人狼物語 ─幻夢─

103 氷面鏡に映る彩


演奏家 オトフリート

―湖へと向かう道で―

[さくり、さくりと道を踏みしめながら一人の男が歩く。
手には大きめの鞄とバイオリンケースが一つ。
村を見渡せるところまで来ると立ち止まって息を吐いた]

 ……変わっていませんね、この村は。

[そう呟いて男は感慨深げな表情を浮かべた。
親の反対を押し切り家出同然にこの村を出て十年余り、その間一度も帰って来る事はなかった故郷。
今日ここに来たのだって、次の演奏会の場所の途中にあった、それだけのこと。
途中でどこかに一度宿を取らなければならないのなら、長年不義理をしていた知人に挨拶でもと思った、それだけのこと。]

 いつまでもこういているわけにも行きません。
 手が霜焼けにでもなったら仕事にならないですし。

[しっかりと厚手の皮手袋に包んだ手で荷物を持ち直して歩き出す。
目的は実家ではなく、湖の小島にある一つの館]

―→湖上の館へ―

(1) 2017/01/08(Sun) 00:15:31

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