情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
貴族 ミハエル に 1人が投票した
シスター ナターリエ に 7人が投票した
シスター ナターリエ は村人の手により処刑された……
次の日の朝、教師 オトフリート が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、少女 ベアトリーチェ、少年 ティル、陶芸家 アマンダ、貴族 ミハエル、騎士 ダーヴィッド、職人見習い ユリアンの6名。
[力あるものを捉え、捕らえようと、うねるその力は手を伸ばす。]
…封じよ!!
[その黒き剣へと向かうよう、力に干渉して捻じ曲げる。
その剣を封じるための結界ではないにしろ、結界内に送り込めば、魔剣の力も押さえ込めるだろう。
力の奔流は魔剣ごと、月の力持つ魔女を捉え、捕らえる。]
−北東部・墓場−
“――返して。”
[その想いに、あるいは均衡を崩そうとする意志に、影響を受けたのでしょうか。力の奔流はそばに居たベアトリーチェとアマンダにはわずかも触れることなく、オトフリートに抗う間も与えず、一瞬にして呑み込んでゆきました。
天聖の力を持つ指環だけが残り、ふっと頼るものをなくして落ちます。]
[...が放った風はあっさり消し飛び、
オトフリートやナターリエが目の前で飲み込まれた]
…ベアトリーチェ?
[からん、と指輪が地面に落ちた]
−墓場−
[アマンダがうねり来る力に気付いた時には、既に手はベアトリーチェへと近づいていた。
けれど、オトフリートにあがらう間も与えず飲み込んだ力の奔流は、アマンダとベアトリーチェにかすりもせず余波もなく。
慣性のままに、触れようとして――]
ーーッ!
[音にならぬ音を立て、その手は弾き返された。
痺れるような衝撃に、声は出ない。
ただ驚いたように、茶色の目はベアトリーチェを見ていた]
…使えた。
[聖女の姿をした魔女の消えた空間を見たまま、数度瞬く。
思い通りに操るとまでは行かずとも、力を曲げることはできた。
安堵の息をついたとたんに、くらりと意識が薄れる。
黒い刃による肩の損傷は深く、結界へと干渉した負荷も大きかった。]
[吃驚した様子のアマンダを気にすることもなく、ベアトリーチェは地に落ちたものを拾いあげます。こどもの細い指には、少し大きな指環。]
これで、いいんだよね。
[てのひらに乗せたそれを見つめながら、囁くような声を洩らしました。]
[たしかに対と云えるものを持たないが故に、対と云える存在(もの)――時空の属性を抱く竜の、消失。ぽっかりと、巨きな穴が空いてしまったように思えました。きゅぅと、首から提げていた無限のかたちの輪を掴みます。けれどもそこに籠められた力はもうほとんどなくて、なんにも感じることは出来ませんでした。ほっとしような、ぞわりとするような、あの感覚ももう、ありはしません。]
……わからない。
[ベアトリーチェは眉を寄せて、どこか苦しそうなかおになります。]
[手出しをする隙を窺って居たが、剣戟の間に割って入る隙は無く、結局はナターリエとオトフリートが消えるまで、見守る形になった。]
[ダーヴィッドが崩折てやっと、動き出し]
[駈け寄って、肩を掴む]
[深く裂けた傷口からは止めどなく血が溢れ
その香りは、こんな状況の中にあってもどこまでも甘美。]
わからない、わからない、わからない、
[おんなじ言葉をなんべんも繰り返しながら、鎖を引き千切ろうとします。拒絶の意志は力となって、たやすく首飾りは壊れてしまいました。さっきの指環のように、捩れた輪はベアトリーチェから離れて、転がり落ちました。]
……要らない。
「今、必要なのは、」
[少女の緑の瞳を通して、二つの存在を見据える]
「……大地と、疾風。最後の均衡を、崩す事。」
[アマンダはただ呆然と、ベアトリーチェの行為を見詰めるばかり。
指輪を拾い、囁くのを、ただ黙って見ていたけれど。
「……わからない」と呟く声に、ようやく我に返っただろうか]
……ベア、君は……君は、
何を 知りたかったの…?
[アマンダは立ち尽くしたまま、オトフリートが居たはずの場所で苦しげに眉を寄せる子どもに問うた]
[革鎧の肩当てすらやすやすと切り裂いた刃は、鎖骨を断ち切るほどまで達していて。
傷口から溢れる真紅の甘露が、地面へと滴り落ちていく。]
……違うよ、アマンダ。
[しばしの間輪を見つめておりましたが、ゆっくりと顔を挙げて、首を左右に振ります。そのかおから表情は消えており、いつものようにぼうっとしておりました。]
知りたかったのではない。
ただ、足りないものを、埋めたかった。
でも、この世界に生きるベアトリーチェでは駄目なんだ。
[それはやっぱり、謎かけのようであったでしょうか。]
……あとは、最後の、均衡を。
[ぽつんと呟かれた言葉は、ひとりごとのようでした。]
[いつもとは様子の違う少女の様子に
ああ、対とも言える時空の消滅が堪えたんだろうな、と勝手に判断し]
なあ、ベアトリーチェ?どうした?
疲れたのか?
[そっと触れようとして、手を止めた]
『え、今なんて言った?』
[傷口に手を差し込み、欠けた鎖骨に触れる。
髄の覗くまで深く断たれた骨を、補うように、一時的にその骨の代わりを果たせるように、強く、溶けぬように氷を造る]
[膨大な血は、ミハエルの腕を伝って袖口から肘もとまでを濡らす。]
[ミハエルの腕は、小さく震えて居る。
触れる傷口も、流れる血も暖かいのに。]
[ダーヴィッドの傷口から手を引き抜き]
[こぼれ落ちた、捩れた輪を拾い上げた。
それは血濡れの手の中で、血にまみれてしまって]
……また、失われた。
[アマンダは、ベアトリーチェの言葉を静かに聴いた。
もう、わかったから。鍵の書を持っているのが、目の前のこの小さな子どもなのだと]
…ねえ、ベア。
足りないものは、埋めないといけないのかな?
補い合っては、ダメなのかな…
[アマンダは、ゆっくりと言葉を紡ぐ。
何が言いたいのかも、はっきりとは分からぬままに]
寂しいなら、寄り添うのは…?
対は、互いが苦手だけど。寄り添う事で、均衡になるよ。
二人でも寂しいなら、もっとたくさん集えば賑やかだよ?
埋めたくて、埋めようとして、みな居なくなった…よね。
たくさん集まってたあの時と今、ベアはどっちが寂しい…?
[最後の囁きは、独り言のように静かに]
私が居なくなったら、ベアは幸せになるのかな…?
[ベアトリーチェは、わらいます。ユリアンに、アマンダに、わらいます。]
……大丈夫だよ。
また、逢えるもの。
[とても空虚に、わらうのでした。そのかおは微笑っている筈なのに、どこか泣き出してしまいそうにも見えたかもしれません。でもベアトリーチェは、その方法を知らないのでした。]
もう、後戻りは出来ないんだよ。
ベアトリーチェも、……フィロメーラも。
揺らがない。揺らいでは、ならないんだ。
[そうして、彼女の――自分の中にある精霊の名を紡いだのでした。]
[アマンダが頬に触れたのなら、内にある精霊の存在が感じられたでしょう。それは以前にブリジットが触れたときよりも、強いものとして。
けれどもそれに構うこともなく、ベアトリーチェは握っていた指環を、指に嵌めます。こどもには大き過ぎる筈のそれは、通した瞬間にぴたりとちょうどよい大きさに変ったのでした。ふわり、天聖の力が、透明な光が零れてゆきます。]
[アマンダは、わらいながら、なきそうな、子どもを見つめる。
頬に触れた指からは、強い精霊の気配が伝わって。
それが、「フィロメーラ」なのだろうと思った]
また、逢えるのに…後戻り出来ないの?
