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大地竜 ザムエル に 5人が投票した。
精神竜 アーベル に 2人が投票した。
翠樹竜 ベアトリーチェ に 1人が投票した。
大地竜 ザムエル は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、機鋼竜 エーリッヒ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、流水竜 ナターリエ、生命竜 クレメンス、精神竜 アーベル、影輝竜 ノーラ、氷破竜 ブリジット、翠樹竜 ベアトリーチェ の 6 名。
/*
役職的に結界送りは投票でしか出来ませんので、剣を奪って送るなら襲撃と投票を逆にお願いしようかなと考えていました。もちろん、大地殿と機鋼殿のお許しがあればですが。
不機嫌ならば此方は奪おうと腕輪を掴んではいましたが、奪えたかどうかはザムエル殿次第です。
墓下で続きをするのもありですが、とりあえず方針を決めないと地上の方を待機させてしまうので、ずずいとご意見願います。
[ノーラの顔半分の闇と、蛍火のような目には少しだけ驚いた。
驚いたが、特に奇妙だとかは思わなかった。]
へぇ、お前さんそんな顔してたんか。
初めて見た。
おまえさんだって、他人に与えてる物はあるさ。
ただ写すだけの影に子供は懐かねぇよ。
小さいのは素直で正直者だからな。
[へらり笑って。視線は別の方向へとうつる。
向こうはどうなったか、ここからは見えない。心に声も落ちてこない。
頭の痛みは、まだ若干残ってはいたが。
口から出る溜息は、身を案じるそれ。]
/*
奪われたく無いなら無理にとは申しませんが…。
ただエルザ殿と被るかなと。(剣持って不機嫌で結界送り)
物理的にぶちのめせる竜材は既に結界内でした。
御期待に沿えず申し訳ない(苦笑)。
機鋼殿のご意見を待ってみます。
/*
ザムエル殿からの返答がありませんが、奪って吊り襲撃を逆にさせていただいていいのかな?
また村側天孤側が奪い返すもありですし、そろそろ時間が。
影は闇と光より生まれるから。
< 続く言葉には、そうかな、と短く呟いた。思案の色。
指先は頬の在るべき場所より奥に潜る。
其処には何も見えないのに、何かが蠢いていた。
視線が転じられるのに合わせて、揺らめく螢火の眼。剣に宿る影輝の力を、近しく感じる >
……お前は、行かないのか?
< 写しを残して、問いを返す。
* どうであれ、導かれるように動くのだが *>
―東殿・回廊―
なるほど、理に適ってると。
[思案の様子と蠢くものを、軽く笑い見据えて。
問いには緩く首を振る。]
気にはなるが…約束守るのが先だ。
一旦、向こうに行ってくるわ。
また後でな、ノーラ殿。
[へらり、ノーラに何時もの笑みを向けて。
揺らされた男はその場からゆらと、消えた。
後には僅か、琥珀の光が舞い残った。]
――…、?
[それは仔が影竜殿の名を告げて、一寸の後であった。
…否、もしかしたら一寸も無かったやも知れぬ。
強い力は幼子と云えどもしかとその身に感じたか、時空の気配に眼を見開く。
話には聞けど、私を含め事実目前で見たのは初めてであった。
降りかかる力の行く先を知れば慌てたかの様に、機竜殿へと躊躇い無く短い手を伸ばす。]
――エーリ、…っ!
[仔は咄嗟に名を呼べど、其れ如きで食い止められるものではない。
さては手は愚か、声が届くよりも先。
強い力に包まれるかの様に、機竜殿の身体はその場から*消え失せた*。]
―東殿/回廊―
[腕輪に流し込まれた精神の力が、大地の老竜の一瞬飛んだ意識の隙を突いて暴れ狂う。強く握りこまれた腕輪から老竜の指を引き剥がす事は敵わず、青年はその手の甲へと噛み付いた]
――…っ!
[そうして、噛むだけでは足りぬ傷の痛みを増幅して送り込む。
神経に直接与えた痛みが老人の指を痙攣させた、その僅かな緩みを突いて無理矢理に奪い取り、同時に結界内へ送り込んだ]
[結界内へ送り込まれた老竜の意識が言霊に飲み込まれていたかどうか、青年にはわからなかった。
制御しない力の連続使用と、心の力による送り込み。
そして剣の所有者が移り、今まで大地の竜が感じていた剣の暴走が青年へと襲い掛かる]
っぐ…あ…っ!
[無理矢理に押さえ込もうとするも、仮契約すらない青年に容易い事ではなく。逆に心を揺らされて結界の維持が危うくなる。
剣か、結界か。
どちらも青年は失うをよしとせず、結果、自身の心を凍らせる事で腕輪の封を試み――…]
―西殿結界内・中庭―
[さてノーラとは別れれば、うっかり転移先を誤ったようで。]
…ありゃ。外?
[出てきたのは噴水より少し離れた所。
きょろり、辺りを見回して。
現状位置を把握して。
あれ何か竜が多いですよと気づいたが瞬間。
一目散に、ダッシュして建物の中に、逃げた。
それはもう素早く黒虫のごとく。]
?おい、アーベル!
[掠れて途切れた言葉に声をかけるが、返事は無い。
かすれた声から聞き取り難いかったが。
剣を、手に入れたのかそれとも。]
…やられたか?まずいな…。
[こちらが手にする鎖、せめてこっちは確実にオティーリエに渡しておきたいが。
さて背後にエルザが追いかけてる中、どうやって渡すかと。
走りながら手を顎に当てて考える。]
―東殿・氷破の部屋―
[幾許かの間、気を失ってしまっていた氷破の竜が、ようやっと目を覚ます
……ッ、くう……。
[頭に手を当て振りながら、身体を起こす。
後方には、身体の節々を凍て付かせた水竜の姿が見えて]
――ナターリエ!
[慌てて周りの術を解く。
氷の壁やそのかけらは、水にはならず、霧散して行き]
……、ごめんなさいね。剣を守るのに夢中だったとはいえ……。
[そう呟くと、ナターリエの身体に触れて]
―東殿・氷破の部屋―
[壁に手を当てながら、ゆっくりと立ち上がり、廊下へと出て行く]
そう、遠くまでは……、いえ。
遠くまで逃げていてもらいたいのだけれど……。
[ふるり、頭を振るいながら、壁伝いに回廊を進んでいく]
―西殿結界内・回廊ダッシュ―
[エルザが追いかけてくるのに気づてか。
大人しくオティーリエの元へは向かえない。]
しくったなぁ…あれか、これも剣の影響かそれともおおっと!
[すぐ後ろに手があって、慌ててかわした。
ふたたび本気で走れば距離はまた少しはなれ。
走ってる途中で、感じるのは対の一つ。酷く、弱っているような気配は在るが。」
―西殿結界内・回廊ダッシュ―
って、こりゃ…エーリッヒか?
[アーベルはザムエルの方に向かっているはず。
だとしたら、これは不機嫌で送られたのだろうかと。
それとも少し前、言った通りに先にエーリッヒを送ったのか。
考えていたら再び距離は縮みはじめ。
エルザの声は辛うじて届いたか。]
あぁー?刺激?
[まだ足は動く動くが。]
< 散る光を黒の瞳に写し、暫し眺めた後に歩み出す。
石の影響を受けた所為か、少し、眩暈がした。
直接対峙したものよりは、格段にましなのだろうが。
平時よりも遅い足取りで、精神の力に霞む影輝の残滓を辿り――違和感 >
……、消えた?
< 小さく声を上げる。
それでも感じられた場所へと向う。
一室から、微かに冷気が漏れていた。倒れる影は、流水の竜だ。
一瞥してからその先を行くと、壁を頼りに歩く歳若い女の姿。実際には、幾つも歳を重ねているのは知っている >
ブリジット。
< 静かに、声を投げた >
―西殿結界内・回廊ダッシュ―
[走りながら聞こえたダーヴィットには。]
悪いけど、エーッリッヒのは癒し実行済み!
無機物領域は無理ー!
一旦時空のに、内側の時止めて仮死状態にでもしてもらえ!
ダーヴィットは、悪ぃがもうちょい待って!
[走り出したら止まらない、ではないが。
流石に剣を持ったまま、ほかの事に手をかける事は出来ない。]
―東伝・回廊―
[壁伝いに幾らか歩いたところで、背後から声を掛けられてはっと振り向く]
……ノーラ!
