようって思った。
違うの。私、ダーヴィッドさんを責めてるのは、エーリッヒさんを殺したからじゃない。
それは、悲しいことだけど。でも、奪って尚、自分の命まで見限るなんて、そんなの。
[危険。一緒に、は、わがままなのだろうと思う]
失いたくないのは、みんなだもの。
[二人で話がしたい、その言葉に顔を上げて、こくりと、頷いた]
ヘルムートさん……。
ごめんなさい。
[言い過ぎたかもしれない、と少し思った。けれど、ハインリヒをさっき失った少女にとって、「失う」事は何より、辛かった]
[ノーラと共に、部屋を出ようとする]
私、ね。ダーヴィッドさんの手が、言葉が、温かくて優しかったこと、知ってるの。
表情で、言葉で嘘はつけても、体は嘘をつけないの。
[ダーヴィッドに、告げてノーラに行こうと握った手を引っ張った]
>>93 [少女の話をきいているけれど、
段々と、理解ができなくなる。
薬のせいかどうかも、もう、わからない。もともとの自分がどうだったのかも、わからない。
ただ、ダリアが枯れる様子が見えて、炎が見えて、
のどが渇いた。
少女の言葉はどれも真実なのだろうけど、
……]
戻らない。
[時間も、命も……]
>>94>>95
………さよなら
[過ぎゆく二人にはこれしか言えなかった。]
ベアトリーチェは良い子だね。
本来なら親元で庇護されている年齢なのに、
ひとりで立って、ずっと皆の事を考える。
きちんと話が出来たら、
ダーヴィッドと一緒にヘリに乗れる。
少しの間だけ、私に任せて欲しい。
さよならは、しない。
[そう言った後、椅子に腰掛けたダーヴィッドに視線の高さを合わせて、床に膝を付いた。それから、乱れたダーヴィッドの赤毛を撫でた。]
[ダーヴィッドの別れの言葉に、悲しそうな顔をして]
ヘルムートさん、お願いなの。
あきらめるのは、。
[駄目だと言おうとしてやめる。切なかった]
議員……汚れます。
[>>97 髪を撫でてくる手に、薄目を開けて、
名前を呼ばれて、
乱れた息の中、そう伝える。
もう
この人をこれ以上、裏切ったり、穢したくはないから。]
[杖の先に、当たる石とは違う感触のもの。動く。さらに、どこかから落ちてくる、音が二つ]
蛇?
ノーラさん、先に行って。
[怖く、ない。そう思って杖を握りしめる]
[ノーラの声と、蛇を裂く音。歩く音で、足が悪いのはわかっていた]
私の目が見えたら、ちゃんと護れるのに。
[体調だって、悪いわけではない。せめて武器があれば、と思った。けれど、使い慣れないものを、目の見えない状態で使うにはあまりに危険で]
違う。目が見えないなら、見えないなりの護り方をすれはいいのよ。
[言い聞かせる。蛇の気配は、他にはない。落ちてきた蛇が倒されたら、すぐ先に行こうと足を踏み出せるように辺りをうかがった]
──汚れない。
[髪を直し終えるまで手を離さなかった。]
私が、自分自身を愚かだったと言ったのは、
おまえの事を、何も理解していなかった所為だ。
ダーヴィッド。
私がお前をもっと識っていれば、
ユリアン、ゲルダ、エーリッヒ。
彼等を死なせずに済んだかもしれない。
[瞬き。]
何より、お前を。
お前が私を助けてくれたように、
助けられたかもしれない。
[肩で息をして気付けば蛇は死んでいた。
レイピアを腰に戻せば、少女と再び手を繋いで
ひょこ、と右足を引きずりながら歩みを進めた。]
貴方には…何度も、助けられたのよ。
[見えないなりの護り方。
視えるなりの護り方。
それが重なるようだった。
途中、ゲルダの石像があっただろうか。
僅かな間、彼女の為に祈りを捧げ、そして前へ進む。]
…もう、つくわ。
[音を立てて研究室の扉を開くだろう。]
[ノーラの言葉に俯いて。そのまま先へと。
途中立ち止まる。手を伸ばせば、そこに石像]
ゲルダ、さん?
[先ほどの混乱の中、呼ばれていた名前。彼女も石にされたのだと知って暗く何かがのしかかる。
祈って、その先にすすむと研究室へ*たどり着いた*]
>>104
[その人の手はしなやかに動いて、
髪を整えられると同時に撫でられている感覚……
痛みの中の少しの安らぎに、思わず表情を緩んだ。]
理解……?
[でも、その人の言葉がわからなくて、
鸚鵡返しに訊くことになってしまう……。]
僕は、何も……。
[やったことは彼らの命を奪っただけだ。
ユリアンは救えなかった………。]
―三階・廊下―
[動き出した者たち。
後を追おうと踏み出した足元から、かさり、と異質な音が響いた]
……ん?
[白に埋もれる、それとは異質な褪せたいろ。
天鵞絨が瞬く]
……まさ、か……。
[掠れた呟き。
膝をつき、手を伸ばす。
目に入るのは、見覚えのある――]
……『天上の主』たちの……。
[それは、置き去りにできなかった、自らの『過去』]
……ロージィ……。
[知らず、口をついた、名。
そらいろを、陽と月を求めたのは、石の病に目を病んだ幼馴染。
しかし、彼女はその完成を見る事なく光を失い、絶望からそらへ身を委ねた。
一方的な『約束』を残して。
それに絡め取られたまま、続けた研究。
完成に至る前に、彼女と同じ場所を病んだと知らされ。
『約束』のために、ここへ来て、そして――]
……ちっ……。
[舌打ち、ひとつ。
囚われぬ、と決めた彼女の記憶。
振り払うよに頭を振り、見回した空間。
散らばる資料。
実験室の方を見やった後、それらを拾い集め。
霞みのやや強くなった目で、文面を追う]
……これは……。
[記された名。
真白を咲かす少女の、父の名。
それは、自身に取っては、研究への出資者の名として、記憶に止まっていた**]
[小さな電子音、おそらく少女の耳にも届いただろう。]
…
[現れた一角獣。毒をも癒す角。
Unicorn と心で呟いた。]
[かちり、そのアイコンをクリックした。]
……
[かちかち、とダブルクリックした。]
…導いて。
[キーボードを確認しながら 一文字ずつ入力する。]
[ P e g a s u s ]
[――― Enter を最後に、かちりと。]
【RP】
[Enterと同時に、しばらく、カラカラと作動音、
やがて、画面全体が黒くなって………]
[__________会話しますか? Yes No
そんな選択肢が現れる。]
[暗くなる画面に、文字が現れる。]
会話…?
[誰と、と思って繋がるのは1人しかいなかったから
一度、扉を開いて外に向けて声を響かせる。]
ゼルギウスと…――通じたかもしれないわ!