ベアも…フィロメーラも…
揺らいでいるのなら、立ち止まってみればいい。
本当に開けたい【扉】は、【鍵の書】でしか開かないのかな?
[彼女が指輪を嵌めると、零れた光がひび割れた爪を元へと戻す。
叶うならば、アマンダは大地のように優しく包もうとするだろう]
私はきっとどこかで、友だと思っていたのだな。
疑っても、彼奴の事を。
[捻れた環には表も裏も無い、無限の象徴。時の環。]
[透明な、光が目の前を通り過ぎる。天聖。
その力の来たほうを見た。
泣き出しそうな子供の貌を。]
……駄目だよ。
[拒絶はしませんでしたけれども、ベアトリーチェはアマンダから離れて、ゆっくりと左右に首を振ります。]
ベアトリーチェ=ブルーメンガルデンは、
この世界では、生きていかれないのだから。
[ふっと翳が過り、また、人形のようなかおになりました。]
[アマンダは、離れ行くベアトリーチェを静かに見つめる。
人形のようなかお。
アマンダと千花。
器としての――人形]
フィロメーラ、君は……
ベアを…人の子を、器に…?
[一度死に掛けた…死ぬ筈だった、子どもの中にある、精霊。
あっているかはわからない。
けれどその考えは、まるで陶磁器の人形に宿っていたアマンダ自身には真実のように思えて、動けずに]
[拾い上げた環を、もう一度地面へ置き
ダーヴィッドの傷に触れる。
傷口を合わせるように寄せて、流れる血を凍らせてゆく。これ以上、失われてゆかないようにと。
鎧の下、断ち切られた服を割いて、その上からきつく巻いていく。意識があれば、酷い痛みを覚えるだろう。
布きれに染みた血が滴る。]
…ひとの体を器にして。
[流血の勢いは漸く治まり、弱いながらも打ち続ける鼓動と身に秘めたぬくもりが、未だ命が保たれていることを示している。
意識はまだ戻らず、唇から漏れるのは微かな吐息だけ。]
[裂いた服の下は、その身を守る本能ゆえか、
それとも擬態するほどの力が残っていないのか、
真紅の鱗に覆われ、同じ色の血に塗れている。]
……フィロメーラは、助けて呉れたんだよ。
[短くそう云って、一歩、二歩と下がりますと、左の拳を握り、右の手は鎖の輪へと触れました。それから眼を閉じて、小夜啼鳥が夜ぞらを巡る様子を画きます。そして緩やかに手を延ばすのに合わせて、イメージを広げてゆきます。]
今日は、帰るよ。
[すると、ふわり、とその背に白い光の翼が現れたのでした。薄く光を纏うベアトリーチェの姿は、“神の御子”と云うのに相応しかったかもしれません。]
お休み、皆。“また、明日。”
[まるで、いつものように挨拶をして、ぺこりとお辞儀をします。
そうして地を蹴ると、小さなからだはそらへと舞い上がり音も鳴く羽搏いて、闇の彼方へと向ってゆくのでした。
月の雫のように零れ落ちた光の粒子は、傷附いたものたちを優しく包み込んで、癒そうとすることでしょう。それがベアトリーチェ自身の意志なのか、強過ぎる天聖の力の影響なのかは、わかりませんけれども。]
[飛ぶというのは初めての経験の筈なのに、
ベアトリーチェは難なくそれを受け入れるのは、
矢張り彼女と二つで一つの存在であるからだろうか。
天つ空を駆け巡る、戦乙女(ワルキューレ)と]
このまま、どこまでも飛んでゆけたらいいのにね。
[微笑う少女の言葉に、彼女はそうね、と優しく答える。
けれどもそれは、今のベアトリーチェには、*叶わない*]
お前を助けたのであろうと、それは過干渉だ。
赦されざることだ。
この世に在る筈でない者がこの世にあり、この世にあるべきものを損なうのであれば………消えるが良い!
[力を、地へ向けて叩き付ける。
地中の水分が凍り、霜柱のように立ちあがる。
霜柱と呼ぶにはその先端は鋭利で、明らかにひとを傷付ける事を目的としていたのだが。]
[白い翼を得たベアトリーチェは、いつものようにお辞儀をして、闇の彼方へ消えた。]
[アマンダは、動けない。
夜空へ羽ばたくベアトリーチェを、見上げるだけ。
やがて、その姿が消えた後。
零れ落ちてきた月の雫の最後の一つを受け止めれば、指先に鈍く残る痛みは消えてゆく。心の痛みは消えないけれど]
…「また、明日。」か…
ベア…明日になれば、君は………
[続く言葉は音にはならず。
紅の痕残る指先は『千花』を*静かに撫でるのみ*]
[呆然とベアトリーチェの宙を舞う姿を眺めていた
もしかしたら見ほれていたのかもしれない]
――今日は、帰るよ。
――また、明日。
[その言葉がリフレインして]
[コエ送ろうとして、愕然とする。
ずっとベアトリーチェに注意していたから
気がつかなかった]
…ティル?どこへ行った?
[振り返っても、休ませた場所には翠樹の気配は無く
返ってくるコエもどこにも無く]
[ただ三つ花の蝶が*ひらりひら*]
―昨夜/森の中―
[歩くに力が足りぬと言うは、苗床にとって思った以上につかれたことだった。
森は目と鼻の先だというのに遠く、たどり着くのは困難。
何が起きているのか見ることなく、ただそこを目指す。
蔦や茎を使い(というよりそれらに手伝われ)、ようやくたどり着いた森の端。
花が戻りて、額に咲いた。]
『僕を呼べ』
[自らと一番縁の深い子に呼び掛ける]
―昨夜/森の中―
[知らぬ者が見たのなら、苗床の体に森が襲いかかったように見えたろか。
樹にまとわりつく蔓が、緑色の葉が、土の下の根が、……森のすべてが、苗床に従う。
コエが届いた気もしたけれど、ほんのり冷たい根に引かれて、返すこともできずに。
知らぬ者が見たのなら、森が苗床を食らったように見えたろか。
苗床の体は押しつぶされたよに、それらが静まったあとは何もなかった。
ただ土が、そこだけ茶色に変わってもりあがり、
ただ葉が、あおい葉が、なぜかたくさん散っているだけ]
[樹にくわれるようにたどり着いたそのうち。
苗床は暗緑の樹の下にあらわれる。
土がもりあがり、体が押し出され、
根が、それを覆う。
茎が手首のあたりからあらわれ、苗床を地へと縫いとめ、
小さな背より生えた太い蔦は、そばの樹へと巻き付いた。
一本の根は苗床の足首より体内に入るだろうか。……否、本来そこで時を待っていたのだ。
小さな白の体は眠りに落ちる前にわずかふるえ、残った掌から種を溢す。
それは蔓となり、最後に蔦に巻き付いた。
花と葉が、緑のかたまりに咲いていた]
[そこから覗くは、白い手首と、
蔦の生えたあたりの背。
森は苗床をかかえこんで
苗床に癒しの力を与える。
誰がはずそうとしても手では無理だろう。
近付けば花と葉がひらり、きっと近付くに*違いない*]
―昨夜・墓場―
[三つ花の蝶はひらりひら。
いつもと変わらず飛び跳ねている]
はな。お前の主人はどこにいる?