無事だったのね。良かった……。
[ほぅと安堵の息を零し、微かに笑んだ]
―西殿結界内・回廊ダッシュ―
意志?ああ、そういや何か言ってたっけか。
壊れるって、剣がかー?
だったらノーラ殿あたりは喜ぶだろうなぁ!
[へらへら笑いながら、全く微塵も深刻さも反省の色もない。
エルザの問いには、緩く首を振った。
走りながらだが。]
おいさんの望みは…。
[言いかけて、一旦沈黙。]
今は、望んだ先が見て見たいわな。
果てには何があるのやらーっと。
[走れば琥珀が後に続く。ちらり、ちらりと薄く光り。]
< 無事を喜ぶ様子に、知りはしないのだと悟る。
しかしそれを表には出さず >
……一体、何が。
< 彼女の傍へと寄り、僅か左に顔を傾けた >
―東伝・回廊―
[ゆるりと一度首を振り、]
どこから説明すれば良いのか分からないけれど……。
[口元に手を当て、悩ましげにして]
……アーベルが、揺らされたものだった。
それで剣を狙って、さっき襲ってきたの。
この際だから……大丈夫よね。
ザムエルが、剣を持っていて、それで……そうだ、彼の姿は見ていない?
[影輝の竜へと、尋ねた]
―西殿結界内・回廊ダッシュ―
[琥珀は、何かを捕らえたようにクレメンスの周りを舞い。
ぉ、と小さく何か言った所で。
エルザの手が伸びる。丁度腰のあたりの布をつかまれ。
たところで足払いの風がクリーンヒット。足が華麗に縺れて前に転がった。
エルザを巻き込んで。]
だあああああ!!
[ごろごろ二人で一緒に転がりながら、突き当たりの壁にずどん。イイ音が。
この場合、きっと一番可哀相なのは卵姫だと思われる。
おっさんはやっぱり3秒で立ち上がるわけなのだから。]
いえ。
< 左右に首を振る。嘘ではない。
沈黙を一拍置き、ブリジットの進んでいた方角に眼差しを向けた >
ザムエルが所有している事は、知っていました。
影輝の気配が感じられましたから。
そして、今は――感じられない。
―東伝・回廊―
……逃げられなかった、か……。
[もっと早く、色々な手を打てれば良かった。
そう悔やんでも、今はもう遅い。水竜が言っていた通り、これからが大切なのだと
自分に言い聞かせて]
剣の気配自体が感じられないということは……、どこか遠くへ行ってしまったのかしら。
―西殿結界内・回廊突き当たり―
おっとこりゃ失礼。
でも原因はそこの風竜だからね!
[したたかに頭を打ち付けて、きゅぅと倒れこんでいるエルザの頭を、労わるように軽く撫でた。無論癒しは入れてあるが、揺れた頭の中身まではすぐに戻らないだろうか。
その間、怒涛の勢いで近づいてくる疾風の竜。
一瞬、視界からは消える。そしてジャンプした瞬間、上を見上げれば目が合っただろうか。]
…残念。ここでフェイントは悪手だぜ?
[ぺろりと舌をだし。その場から、瞬時に掻き消えた。]
まっすぐ首を取りに来るのが正解だなーという声と、琥珀の煌きだけがその場に残された。
わからない。
剣の存在そのものが分かるわけではないから、
力が抑え込まれただけかもしれない。
< 先程まで首飾り――もう一振りの剣を有していた腕を掴む。
黒布の下の手は、傷痕こそないものの、痛みを残していた >
ともかく、行ってみましょう。
残滓は辿れる、筈。
< 言うなり、先へ進もうと一歩踏みだす >
もし、二つが手に渡れば、どうなるのでしょうね。
―東伝・回廊―
……お願い。
もしかしたら、まだ何か対応できるかもしれないから……。
[こくりと頷いて、先に進みだした影輝の竜へと続く]
二つが、揃ったら――
確か、一つになるんだったかしら?でも、殆ど扱い切れないと……
……世界の終わりでも、やってくるのでしょうかね。
―西殿結界内・何処かの部屋―
[居所がすぐに知れたのは、おそらく部屋にかけられていた封印のせいだろう。自身の対の一つ。その残滓に引き寄せられたかのように、部屋の中央に突然現われて。
窓際のオティーリエに情緒の欠片も無く飛びついたのは、最近飛びついてなかった分が多分に含まれております。
確かめるように触れたら。
まぁとうぜん床に沈められたわけだが。]
< 揺れる焔が積み重なった惨劇の跡を照らす。
生まれた影を踏み、影輝の力を遡る >
終わりが訪れれば、次は、始まり。
今の理のない、新たな世界がつくられる――
< 確証のない、疑問交じりの科白。
氷破の竜よりも、歩みは幾らか速い >
そうであれば、良いのに。
< 距離は幾らか離れつつあった >
―東伝・回廊―
終わりと始まりは、表裏一体――か。
[幾分歩く速度の早い、影輝の竜の後に続きながら]
……もし、そうだとしたら。
新しい世界が見れなさそうなのは、残念ね。
[ゆるり首を振り、少し開いた差を埋めるべく、早足になる]
終わり自体は、恐ろしくないですか?
< 不意に、振り向いた。
その瞬間、詰まりかけた距離、
足下で揺らめくのはブリジット自身の影 >
―東殿・回廊―
[急に振り返られ、ブリジットは瞳を瞬かせて]
ああ、そうね。
なんだか、気付いたら終わってそうだったから。
痛かったり、苦しかったり、熱かったりするのは、ちょっと難儀かしらね。
[井戸端で話すかのように、どこか苦笑めいて呟いた]
この世界には、良いところもある。
……良いところがある分、その裏には悪いところもあるのだろうけれど……。
[心竜の青年の事を思い出しながら、呟く]
―西殿結界内・何処かの部屋―
まーた痩せてきてないか?肉食ったか肉。食堂ちゃんと行けよ?
[へらり床に沈んだまま笑う様子に、相変わらずの月闇の対応。
立ち上がり攻防はいくらか続いたろうか。
調子にのっているのは、きっと二人しか居ないから。…というよりは、少々気が抜けたからか。
まぁそんな些細な違いは、オティーリエには限りなく関係なくどうでもいいことなのだろうが。
いい加減青筋どころか殺気以上の何かががはっきり見えかけてきた所で、危機感感じて離れ逃げ。服の中に入れておいたものをテーブルに置いた。
直接渡さなかったのは、なるべくなら触れずにいたほうがいいという思いの表われか。
先ほど受けた頭痛は、まだ鈍く頭に残っている。
それは、けっして表に出しはしないけれど。]
ノーラ殿からお土産だ。取られないように気をつけな。
…んじゃ、聖魔剣、任せたわ。
[ひらり手を振りながら…アーベルがやられたかもしれない、とは言わなかった。
何事かを聞く前に、再び姿は消える。]
……そうですね。
全ては表裏一体。
光があるから闇があるように。
< 氷破の竜の足下の影が、地面から剥がれ宙に浮かび上がる。
ブリジットそっくりの姿を象った黒は、ゆらゆらと揺らぎ、形を変える。一時大きく膨れ上がり、ぐるりと渦を巻いた。主たる彼女に襲い掛かるような動きを見せるも、一時視界を覆ったのみで、直ぐに霧散する。
灯りをともす焔は弱まり、光と闇の境も縮まる。
影も大分、薄らいでいたようだった >
自身が消えるから、ではないの。
< 何事もなかったかのように、言葉を続ける。
今まさに、消えた影を見詰めながら >
ひとりの力で為せることなど、知れているのに。
―東殿・回廊―
[己の影に、目を瞬かせて。
影が襲い掛かるように見えると、僅かに身構えるも。
間も無く霧散して、目の前に再び、影輝の竜の姿が見えた]
ああ……自身が消えてしまうから、か。それもありといえばありね。
[苦笑して呟き、そして続けられた言葉に、こう答えた]
そう。ひとりの力じゃ出来ることなんて高が知れている。
だから、手助けする。協力しあったりもする。
[少し目を伏せ、呟く]
それが第一に来るとばかり。
< 実を言えば、襲う気はあった。
それを止めたのは、力が足りなかったか、自身の意志か。
真意を口にはせず、前へと向き直る。
影もまた、いつの間にか、ブリジットの足下に還っていた >
剣の力を使わねば叶わない程の願い、
どれだけの者が集わなければいけないのか。
< 掌に視線を落とす。
願いの事など、ブリジットは報せていない筈だった >
―東殿・回廊―
よく変わり者と言われますから。
[あまり理由になっていない気がしたが、それでもそう返答し]
……そうですねえ。
願いの種類にもよるとは思うけれど。
願いが分かれば、誰か叶えるのに適した人も、居たかもしれない、とかね。
……奇麗事過ぎるかしらね、色々と。
[眉を寄せて、苦笑気味に呟いた]
綺麗事に救われる者も、居るかもしれません。
……眩しいとも、思うけれど。
< 独りごちるように言うも、前方に発見した姿に警戒も薄く歩みを速め、その傍に膝を突いた。意識は無い。しかし、手には、しっかと握られた黒の腕輪 >
―東殿・回廊―
[最後の呟きは、微かに聞き取れず。
影輝竜の後を追うように、早足で向かう]
……腕輪がある、という事は……。
[老地竜の姿を思い浮かべ、辛そうな表情を浮かべる]
手から……外せそう、かしら。
剣にしては、力を感じな――…
< 氷破の竜より先に手を伸ばす。彼女に渡さないために。
しかし結果として、それが仇となった。
青年の心によって、剣の力が抑え込まれていたとは知らず。
触れた指先から流れ込むのは、その一端。それも己に近しい影輝の属と、混沌を齎す精神の属。暴走のひとかけらを受け、弾かれるように手を引いた >
……、っ…………!