[声を聞いて誰かが来たのなら室内に導いて
それから―― Yes を選んだだろう。]
…理解していない。
副作用による変質の苦痛、衝動に突き動かされるなか。
ピューリトゥーイを殺す。
そう明言した、私の側に居て、
お前が、どういう気持ちだったか。
お前が、どういう人間なのかも知らずに、ひとり救われていた。
使命感にずっと突き動かされていられたのは、お前が隣に居た所為だ。
それが殺人者でもかわりはしない。
[と、ダーヴィッドと並ぶようにして隣の椅子に座る。痛んだ表情が少し緩むのを見て、自分の肩に相手の頭をもたれさせるが、拒まれるようなら無理強いはしない。目を伏せながら、]
ヘリ8人に、ピューリトゥーイ2名は多過ぎる。
だが、今でも私はベアトリーチェに言ったよう。
お前をヘリに乗せたいと考えているよ。
[乗れないと再び、拒まれるのだろうが。]
不正の真実を突き止め、正す。
法を改まらぬままなら改め、民を救う。
此処から出て生き延び、ゼルギウスと対決する。
ピューリトゥーイにこれ以上殺させない。
──なすべきことは、多くあるが。
[伏せていた目を上げて、ダーヴィッドを見詰めた。]
と、ダーヴィッド。
喉も渇いているの か?
>>116
[ヘルムートの言葉を聞きながら、時折、首を振る。
彼が横に掛けた時、そちらを向こうとして、ふらつく。その肩に頭を導かれて、そんなことは…と思えど、拒否はできず、
そのまま、そこで目を閉じた。]
違います……。僕が貴方の側にいたのは、
貴方なら、僕を石にしてくれると、思ったから…。
あと、
貴方の側にいる時は、僕は、
確かにピューリトゥーイではなかった……から。
[そう、まるでアルゴルの点滅ように正義と死の衝動がそこにはあって……。
ただ、彼の側にいる時だけは、昔の正義感が、他より勝ってそこにあった。]
………
[そして、ヘリに乗せたい、という話になると、首を振るだろう。
ヘルムートはそれからも何か喋っていただろうか。
段々と、なぜか遠くなる。
身体が、乾いてきている。いや、たぶん、
いよいよ僕の心臓が、硬くなっていってて、
その押し出す力がなくなって…きているのだ。]
はい……――
[何か訊かれたので、朦朧としながら、答えた。]
[仮に、音声通話が可能になったのなら
静かに女性は話し相手に問うだろう。
ゼルギウス、謎の男。
マモルと言っていた。けれど信じるなとも言われて。]
メドューサの感染者は…
私達は完治するの?
石化した者は…――助けられない?
ピューリトゥーイの中和剤はないの?
[返事は聞けるのだろうか。聞こえない部分があったのかもしれない。
僅かな沈黙、そして]
貴方は――…どこにいる。
[探るように *訊ねただろう。*]
[実験室の水道を捻り、水を汲んで戻って来る。
改めてみる血色のわるい皮膚。閉じられたままの目蓋。隠される事無く露出している首輪の数値は29%。]
ダーヴィッド──私は、
──なすべきことは、多くあるが。
多くの為に一人を犠牲に、ではなく。
目の前の一人だけを救おうとする選択も
あるのかもしれないと思った。
この手でお前のバンドを切るかわりに。
お前がそれを望み、満たされるなら。
お前の手で、私が石になっても構わない。
[留め具を失い、襟元がはだけたままのシャツ。自身の首輪に触れながら言う。
まだ解析装置の画面には、ペルセウスが映ったままだった。
隣に座り直し、グラスに一番近い形状のビーカーを朦朧としている相手の口元に運ぼうとする。手元が震えた。]
[ダーヴィッドの手がだらりと落ち、口元にそそがれなかった透明な雫が、実験室の床に滴る。眉を寄せながら、]
お前は私が触れると、
すぐに汚れると言うが、
[グラスの水を自身が口に含み、ダーヴィッドにおおいかぶさる。
口唇に口唇を合わせ、隙間から漏らした水で湿らせる。相手に水を嚥下する力があるならば、赤毛に指を沿わせ、重ねる口唇を深くしようと。]
──決して、
汚れない。
[それだけを伝えられれば良い。]
[心配はいらんとのライヒアルトの言葉に微笑む。
逃げたダーヴィットを追おうとして、下腹の傷みに足を止める。我が子を失った記憶が蘇り、泣きそう。
ライヒアルトの様子がおかしいのにも、ブリジットがハインリヒに寄り添うのも気づかず*しゃがみ込んだ*]
>>122
[議員が何か言っている。だけど、とても眩しくて、
見ようと思うのだけど、見れない。
なので、せめて、その声だけは逃さないようにと、聴覚に意識を集中して…]
(多くの為に…一人を犠牲………はなく。
……一人だけを救おうとする選択…)
[それが聞こえて、それは違う、と……
違うと伝えたかった……]
……あ……
[>>124 ふと、口元に水が運ばれて、
これで喋れるかもしれない、と思った。でもうまく飲めなくて…
頭の奥も乾いていく……。困った…と思った。
でも、次に運ばれた水はうまく運ばれてとても飲みやすかった。なので、素直に飲んだ。
礼を言わなきゃと思った。うっすら目を開けると、金色の髪が見える。
ああ、そうだ、議員に伝えないといけないことがある。
言葉を考える。だけど、浮かばない。]
[なぜ、僕は議員は襲わなかった?
理由はあった。この人はここで石になるべき人じゃない。
この人が輝くのは、もっともっと大きな………。]
議員…貴方は……多くを……。
僕は…………支持………しま……。
[とても、あとは、眠くて…]**
─三階・廊下─
[失ったと思っていたものとの思わぬ邂逅は、刹那、他へと意識を向けさせず。
場にいた者たちの異変に、すぐには気づけなかった]
……他生物との精神的感応状態の発生と、その維持。
無意識含む、思念的呼びかけによる意思の疎通。
植物とのそれは、可能であるかの考察と検証。
……確かに、その辺りもやってはいたが。
[文書を辿りながら、小さく呟く。
それは、成長促進の術を求めて派生した研究の一端。
それらが、この場で、何らかの形で利用されていたのだとしたら。
微か、募るのは苛立ち。
そんな状態から、意識を現に呼び戻したのは、研究室からの呼び声>>115]
……ゼルギウス、と。
[話せるのならば、問いたい事はある。
そう思い、ゆっくりと文書から天鵞絨を上げるが]
……ち。
[また、焦点が合いにくくなっていた。舌打ち、一つ。
瞬きを数度繰り返し、どうにかはっきりとさせた視界。
目に入ったのは、しゃがみ込む姿>>125]
……あらゆる意味で、時間の猶予は、ないようだな。
抱えていくぞ。
[手にしていた文書はまとめて鞄に押し込み、返事も聞かずにナターリエを抱き上げる。
ブリジットは先に行ったのか。
見えるのは、石像の傍で揺れる、真白のみ]
[抱き上げたとき、僅かに身体がふらついたのがわかった。
薬を使う前、一番きつかった時とほぼ同じ状態に戻っている事が感じられる]
……それでもまだ、動ける方なのは、マシ、と言えるか。
[そんな小さな呟きを零しながら、足を向けるのは*研究室*]
【RP】>>121
[イエス選択のあと、しばらくたってから、画面に銀髪の後姿が映る。
音声はなく、画面下部に白い文字]
ナニカ御用デスカ?