……っ!
[そおっと蝶に手を伸ばす。
蝶がひらり彼の手に止まろうとして――突如消えた]
−昨夜/墓場−
[アマンダはしばらくベアトリーチェが消えた空を見上げながら夜風に吹かれていたが、ユリアンの声にゆっくりと振り返る]
…ティルが、いないの…?
[アマンダは辺りを見回して、不安げに眉を寄せる。
ティルは何処へ行ったのか。飲み込まれ消えたのではない…はず。
力の奔流が、オトフリートとナターリエを選び飲み込んだ事はぼんやりとわかっていた。
迷宮の中の人たちは…ベアトリーチェの言葉を信じるなら、きっと無事なのだろう。また逢えるのだろう。けれど鍵の書は――
そこまで考えた所で、そう遠くない大地――森の土が異変を伝える]
っ! なに…? ああ…これは森の樹の――ティル…?
[大地の異変の意を探ろうと、茶色の目を細める]
[――やがて、翠樹が森の中のあの大きな樹…いつか大地の力を引き出した場所の傍で眠りについたらしいことを感じ取り、安堵の息を吐く。
かの地なら、ゆっくりと回復できるだろうと]
…後で、様子だけ見に行くかな…
今は、ゆっくりおやすみ…。
[森の奥へと届かないだろう声を投げ、屈んでスケッチブックを拾い上げる。広がられたそれは、真っ白]
……
[元通り閉じて、小脇に抱えた]
[それから。
ようやくアマンダは眠る火の竜と、傍で見守る氷の精へと振り返り]
…おつかれさま。ダーヴ、ミハエル…
[静かに*声を投げた*]
[過干渉――赦されざること――]
[それは、彼女とて理解していた。
自己満足であり、我儘に過ぎないのだと。
それでも彼女には、見過ごす事は出来なかった]
−北の遺跡−
[遙か昔に滅びてしまった古代都市。その欠片が残る場所に、ベアトリーチェは居りました。背に翼はもうなく、代りに淡い光を纏った小鳥が肩に止まっています。そこは『鍵の書』が眠っていた場所だからでしょうか、町から離れても力が失われることはなかったのでした。]
お父さんと、お母さんは、心配しているかな。
[外で夜を明かすだなんて、もちろん初めてのことでした。もしかすると自衛団に届出でもあるでしょうか。それとも、厄介者が居なくなったとせいせいしているでしょうか。
小さな手で、崩れかけた柱に触れます。ぱらぱらと、砂のように零れてゆく欠片たち。深く永く、ねむれる過去の記憶がそこにはあるのでしょう。]
ここには昔、
たくさんの人びとがあって、
たくさんの出来事があったのだろうね。
[そこに残されているのは、崩れ落ちかけた神殿や屋敷のあと。都市は栄えていたのかもしれませんが、今は見る影もありませんでした。なんとなく左の手首を掴みますと、シャラ、と小さな音が鳴りました。]
それでも、今はもう、滅びてしまったのだ。
[左手を軽く握って、ゆっくりと開きます。]
……時は、まだ。後、少し。
[人の少ない柱のそばに座り込んで、あおい虚空を見上げました。]
―墓地・明け方―
[癒しの眠りに着いた竜は、その弛緩した寝顔を晒したまま。]
[流れた血は乾き、大地へ落ちた血は吸い込まれ、むせかえるような甘い香りもいまは無い。
ミハエルは、立てた膝のうえに腕を置き、その上に頭を載せている。]
…様々なものが失われていく。
私にはそれを留めるすべが無いのだろうか。
[呟いて片方の手を伸ばし、ダーヴィッドの傷口に血糊で張り付いた木の葉を剥がす]
−午前/ベアの家−
[アマンダは、一人でベアトリーチェの家を訪ねていた。
けれど、ちょうど留守だったらしく、誰も出ては来なかった。
もしかしたら、帰らぬ娘を心配し、探しに行っていたのだろうか]
……ここに、置いておくね。
[扉の傍にスケッチブックを残して、踵を返す。
「また、明日。」
そう彼女は言っていたけど、今度会う時には忘れ物を返すだけの余裕はないだろうと思って。]
―西・桜の木の下―
[コエはないけど。気配は感じ。
きっと「消されて」はいないことに安堵]
[それでも不安を完全には消えない。
せめてコエだけでも聞き、姿だけでも見たくて]
[探し回るも少年の姿は何処にもなく]
[...は考える。コエも花もない世界で、
彼が翠樹の魔を見つけるのに頼れるのは己のみ]
[そして思い出す。
さっきKirschbaumで少年が言いかけたコエを]
――すこし、森にいきたかっ……
そうか、森にいるんだなティルは。
なんで今まで思いつかなかったんだよ。僕の馬鹿
[...は慌てて森へ走った]
―墓地・明け方―
[アマンダは暫くその様子を見守って居たが、東の空が白みはじめる頃には、墓地をあとにした。少女の残したスケッチブックを小脇に抱いて。]
[ミハエルは何処にも怪我を負って居ないのに、血にまみれていた。血を吸った服は乾いて、肌に張り付いてとても不快だと思った。]
―森/暗みがかった緑の樹の根元―
[白い苗床の身体は少し脈打ち、
ゆると動く姿が生を感じさせる。
胎児のよに丸まって、
コエが聞こえたなら、その口元に微笑が浮かぶか。
優しいコエ。
力を受け入れ眠りにつくこと。
それは苗床として自然なことで、それでも今は]
起きなければね
−午後/教会−
[アマンダは、神父と子ども――鍵の書に深く係わる二人が好んだ場所へとやってきていた。
安息日だと言うのに、教会の中には誰も居ない。
町の人々は、それが異常だとも思わずに教会の扉をくぐることなく、訪れてはまた去っていく]
……ねえ、神父もベアも…鍵の書に何を求めたの…?
[呟きは静かに床へと落ちて消える。
精霊であるアマンダは、人間の言う「神様」に縋りはしない。
ここにもベアの姿がない事を確かめれば、踵を返すだけ]
…あれ、今の…
[振り返った時、視界の端を過ぎった黒猫に目を瞬く]
『あの猫は…教会の……神父の? まさか…』
待って…!
[こちらの様子を伺っていた黒猫は、影へと入り、消えた]
―墓地からKirschbaum・明け方―
………。
[夜が明ければ、人に見咎められず行動するのは不可能だろう。ましてこの格好では、どう疑われても仕方が無い。
ダーヴィッドを一瞥し。
抱え起こして、傷の無いほうの肩を担ぐ。引きずるようにして、Kirschbaumへ向かう。幸い、店へ向かう途中で人間に見咎められることは無かった。]
[Kirschbaumの戸を叩くと、明け方だというのに店主は戸を開き、迎え入れてくれた。彼もまた、人では無いのだ。]
[ダーヴィッドをソファへ寝かせた。
宿の一室を借りて、シャワーを浴びる。
利用客は減っていた。]
−現在/中央広場−
[結局、アマンダは、黒猫もベアトリーチェも見つけることが出来なかった。子どもが遺跡へと近づこうとしない様子から、無意識にそこに居るという選択肢が抜けていたのかもしれない]
……困ったな…。
今夜また、あのうねりが来る前に…あの子を止めたい…ううん、あの子に止まって欲しいんだけれど、な…
[茜色差す空を見上げれば、一陣の風が吹く。アマンダの対]
…ユリアン? 何処へ…ああ、ティルの?