< 伸ばしたのが、聖魔剣を手にしていた方であったのも、悪い方向に運んだか。
剣の怒りは暴走を促進させ、体内を駆け巡る。
腕を押さえ、身を縮こまらせて目を瞑った >
―東殿・回廊―
ノーラ!
[影輝竜の手が弾かれるように、腕輪から離れる。
その後もうずくまるように身を縮みこませ、目も伏せられて]
……ッ、何が……力を押さえ込んでいる?
暴走をか、それとも剣自体をか……。
[そこまで呟いたところで、首を振って]
大丈夫?ノーラ、ノーラ!
貴方は私を罰するか……
< 低く、抑えた呟き。
ブリジットを振り仰ぐと、微かに右の髪がずれる。
螢火の瞳が明滅していた >
触れては、いけない――
―東殿・回廊―
罰する……?
[眉を寄せ、倒れている心竜を見やったが、直ぐに首を振り。
影輝竜を見ると、蛍火を思わせる瞳が、闇の中から覗いていた]
触れては――、剣が暴走しているから?
[忠告は聞き入れたが、それでも焦る様にして]
< 今は黙して答えない。
剣もまた、伝える言葉を持たない >
暴走、しているだけならば、影輝の力は容易に感じ取れるはず。
ゆえに恐らく、封を施されているものと。
これ以上、下手に働きかけるのも、危ういかもしれない。
< 確証を取れぬ侭に呟く。他の手に渡らぬための言も混じって吐いたが、あながち間違いでもないだろう。
根幹から揺り動かされる感覚。
果たして、剣の暴走にのみ因るものか。
灯りのつくり出す影が、先とは異なり、意図せず蠢いた >
―東殿・回廊―
そう……、そちらは今は、良いとして……ッ。
ノーラ、貴方は大丈夫なの?
[そっと身体に触れようとするだろうか]
< その手が触れる刹那、人の容を保っていた姿は崩れ、以前に混沌の欠片の模した黒の塊と似たものになり、腕輪を手にした精神の竜の影に溶け込んだ。
まるで泉に石が落ちたかのように、*黒の波紋が起こる* >
―東殿・回廊―
――ッ!
[ノーラの身体が、影の塊のようなものへと変貌し、心竜の影へと溶け込んだ。
まるで水紋のように、影が揺れたかと思えば、間も無く収まり、一つの影となった]
……、……ノーラ。
[名前を呼ぶも、反応は無く。
暫くの間、心竜の青年をじっと見つめていた]
―東殿・回廊―
一先ず……他の者を探して、集めましょう。
[一番気掛かりなのは、翠樹の仔。
騒ぎに怯えて、どこかで泣いていなければ良いがと、その場を後にする。
ちらり、一度だけ振り返り、呟く]
……貴方の願い、伝えて欲しかった。
[心竜にも、その影にも聞こえはしないだろう呟きを残して。
ブリジットは、翠樹の仔を探すべく、その場を*後にした*]
―東殿・回廊―
[さてオティーリエに聖魔剣を渡したのには理由が二つ。
一つはアーベルがそれを願ったこと。
二つは自身が持つには手に余る事。クレメンスには『守る力』が無い事と、それほど剣に執着していない為下手をすれば他の誰かに渡してしまいかねなかった事。
三つはオティーリエの部屋を去った場所、向かった先にある。
一つ増えたが気にしない。
アーベルの傍から少し離れた場所に、姿は現われた。]
…アーベル!
[倒れ伏せた竜に駆け寄り、身体に手を触れる。死んではいない、が。酷く消耗している。琥珀が集まり、回復を促すがどれほど効果があるだろうか。]
怪我、じゃねぇな。精神的な疲労か。
爺さまから剣を奪うのに難儀したようだな。
[ちらと、その手にしたものを見るだけで触れはしないが。
感じる頭痛は、腕輪に近づけばより酷くなるような感じがした。]
―東殿・回廊―
[ちらと、その手にしたものを見るだけで触れはしないが。
感じる頭痛は、腕輪に近づけばより酷くなった。]
…エーリッヒが言っていた影響ってのはこのことかね。
[軽く眉を潜める。
最後まで三対残り辛うじて安定を保っていた心命機の一つも崩れた。
自身への影響も少しずつだが出てくるだろうか。おもに内側に。]
―東殿/回廊―
[崩れ落ちてからどれ程の時間が経った頃か、青年の傍らに生命の竜が現れた。体に触れた手から回復を促す琥珀が生まれ、青年の赤に染まった手の内を癒していく]
………ぅ…
[微かに眉を顰めた青年は、それでも目を覚ます事はなかった。
体は癒されても精神の消耗は現在進行形で続いている]
[それが危うい均衡を保ち、やがてゆっくりと均されていくのは影に解け込んだ影輝の竜の影響だろう。
『神斬剣』が帯びる属性の精神と影輝、二つの竜の力は天秤のように揺れながら釣り合いを取り始めている。何かのきっかけがあればまた容易く安定が危うくなるとしても]
―東殿・回廊―
起きたか?…ん、まだか。
まぁ…ここじゃ回復するモンも回復しないかね。
[よいしょとアーベルの左手を引き、背中に乗せるようにひっぱりあげて、背に担ぐ。ついて来る影に違和感を覚えたが、今は放っておく。
少し離れた場所まで移動し、そこの部屋の寝台にアーベルを寝かせてから、自身は椅子に腰掛けテーブルに突っ伏した。
消耗してるのはこちらも同じだったり。疲れはだいぶ、溜まってきている。]
―東殿/回廊―
[傷は治っても、固く腕輪を握り締めた掌には赤が残っている。無理に開いて拭くのは無理だから当然だが。左手を引っ張られ背に担がれて運ばれる間もその指が緩む事は無い]
………。
[寝台に寝かせれた時、微かに唇が動いたが音は結ばれなかった]
―東殿・回廊―
[動いた唇は何を告げていたか。人の名前のように見えたが。
答えは微か届く声で知ることになるわけだが。
はぁと一つついた息は、少しだけ呆れも含んだろうか。
アーベルの頭を撫でて。]
…お疲れさんと。
こっちも、アレはオティーリエに渡しておいたぜ。
[その後突っ伏したまま、ちらとアーベルを見るが反応は薄い。
念のため心話で話しかけようとも思ったが、余計な負担がかかりそうで止めた。
表面上なら直ぐ癒せるが、心や疲労は領域外。
こればかりは時に頼るしかない。…時空のが居たら早く回復したろうか。]
一人じゃ補えるものが少ねぇよなぁ…。
[それでも某風竜には反則言われてるおっさんだが。]
―東殿/どこかの部屋―
[呆れの溜息はともかく、髪を撫でられて青年の寄せられた眉から力が抜けた。穏やかな寝顔とは言いがたいけれど、見守られている内にそれなりに安定してきた様子になっていく。
尤も、視線や声への反応は薄く、凍らせた心は溶けていないのだが。
そして時は過ぎ、やがて微かに左の指先がぴくりと動いた。右の手にも力が入り、既に乾いた赤が小さく剥がれシーツに落ちる]
……ぅ……、っ!