───。
[辿り着いたとき]
[そこにあったのは]
[ブリジットの声]
[白い花吹雪]
───おと、ーさん。
[白い]
[白い石]
[読み取れるのは断片]
何、が
[右の手が微かに揺れる]
[痛みがあったけれど]
[何が起きている]
[咄嗟に伸ばした右手]
[見降ろす]
[握りしめる]
[床に転がる、亜麻色の少女]
───ピューリ、トゥーイ
[ノーラはダーヴィッドをそう呼んだ]
[視線を、もう一つの石像に向ける]
[少女]
[名前も知らないままだった]
[ゆっくりゆっくり]
[視線をダーヴィッドへと]
───?
[ざわり]
[何かが、動いたような]
[白い白い、花が咲いている]
[気付いた時には]
[星の女とピューリトゥーイの男の姿は遠い]
[また]
[白い花が咲いたように見えた]
[違う]
[ブリジットが起き上がって花弁が落ちたんだ]
[囁き、そして]
───ブリス。
[少女が白を赤に染める様を見た]
[止められなかった]
[彼女がハインリヒの傍から離れない理由]
[罪悪感と喪失感]
[自分が止めたところで、意味はない]
[内罰的な思考]
[だから止めなかった]
[彼女が出て行った時]
[白い花が男の石像の下に落ちていたのも]
[見ないふりをして]
───。
[ただ、カメラに収めた]
[男の石像]
[少女の石像]
[メデューサの死人は]
[朽ちることがない]
[肉から石へ]
[変質していくもの]
自分が、墓石みたいなものだね。
[かしゃり]
[シャッターは下りる]
[送葬の鐘にしては無機質な音]
大好きだ、ヴィヴィ。
[カルメンの代わりにはなってあげられないけど]
ゆっくりゆっくり、休んで。
[囁く]
[わらう]
俺、ひとりでもきっとだいじょうぶ。
―研究室―
[カタカタとキーボードを打つ音が響く。研究室に、人の姿が増えていく。ノーラの傍を離れずに、周りを覗いながら]
返事は、あったの?
[画面が見えないので聞いてみる。
時折、咳が漏れる。絞められた後遺症か、まだ、首が、喉が痛かった]
[咲き続ける花]
[連写]
[一枚一枚の微かな動き]
[ゆっくり咲いていく花]
[ふっくらとした白い花びら]
[しっとりとした白]
───くちなしの花、みたいだ。
[甘い匂い]
[背後からキータイプの音がする]
[少しだけ、顔をそちらへと向けた]
…―― 無いのに…投与したの
[底深い 憤りを滲ませる 声。
息を、1つ吐く。ベアトリーチェの問いかけ。
眼を閉じる。頸を絞める それが
脳裏に浮かぶから。
――ひとを、ころした。]
――… 私たちの治療については
「研究所に来い」
――… 石化したものは
[詰まる。]
… 「助けられない」
――… ピューリトゥーイの中和剤は
…「無い」
――… ゼルギウスは
……「研究所に、 居る」
……「待って いる」
─研究室─
[やや遅れてやって来た場所。
画面に映るのは、銀髪の後姿。
投げかけられる問いに対する答えたちに、は、と一つ息を吐いて]
……これに、答える気があるかはわからんが。
ピューリトゥーイを始めとする数種の薬。
それは、何を目的として作られた。
単なる治癒薬生成の過程で生み出されたものとは、とても思えんのだが。
[研究資料の紛失と、発見。
それがなければ、浮かばなかったやも知れぬ疑問を。
画面を睨むように見つつ、淡々と投げかけた]
[ピューリトゥーイを始めとする数種の薬。それは、何を目的として作られた。]
他ノ目的(ぷろじぇくと)ノタメニ
[銀の髪が笑ったかのように揺れた。]。
[ブリジットが画面に出た問いと答えを読み上げる。
二つ目の答えに、杖を握る指の爪が、キリ、と杖を傷つけた]
……そう、なのね。
[石になった姿。もう戻らないと、あきらめていたけれど、それでもやはり落胆は大きく。
耳を通り過ぎる、ライヒアルトの問い。
小さな咳が、又漏れた]
─研究室─
……他の目的の……ため。
[笑うような仕種と共に、返される言葉>>#8。
天鵞絨に宿るのは、苛立ち]
つまり、この場所は治癒目的だけでは、なく。
それ以外の用途を意図して作られた場所である、と。
そう、捉えて間違いないという事か?
[再度の問いは、確かめるよに。
意識の隅を過ぎるのは、不正、癒着──ヘルムートから聞かされた幾つかの事]
―――ッ!!
[笑うように揺れる銀髪。
いばらの葉に似たいろの
眼を見開くは怒りにか。]
私たちは
実験動物ではなくてよ…。
[最初は知らない。
その意味するところは―――]
ゼルギウス
―――御前は何者なの
───。
[読み上げる声]
[シャッターを切る手を止める]
───現在と昔で、意図が違うと?
[軽く瞬き、首を傾げる]
[声で届くのかわからないのだけれど]
─研究室─
……最初は、知らない。
初期は、治療施設で間違いなかった、と。
つまりは途中から、それ以外……他の目的のために。
使われる場所になった、というわけか……。
[零れ落ちるのは、嘆息。
天鵞絨は、僅かに伏し。
ブリジットの投げた問いに、ゆっくりとそちらへ焦点をあわせた]
[しゃがみ込んでいたらライヒアルトに抱えられた。ごめんねと言おうとしたけど、唇が動くだけ。
今、一番欲しいぬくもりに触れた事で気持ちは落ち着いたけど、体は。
右手が未だ動く代償のように下腹が重い。
研究室に運び込まれ、モニターを見つめる。ゼルギウスへ言いたい事は罵る言葉ばかりだから、質問がある人の邪魔をしないように黙っていた。]
治療の為じゃ、無かったなんて。
[少しでも良心や善意があるかもなんて、甘すぎる考えだった。
目覚めてからの事を思い出す。]
一体、あたし達になにをさせたかったの。あなたの望みはなに。
[銀の髪の後ろ姿を睨みつけた。]
アーベルさんも来たのね。
何だか、興味なさそうに思ってたの。
[シャッターを切る音とアーベルの声。後はあの二人だけと、あの部屋に残してきた二人を思った]
二人とも、大丈夫、かな…。
[咳混じりに呟く]
興味?
[ベアトリーチェの言葉]
[苦笑]
知っておくことは───悪いことじゃないでしょ。
[頭を撫でる]
[未だ、右の手は動く]
[正確には]
[右の手が動くようになった、だが]
……だんまり、か。
[何者かという問いへの答えはなく。
ナターリエの投げた問いへの答えに、天鵞絨は細められる]
……は。
仕事熱心なのは勝手だが、な。
人の研究成果を利用してまでやるのは、感心できんな。
[浮かぶ憤りの一端は、研究者としてのそれ]
[シャッター音にはちらと
いばらのいろの眼を向けるが
重なる問いかけに
またモニターを見て]
―――答えなさい。
[しかし返るのは違うもの。
ベアトリーチェの呟きには瞬いて。
――ヘルムートとダーヴィッドがいない。]
[眩暈。よろめきそうになりながらも踏ん張る。]
何様よあなた。誰にも誰かの命を自由にできる権利なんか ない!