[投げかけた声は、届いただろうか]
―森/樹の下―
[どれくらいが経過したのか。
時間についてはわからないものの、苗床の身体はだいぶ回復をしている。
まるで森とひとつになるような、そんな体勢が徐々に、
木々たちが離れてゆくことで、孤立したものとなる。]
……だいぶ、ましかな。
[呟く姿に片腕はなくとも、片目には何も見えずとも。
苗床は自分の中の二つの種から生まれた子らを、再び体内に戻す。
他の子らは森に返す。
引いてゆくうちの茨の蔓に傷つけられたか、その肌には薄く朱が引かれた。]
[...は気配を感じ、歩みを止める]
[自由気儘に飛び回る彼を縛り付ける鎖。
でも最近は以前より苦痛ではなくなっていて]
やあ、アマンダさん。
うん、今からティルを迎えに行くんだ。
そうだ。アマンダさんも来る?
[「僕と森でデートしませんか?」とくすくす笑って]
心配されるだろうか。
[左の手の甲からじわりと広がる朱。
抑えておけば治るか、と思うと、葉がひらり、そこをおさえる。]
朱く染まってしまうよ、ヨウ。
[それでも離れることない葉に、困ったように笑う。
そして再び座り込んで、根に繋がれた。
*花がふわりと飛んでいる*]
[立ち止まった少年の言葉に、アマンダは目を瞬く。
どちらの言葉に驚いたのかはわからない]
ティルが、目覚めたの?
デート、君と?
うん、いいよ。
[けれど、直に頷いて、森へ向かって歩き出す]
「デート」という響きが嫌なら、
「逢い引き」でも構わないけどね、僕としては。
[さらりとそんな発言をして...はアマンダの隣を歩いた]
―……→北東の森―
[アマンダはユリアンの発言に首を傾げる]
別に嫌いではないけれど?
[目的語がすっぽ抜けたままの答えを返し、隣に並んだまま歩く]
−→北東の森−
―北東の森―
[生い茂る草花に足をとられたりしながらも、
...はアマンダの前を歩く。]
[...にとって初めて足を踏み入れる場所。
しかし迷うことはなかった。
コエがする方向へ、一歩一歩進んでいく]
はな。おはようさん。
[いつの間にか三つ花の蝶がひらり。
彼らの道案内をするかのように森の奥に飛んでいく]
―明け方・kirschbaum―
[血を洗い流したミハエルが、喫茶店である一階へ降りると店主がアイスティーを用意して居た。恐縮するミハエル。
「本当は、此処へ泊まれれば色々楽なんだけどな」店主はそう呟いたが、此処は満室だからと笑った。いまは宿泊客も、出掛けて居るだけだから、帰ってくるから、と。]
[汚れたシャツを外套で隠して、着替える為に宿へ戻った。
それから、街へ出る。]
―森の中/樹の下―
[目を閉じかけていたけれど、苗床は少しわらうと、そっと根を見やる。]
おいで、君も来たいのだろう?
[呼び寄せ足のうちにいれると、立ち上がる。]
果実を探してこようか。
かの火の竜より、かの神鳴りの人より、かれは食べないだろうけどね
[心配かけてしまったし、仕方ないかなんて呟くよに。]
−北東の森−
[アマンダは、迷いなく進むユリアンの後ろを付いて行く。
草花までは無理だけど、大地には足を取らないように頼んだろうか]
ユリアンはティルと惹かれ合う絆があるのだね。
不思議。どうしてかな?
[「魔と人なのに」と種族を超えた繋がりに不思議そう。
首を傾げていると、三ツ花の蝶のお出迎え。
茶色の目を細めて御挨拶]
おはよう。お迎えかな?
[ミハエルは昼頃には墓地へ行き、長いことそこへ佇んで居た。
弔うものがある訳では無い。
人が訪れることも少なく、静かな墓地は少し、銀世界を思い出させるから。いまは穏やかに力を蓄えるべきと、そうしていた。]
―樹のそば―
[ひらり、いつのまにかいなくなっていた花が、
苗床の視界に姿を現す。
困ったよに手を差し伸べて、その指先に三ツ花を留まらせた。]
─喫茶室─
[ソファーに横たえられたまま、醒めぬ癒やしの夢の中。
肩の傷口は薄皮一枚ほどではあるが塞がり、力は次第に満ちてゆく。
回復に専念しているのか、*いまだ目覚める気配は無い。*]
−北の遺跡−
[柱に背を凭れてそらを見上げるベアトリーチェに、力なきものが気附くことはありませんでした。まるでその存在が世界とひとつになってしまったように、あるいはこの世界に存在していないものであるように。]
もう、少し。
[天のいろが移り変るのにつれて、人の影は一つ一つと消えてゆきます。それは日が落ちてゆくからなのか、書の力によるものなのかはわかりませんでした。
そして時間が経つのにつれて、からだの中に巡る力が高まってゆくのがわかります。それをたしかめるように、腕輪を嵌めた左のてのひらを柱に押当てますと、眼を瞑りイメージします。ずうっと昔の、都市の姿を。それは本で見た知識と想像の合わさったものに過ぎないのですけれども、ふわり光の粒子が集まりますと、柱は亀裂もない綺麗なものに直ったのでした。]
[...はアマンダの疑問に優しく答える]
それは今でもわからない。
ティルは「波長があったのかも?」とか言ってたけど。
理由なんて今としてはどうでもいいかな?
こうしてコエが聞こえるのは確かなんだから。
[前を飛んでいた蝶がふんわり羽を休めた。
ずっと探していた人が目の前にいて]
おはようさん、ティル。目、覚めたか?
[いつものように笑いかけ、ぐしゃっと頭を撫でた]
[ふっと顔を逸らしますと、ベアトリーチェは柱から離れて遺跡のそばから続く森へと向います。町の東にまで広がる森は巨きく、そして豊かでした。
果実の成っている樹を捜して、ゆっくりと辺りを見渡しながらあゆみます。自分で創れもするのですけれど、それは力を使ってしまうことになるからいけないのでした。]
―樹のそば―
[やってきた風と地に、苗床が向けるは微笑。
何を話していたのかはわからないけれど、
二人が仲のよさそうな様子にほっとしたのかもしれない。]
おはよう、ユリアン、アマンダ。
心配をかけたようで、ごめんなさい
[コエでは伝えたことをもう一度。地の精にははじめての謝罪。
撫でられては、わずかな苦笑。]
−→樹の傍−
[アマンダはユリアンの言葉に、また瞬く。
優しい言葉とか、態度とか、そういった色々変わっているものに。
精霊であると、対であると、知られたからだろうかと、声を出して*訊ねはしなかったけれど*]
[コエでは伝えきれない気持ちを、
頭を撫でる手にぎゅっと込めて]
全くだ。とても心配したよ。
元気になったなら、さあ帰ろう?……ん?
[...は未だに気を感じることはできないけど。
草木を揺らすざわめきが風によるものではないのは明白。
――それはとても清らかで、この森には異質な感覚]
[やがて一本の樹の前で立ち止まりますと、それを見上げます。手を持上げると、淡く光る小鳥が宙を舞って枝まで飛んでゆき、たわわに実る果物を突きます。重力に引かれたそれは、ベアトリーチェの手の中に落ちてきました。
一口齧ると、新鮮な味よりも、翠樹と大地の力が強く感じられました。]
本当に、ごめんなさい。
[ユリアンの気持ちは伝わってきて、じんわりとした優しさに、
少し嬉しくなる。
しかし気づいたらしい風の子に、
心配させぬように微笑んで]
うん、帰ろうか。
大丈夫だよ
[何が、とは言わずに。]
[回復したように見えるティルから「大丈夫」と言われ、微かな不安と違和感はどこかに消え去り]
はやく帰ろうぜ。お腹すいたー
飯飯。ハーヴェイさんのごー飯ー!
