困りますね。[男の目は空を見て、次いで地面に向けられる。白花の中にぽつりと建つ黒い石。風雨に晒され、刻まれた文字は掠れていた]地面が緩くなってしまうし。石もまた削れてしまう。[緩く首を傾ける。薄い唇が洩らす穏やかな低音からは、言葉の割に焦りは伺えない]今度、石工さんに頼んでみますか。[そう結論付けた墓守の男は、手元に目を戻し、頁を一枚*捲った*]