[声を荒げて叫んだ。バンドの数値が上がった事は見なくてもわかった。]
―――
[実験材料。
人を人と見ない発言。
この力も、この糸も彼らにとっては
唯の観察対象でしかないのかと
思えて、―――]
……
[皆の問いに答えていくのを聞きながら]
研究所に行くためには?
[苛立ちを抑えるような声で問う。]
[荒げられる声。
振り返り、よろめく様子が目に入ったなら、迷う事無く伸ばされる、手]
……落ち着け!
この手のヤツは、怒ろうが嘆こうが気にも留めん。
[場合によっては、それすらも『観察事項』とすら言いかねない、とは。
さすがに、言葉にはしなかったが]
身体に負担、かけるだけでいい事なんてない。
……無理、するな。
……どうせ、ここで『他の目的』について聞いても、答えはせんだろうが。
[『モウイイデスカ?』という表示に、低く吐き捨てる]
……なら、直接聞きに行ってやるさ……!
[アーベルの答えに頷き、頭を撫でられると、以前より動くようになった体に安堵する]
そうね。知ることは、大事、なの。
でも、本当のことを言っているのか、わからないの。
だって、信用するなって、言ってたもの。
[ギュンターの言っていたことを、思い出す。
手がかりには違いなかったけれど、正しいとは、限らない]
[伸ばされる手に縋る。]
だって、悔しい。イカれてる。あたし、こんなに腹が立った事、ない。
[憤りをどうすればいいかわからない。ライヒアルトの手。支えてくれる、手。馬鹿げた事で失いたくない。]
ゼルギウスを殴って絶対後悔させる。……心配かけてごめんね。
[ライヒアルトの手に額をあてた。]
[……なら、直接聞きに行ってやるさ……!]
意志確認シマシタ
アナタ方ハソノ施設ノ最終被験者デス
ノチ、その施設ハ不要トナリマス。
今から30分後、ソノ城ハ、廃棄処分二ハイリマス。
[ナターリエの激昂と、それをとどめるライヒアルトの声。
あの時と同じ、遠さを感じた。まだ大丈夫だと深呼吸をする。
どうして咳が出始めたのか、なんとなくわかったが、どうすることも出来ないとあきらめる。
ただの炎症であれば、治ったのだろうけれど、と]
ケホ……。
[咳を一つ。画面に映った文字はわからない]
信用するな、か。
[なるほど]
[御尤も]
でも、まあ───耳学問っていうし。
[信じる信じないは]
[それぞれが決めること]
進まなきゃ、わからない。
[誰が言っていた言葉かは知らない]
リーチェはその言葉を信じてるんだね。
[手を引きもどしていれば]
[破壊予告ととれる言葉]
30分───せっかちだな。
[唐突に突きつけられた時間。30分。]
……
[エーリッヒは、――]
なん、なのよ…
[声が上ずってうまく出てこない。
ここで目覚めた巡りの星が次々と消えて
彼らを置いていくしかない現実は
あまりにも唐突。]
[おそらく同じ思いを抱いているのではないかと
何故か自然と――ブリジットを見た。]
[睨んだ眼はきつくきつく。
怒りと痛みと
様々な感情を抑え込みながら燃やすよう]
……そう。
[行き方、には低く呟く。
きしり きしり 哭く内側。
頸元に伸びる土気色。
生きるために
守るためにと
紺青は望んだろう
皆で出ると謂ったのも
壊してしまうのも
きっとまた 真実
―――それならば]
●業務連絡●
城崩壊。
今日の更新時に城は崩壊する予定です。
各自ヘリコプターに乗って脱出RPをしてください。
爆発に巻き込まれたりとか、閉じ込められたりとか、自由自由です。
……それは、そうかも知れんけど。
こんな事で、状況を悪化させるな。
[ナターリエが手に触れる、温もり。
視界の霞みが戻った事で、触れられる事への安堵感は強くなる]
……何にせよ。
行かねばならんようだしな……歩けるか?
[己が宣を受けるよに表示された時間。
苛立ちは刹那、だが、すぐにそれは押し隠して問う。
もっとも、抱えていく気なのは見ればわかりそうだが]
そう、リーチェは賢いね。
[ぽん]
[頭を撫でた]
───30分後には、ここは廃棄処分になるらしい。
[嘆息]
[安置室のカメラバックは諦めるしかないだろう]
[今の体調では30分で往復するのは無理だ]
このお城、壊されちゃうんだってさ。
――――うそ
[30分。
たった、30分
つれていけない
かれらは石となってしまった
――アルドルフ
エーリッヒ、ゲルダ、ユリアン、皆、皆――
ノーラがこちらを見ていた。
眸は大きく揺れている。]
[カードキー。思い出す。あれを手に入れた時、居たのは自分とダーヴィッド。それをベアトリーチェに渡した。
つまり、持っている人物を知っているのは少女と、自分とダーヴィッドのみ。]
ベアトリーチェ。
時間が…ないわ。
[少女の手を握る。]
あ、でも、巻き込まれたり閉じ込められたりしても、
更新後生存してたら、なんらかの形で助かっていることにしてくださいね!!
なお、狼さんは、それを参考に襲撃を決めてもいいですし、
自分の意図で決めても全然構いません。
自由自由です。
[撫でられた後に続いた言葉]
廃棄、処分……?
じゃあ、じゃあ……。
[連れて行けないのは、判っていた。けれど、ここが残っていれば、望みはあったのかもしれない。
石になった人たちのことを思い出す]
置いて、いく、の?
ううん、置いていくのは、わかってた。でも。
壊されるって、それじゃ――。
[震える。石の感触は冷たかったけれど、ここにいる、と思ったけれど、それでも、壊されてしまうのは]
>ノーラさん
リアル30分じゃないです!そこんところランダムで出しました。
ランダム神の空気読み度はすごかったです。
更新時間はいつもどおりを目安にしてください。
うん。
[なんとか笑顔を作る。もしなにかあった時、怒った顔で思い出されたくない。なにかなんてあって欲しくはないけど。
みんなの騒ぎにモニターを見る。]
大丈夫、歩ける。30分、いや、あと29分ちょっとかな。あればゆっくりでも間に合うし。幸いみんないるし。みんな、……あれ、議員は。
[辺りを見回し、二人足りない事に気づいた。]
ちなみに30分後に崩壊ではなく、30分後から崩壊開始となります。
実際は、崩壊までどれくらいかはわからないけど、
とりあえず、時間にせまられてみてくださいね!
[石になった人を置いていく事が彼らを見殺しにしてしまうように思えて思えて辛い。唇を横に引いて]
ヘルムートは…ダーヴィッドと実験室のはずよ。
[ピューリトゥーイはこの中に確実にもう1人いる。
けれどまだ、誰か――解らない。]
…
[ずり、と足を引きずりながら歩こうとする。]
生きたい人は
…屋上を目指しなさい。
[向けられた笑顔に、こちらも笑みで返す。
忘れまい、と。
そんな思いを込めてしまうのは、自身の状況故か]
……わかった。
だが、危ないと思ったら、強引に運ぶからな。
[歩ける、という言葉には、真面目な面持ちでこう返す。
続く、二人は、という問いかけには、ノーラから答えがあり]
実験室に?