[ぱち、と音がしそうな勢いで青年の瞳が開き、側の気配――生命の竜を見る。その色は心の奥を覗く赤紫]
―東殿・どこかの部屋―
[自分も軽く眠っていたのか、どれくらい経ったかよくは分からず。
先に目を開ければ、呻きと、微かな動き。
開いた赤紫の瞳に、灰茶の瞳は覗かれるが、静かに見据え返した。
心竜は内の何を見ただろうか。
想いだけならば、騒動の原因である二竜主とした他竜への労わり、命竜としての性が。
過去を覗き見たならば――この世界とは違う風景が。
世界の崩壊。何が起こったのか、悟る前に全てが終わり。
一転、現在の世界。
どうしてか、生きながらえた二つは、だが異なる世界で生きることが出来なかった。
例えるなら二匹のクラゲが砂漠に落とされたように。世界と存在は合わず。
生きられないなら、共に世界で眠り合おうと。そう誓い合ったのに。
一つは、それでももう一つが生きながらえる事を望み。
世界とのバイパスの役目を果たし先に、消えた。
それからは、永い永い孤独の日々。
望郷と片翼への愛憎は、ゆっくりと殻に覆われ褪せてゆく。]
[赤紫の瞳に映ったのは灰茶の瞳、見えるのは生命の竜のしての労わり、そして覗いてしまったのは――…生命の竜の遠い遠い過去。
青年の目が見開かれ、その色は熱が引くように紫紺へと戻っていく]
………、えぇ。
おはようございます、クレメンス。
[心を凍らせていなければもっと動揺が表面に出たのだろう。青年は温度の低い声で静かに生命竜の笑顔から目を逸らした。覗いてしまった光景に、心の奥底では覚醒した『願い』が揺れる。
目を伏せて腕輪と指輪を嵌め、眼鏡は少し迷ったがかけずに青年は無理矢理に体を起こした。立ち上がる事は出来ずに壁に背を預けて寝台に足を投げ出す]
御迷惑をおかけしたようですね。此処は?
……オティーリエと、剣は?
貴方が此処にいるという事は無事と見ていいのかな。
[いざとなれば剣と彼女と共に結界を破って行くように――逃げるようにと伝えていたのだから、居るのならば無事なのだろうとの判断]
―東殿・どこかの部屋―
[心を覗かれたことに気づいているのかいないのか。
こちらはいつもと変わらずに、椅子を引き少し近づく。]
気にすんな。だいぶ消耗してたっぽいしな。
剣は変わりないか?
[ひらと手を振り、質問にはさぁと首を振る。]
どっか空いてた部屋だ。倒れてた所からはそんなに遠くねぇ。
[軽く、心に届いた声に頷く。]
ああ、どっちも無事だ。
聖魔剣はオティーリエに渡してある。
それから爺さまと…、エーリッヒが結界の中だ。
こっち側に残ってるのは、ナタ、氷竜殿、翠樹の嬢ちゃんとナギ、それからノーラ殿だな。
んで。これからどうするんだ?
[剣は手に入れた。あとはどう動くのか。
その先はクレメンスは知らない。
揺らされきっていない為なのも原因だろうか。
まぁ何をするにしても、おそらく暫くは動けないだろうが。
自分の消耗はまだ何とでもなる範囲だが、アーベルにかかっている負担は大きい。回復にはまだ時間がかかりそうだと予感した。]
―東殿/どこかの部屋―
[近づくクレメンスの足元に視線を落し、かけられた声に頷く]
はい、大地殿の意思はとても固くて。
過剰に剣へ精神力を注ぎ暴走させた分、その反動で宥めるのに力を持って行かれてしまいました。
――…今は小康状態のようですが。
[膝の上でしっかり握る黒の腕輪――『神斬剣』に視線を落す。
それが影に沈んだ影輝の均衡もあっての事であるとは、剣の持つ気配に紛れて気付けない]
―東殿/どこかの部屋―
[彼女と剣の無事、結界の中と外の竜達、そしてかけられた問い。
いつかは当然訊かれるはずであったそれに、青年は口元に微かな笑みを浮かべた]
二つを合わせ『真・聖魔剣』に。
――…そう言いたい所なのですが、この状態では少々難しい。
[口元の笑みが苦笑に変わり、生命の竜を見る。紫紺は覗き込みはしないけれど、その心の動きをいくらかは映す]
……貴方は、いいのですか?
[今更かもしれないが、止めないのか言外に問う。それは生命竜の心の奥を覗いたからこその言葉]
―東殿・どこかの部屋―
流石爺さまだぁな。頭も固けりゃ心も固ぇってか。
[へらり笑って、顔をみやり。]
無茶にはこの際多少目ぇ瞑るかね。結果よければ何とやらだ。
[それから視線は膝の上の黒い腕輪に。
腕輪の均衡に影が役立っているのは、こちらも気づいていない。]
[二つをあわせて一つの剣に。
以前そういえばそんな事を聞いた気がしたが。
今難しい、にはまぁそうだろうなと、肩を竦めて一度椅子からは立ち上がる。
同じ部屋であれば、以前氷竜に出した即席の茶でもあるだろうと探し、見つかれば湯を入れて一つだけもってきて寝台の傍のテーブルへと置いた。自分の分はない。
再び椅子へと腰かけて。
問いと共に投げられた紫紺の視線には、少しの間沈黙し。]
そうだなぁ…ああ、一つだけ頼んでいいか?
どうやって願いを叶えるか分からんが。
俺の願いは叶えないでくれ。
…無論降りるわけじゃねぇよ。
叶える願いが少ない方が、負担も影響も薄くなるだろ。
[答えの代わりの頼みには、さてどんな顔をされたか。]
[へらと、いつもの軽薄の笑みを浮かべ。
さも何でもないことをいうように口調は軽く。]
止めは、しないさ。
だが今は…世界の崩壊すら省みずに、渇望した願いってやつが叶った時の、その結末が見てみたい。
おいさんはよ、もう全部捨ててまで願いをかなえようって気持ち、薄いのよな。
何度か、その時の心持ちを思い出しはしたんだが。
[内側に埋めた過去は、殻を破って何度か鮮やかにその時の情景を、強い思いを呼び起こし、揺らされた。だが。]
それでも時間が経てば……すぐ色褪せちまう。
代わりに出てくんのは、姐さんやら兄さんやら、チビやら氷竜殿やら卵姫やらティルやらなにやら、そういうので。
…歳は取りたくないもんだな。色んなものが増えちまう。
[苦笑して返したその顔にあるのは、微かな悲しみと苦み。]
俺は、一番叶えて欲しい時に、願いを叶えられなかった。その手段が俺には無かったからな。
ただ時間だけが過ぎていって…その結果がこれだ。
今のお前さんらには、強い願いも、叶える為の手段と力もある。
全部揃ったら何が出来るか、何をするか。
…ま、止めはしないさ。
[それは、進むも引くもという二つの意味を含んではいたが。]
―東殿/どこかの部屋―
[暖かな湯気ののぼるカップに視線を落し、沈黙を待つ。
やがて返された生命の竜の頼みに、小さな声を上げて笑った]
願いを叶えない事が願いなら、叶えない事が叶える事。
ですが、貴方が言いたい事は違うのでしょうね。
[負担を減らす為と言われ、やはりという風に頷いて顔を上げる。
そして語られるクレメンスの言葉と心を静かに受け止めていく。
凍らせた心は揺れて、ゆっくりと溶けて、緩んだ封が腕輪の気配をよみがえらせていく。危うい均衡を保ちながら]
――…私の『願い』、オティーリエの『願い』――…
[青年の口元には、いっそ優しげな笑み]
止めないなら、止まる筈も無い。
私は――…『願い』を叶えますよ、クレメンス。
貴方が得られなかった機会を、手段を、手に入れたのですから。
[言葉と共に黒の腕輪をもう片方――左の腕に嵌める。
少しずつ心の封を説き、使える力を戻しながら青年は微笑んだ]
止めて欲しかったのかね?