ほら、また迷子にならないように。
しっかり捕まっておけ。
[すっかり日常モードの...はティルに向かって右手を*差し出した*]
[手を差し出されて、左の手をどうするか、と悩む。
なぜならそこには先ほど森に貰った、果実の類が握られていたから。
少し悩んで、先にそれを渡す。]
そうだね、かれはきっと待っていてくれるだろうね。
だから、これを先にもっていってくれないかな?
[軽く首を傾げて、ことさらなんでもない、普通の様子で。
違和感など思い出させないように。]
僕は森にお礼しないと。
この子たちにも、心配かけたし、ね?
[すっかり静まり返った墓地。
陽が暮れてから此処を訪れる人間は居ない。]
[街には、この墓地に夜な夜な”何か”が現れるという噂が在ったが、その噂の元がナターリエであった事をミハエルは知らない。]
[静寂のなかで、己の感覚が徐々に精密になってゆく。
ちからの感じられる場所。
遺跡へと、向かう。]
[すっかりと食べ終えて、口もとをごしごしと拭きます。そばに力が集まっているのは感じていましたが、今はまだ“その時”ではないから、ベアトリーチェは自分から動くことはありませんでした。いいえ、単に今は逢いたくなかったのかもしれません。]
……大丈夫だよ、フィロメーラ。
[そう云ったのは、肩に舞い降りた小鳥に対してでしょうか。]
―遺跡―
[遺跡へたどり着いたミハエルが見たのは、時を巻き戻したかのような姿の柱。以前に見たときは、ひび割れ、欠けてなかば砂へ還りかけていた筈だが。]
[そこへ在ったのは、力の残響と、その行使の跡のみ]
[亀裂の無い柱を、憎々しげに見つめる]
[ぴたりと手を当て、]
[だが首を振って]
[なんだか少し疑いの眼差しになったかもしれない風の子に、はやくしないとわるくなっちゃうから、なんて尤もらしく言いながら、
苗床は、ゆっくりと、そちらへ向かう。
聖なる子の力の方へと]
そうか、もうそんな時間なんだね
[こんばんは、と言い直して]
うん、まあおはようかもしれないけれど。
……君にとってはこんばんは、だよね。多分。
うん、そうだね。
[小さく肯いてから、首をかたむけます。]
きっとティルも、ユリアンから聞いているよね。
[なにを、とは云いませんでしたけれど。]
[意識を光の小鳥に宿して、彼女は今は少女の傍らに。
今は心にも力にも波風は立たずに、少女は落ち着きを見せていた]
「彼女を護るために。」
[その声は、ベアトリーチェの口から紡がれたものではありませんでした。ティルの方をじっと見つめる、小鳥から。それは声ではなくて、思念のようなものでしたけれど、まるでほんとうの小夜啼鳥のように澄んだ声に聞えたでしょう。]
[まるで歌声のようなコトノハ。
小鳥を見やり、苗床は少し考えて口を開く]
かの女を?
……守る、とは、どうして?
[かの女というときに、見たのは、ベアトリーチェの姿。]
……ベアトリーチェはね。
ほんとうは、ずっと昔に死んでしまう筈だったんだ。
[フィロメーラはそれを助けて呉れたのだと、ベアトリーチェは云います。
それは“過干渉”であり、“赦されざること”。ミハエルが云ったとおりのことだと、よくわかっていました。]
「この世界の律では、彼女は生きてはいけないから。」
[けれども、変えるのだと決めてしまったのでした。]
そう。
[二人の言の葉は、互いを思いあうようで。]
君は、助けられたのだね。
かの女を。
大切な人の子を。
[小夜啼鳥を見る目は、どこかまぶしいものを見るようで]
たとえ誰に攻められようとも、君が僕にはうらやましい。
[そっと囁くような呟き。
左の手は、首にかかる小瓶を、そっと握って。]
……でも、書を使うということで、本当に、生きていける世界が作れるのかい?
……わからない。
[訊ねられて、こどもは小鳥へと眼を移しました。指から離れた小夜啼鳥はティルの周りを一度巡り、ベアトリーチェの元に戻ります。きらきら、光の粒が零れました。]
「……断言は、出来ません。
けれど。
ただ、滅びの時を待つよりは。」
君は、賭けを選んだのだね。
[光の雫に目を細める。
片目の金は、何も変わらぬまま]
僕も、それを悩んだ。
君もきっと、悩んだのだろうね。
このままではどうしても駄目なのかい?
ただ今の生を、楽しむだけでは駄目なのかい?
[問いかける声は、静かな響きを持つだろう。]
[風が樹を優しく撫でていくのを見ながら、波長が合ったらしいという言葉に頷くと、ちょうど花がティルに留まった所だった。
彼の謝罪に緩く首を振って、アマンダは二人の再開を少し離れて見守る。外見に近い、少年と子どもらしいやりとりに、微笑みが浮かぶ。
人の子の成長は早いと、アマンダは思う。
3年前、この町に着たばかりの頃。アマンダに当たりかけたボールを【疾風】が弾き飛ばし飛ばしたのが出会い。
その時ユリアンは、ちょうどティルくらいの姿だったはずだ。
思わぬ対との出会いに反発しながらも、見かける度に眺めて…睨んでいたなと、不意に懐かしさを感じる。
少年になった彼が今、青年になりつつあるのだとまでは気付けないけれど]
…私は、少し寄り道。
楽しいデートだった。またね。
[少し元気になった様子のティルに、手を出すユリアンに微笑んで背を向けた。ユリアンが居るなら、*きっと大丈夫*]
[小鳥はベアトリーチェの肩で羽を休めたまま、なにも語ることはありません。なにか考え込んでいる様子でもありました。代りにか、こどもが口を開きます。]
知る前なら、そうだったかもしれないね。
けれども、知ってしまったから。
[シャラン、左手を掲げますと、鎖の輪が音を奏でました。]
ベアトリーチェが今まで生きて来たのには、
何かしらの意味があるのだと、そう思っていた。
……世界を変えることに、その意味を見出したのかもしれない。
[曖昧な言葉。そこにたしかなものなんて、なに一つありませんでした。]
君は、
[こんどの目は、人の子に向き]
まだ子どもでいられるのだね。
僕は知る前から、諦めていた。
かの女がしあわせな、元気な人の生を送るのを見るのを。……そんな時はないのかとすら思っていたんだ。
だけれど鍵のことを知って、考えた。
[悩んでいると言っただろう? と、苗床は微笑んで]
世界をかえれば、かの女はうまれてくれるだろうかって。
それともかわらぬまま、かの女を待つほうがいいのかって。
君の生きる意味がそれだというのなら、
僕が今まで生きてこれた意味は……
それが決して開かれない、そんな世界をつくることなのかもしれないと、今は思うよ
[こどもで居られる。それの意味するところがよくわからないというように首をかたむけますと、金の髪が頬にかかりました。けれども、ティルの決めたことだけは、わかったのでした。]
ティルの思うように、したらいいよ。
ベアトリーチェは、ベアトリーチェの思うように。
[ぼうっとした緑の眼は、ティルの金いろの眼を見ていました。]
ベアトリーチェはこの世界が好きだった。
でも、届かない世界なら……。