……知らせないと、まずい、な。
だが、通り道ではあるし、何とかなるか。
[廊下の方を見やりつつ、言って]
……行こう。
手、離すな。
実験室。途中で声をかければいいか。ありがとうノーラ。
[石像と化した人達やユリアンを置いて行くのがつらくないわけではないけど。口に出さない。でもずっと忘れない。傷みとして思い出すだろう。]
ううん。生きるって決めたもの私。
ここに、みんないるもの。
[手で、胸を押さえる]
全部、覚えてるから。
[足を引きずる音が聞こえて、ノーラのほうへ寄る]
ノーラさん、一人で歩ける?
足、動かないの?
[補助をしようと横に立つ]
[ライヒアルトの笑みに、返す笑みは自然にあふれるものになった。]
行こう。生きる為に。
[強引にと言うのには頷いて、強く手を握り返した。]
[矛盾している。
生きたい――会いたい。]
……っ
[ベアトリーチェが、優しいこの子が大切で]
[苦しい][我慢して][生きていても][―――]
ごめん…なさい。
[生きるために、という言葉。
頷く。
手を握り返す感触に、感じるのは、こんな状況でも安堵]
……ああ。
なんとしても、生きて。
先へ。
[頷いて、歩き出す。
先に進む事は、過去を断ち切る事に繋がる、と。
今は、そう思えていた]
[謝ったのは今は動かない彼に向けてのもの。
視線だけ一度、そちらに向けて
そっと胸元に手を置いた。
――ちゃんと いる、と確認するよう。]
[支えようとしてくれるベアトリーチェに頷いて]
無理をしすぎたみたい。
でも、貴方が居てくれれば歩けるわ。
私は貴方の目となるから…
貴方は私の足を助けて。
…行きましょう。
[生きましょう。]
[謝る言葉が聞こえた]
ノーラさん、あのね。
エーリッヒさんに怒られるのよ。
エーリッヒさんは、自分が石になったことで、それでノーラさんが生きることをあきらめたりしたら、きっと怒るわ。
エーリッヒさんなら、待っててくれるのよ。
だから、生きなきゃ、駄目。
みんなのために。
でも、最後に会って行きたいのは、私も一緒なの。
エーリッヒさんもだけど。
まあ、壊れるだろうね。
[ベアトリーチェが濁した言葉を]
[口にする]
[生きる]
[守る]
[ノーラとベアトリーチェの言葉]
───そうだね。
[ハインリヒの言葉]
[少しだけ思い出す]
───ぜルギウス。
[呟く]
あと30分でこの城を放棄するんだってさ。
[石像になった者たちごと]
ヴィヴィ、どうする?
[尋ねる]
議員も、一緒なのかな。
そう
[あきらめきったような声]
エレットは、いっててくれ。
議員?
ああ、一緒みたいだ。
[彼を巻き込むつもりはない]
[エーリッヒは誰よりもみんなが生きてくれる事を望んでいた。家族の期待、兄の面影、仄かに視えた彼の過去。
優しくて、時々、ずるい笑顔を浮かべていた。]
……
[逢いたい。逢いたい。
「我慢」しようと―――想いを堪えた。]
[『……多分、自分が我儘かもと思うことが、
甘えるってことかもしれませんね。』]
…ぁ、…
[彼の言葉が頭の中で蘇って、遅すぎる理解。]
[また場違いだって笑われるだろうけど、言いたい事がある。一歩一歩、歩きながら言葉を紡ぐ。]
ね、ライヒ。病気、治って帰れたら。あたしと……。
[紡ぐ言葉を止める。どれほど低い確率だろう。それを思うと口に出せなかった。]
やっぱり、いい。無事だったら言うから。
[ピシリと体の中で音がする。蝕まれ侵されてゆく。涙が溢れるけど、声に湿っぽさは出さないように。]
―実験室―
[まだ、まだ、生きてる、と思った。
何か様子がおかしい…。]
[でも立ち上がりたいけど、
それこそ、全身石になりかけているかのように重くて。]
[ノーラの言葉に頷いて、瞼を開ける。翡翠は変わらず光を映さなかったけれど、ノーラを見る瞳は焦点があっていて]
うん。
生きるの。
[微笑むと、歩き出した]
……治って、帰れたら?
[途中で途切れた言葉。
天鵞絨を数度瞬かせ、蒼を見る]
……何なんだ、まったく。
中途半端にされると、気になるだろうが。
……どうした?
[追求の言葉は、唐突に止まった歩みに途切れる。
続けられた言葉。
天鵞絨は、数度、瞬く]
[時間は許さない。
彼がわたしたちに生きろと言うのなら]
――…えぇ。
[焦点の合わない翡翠を見下ろして
屋上の方を目指して歩き出そうとする。
彼に別れの言葉は言わない。
心の中で生きているのだから言う必要はない、と。]
[――身体が重い。
痛い。
痛くない。
一歩離れたところで立ち止まる。
《――生きるために》
それがいま、支えの言葉。
もし、そう伝えられたなら
かれはうらむだろうか。
それとも、困ったように笑うのだろうか。]
……会わなくて、か。
[零れた呟き。
天鵞絨は、休憩室の方へと移ろう]
多少、遠回りになるが。
……寄り道、するか。
挨拶くらいは、せんと。
[身体が動けば]
[カルメンのところに行くのに]
[とても無理そうだ。]
でも、それも、報いかな。
[どうした、なんでそんなこと思う?]
ノーラさん、少し、遠回り、しよう?
