今年も見事に凍りましたね。
堤の見ごろもそろそろですか。
[寒さが厳しいこの村の名物でもある氷の堤は態々見に来る人もいるほどで、演奏先でこの村の出身と言えば必ず話に出る。
その様子を横目で見ながら、小島へと結ぶ橋を渡れば、目的の館は目の前だ。
玄関に着いたならノックをして声をかける。
ドアが開いたなら一礼して]
お久しぶりです。長いことご無沙汰してすみません。
[と、連絡の一つも入れなかった不義理を詫びる。館の主はそのような事を咎めるような人ではなく、再会を喜び中へと招き入れてくれた。
その様子に安堵して、男は一つ頼み事をする。
この村の滞在中、館に泊めてもらえないだろうか、と。]
だって、実家に帰っても嫌な思いするだけじゃないですか。
[と告げれば、主も苦笑してそれを承諾するだろう]