[言葉の途中で、ベアトリーチェは顔を天へと挙げます。樹々の合間から覗く月は、円いかたちをしておりました。]
時が移ろうまで、あとわずかだ。
ベアトリーチェは、もう、行くよ。ここの果実は美味しかった。
そうだね。
僕は僕の、君は君の、思う通りに。
[すこし、困ったように微笑んで、苗床も天をあおぐ。
陽のひかりは葉を越えてやってくるけれど、月のひかりは遠くに。]
……それでも君たちの手は、
僕よりずっと大切なものを掴めているのだよ。
……だから鍵を開かないでほしい。
そう言うのはきっとわがままなのだろうね。
君がそれを渡してくれることをこの森も僕も望んでいるよ
[それでも、手は伸ばさずに]
―遺跡―
異界門。開かれるのが摂理なのだろうか。
だが、開かれるのならば私如きが何を為そうとも開かれるのだろう。ならば―――
[仰いだ空には、落ちかかりそうな満月が掛かって居た]
……駄目だよ。
[否定の言葉は小さくも、しっかりとしたものでした。くるりと向きを変えると、ぱさりと翼を生やしたベアトリーチェは葉の間をぬって、そらへと飛び立ちます。]
あと、もう少しなのだから。
[失われた過去のねむる、遺跡を目指して。]
―北東の森―
[背の高い草ががさごそ動いて、...の姿が現れる]
おい、ティル。遅いぞ。
またなんかあったかと思ったじゃないか。
はやく、帰ろうぜ。
[直前まであったことなど微塵も気がつかず、
もう一度右手を伸ばした]
……うん。もうすぐ、なのだね。
[まさらな翼で飛び立つかの女を見送る。
その右の、残った瞳には、少し悲しみが映るだろうか。
しかし見るものはなく、月の光もそこに届かない]
止めて、やってほしかったな
[その言の葉は、精霊に向けて。]
……望みすぎは、身を滅ぼすのに。
[と、がさごそという音。風の音。
そちらを振り返った苗床には、今は微笑みが浮かぶ。
様子など感じさせぬような]
うん、何もないよ。
そうだね、早く帰ろう
[今度はその手を、左の、残った手で握って]
[アマンダは意識を澄ませ、氷の精霊の気配が感じ取る。
そちらへと足を向けた時、月の光に影が差し、羽ばたきが耳に届く]
……ベア…
[目を細め見上げ、佇む]
−北の遺跡−
[ふっと、円い眼は二人の精霊の姿を捉えたでしょうか。]
こんばんわ。
[挨拶をする声は、どこまでも穏やかなのでした。]
―北東部/森→中央部を通ってKirschbaumへと―
[町の様子はあまり変わらない。
それは普通の人では、意味がないからだろか。
この風の子も、
本当なら、そうであれたはずなのだろか。
少し考えながらも、
約束のために、Kirschbaumへの道をとる。]
[目を細めたまま、挨拶代わりに片手を上げる。穏やかな声]
…やあ、二人とも。ここだったのか。
[ミハエルの問いはアマンダも知りたかったこと。静かに見守る]
これは、門を開く鍵だと、聞いているよ。
[云いながら、小さな右手を、手首に巻かれた鎖の輪に延ばします。真珠は月の光を弾いて白くきらめいておりましたけれども、指が触れた瞬間にそれはかたちを変えてゆきます。腕輪から、一冊の書へと。]
『世界と世界の狭間にある、無限なる混沌の海』へと続く門であり、
『世界を生み出せし秩序の王』が去って行った門にして、
『世界を無へと還す混沌の王』が訪れるとされる門を。
[それはまだ天と魔の封印が施されたままでしたけれども、それには闇よりも黒い布が張られており、表紙には銀の糸で古い言葉がつづられていました。]
―Kirschbaum―
[...はいつものように店内に入り、
マスターに挨拶してふわもこに蹴られ]
さーて、どれを頼もうかな。
みんながいないうちに注文しちゃえ。
[うきうきメニューと睨めっこ。いつもと変わらない日常]
混沌を望むのか。
[辺りを包む闇は色を濃くして居たが、ベアトリーチェの手にある『鍵の書』の表はそれよりもなお黒く
月明かりを浴びた少女に暗闇を穿ったようにも見える。]
―Kirschbaum―
ごめんね、か……ハーヴェイ、ヴィオレット。
たくさん迷惑をかけた。
[それから、横たわる火の竜を見、
料理を嬉々として注文している風の子を見]
……僕は、また行こうかな。
もうすぐなんだって
[影の王にだけ届くように、小さな声で。]
……必要なだけだよ。
均衡を崩すことも、混沌を齎すことも。
[そう、教えられたのでした。]
新たな世界の創世のために。
[混沌を望んだのは彼女ではない、心の魔たる彼だ。
けれども結局は、彼女もまた、それを望んでいる。
――悠久を領域とする精霊であるにも関わらず]
[アマンダはその言葉を聞いて、哀しそうに笑う]
…ベアにとって、この世界は「いらない」んだね…
新しい世界(もの)を望む事は、今ある全て(もの)を捨てる事。
…そこまでして欲しいものは、なに?
[アマンダの言葉へ、返る言葉を待つ。
精霊にとって、この世界は己と等しく、己は世界の一部。
ミハエルは哀しみこそしないが、怒りをもって。]
[何かが、違って来ている。
何が違って来ているのだろう。
少女の欲しいものは、確かではない。
では、彼女の欲しいものは、何だと言うのだろう]
[かすかに、くちびるが動きましたけれども、それは音にはなりませんでした。
“わからないよ”。
そう呟いたのかもしれませんけれども、定かではありません。
ベアトリーチェが眼を伏せて緩やかに左右に首を振り、胸もとからそっと書を離しますと、黒の表紙に記された文字に、銀いろの光が走りました。]
新たな世界など必要ない。
流転することも、変わり往くことも、開くことも
私の前では認められない。
私は氷破の精霊。
封印を司るものだから。
[光の粒が舞うのに合わせて、低いところに冷たい霧が漂いはじめる。少女を見据える目は厳しく]
………だが、そんな事はもう、どうでも良いのだ。
[辺りの気温が下がるだろうか。]
[冷気は、ベアトリーチェの足元へ収束してゆく。]
いまは、それを元の通りに封じること。
そして元の日々を取り戻すこと。
[アマンダは首を振る。長い髪が揺れる]
ちがうよ。それは、ちがうよ。
それはやりかたであって、欲しいものじゃない。
・・・・・・・
私は、ベアトリーチェに、聞いているの。
[それはフィロメーラに向けてなのか、腕に抱かれた書になのか。ただ、アマンダが聞きたいのは、子どもの答え。
それによってアマンダも、心を決めようと思っているから]
[鍵はまだ、扉を開くことはありません。けれども渦巻く力はだんだんに高まって来ていて、それは時間の問題のようにも思えました。今のベアトリーチェに、力なきものはそばに近寄ることすら出来ないでしょう。]
……そうだったんだね。
[それは誰へと云った言葉だったでしょうか。]
―→遺跡―
[気配を探りながら、そちらへと近づく。
きらきらと光るかの女を、
冷たい空気をまとうかれを、
見たとき、少し、寂しそうな顔をしたかもしれない。]
[アマンダはとっさにミハエルの冷気に抵抗しようとした。
昨夜、目の前の小さな少女を貫こうとした霜柱は記憶に新しい]
ミハエル、待って!