だけど、そいつは俺の役割じゃねぇよ。
おいさんそんな若ぇわけでも、優しいわけでもねぇからな。
[穏やかな笑みには、快活な笑みを返して。
腕輪を嵌める様を見つめる。]
羨ましいよ、お前らが。
[それでも願いをかなえると、はっきりと口にした心竜に、酷く穏やかに微笑んだ。]
[クレメンスがオティーリエへ何を抱いていたかを、茶を啜る青年が気付いていたかは窺えない。
ただ、生命の竜の穏やかな笑みを見る眼差しは、凪いでいた]
―東殿/どこかの部屋―
[茶を飲み終えた後、生命竜が回復に努めるのと同様、青年も体を横にせぬまま浅い眠りについていた。
腕輪は今のところ所有者である青年を苛む事はなく、沈黙を保っている。それは精神と影輝のニ者が共にある為だろう]
――…そろそろ、動けるかな。
[二つの剣を一つにする為に、まずは邪魔をする力を持つ者を排除する必要があると寝台から降り立つ。上体が少しふら付いたが、壁に手を付く事なく姿勢を正した]
[そうして、浅い眠りの内に判断した自身の状態を手短に伝える]
剣と共に結界へ入るのは、今は無理のようです。
中でバランスを崩したら結界が弾けかねません。
ですから――…私の代わりにオティーリエを頼みます。
[彼女は無理をするから、と哀しげな眼差しで微かな笑みを浮かべ]
剣を手に迎えに行きたかったのだけれどね。
怪我をしたら呼びますから、それまでは彼女と剣を。
[頼みます、と信頼の心を寄せて前を向く]
二つの剣を――…一つにする為に。
[秘なる書の青年は禁じられた知識と、かつての友から覗き見た秘密を引き出していく。二つの竜王。天聖と影輝。
十五竜王は結界の中に、ならば代理の、または新たな――…]
探さなくてはな、エレオノーレ殿を。
[足元には*影*]
―東殿・どこかの部屋―
[声に目を開ければ、アーベルがすでに立ち上がっており、ふらつく様子は辛うじて見えなかった。見ていれば、後に頼まれた事には従わなかったろう。
続くように自分も立ちあがる。
何度も繰り返した転移と治癒、そして剣を持ったときの反動と、三対の一つが欠けた影響は、こちらは頭痛と自己の回復方面に出たようで。
失った体力の戻りが遅い。今も完全には少し足りない80%といったところか。
目の前のアーベルよりは大分マシだとは思ったが。]
ん、了解。
…できればずーっと休んでてほしいもんなんだが。
そうもいかないんだろうな。
[完治はしていない様子に小さい溜息はついて。]
オティーリエの方は了解したけど。
王子でなくておっさんだって知ったら何て顔すんだろうなぁ。
[比べなくてもおっさんが行った時点で酷い顔になるでしょう。]
…ま、お守りくらいはするけどよ。爺さんたちも気にはなるし。
それよか、早くお姫様をお迎えにきてやってねぇ。
…イザというときの例の件も、継続了解だ。
[へらりと笑い、声と心に応えた。]
―東殿・どこかの部屋―
まぁ無理すんな。
怪我でなくとも、何かあったら呼んどけ。
[決意するような声にそう言いながら、自分はその場からゆらりと消えた。]
―――。
[ぱちりと目を覚ました]
……?
[少しだけ、何が起こったか分からないように、周りを見渡していたが、はっと気づくと、その身を起こした]
大地の!?
氷の!?
[叫んで、辺りを見渡すが、誰の姿もない。
……それどころか、いやに静かだ]
……どういうこと?
全て、終わったのかしらぁ?
[ざわつくような流水の気配は感じない。
いや。流水どころか、どの属性の気配すら、いやに静かで―――そこで、ナターリエは自分の体に残っていた氷の力が全て消え去っていたことに気づいた]
治ってる……?
氷のが、治してくれたのかしらぁ?
[疑問に答えるものはいない。
今はただ疑問を解消する術もなく、ナターリエが部屋から抜け出した]
―西殿・オティーリエが居た部屋―
[一度来た場所、再び戻るのは簡単だったが。]
…居ない。
何処行った?あー、まさか食堂とか。…でもなぁ。
[回復の為にも食べておけ、とは言ったが。今剣はオティーリエが持っている。そのまま顔を出す事はないと思ったが。
剣の気配も無い。争ったような跡はないから、見つかったわけではなさそうだが。
何処だろなーと思いながら、暢気にふらふら、とりあえず食堂の方へ。
食堂といえば、腹ペコ竜が居る可能性だって高いのに。
色々懲りてない気もする。]
……。
[カツン……カツン。
と、嫌に自分の足音が響いた。
部屋の外へと出てみても、やはり、気配はほとんどしなかった]
終わっては……いなそうねぃ。
終わっていたのならば、ここまで気配がしないほうが、逆に不自然、か。
[ならば、昨日の結果はどうなったのか。
「揺らされている」精神を止めることが出来たのか。
はたまた、大地のが所有している『力ある剣』が奪い取られたのか。
もしも、まだ騒動は続いているのならば……誰が今度は結界内に閉じ込められたのか。
考えることは山ほどある]
さて……どうしようかしらねぃ。
[一人で考えてるならば答えは推測の域を出ない。
全ての疑問に答えるような証拠が存在していないのだ。
当てもなく、ナターリエは歩き続け……やがて、食堂へと辿り着いた]
……一先ず。
喉の渇きでも潤しましょうかねぃ。
[食堂へ入り、そのまま足を台所へ向けると―――]
―――水の、気配?
[もちろん、台所ゆえに水の気配があるのは当然だが、それ以外に、水の力を使ったような匂いを感じる]
何故、こんな所で?
[それは、オトフリートが聖魔剣の場所を隠すために仕掛けておいたものだったが、聖魔剣が結界内に移動した以上、それを知る由は、もう無い]
―西殿・回廊食堂前―
[ふらふら食堂付近まで歩いていけば、やっぱり中には人の気配。
入り口に立ち、聞き耳を立てる。]
……。
[いぶかしみながらも、トラップの類は存在していないのをナターリエが確かめ、まあいいかと無視して、適当に台所内を散策して、飲み物を見つけると、豪快にそれをラッパ飲みした]
……くはぁ!うまい!
[なんか、妙におっさんくさい]
それにしても、誰も説明してくれる人がいないのは困りますわねぃ。
[飲み物を片手に、ナターリエが適当にテーブルに腰をかけた]
うーむ。どうしようかしらぁ。
―結界の外―
[青年の気配は消せても腕輪のそれは消せないまま、結界の外へと歩み寄る。集中して剣がなく力を封じる銀を嵌めた右の指先を伸ばし、触れた]
………。
[ちり、と熱にも似た痛みに腕輪の気配が揺れる。
予想はしていたが、通り抜ける事は可能でも内部に入るのはあらゆる意味で危険と思えた。それでも試したのは万一の時の為]
< 海に抱かれるような心地がする。
それは生まれるより前、光と闇の合間を揺れていた頃に似る。
何も考える事なく、ただ、均衡を保つべく在った。
目も耳も口もなく、ただ、全てを写す。
遠く近く、静かな、声が聞えていた。青年の影が、滴を落とされたように微かに揺らめいたのは、灯りの所為だとでも思われただろうか。
名が一つ、紡がれる。
誘われる無い筈の瞳、一つめの眼を開くと、世界が見えた。
深い水の底に居るようで、遥か彼方の天を仰いでいるようだった >
―西殿・回廊食堂前―
[探知能力はやっぱり苦手というか。
そもそも琥珀色のあれを使わないと探知は難しいのに、アレ使ったら隠れているのがスグばれるので、使わずに中を声やら気配やらだけで探っていたわけだが。
つまりは、誰かが近づいても今は気づかない。]
―西殿・回廊食堂前―
[派手な音に、何事かと隙間から片目を瞑って覗き込む。
多分、この現状傍から見たら凄く怪しい。
辛うじて見え感じたのは、中央にエルザとザムエル。
手前にいるティルには、近すぎて逆に気づいてない。
とかやってたら背後に何か居た。]
うおぁ!
ちょ、ダーヴィットかよ!