屋上までなら、そんなに掛からないもの。
[そう言って、足を向けるのは休憩室のほう]
[天鵞絨を見つめる蒼は、ただライヒアルトを映す。]
気になるなら、生きよう。本当は、あなたから言って欲しいけど。
[瞬く天鵞絨に目を細める。それが移ろえば目を伏せ、繋いでいた手を離す。]
いってらっしゃい。
[誰かが側にいるな、と思った。]
[視界に移る、金糸の髪]
[ああ、わかりやすい]
……議員……なに……か
[何か起こっているみたいです]
[休憩室の方へと行きたがるようなら悩んだ様子。
この足で、走って――15分あれば、おそらくは。]
…解ったわ。
[ライヒアルトとナターリエが実験室へと向かうようなら
後で必ず会おうと、2人に言ってから、一度だけ心配そうにナターリエを視た。]
[―――― アルフェラッツが 白く輝くアンドロメダ。]
ライヒアルト…彼女を、護って。
―石像の前―
…… ――アルドルフ
[ころした。わたしが、断ち切った。]
…断ち切ったからには
……責を負うのよ
[守る。彼女は――その中に、
きっと、自分を入れられないでいる。
いばらが守るのは、――“自分以外”]
…… ――まもりますわ。
[そうして、初めてだろうか。
柔く、悲しげに、けれど確かに、微笑んで見せたのだ。]
[そう、本能的というより、職業的な勘で]
[わかる、何か不穏な空気……]
[こんな状態でも、]
[失われていない感覚]
[離れる手に、零れるため息]
……一緒に行く、という選択肢はないのか、そこで。
俺は、もう。
手を、離したくはないんだが。
今までに。
手を離したものを、悉く失ってきたから。
[困ったように言うのは。
先の記憶の交差のためか]
[休憩室へと向かう途中、ハインリヒの石像の傍、ブリジットの姿。その声。何を言っているのかは聞き取れなかった]
待って、ノーラさん、ツヴァイさんに、お別れを言っていくの。
[足を止めて。先ほど首を絞められた、場所。ハインリヒの虚ろな目も、表情も、何も見えていなかったけれど。
その温かさは、覚えている]
ツヴァイさん、あのね。
……。
ありがとう。
[手を離したのは、他のおんなのひとを見るライヒアルトが見たくなかったから。でも。視線を感じて見れば、ノーラがこちらを見ていて聞こえる言葉。
ぎゅっとライヒアルトの手を握り治した。]
行く。あたしも離れたくない。だから。
[ノーラ達が休憩室から出てくれば、入れ替わるように休憩室へ。イレーネのところへ。]
……。
…………。ツヴァイさんのこと、忘れない。忘れられるはず、ないの。
だって、、。
[言わない、言えない。言った気もしたけれど]
……じゃあ、もう時間がないから、……さよなら、だよ。
[頭を下げる。
そして歩き出した]
[祈るような、ノーラの言葉。
天鵞絨を細め、そちらを見やる]
……わかってる。
決めた事だから。
[短い答えは届くか否か。
握り直される手。
向かう先は、ピアノの傍で石と化した少女の元。
鍵盤に触れるものがないためか他に理由があるのか。
周囲は、静かだった]
……そういや、言うのを忘れてた、な。
お前の演奏。
綺麗だった。
[紡いだのは、ごく短い言葉]
[散っていく人々]
[其々思うところがあるのだろう]
[この城に遺される"未練"たち]
───。
[瞳を細めた]
[僅かな羨望]
[自分には]
[解りえない、感情]
[だから]
[足はゆっくりゆっくり]
[屋上に向かう]
[まるで]
[自分の居場所を求めるように]
[休憩室、その階段の傍にその石像はあった。あの時と同じ姿のまま佇む、エーリッヒの姿。
近寄って、手を伸ばす。
触れるとやはり硬く冷たいまま]
エーリッヒさん、ノーラさん、連れてきたよ?
でも、今からここから連れて行くから、ごめんなさい。
エーリッヒさんの声、好きだった。
色々助けてもらったの。
まだ、エーリッヒさんのところにはいけないから。
[足音が遠くなる。
たたずんで、白い石と化したハインリヒから
眼を離さなかった。
虚ろを秘めた常緑の、いばらのいろをした眼。
いばらの花は咲く。
いばらの花は――咲く
ちいさく、唇が動いた。
撫ぜて離れた手。
落ちた雫。
幾粒か、幾筋か。]
─ 実験室 ─
[眠りに落ちると言うより、徐々に天国の階段をのぼって行くようなダーヴィッドの様子に、沈黙していた。
自分が伝えた意思を。腕の中で落ちる途中、ダーヴィッドが彼に伝えようとした言葉を。ぐるぐると考える。選択を迷う。
当たり前の事だが、自分自身の命は一つしかなかった。
瞬きの回数が多くなり、金の巻き毛は蛍光灯に反射してキラキラ光り、自分では邪魔に感じられる。]
ダーヴィッド?
何かが、起きて──いる。
[そう言いたいのか。実験室まで音は響いていなかったが、時間が無い事は理解していた。]
[2階、階段を下りれば、すぐにオトフリートの姿があるだろう。それでも、足の悪いノーラにそこまで無理はいえなかった]
先生、温かい言葉を、ありがとう。
[いつも、温かかった、その手のぬくもりを忘れないように]
−屋上−
[風が強い]
[嵐の前の静けさ]
[なんだろう]
[胸騒ぎ]
[鋼鉄の羽根を見上げる]
[四枚羽]
[かしゃん]
[ファインダーを覗く]
[写真を撮る]
[風に、煽られて]
[ライヒアルトのノーラへの返事に、唇がほころぶ。
ライヒアルトと手を繋いでイレーネの傍、ただ黙っている。
すん、と鼻をすする。涙があふれる。
休憩室を立ち去る時、振り返る。傍にある石像と化した人達、ここにいない人達にも向けて最後の言葉を。]
忘れないから。さよなら。
[そして、ライヒアルトを見上げてから前を見て、屋上へ向かって歩き出す。誰もたどり着いてないなら、実験室へ寄って声をかける。]
>>214
[ぼんやりとした表情だろうか。少し眠ったおかげか、さっきより少し、いい。
そして、
何かが、の何かがわかったので、それをヘルムートに伝える。]
…ここは、崩壊するそうです……。
タイムリミットは30分…。もう、だいぶたったから、残り、少ないでしょう。
[大変なことを言っているのに、いまいち、実感がない。]
[ハインリヒへ向けたのは視線だけ。
想う言葉は胸の内だけに秘めて―――
少女が向かった先は、あの人の場所で]
……エーリッヒ
[ありがとう、なんて言葉では言い表せない。
欠けていたものを沢山くれた。]
星が巡り…
私達を導いてくれるなら
また、会えるわ。
[貰った思いを込めて、まだぎこちないけれど
表情を緩めて少しだけ笑みを浮かべて見上げた。]
[左はもう]
[背骨を蝕む痛み]
[五指のうち三指が欠けた]
[親指と人差し指だけが残る]
[一瞬の判断]
[砕けた指を踏んで破砕する]
[圧砕]
[足をゆっくりとどかせば]
[指の破片は風に消えた]
[蛇――いばらの間に、這う蛇は
危機を察知してのことだろうか。
実験室の前。
――ピューリトゥーイ。
過ぎる言葉――静かに声をかけた]
……ミスター・エルーラー
……ダーヴィッド
其処にいるのでしょう。
この城は、崩れる。
もうまもなくですわ。
―― いきたいのなら 、…屋上へいらして。
[立ち去り際。
空いているほうの手で、ぽふり、とイレーネの頭を撫でた。
彼女がまだ、石と化す前に。
半ば無意識の内に、これをやっていたのは、多分。
『彼女』と少し似ていたから]
……じゃあ、な。
[短い言葉。
天鵞絨はふ、と階下への階段の方へと移ろう。
そこに至るには、時間が足りないが。
リディに向けて、同じ言葉を心の奥で落として]
さて、行くか。
[歩き出す。
先へ、進むために]
─ 実験室 ─
[扉を見たところで、何か紙切れがドアに挟まっているのが見えた。
ダーヴィッドに負担が掛からないよう、そっと立ち上がり、扉を開いて紙を取る。何かの書類のようだ──とヘルムートの手元に、散っていた白い花弁が飛び込む。
廊下には、白い花の下、同じように様々な書類が落ちている。
──その内の一枚に、見覚えのある署名。
エグランティエ財閥の…ブリジットの父親のサイン。
別の一枚には、ヘルムート自身の父親の事務所の、第一秘書の署名。
驚いて思わず、ダーヴィッドの元へ戻りその話をしようとするが。]
…………。
タイムリミット か。
30分。
[先刻と比較するとマシだったが、ダーヴィッドの表情を見ると随分と遠くに居るように感じられた。]
[迷う。一人で降りたら、どれだけで上ってこられるだろうか。何度か昇った階段。
でも、時間がない]
ううん、戻ったら、先生に怒られるわ。
行こう? ノーラさん。早く行かないと、崩れ始めてしまう。
[ノーラの手を取ると、屋上へ続く奥の階段へ向かい歩き始めた]
[ライヒアルトの指に指を絡める。]
ありがとうライヒ。だいすき。
[実験室にはブリジットが声をかけていた。]
まだ議員達いるみたい。
[心配で扉をじっと見た。]
…そうね、時間がないわ。
[糸を手繰り寄せるように手を取り合って
屋上へと続く階段へと向かう。]
―――、…く
[右足が麻痺しているせいか足を地面につけても
ついている感覚がしなくてぐらついてしまう。
それでも、階段をのぼる事は止めないだろう。]
―実験室前―
ゼルギウスが、待っている、と。
[語りは、続く。もしも扉が開いたならそのままで。
ピューリトゥーイの、ダーヴィッド。
中和剤は――「無い」
どんな顔をすればいいだろう。
怪我をした手に布を巻いてくれたのも
間違いなく、彼であるのに。
ヘルムートが手にした書類。
――自身の父が関わっていたこと、深くは知らず
屋上へと向かって、再び歩き始める。]
ヘリが動くようになったの、か?