[思わず背に庇ってしまったのは、自分と千花の関係を重ねてしまったからだろうか]
もう遅いんだよ、アマンダ。
ベアトリーチェの望むものは、手に入らないから。
[迫る冷気に逃げるそぶりも見せずに、ベアトリーチェは微笑います。]
わたしはただ、望みのために動く。
[アマンダは叫ぶ。言葉遊びは好きじゃない]
ああ、もう! わからないわからない!
遅いって、手に入らないって、聞いてるのはそれじゃない!
何が欲しいのかも教えてくれないんじゃ、わかってあげる事も助ける事も手伝う事も出来ないんだよ!
[それでも背には庇ったまま]
[氷の精と地の精。
ふたりの動きに、ため息を吐く。]
……書を前に他の争いか。
[ため息を吐いて、]
そんな悠長なことをしている暇はないだろうに、精霊は愚かしいな。
[言の葉は小さく、それから、ひかりをまとう、書を持つかの女に近づく。
かの女と、精霊に。]
知らなければ、よかった。
知りたいことは、知れなかった。
[それきり、アマンダから眼を逸らすと、歩みを進めるティルへと向けます。]
書を、やっぱり、君は渡してくれないのだろね。
[困ったように聖なる人の子を見やって、
次に、飛ぶ鳥の姿の精を見やる。]
書を、封に戻す気も、
もうないのだね。
―Kirschbaum―
[...は今日のおすすめを二人前頼んで食べている。
ひたすら食べないとすぐに眠りに引き込まれる感触]
なんか、隊長やダーヴィットさんがあんなに食べるかわかる気がするなあ…。
[ぽつんと呟き、おかわりを頼もうとした瞬間――
力が発動されたのを身体で感じる]
ふわっ!始まったのか!ティル…って、いない!
[やっと翠樹の少年の不在に気づく]
[封印すれば――
元に、戻れるだろうか。
前のように、成れるのだろうか]
[けれどそれでは、少女は救われなくて。
けれどこれでも、少女は救われなくて]
必要なのは助けることでは無い。
ひとなどを助けることが出来ると思うのならアマンダ、それは驕りだ。邪魔だてをするのならお前ごと貫く。
…無意味だな。
[ティルの言葉に、溜息を。]
[大地に依らずに、手の中に氷の刃を生む][刃は幾つかに分かれ、手の上へ浮かび][小さく踏み出してそれを、未だ立ちはだかるアマンダへ向かわせる。]
ベアトリーチェは居ない筈の存在だった。
だからわたしは、自分の望みは持たないの。
[こどもは左の手に書を抱いて、天聖の指環をした右手を天に掲げます。]
望むのは――きみのために。
[ティルの問いかけるような言葉に、光を纏った小鳥はどこかかなしげにして居りましたが、こどもの肩を離れてそらへとゆきます。]
知らなければ? 知りたいこと?
[ベアトリーチェの言葉に、思わず肩越しに後ろを振り返る]
ベア! 君はいったいなにを…ティル?!
ユリアンは…ああもう!
[答えはなく、少女の視線の向けられた先に気付く。翠樹を唯一止められそうな疾風の少年の姿は、ない]
[立ち上がり、外へと飛び出す。
飛び立つ翼は深紅。
胸に輝く逆鱗は青。
夜空を渡る、力強い皮膜の翼。
夜風に唸る、力強い赤鱗の尾。
それは、燃え盛る破壊の竜。
喪われてなお消えぬものを、壊して輪廻へ戻すもの。]
[口で引き抜くは茎のつるぎ。
少し悲しげな小鳥の様子は見てはいても、声を伝えることもしなかった。]
君自身が望まなくば、精が君に生を与えた意が、本当にあるか?
ベアトリーチェ。
[茎を持つ手には、そこから蔓が巻きつく。
それは決して、離さぬよにと。
人の子の名を呼び、苗床は静かに、見る。
――その左に持った剣を、たっと駆けてかの女に刺すよに。]
無駄だアマンダ。
少女は、己の望みのために動くと言った。
ティルも、己の望みのために動くのだろう。
[アマンダへ放ったものは、致命的な傷を負わせる意図は無く
ミハエルはそんな己を自嘲。少し笑う。
アマンダへ、その後ろのベアトリーチェへ向けて歩く。]
だからそこを退け。
…ダメ!
[大地へと手を当て、鉱物の盾を生む。
けれど結界を司る氷の精霊には敵わない。盾は砕かれ、威力が落ちた刃を払うも腕には深紅が咲き、足は縫いとめられる]
ダメだよ、無理に奪っても、またきっと繰り返される!
[哀しげな叫びはきっと届かないだろうけど]
ああああ、もう!
だからそういう時は僕にも言えと、何度言ったら!
[文句を言いつつ慌てて外にでようとした時、
後ろから寝ていたはずのダーヴィットに追い抜かされ
扉を空けるとそこは、紅き竜が黒耀の空を飛ぶ姿]
…ダーヴィットさん
[一瞬足が止まるが、直ぐに我に返り。
地面を蹴って、家並みの上を飛び上がる]
―…→遺跡―
[少し意識がコエにそれていたからか、
軽く光の刃にはじかれて。
バランスを取るために、蔦が動く。]
っ――
君は、本当に望んでいるのか、フィロメーラ!
[目は、真摯な光をもって、精を睨むよう]
[アマンダは、ミハエルの表情に戸惑う。
精霊として彼の言い分が正しい事は、わかってはいるのだ。
けれど――]
私は――
[ミハエルへの言葉は、辺りに満ちた澄んだ光にかき消される]
[長く伸びた髪は金糸の如く、
頭を覆う羽根兜と身に纏う甲冑、
そして手には銀に煌めく剣と盾。
閉じられていた双瞳が開かれれば、
その黄金には意志の光が宿る。
――其は名も無き天聖なる君に仕える、戦乙女(ワルキューレ)]
[彼女は溢れた力に押され、地に転がった少女を庇いて立つ]
「……ええ、望みました。」
[その声は鳥の時と変わらず、鈴を転がすかのように。
しかし其処には感情を押し隠すような響きがあったろうか]
[赤い翼ははためいて、青い瞳はそれを見つける。]
輪のなかに戻れぬから、その輪を壊すつもりなのか?
[小さな少女と小さな鳥に、静かに竜は問う。]
今もか?
[庇い立つ姿に、苗床はも一度問いかける]
今も、それを君は望むか、精よ。
かの女が、何も望むことのない状態で、生きているのだと君は言うか?
そう動かれて、本当に君はそれを望んでいるのか?
[人の子を一度見、苗床はじっと金の目を見つめる。
隙は、ない。
頭の片隅で警告が鳴る]
…子供の姿であるうちに、人の器に留まっているうちに仕留めて置けば良かった。
[アマンダへ答えることはしないまま]
[彼女の目の前で、凪払うように腕を振るった
腕には、鋭い氷の爪。それで、遮るものを斬り払うように]
[翠樹の問いに、彼女は揺らぎを抱こうか]
「全ては、食い違ってしまった。」
[金の眼差しは静かな光を湛える。哀しみにも似た]
「私は彼女の望みを叶えるために動いていた筈なのに、
何時しか私は、……私の望みの為に動いていた。」
[溢れる光にそちらを見上げる。
眩しいほどの天聖の気。
そして現れたのは――戦乙女(ワルキューレ)。圧倒される]
……!
[けれど、
氷の精が刃を転がる子どもに振るおうとすれば、大地を蹴って]
――させない!
[変じた姿は、大人程の大きさの、額に薔薇色の石を乗せた獣]
食い違っていることに気づいても、君はそれをやめないのかい、フィロメーラ?
[聖なる精に、しづかに尋ねる。]
君は、それに気づいても、
変えられなかったのかい?