ばっくりしたー。
[心臓に手を当てて引きつった笑みを浮かべる。]
< 仄かな光をともした瞳と、深い闇を象った瞳が天を視る。
此処が昏いのか世界が暗いのか、水面の向こうに在るのは黒の輪郭ばかり。
どれもが同じ色なのに、どれもが違っているように思えた。
届きそうな距離に、近しいものがあるような気がした。
それが、己が属を有した剣――今は腕輪であると、理解していたか否か。
求めるように、感覚の無い手を伸ばした >
―西殿・回廊食堂前―
ああそうだ、そういやお前さんも怪我ってたんだっけか。
ちょい貸し。
[言いながら、怪我部分―背に回り、動かない翼の根元に手を当てる。]
―西殿・回廊食堂前―
[傷はすぐに癒される。ちなみにこの時点で琥珀粒子が乱舞しているので色々アウトなきもしなくもなく。]
…あれ。今は回復させない方がいいんだっけ?
[とか思ったのは、ダーヴィットにひっ捕まえられた後でした。]
―西殿・回廊食堂前―
[扉が空いて届いた殺気に、捕まれていたが無理やり捻って体回避。ここらへんは条件反射に近いものが。
間に合えば、ダーヴィッドにロッドの矛先が向くのだが。]
―中庭―
[左の黒腕輪――『神斬剣』から影輝の属が揺らぐのが伝わる]
……あぁ、そこにいたのですか。
[足元へと伸ばされる黒い手に向かい、右の手を差し出す。
いつかの時のように、紳士へも淑女へも思える仕草]
―西殿・回廊食堂前―
[翼に当てた癒しは、あまり効いていないようで。
あーこりゃダメな部類だなとは感覚的に。
ダメな部類とは、エーリッヒの無機物だったり、呪いがかけられたような傷だったり、それから身体的に限界がきているものだったり。
ダーヴィットのは3番目のに近いかな、とか思っていたが。
がっつり捕まれて、わーい逃げたいなーと思っていた矢先にティルの一撃が身体を掠める。
身代わりはダーヴィットにお願いしました。合掌。
その拍子に手は離れ、すたこらさっさと逃げ出そうとしたら横薙ぎの一閃が。こちらは流石に避けきれずにクリーンヒット。
壁にたたきつけられる。]
い、って!
[背中と脇腹の痛みに軽く顔を顰めるが、それも直ぐに修復される。
それでも逃げ出す足は大分鈍ったが。]
< 触れる手。
水が湧き出るように、揺らぐ影は立体へと至る。
まるで青年とそっくりな、しかし、真っ黒な人形のように。
音もなく蠢き、其処から徐々にかたちを変えていく >
……考えてみれば、終わっていない、ということは、精神を止められてない、ということですわねぃ。
誰が結界内に囚われたか。『力ある剣』がどうなったのかは分からなくても、これだけは確実ですわぁ。
[くぴくぴと。
考えながら、飲み物を飲んでいく]
とは言え。
一人で相対するのは、無理がありますわねぃ……。
誰か、味方は残ってないのかしらぁ。
[最後の一滴まで余さず飲み干すと、空になった入れ物を適当に投げ捨てて、ナターリエが食堂から出て行った]
―中庭―
[自身の姿似のような影を、青年は口元に笑みを浮かべて見つめた。その瞳は真意を覗くように紫紺から赤紫へと変わっていく]
あなたの『願い』は――…何?
[エレオノーレ、と音なく青年の唇が紡ぐ。影ではなく個の名を]
―西殿・回廊食堂前―
[足が鈍れば風に適うものはなく。
腕を取られ馬乗りにされればあっさり床には倒れ伏した。]
ぎゃー。離してぇー。
[本気とはいえない悲鳴をあげれば、きっと怒りは煽られるか。]
――…、
< 紡がれる名。影はまた、容を変える >
“私”を知りたい。
< 右半身は暗い影の侭。
左半身は、皆の前で取っていた「エレオノーレ」の姿を取る。
影竜王の影であることを、旧き記憶の器であることを命じられ、僅かに王の姿を似せて象られたそれは、真に、己自身と言えるか定かではない >
ああ。
考えてみれば、水で探知すれば……って、床が乾いていますわぁ!
も、もう探知出来ない……。
私の栄光は短かったですわねぃ。
[大げさに、肩を落としてうなだれたが]
まあ、いいわぁ。
歩き続ければ、誰か見つかるでしょう。
[すぐに復活して歩き出した。
それにしても、大雑把である]
あなたがあなたを知る為に、何を求める?
[暗い影の半身と、エレオノーレの半身。
両の目で見つめながら青年は囁く。その心に染み入るように]
私の『願い』を手伝ってくれるなら、私もあなたを手伝いましょう。
―西殿・回廊食堂前―
[ティルの怒号にもへらりへらり。
相変わらず軽薄な笑みをうかべていたら、ピアに顔を蹴られた。]
わーい。ぎぶぎぶ参った。
[まぁ可愛いものだったが。いやほんとに。
比べる対象がオティーリエの一撃だからそりゃそうだとかは置いておいて。]
んでもおいさん捕まえた所でなーんもなんないんだけどねぇ?
[それは存外に剣は持って居ないと言ったようなものだったが。]
……理を打ち破る力を。
影は影で在らぬよう、
己は己で在れるよう――
< 沁み入る赤紫は、影の色を変える >
剣を。
< 傍に在りながら王の手に在り、触れられなかったもの >
[いつ如何なる時であっても、結界の維持に精神は触れている。
結界に使われたのは心の力。もしも、読み解けるのならば]
『自由』…を得る為に……邪魔をされない為に…。
先に封じたのは……彼等なのだから……。
[青年の思いの残滓が、ゆっくりと響きあう]
―東殿・回廊―
…、ん。
[数歩その小さな足を進めては仔は立ち止り、辺りを見回す。
それを幾度として繰り返す様子は、何かを捜している様であった。
何を求めているかまでは私には判らぬ。
しかしどうやら機竜殿が目の前にて姿を消してから――
幼子の様子は常と異なっていた。]
―東殿・回廊―
[命竜の所から離れてから、あちこちを探していたが。
やはり疲れが溜まっているのか、歩みは遅かった]
……、早く、見つけてあげないと……。
[翠樹の仔の心配をしながら、他の竜が残っていないか探し回る。
雷竜や風竜、剣の所持者である闇竜すら見当たらない。
ここ暫くどたばたしていた所為か、まともに情報が整理できていなかった]
―西殿・回廊食堂前―
うはははは、そいつぁ正しいな。
[危険人物扱いされて、へらりと笑む。]
あー楽しいかどうかは微妙だなぁ。
たのしー!って言うには問題あるし。
[それは封じられた竜王だったり、怪我を負ったエーリッヒだったり、まぁ色々あるわけだが。
届いた独り言のような心の声に、一瞬、表情が止まるが。
すぐにまたへらり、常の笑み。
周囲には琥珀の煌き。
エルザとザムエルの周囲にも、それは舞う。
振り払っても逃れられないのは、そもそも琥珀が二人の内側にも存在しているからだ。]
……そう、それがあなたが求めるもの。
理を打ち破る力。
[影輝の竜の答えに、青年の口元の笑みが深くなっていく]
ならば、此方へ来るといい。
あなたが――…剣を持つべき者になればいい。
影竜王が持つは『神斬剣』、『神斬剣』を持つは…【影竜王】
[赤紫の瞳が見つめ、告げるは言霊]
私の『願い』は『自由』を得る事。
刻印、人の姿、そして――『律』から竜を解放する事なのだから。
[ぽてぽてと。
行く当ても無く、ただひたすら回廊を歩き続ける]
……ヒマですわぁ。
ドカーン!とも、ギャー!とも、ぎしぎしあんあんとも、何も聞こえませんですし。
ふーむ。それとも、私以外全員消えてしまったのですかねぃ。
んなアホな。
[一人でボケて、一人でツッコんでおいた]
まあ……ここにいる人の数を考えたら、そう容易く出会わないのも、おかしいことではないですわねぃ。
それにしても、どこかでものの気配ぐらいは……と?
[そこでようやく止まり、ナターリエが辺りを見渡した]
―西殿・回廊食堂前―
おいさん自分の事は一番良く理解してるからなぁ?