ブリジット!
[一瞬、胸に苦しさを感じた所為で言葉が遅れたから、ヘルムートが了承の印に頷いたように見えただろう。ブリジットは屋上へ向かって進み始める。
ブリジットに、書類の話を聞きたい。あの星座の形をした薬物の正体の話を。
ピューリトゥーイはまだ他に1体居る。
ゼルギウスに対面しなくては、ならない。
使命の為だと信じて、殺してしまった者達の命を背負っている事を。
──道は、続いている事を思い出す。
未来へ向ける、橋をかけると誓った、過去を。
否、忘れる事等出来ないのだが──。]
[左の手]
[ジーンズのポケットへと突っ込む]
[右の手]
[カメラの電源を落として同じように]
[カメラは左側に]
[自分の指の破片が消えていった先]
[そこには何もないけれど]
……なんだ、唐突に。
[絡められる指。
天鵞絨が細められる。
ヘルムートたちを案ずる言葉には、は、と一つ息を吐き]
……そのようだな。
大丈夫……だとは、思うが。
[だからと言って、待っていられる余裕はなく]
……俺たちは、俺たちで、急ごう。
ユリアンにも、挨拶せんと、な。
>>225
[ドアごしに何かやりとりがあったらしい。
ヘルムートの声が何か聴こえる。
そして、さっきの自分の言った情報を考える。
ぼんやり、でも、わかっていることがあって…]
議員、早く、貴方は…
ヘリに………。
[ヘルムートが戻ってきたなら、そう伝える。]
[廊下にはまだ白い花がいくつか落ちているだろうか。
蛇が出なかった事に安堵を覚えながらも歩みを進め
実験室の前を通り掛かれば人の気配。]
[いばらは咲く
いばらは弔う
こころに感応するように
ブリジットの症状が進むほどに、それは強くなる
あの赤いランプの燈った棺に
石と化した人々の側に
はらりと、白を 落とす。]
[唐突と言われてくすっと笑う。]
どんな時でも、強がるし、甘えるし、場違いな事を言う。あたしはそういうおんな。でも、退屈はさせないから。
[ふらついた足を誤魔化すようにライヒアルトと腕を組む。]
生き方も、……死に方も。きっと、自分で決められる方が幸せだと思う。他人に踊らされるより、遥かに。
[嫌な予感がする。けど、生き方を決める為に屋上へ。]
───O for the wings of a dove,
[微かなテノール]
Far away would I rove.
[空気の中で]
In the wilderness build me a nest,
[震えて]
And remain there for ever at rest───
[消える]
[目を閉じて]
[繰り返す]
[飛んで行った鳩]
[思い出した歌]
───?
[名を呼ばれて]
[振り返る]
[苦笑]
───手、あとで治療してもらいなね。
[赤い]
[少女の手]
[苦笑]
[戻ってから。息を吐いて、決心したようにダーヴィッドを同じ視線の高さで見詰めなおした。伝えられる内容と、ヘリと言う言葉には分かったと頷き。
手を伸ばして、触れるのは赤い前髪ではなく、ダーヴィッドの首筋。]
ダーヴィット。
……私は、言ったように
お前を石にするよ。
[サファイアブルーの両眼。]
私は、お前を──お前とあえてよかった。
私はお前と出逢わなければ、自滅していたかもしれない。
もっと、愚かだったかもしれない。
お前を殺した後、私は当然ヘリに乗り込むだろう。
道が見えているのだから。
[ダーヴィッドの首輪の周囲の皮膚をなぞり、それから。ダーヴィッドの両手を、ヘルムートのはだけたシャツの喉元に運んだ。──言葉の続きを、聴いて欲しい。]
私がお前の首輪を奪い去る時、
お前が──
私の首輪を剥ぎ取っても、かまわない。
ダーヴィッド。
何故なら。私はずっと、
ピューリトゥーイを投与されたお前に、
助けられていたのだから。
[そこで言葉を切り、僅かに口元に笑みを浮かべた。]
……退屈しないのは、否定しない。
[組まれた腕。掠れがちな視界は、その意を確りと捉えきれず]
ああ、確かに。
生きるか死ぬかは、自分で決められればいい。
……それでも。
[は、と。零れるのは、ため息]
……安易に死を選ばれるのは、辛いけどな。
[零れた呟きの意味する所は、伝えずに。
聞こえた、ベアトリーチェの問いには、まだらしい、と返しておいた]
[隠すブリジット]
[苦笑が一つ]
俺よりも手当上手い人、いるだろうし。
[悪いけどそっちに頼んで]
[ジーンズのポケットに両手を突っ込んで]
[左にはカメラをかけたまま]
ん?そうだな───望郷の歌、かな。
[呟いて]
[もういちど]
[歌う]
[部屋からかすかに聞こえてきた、声。ヘルムートの>>246もの]
……ヘルムートさ、ん。
しんじゃ、駄目よ。だから、必ず屋上に、きて。
[ダーヴィッドも、とまで言えずに。
それでも願う。ともにいければいいのに、と]
───O for the wings of a dove,(鳩のように飛べたなら)
[微かなテノールは再び]
Far away would I rove.(遙か彼方へ飛んでゆけるのに)
[空気を揺らして歌う]
In the wilderness build me a nest,(荒野に巣を作り)
[瞳を伏せて]
And remain there for ever at rest(永久に休らうだろうに)───
[残響は風に融ける]
――… そうね。そうさせてもらうわ。
[治療が上手な人。
たとえば、この手に布を巻いてくれた人。
たとえば、両の手に包帯を巻いてくれたひと。
伏す眼。
シャッター音は、しない。]
……望郷。
[とおいふるさと。
ここから遥か遠く。
かえりたい。かえるの。なおして、かえって。
そうして、もう、でも、いみなど、な――
歌が届く方向を見遣るように、視線は空へ]
[だいすき。と声に出さずに唇を動かす。]
安易かもしれないけど、あたしはあなたと一緒なら、って。あたしの話じゃなかった。
[腕を組んだまま、先へ進もうとした時にベアトリーチェの問いに返す声は重なって。
歩き出す。ベアトリーチェとノーラがついてくるなら一緒に。そうでないなら急ぐよう促すノーラにそちらもと言い。
屋上への扉の付近、床に横たわってヘルムートの上着をかけられたユリアンと再会する。]
ユリアン、楽しかったよ、からかえて。いじめられてると思っただろうけど。
[ライヒアルトがユリアンに言葉をかけ終わるのを待ち、屋上へ。]
[そして、手にかけられてた両手は離して……]
そういえば、屋上の空はとても綺麗でした。
行く時は、よくご覧ください。
鳥が飛んでいるかもしれません。
[翼があれば]
[――望んでいたのは、エーリッヒだったか。
鳥籠の中の幸せを見つけられなかったと
イカロスのように、
空。何処へ。遠く。]
[空を見る。眼を細める。
記憶の彼方。
区切られた窓
縁取るアラベスク
あれは――鳥籠。私の、鳥籠。]
[ユリアンの名を聞いて、杖で足元を探った。当たる、感触に腰を落として手を伸ばす]
ユリアンさん……。ノーラさんを護ってくれて、ありがとう。ごめんね。
[触れて、離す。もう冷たくなっていた体。
かつりと杖で階段を辿り、上へ上へと上がってく]
[ゆっくりゆっくり]
[目を開ける]
[空を白い鳥が飛んでいた]
[強い風の中]
[風が───]
───鳥になったら、風って見えると思う?