……君の手はかの女に届いていたのに。
―遺跡―
[上空から皆の姿を見つけ、降り立とうとした瞬間、
あふれ出した光の奔流に煽られて。
なんとか苗床の横に着地して]
あんた、ベアトリーチェを見捨てる気なのか。
全然良くないよ!
[戦乙女に抱きかかえられた少女の姿を見た瞬間、
ふつふつと今まで感じたことの無い怒り。
――ぱりん。何かが砕ける音がした。]
「止める時は、私が消える時。
そしてそれは、ベアトリーチェの死を意味する。」
[戦乙女とて、竜と魔とを同時に対処するのは困難か。
自ら動きはせずに、警戒の態勢の儘]
[風がぴたっとやんだ]
[只でさえ制御の仕方を知らない少年。
全属性の集結。鍵の書の封印。影輝王の結界。
不安定な要素の中、なんとか今まで
ぎりぎりで支えられてきた絶妙なバランスが。
対の大地のゆらぎのせいだろうか?
それとも怒りのせいだろうか?一気に崩れた。
拘束された足かせが壊れ、一気に解き放たれる]
[青い瞳は戦乙女と、苗床を見比べるようにして。]
…君が引き留めているから、彼女は還ることも、生まれることも出来ない…。
[その言葉は、どちらに向けられたのか?]
それならば君が消えぬように、
今このときを、ずっと生きればよかったじゃないか。
[かなしむように、そう告げて。
となりに降り立った、風の子の姿。
ちらりと見やって、また精を見やる]
何故、そんなに多くを望むのだよ。
精であるのなら、何故。
僕ら魔の者よりも、君は、君らは……理を大切にするのではないの?
その子供がフィロメーラとやらの望みを叶えようとする限り、事は終わらないというのに
[土の精霊が額に抱いた石は硬く
弾かれた爪は砕ける]
愚か者が…!
[叫び、]
[新たな氷の剣を造り、アマンダである獣へ突き立てるべく振り下ろす。]
[疾風]
[ふと耳に入る言葉に、反射的に叫ぶ]
死は終りではないよ。
大地で眠り、また新たな生の糧となる。
生きている時だけが全てではない。
誰かの墓場は新たな生を育む揺り篭となるのだから。
[それでも、氷の精から少女を守るように動かない]
[最初は、少女に外の世界を見せたい。それだけだった。
けれども彼女は、自分の望みに気付いてしまった。
余りにも単純で、そして自分勝手な]
「――私はこの世界が、嫌いだから。
秩序の王が棄て去った、この世界が。」
[口許には自嘲の笑み。理を守るべき精霊は、理を厭うたのだ]
[ゆらり。ゆら]
[...の背後にぼんやりと人影が浮かんでいる。
それは、男性にも見え、女性にも見え。
幼くもあり、年齢を重ねたようにも見え。
何者でもあり、何者でもなく
何にも規定されない、自由を愛する存在]
[もしこの場に影輝王がいたら
...と同じ蒼き髪の存在に
懐かしさを覚えたかもしれない]
[こどもはぎゅっと書を抱きしめながら、皆の言葉を聞いています。
なにが正しくて、なにが間違っているのか、わかりません。どこで食い違ってしまったのでしょうか。
荒れ狂う風に眼を瞑ります。けれども書の力か指環の力か、それがこどものからだにまで届くことはありませんでした。]
君は。
他の誰がこの世界をすきでも、
生きているほかの誰かが、好きでも。
決して喪いたくないと思っていても。
君は、滅びを願うのか……?
[ユリアンのそばの、その存在に。
気づいていても、いたとしても。
自らの言の葉に、自らの望みが、
少ししくりと痛んでも。
決してかの精より目を離すことはない。]
[怒り、哀しみ、痛み、こどもにはわからない、たくさんの感情が、辺りに溢れていました。誰よりも近かった筈のフィロメーラの心も、離れてしまったからでしょうか、今はわからなくなってしまっていました。ただ、ひどく辛そうに思えました。]
…ならば尚更、裁かねばならぬ。
【力】の流転を守るが、竜の勤め!
[口腔に力が凝縮する。
その火気は、吐息を幾千度もの炎へ変える。]
[制御出来きれてない風は、
敵味方関係なく吹き荒れる。
突然、背後の影が消える。
その瞬間、無秩序の風が収束して、
ベアトリーチェとアマンダに襲い掛かる]
[風は二人を取り囲むように吹きかかる。
二人を外からの攻撃から守るように]
[アマンダは振り下ろされる刃を見つめたまま、動かない、動けない]
だって、聞いてない!
ベアが何を望んでいるのかを!
[耳に届いたフィロメーラの言葉に、思わず振り向き叫ぶ]
フィロメーラ! 君は!
ベアと出逢った世界(こと)も否定するの!?
[迫り来る刃を忘れ]
[何かが、歪んだ。それは彼女の表情か、心か]
「……滅びは、創世に必要な事。」
[迷いを断つように、戦乙女は剣を振わんと。
しかしそれは、一瞬の注意が逸れたうちに放たれた、竜の火炎に止まる。彼女だけなら避けられよう、少女だけでも書と指環の力があれば護れよう。しかし、それはあくまで一つの存在なればこそ。分たれた今となっては――]
[彼女は剣を振う事を、避ける事を選ばず、盾を翳す。
しかし力を有した盾なれども、本性を表した竜の火炎を完全に遮断する事など、出来る筈もなく。灼けつく炎は、鎧を纏った彼女の身を焦がす]
フィロメーラ!
[わずかなゆがみを持った精に、
火の竜の炎が襲い掛かる。
思わず名を呼んだのは――
かの精が望むは、本当は自らも望んでいたからかもしれないからか。
かの精と自分が、似た存在であると思っていたがゆえか。]
[刃は砕け]
邪魔を
するな…!
[叫びは咆哮に変わり
少年の姿は白い狼に変わり]
[アマンダの頭上を軽々と飛び越える。]
[その一瞬、ユリアンを睨み付け]
[こどもを取り巻く風は、フィロメーラにまでは届きません。眼の前で、もうひとりの自分とも云える存在が火の中に包まれてゆくのが見えました。]
……フィロメーラ!?
[ふつり、なにかが弾けるような感じがありました。]
本当に、馬鹿だよ、フィロメーラ。
君は。
[火の舌が焼いたかの精に、苗床は呟くように言う。]
……過ぎた願いは身を滅ぼすというに。
[少年の姿が白き狼へと変わる。真冬のような輝く真白]
…っ、ミハエル!
[頭上を越える白き狼。向かうは少女。
跳躍では間に合わぬと、身体をしならせ長い尾を振り払う]
[氷の精が飛び掛るを見るも、
その風の力が強きを知るからか]
書を、渡すんだ、ベアトリーチェ。
封をしなければなるまいよ。
それがなければ、君のフィロメーラは、こうならなかったのだから。
[それだけの大声をあげたのは、初めてのことでした。頭の中は、まっ白でした。護りの風からも抜け出て、書の力も指環の力も使うのを忘れて、炎の収まらないその中に――フィロメーラのもとへと、駈けだします。]
[火の中にかけこむかの女を、
追うかは悩む必要はなかった。
かれはただ願う。
苗床は、強く願う。
書を、鍵を、
この手に入れることだけを。]
ベアトリーチェ、行くな!
危ない!
[風の守りより抜け出た少女に慌てて
旋風で絡めとろうとも、すんでのところで間に合わず]
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10] [11] [12] [13] [メモ/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新