―外―
[おそらくゲルダがアーベルの名を呼ぶか駆け寄ってきた頃には、高揚はゆっくりと薄まってゆき、利き腕を折られた痛みに眉が寄った。
血塗れた獲物は反対の手で持ち。とりあえず僧衣を使って血を落とす。手入れが必要だな、などとぼんやり思いながら、ようやく周囲の様子が目に入った。
恩人と友人が視界に入るが、ただ見つめて返しただけだった。
フォルカーの口元に視線が走ると、当然そうだろう言葉が零れており。無用心だなと思いはしたが、思うだけで終わる。
まだ知られていないはず、多分大丈夫だろう。
そんな事も、胸中で思いながら。
クロエの言葉が見えたが>>15、首を振る。
両手が塞がっていた為、替えの服はある、という仕草は出来なかった。億劫だった、というのもある。]