[微かに尋ねる]
[誰にという明確な意思はない]
[唇の動きに気づいたなら、一つ、瞬いて。
それから、微か、笑む]
……一緒なら、むしろ生きる方を望むぞ。
[呆れたような言葉。
促す声には頷き、歩いてゆく。
階段近く、倒れたユリアンの元へとたどり着いたなら]
……じゃあな。
[やはり、短くそれだけ告げて、屋上へと向かう。
風と、それから、歌声が届いた]
――…… わからないわ。
でも、……
鳥は、風に乗るのでしょう。
[白い鳥、が見えた。
尋ねる声に答えただけ。
誰かのそれと重なったかもしれない]
見えているのかも、しれなくてよ。
[屋上へ続く階段の前、腕を壊してしまった石像。ユリアンの姿。
その傍にも、おそらく城の到る所に咲く白い花。]
――…
[階段を上る途中にもそれはあるだろうか]
?
[ ――――― !]
[一瞬、下の方から嫌な音と城全体が揺れるのを感じた。]
[笑ったまま、至近距離で顔を見合わせる。
今はダーヴィッドを見詰めていて振り返る事のない扉の前を、幾人かが通り抜けて行く気配を感じる。慌ただしい音。その中に、ノーラと、ベアトリーチェの声が混じっている気がした。]
何でも。
無謀なくらいで、良いんだ。
ダーヴィッド。
[ダーヴィッドの首筋をなぞる指先が感じるのは、随分とゆっくりに感じられる動脈の音。首輪にかける手が震えた。サファイアブルーの両眼は強く見開かれたまま。]
屋上の空なら、知って──
鳥?
確かに空に鳥は居るかもしれないが。
そうだね。
[目を細める]
きっと鳥には風が見えるんだ。
[うしろから現れる姿]
[ちらほらと姿が見えた]
[ノーラ]
[ベアトリーチェ]
[金の髪の女]
[偏屈な男]
でも───リーチェみたいに素直な子なら、風が見えるかな。
[呟く]
[開いた扉から、風が吹き込んでくる。それを感じると同時、地面が揺れる]
あぶ、ない。ノーラさん、身を屈めて。ゆっくり上るの。
[杖で身体を支えて、階段から転げ落ちないように。一歩一歩、確かめて屋上を目指す]
[嗚呼。時間が、ない。
やってくる人たち。
ヘルムートの、ダーヴィッドの 姿が ない]
―― いそいで
[その場にいる者たちに
そして姿の見えないものたちに]
……急ぐのよ
あたしもライヒアルト、あなたと一緒に生きたい。
[初めて正確に名前を呼んで言った。
屋上につけばライヒアルトの腕に少し体重を預けて休んだ。]
白いいばらの花があって、白い鳥が飛んでる。
[解説するように言った。]
……ヘリに乗ろう。生きる為に。
[ライヒアルトを促し、ヘリに乗り込む為に歩き出した。]
…、痛っ
[階段途中でどこか打った。
じんと痛みが身体に広がる。
けれど揺れを感じた、それはつまり時間がないという事。]
…そうね。
[ゆっくり、そう言われれば頷いて]
[転びそうになったノーラの身体を支える。しっかりと。
風に乗って聞こえていた歌は止んでいて]
アーベルさんの声。もう屋上にいたのね。
[最後の段を後ろ足に、屋上へ。ノーラの手はしっかりと握って]
>>264
[そう、もう身体はとても冷たくて…
めぐらなくなる。生きていくための血液が……]
……議員、お気をつけて……
貴方を見るといったのに、もう、実は、見えません。
[空色の眸がどんどん消えて……]
ベアトリーチェ。
ヘリコプターに乗ったら…
[思い出す。薬を見つけた時に、中にもパソコンがあった事。]
ダーヴィッドから貰ったカードを
パソコン…四角い箱があるから
そこにカードを差し込むの。
そうするとヘリコプターは動くわ。
[よたよたとながら少女に伝える。
空が――星空が、近い。]
私はとても弱いのかもしれない。
[ダーヴィッドはいらえを返しただろうか。
そこから、最後の瞬間まで、
ダーヴィッドを見詰めたまま、瞬きもしない。
今まで数値を何度も確かめた、
ダーヴィッドの首輪を握り、
──力を籠める。
丈夫なそれに悲鳴のような裂音が走り、
首輪を通じて指先と掌に感じる、抵抗が無くなるまで。強く。
引き千切って、
失われ行く、生命を──奪った。]
───いたよ。待ってた。
[なんてね]
[冗談ぽく]
[ベアトリーチェに答える]
そういえば───ダーヴィッドと議員は?
[二人の姿がない]
[人を車椅子に乗せる気だったあの男は]
[焼野原の写真を撮ると言っていた男は]
[どこにいるのだろう]
[伝わる振動が何を意味するのかは、すぐに覚れた。
ゼルギウスからの返答。
城の崩壊の兆し]
……時間がない、な。
[呟いた所に、耳に届いた声。
初めて名を呼ばれたな、などと思いつつ]
……ああ。
一緒に行こう、ナターリエ。
[小さな声で名を紡ぎ。
振動でよろめく様子に、迷わず抱き上げた]
……上手く、見えん。
先導してくれ。
[まだ、見えてはいるけれど。
視界には、霞みがかかっていた]
[ヘリの扉を開く。
ノーラとベアトリーチェには手を貸そうとして。
アーベルにも手を伸ばすだろう。]
――… はやく!
[いない。 足りない。
扉の方を見る。嗚呼。]
パソコン? わかるといいけど。やってみる。でも、ノーラさんも行くのよ。
[ノーラの手を引いて、足に負担の掛からぬよう]
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