[ばっさり言われた言葉も、本気で言われた言葉も薄い笑みでかわすように。]
何で、か。
[短い問い、だが続きは聞かなくても分かる問い。]
俺もあんな風に願った事があるから…かな。
[紡ぐ言葉は少し低く、そこに嘘は一見すれば見られないだろう。]
―西殿・回廊食堂前―
全部無くなっても、叶えたいもんがあった。
だけど俺の願いは叶わなかった。
まだ、その願いは消えたわけじゃねぇが…。
あの時ほど、強く想う事はもう出来ねぇ。
[想うには、時が経ち過ぎて。]
だから、誰にも理解されんでも、他の全部犠牲になっちまったとしても。
あいつらがそれを願うなら、叶えられるならそうすればいいってな。
まぁおいさんのワガママだな!
[けらりけらり。]
[寂しさも哀しみも、千年かけて静かに降り積もり心に沈んだ澱。
精神を司る心の竜が、忘れる事も消す事も諦める事も出来ず、心の奥底に封じるしかなかった『願い』は、ひとたび蘇れば何よりも強い渇望と変わる。
封じるのではなく、求めるのは解放。
だからこそ竜を封じる王を閉じ込め、『律』を断ち切るのだと――]
えーと……。
[少し考えている
↓
属性をさぐってみた
↓
寒くて、もさもさしていた
↓
?]
ん?
とりあえず、精神ではなさそうですわねぃ。
なら、名乗り出ましょうかぁ。
私は、流水のナターリエです。
近くにいるのは、誰かしらぁ?
< 影竜王。
其は名を与えたもの。
「エレオノーレ」という影をつくったもの。
影が其になるということは、影が主を呑むということ。
――数多の影が蠢く。
エレオノーレが沈んでいた青年の影のみならず、
残された随行者の影、静物が地に落とす影、仄かな光と薄い闇の合間、
竜皇殿全体の影が、主の許を離れ、意志を持ったかの如く、独りでに動く >
[オティーリエを探さないのは、そもそも場所が分からない為闇雲に動き回っても時間と体力を消費するだけだというのが一つ。
万一戦闘状態になれば当然邪魔になるというのがもう一つ。
ただ状況を知るために、琥珀は周りを揺らめかせた。]
…地下、ね。
[声は表には出さない。]
―東殿・回廊エントランス―
この声……
[聞き覚えのある声に、微かに歩み寄っていく。そこには、]
ナターリエ!よかった、もう大丈夫なのね。
[回廊のエントランスに当たるところで、流水竜と邂逅した。
それでもまだ付近に、別の気配が感じられて]
―中庭―
[姿を変える影を見ながら、青年は黒い腕輪に手をかける。
空を飛びたいだけなら、魔に堕ちればよかった。
刻印から放たれたいだけなら、竜王を目指せばよかった。
そうではなく願ったのは、ただ竜としての生。
本当の姿である事に代償を強いる、『律』からの解放なのだから]
―西殿・回廊食堂前―
へぇ、ティルが問答とはやるな。
[それは普段の言動からですかと。]
そういうの、おいさんも得意じゃないんだがなぁ。
…こうなってほしいと思う物事。
心の底から欲するもの。
[かねぇと。]
…、ブリジット!……と。
…?
[行く先の気配が氷竜殿である事に気付いたか、幼子は嬉しげな声を上げる。
…続く言葉とともに首を傾いだのは、まさか名が出てこなかった為とは夢にも思わぬが。
ふと、足元が揺らぐ。幼子もそれに気付いたか床へと眼を落とした。
仔の足跡。その足元に伸びるあらゆる影が、揺らめいたのが私の眼にも明らかだった。]
……、ノーラ?
[ぽつりと幼子は声を零す。
確かに、この様な事が出来るは彼の竜しか居るまい。]
ブリジット!
[ようやく見つけた竜の姿に、ナターリエが胸をなでおろした]
……良かったですわぁ。
やっと、誰か見つけられて。
[アホな。とかツッコんでいたが、結構真剣に、他の人はもういないんじゃないかとか思っていたようだ]
寒い気配は、貴方でしたのねぃ。
……とすると。
もさもさした気配、は?
[首を捻って、辺りを見渡して、もう一つの姿を見つけた]
翠樹……!
[当然、名前は覚えてませんよ。ええ]
っ!?
[突然、足元が揺らいだ。
こけかけそうになりながらも、視線を足元へ移せば、自らの影が、離れていく姿]
これ、は……!?
< 全ての影は一箇所に集まる。
結界のものまでを奪う事は、さしもの影も出来まいか。
存在の欠片とも言うべき他者の影を奪い凝縮し一つに固め、黒の――加減によっては深紫にも見える、靄にも似た一匹の巨大な竜へと変わり果てた >
―東殿・回廊エントランス―
リーチェ!それに、ナギさん!良かった、無事で――
[そこまで呟いたところで、流水と翠樹の影が――それだけではない。
様々な影という影が、揺らいで見えた]
これは……剣の影響……!?
それとも、ノーラが……!
ノーラ……?
[当然、影を使役するのは、彼の竜でしな成し得ない訳ではあるが、それでも、ここまでの力を使用するべき場面とは一体?]
……再会の喜びや、情報交換とかは後回しにしたほうが良さそうねぃ。
ノーラが影を使役しようとするならば、この先にノーラの姿があるのは明白。
その場所に行くのが先決ぽいですわぁ。
[言いつつも、影が向かう先へと走り出す]
ブリジット。
そこの仔のフォローは任せるわよ。私はあまり面識もないですしねぃ。
――…!
[自らの影が奪われし行く先――強大な影が視界へと入る。
其の姿か力にか幼子は小さく息を呑んだ。
無理も無かろう、その姿は私ですら圧倒される。]
…っ ノーラ、
[水竜殿や、氷竜殿から掛けられた声にすら幼子は気付かぬ様子で
新緑の足跡を残し、其の足は竜の姿がある中庭へと向かい始める。]
[半分見失いながらも、なんとか他の影が向かう先も計算に入れつつ、走り続け―――辿り着いた場所は、影と精神のいる中庭。
そこでナターリエは、巨大な影の竜と化しているノーラを見つけた]
影と、精神が、対立している……?
っと。精神がいるなら考えてる暇ない、か!
[すぐさま視線が通らない物影に隠れて、自身は水鏡を移して、その鏡が映し出す映像で、中庭の様子を眺め始めた]
―中庭―
[影が集まり、黒にも深紫にも見える巨大な竜へと変わる。
それは【影竜王】の姿]
――『神斬剣』をどうぞ、【影竜王】よ。
[黒の腕輪を奉げ持つように青年は微笑む。
影輝の力と精神の力、二つが混じり合い、腕輪は剣の姿へ]
『真・聖魔剣』と成し、『律』をお断ち下さい。
[もう一つ必要なのは【皇竜王】と『聖魔剣』
ギュンターと竜都を引き換えに、エルザを、もしくは野心持つ天聖の竜を見つければいいと――…]
―東殿・回廊エントランス―
ええ、分かったわ。
[水竜へとこくり頷いて]
……っ、リーチェ!
下手に見つかったら大変だから……っ、待って!
[幼子を追うように、中庭へと掛けていく――]
[やってきた竜達の気配に青年は振り返る事なく、気配を生む]
邪魔はさせません。
[青年から生まれた混沌の気配に誘われるように、混沌の欠片が中庭に集い出す。まるで影が集まった時の再現のように]
―西殿・回廊食堂前―
寂しい、か。
おいさんにもその気持ちはすっげー、よく分かるなぁ。
[よしよしと、ティルの頭を撫でる。口調は軽いが、別にからかっているわけではない。
いつの間にか、床からは倒れ座り込む格好になっていた。]
…叶える為に必至になって、その後の事なんざ、見えてない奴が多いんだろうな。
[それは今のアーベル叱り、オティーリエ叱り。
そして己の片翼叱り。]
< 捧げられる剣。
竜は螢火を宿した眸で青年を見下ろす。
首を擡げる動きにつれて、影が揺らぐ。容は定まり切っていない。
逞しい腕の一本が伸ばされ、鋭い爪先が剣へと近付き――
触れた瞬間、白と黒の二色が弾ける。
反発。
揺らぐ天秤は、大きく傾いている >
…っ、ノーラ。
[駆け出した先の中庭へ幼子は戸惑いも無く足を踏み入れる。
水竜殿が身を隠している理由など、仔には些細な事である様であった。
ざわりと、仔の足跡を新緑が繁る。
尤も――その根元に足元に、影は、無い。]
……っ、
[庭の中程まで来した頃か。
見覚えのある欠片に囲まれ、幼子は漸く足を止めた。
触れてはならぬと記憶している。――しかし自らに様が在るは、この先。]
……っ、ノーラ!
[声を上げる。影竜殿が、気付いてはくれぬかと。]
[精神の言葉で、周りに混沌のカケラが集まってきたのを感じる]
切り札の……切り時かしらねぃ。
[静かにそう言って―――ゴポリ―――と、ナターリエが口から『混沌のカケラ』を吐き出した。
それは、混沌に属した属性無き、『虚無のカケラ』
だが、長き間にわたってナターリエの中にしまいこまれたそれは、流水の属性を僅かながらも有した。言わば、流水と虚無のコラボレーションである]
『力ある剣』……奪ってきなさい。
[混沌のカケラ如きが、『力ある剣』を手に取ることが出来るはずは無い。
だが、一瞬だけでも弾き飛ばすことが出来るのならば、それだけで充分。それに、他の混沌のカケラに混ざってしまえば、見分けることは難しいはずだ。
混沌と流水のカケラが、ナターリエの命令通りに、『力ある剣』へと飛び掛る―――]
[反発は剣を奉げる、否、現在の所有者である青年の手に衝撃を与える。だが眉を少し寄せただけで、奉げる姿を解きはしない。
危険の警告である痛みを切り離し、『願い』を叶える為に]
――…どうか、『律』を――…
[精神の力を剣に侵食させ、反発を抑えようと試みながら願う]
[そして、我が身は混沌のカケラの中を無理に進み出て、自らの目で中庭の前景が見える位置へと移動。
その代償は、混沌のカケラによる一斉の攻撃。傷は浅くない]
さて、結果は何なりや―――?
[ナターリエに、次の手は残されてはいない]
< 幼児の呼ぶ名。
青年の称す位。
螢火の双眸が移ろい、影の一旦が零れ落ちた。
微かに、【影竜王】を象ったものが、崩れる >
―中庭―
[翠樹の仔の傍らまで着くと。
少し離れた所で、かけらによる一斉攻撃に合う水竜の姿が見え]
ナターリエ……!
[叫ぶように声を張り上げた。
視界の端には、巨大なる影を"影竜王"と呼ぶ心竜の姿]]
―西殿・回廊食堂前―
[ティルにへらりと、小さく笑んだ。
それは老齢な老人の笑みに近い、どこか枯れたような。]
この世界には沢山生きてる奴が居る。
何を思うかは、そいつらが歩いてきた道毎に違う。
きっと世界…ロウやカオス、揺らすものにとっちゃそんな事、どーでもいいんだろうけどよ。
それでも必至こいて、生きて生かされて。
中には死ぬ奴がいて、残された奴は寂しくて。
[へらり、笑みはゆっくりと。
ほの暗いものへと変わっていく。
内の内に常に在る、時と共に培われた澱み。
闇より暗い、クレメンスの素となるもの。]
―西殿・回廊食堂前―
寂しいのも、後悔も、きついのも、俺は見飽きたのさ。
今はその先にあるものが、見たい。
後悔しないで突っ走るのも、きっと悪い事じゃねぇ。
『輪転』は、何があろうと止まる事はない。
命は、代わりがきくから、命たりえる。
[一転、へらりと笑うは道化の仮面。
そしてクレメンスはその場から掻き消え―――]
[言霊を発していた為に、混沌と流水のカケラへ気付くのが遅れた。剣は手から弾き飛ばされ、下へと転がる]
――っ、邪魔をするな!
[弾かれた際に負った傷は深いが痛みの無い今、関係が無い。青年は傷を負わせたものに目もくれず剣を拾い、それを逆手に構えた]
剣よ、怒るのなら代償を持って行くがいい。
そして代わりに、その力を――…
[滑らせるのは胸の中央やや左、心の臓のある位置。
怒り従わぬ剣であっても、罰するを躊躇う事はなく青年の胸へ
―――そして、その真裏にある背の刻印を、破壊する]
[ 言霊の力は残り、腕は未だ剣へと伸ばされる。
抑え込む力により、二度目の反発は少ない。
されど触れた腕に流れ込む拒絶の意志は、本来の影の持ち主――心竜であり、水竜であり、氷竜であり、樹竜でもあろう――にまで伝播する ]
“偽りでは真には成れぬ。其は竜王に非ず”
[ 其は誰の科白か ]
ノーラ、おうさまに、なりたかったの?
……ノーラは、ノーラになりたいんじゃ、なかったの?
[仔には謎掛けにしか聞えぬ筈だった言葉。
しかして、幼子とは言え言の葉の真髄までは判らぬとも、
その言の響をそのまま受け取る能力には優れていたのか。
傍らに寄る氷竜殿へと一度視線を向け。
すぐさま、その小さき視線は巨大なる影へと注がれる。]
ノーラが、おうさまになったら、やだよ…っ!
―中庭―
[反応が遅れた――水竜が弾いた剣は、回収することも出来ず]
……こうなったら……!
[翠樹の仔の前に飛び出し、アーベルを見据えた――所で。言葉が、響いた]
……、今の、声は……?
……やれ、参った。
そこまでの意思か。
[少しは、周りの混沌のカケラを消滅させたが、絶対的量には到底届かない。
そうこうしている間に、アーベルは、せっかく弾き飛ばした剣を楽にもう一度拾い、その胸へと突き刺す。
自分の命すら辞さないその意思は驚嘆に値するのだが……
段々と、怒りが沸いてきた]
……そこまでして、自分の願いを叶えたいか。
自分自身で、どうしようともせず、もっと、強力な力頼みか!!
自分の命を絶つほどの覚悟があるのに、自分では出来ぬと諦めておるのか!!
―西殿・地下室―
[次に現われたのは地下。手繰るのは、揺らされた若竜。
今がけっこう危うい状況であることは、琥珀から知らされていた。]
オティーリエ!
[名を呼び、存在が知れたらひっ捕まえて、結界内部のどこかへ飛ぼうと。]
[本性に変わった青年から剣は抜け落ち、怒りと反発を弱めエレオノーレ――偽りの【影竜王】の手を受け入れた。
触れられた剣がその手に何を伝えるのかを青年が知る事は無い。
竜都に赤い雨が舞い、昼か夜かわからぬ光の中、青い虹がかかる]
[怒りの言葉を吐き出した後に、頭に飛び込んでくる言葉に、ナターリエが顔をしかめた]
“偽りでは真には成れぬ。其は竜王に非ず”
知っているわ!!
「偽者」が「本物」になんてなれないことなんて!!
だが、それがどうした!!
「偽者」には「本物」には作れない輝きを作ることが出来るのだ!
それは、誰にも叶えさせない!
私が、私自身の道を、私の手で、足で作り出すのだ!
< 落とされた影が取るは、幼児のよく知る者の姿 >
……リーチェ?
< 動きを止めた影の竜の傍らで、黒の瞳が仔竜を映した >
どんなに「不可能」と言われても!
どんなに「徒労」と言われても!
私は絶対に諦めやしない!
全ての常識なんて―――「クソ食らえ」!!
―西殿・地下室―
お前らどっちも同じ事言いすぎなんだよと。
こーの似たもの同士!
[アーベルはオティーリエを、オティーリエはアーベルを。
今回は前者を選んだだけだが。]
後ろに爺さんと雷竜のも居る。
袋小路だと捕まるぜ?
[言いながら、それでも強制的には手を取らない。]
…っ、
ノーラ、
[幼子の名を呼ぶ声。仔は一度だけ――今度こそ驚愕に眼を見開き。
しかし弾かれるようにして、その傍へと駆ける。
たしと小さく芝生を叩く足は、僅かに緑を茂らせて。]
[力を振り絞り届ける心の声は、悲痛なまでに強く響いた]
結界の解放と引き換えに――…
天聖の者に――…聖魔剣への承認を――…
[竜なればこそ心臓を傷つけても生きてはいるが、神斬剣の傷がそう易々と塞がるはずがない。だからこそ――最期の願い]
―中庭―
[目の前で起こっていることを、しばし呆然と見つめていた。
赤い雨。青い虹。そして、碧い虹に似た、竜の姿――。
徐々に、氷破の竜の表情は、悲痛な表情となっていき]
……そこまでの、願い……。
[空を見上げるように、竜の姿を仰ぎ見る。
小さき頃の、仔の面影はそこには見当たらなかった]
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